アイデアエコノミーに向けてHPEはどう企業を支援するのかオールフラッシュとソフトウェアデファインド、この2本柱が示す意図

2016年10月12日、日本ヒューレット・パッカード主催イベント「Hewlett Packard Enterprise ストレージフォーラム2016」が開催された。ビジネスのデジタル化により、戦略的な意思決定をスビーディーに実行に移すことが重要になってきた。そんな中、あらためて注目されているのが「ストレージ」である。HPEのストレージソリューションは、企業のビジネスにどのような価値をもたらすのか。主催者講演を中心にイベントを振り返る。

» 2016年10月26日 10時00分 公開
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トレンドに合わせた「2つのストレージ戦略」を実践

photo 日本ヒューレット・パッカード ストレージ事業統括本部 マーケティング本部 本部長の瀧澤一彦氏

 ビジネスのデジタル化が急激に進む中、アイデアを素早く具現化し、意思決定し、迅速に事業化して価値に変えていく姿勢、そして行動力を持つことが「今後、勝ち残る術」といわれている。米ウーバー(Uber)や米エアビーアンドビー(Airbnb)のように、これまで既得権益とされていた業界のビジネスの在り方を根本から覆すような変革が、あらゆる業界で起こりつつある。このように、アイデアをいち早く価値に変えた企業だけが生き残れる「アイデアエコノミー時代」を勝ち抜いていくために、ITはビジネスにどう貢献できるのか。

 イベントの冒頭に登壇した日本ヒューレット・パッカードの瀧澤一彦氏(ストレージ事業統括本部 マーケティング本部 本部長)は、そうした問いについて「ITは既にビジネスの中核として欠かせない存在であり、特にビジネスのスピードにどう対応するかが重要になっている。そこでポイントになるのが、ストレージだ」と答えた。実際、HPEのストレージソリューションは多くの顧客をサポートしており、調査会社IDCによる2016年上半期のストレージ市場調査でワールドワイドシェアトップを獲得するなど、高い評価を得ているという。


photo 米ヒューレット・パッカード・エンタープライズ ストレージ担当CTO(最高技術責任者) アジアパシフィック ジャパンディビジョンのポール・ハーバーフィールド氏

 HPEのストレージソリューションの特徴は何か。続いて、米ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE) ストレージ担当CTO(最高技術責任者)のポール・ハーバーフィールド氏(米HPE アジアパシフィック ジャパンディビジョン)が登壇し、「ビジネスを加速する次世代ストレージ〜オールフラッシュ、ハイパーコンバージド、その先へ」と題する講演の中で、同社のストレージ製品の特徴やラインアップ、今後のビジョンなどを解説した。

 ハーバーフィールド氏によると、HPEのストレージソリューションの特徴は、ビジネスで求められる2つのスピードに対応できるよう、それぞれで適切な製品群を提供できている点にあると説明する。1つは、オールフラッシュデータセンターを構成するための製品群。もう1つは、ハイパーコンバージドインフラなどのソフトウェアデファインドデータセンターを構成するための製品群となる。

 「オールフラッシュとソフトウェアデファインドは、ストレージ市場における2つの大きなトレンドだ。この2つの違いは極めてシンプルだ。アプリケーションがパフォーマンスを重視しているなら、オールフラッシュが適している。一方、さまざまなワークロードを混在させたコスト重視の環境ならば、ソフトウェアデファインドが適している」(ハーバーフィールド氏)

photo HPEが推進する2本柱のストレージ戦略

 HPEは、オールフラッシュ製品として「3PAR StoreServ」ファミリーを、ソフトウェアデファインド製品として「StoreVirtual」を展開する。これら2つの製品群は、データ保護とバックアップのためのアプライアンス「StoreOnce」やソフトウェア「Recovery Manager」、管理ソフト「OneView」などを使って、両製品が持つそれぞれの違いを超えて統合的に管理できるようになっている。

 「3PARの特徴は、価格、スピード、エンタープライズの信頼性という3要素を兼ね備えていることだ。3PARでオールフラッシュデータセンターを構築することで、設備投資コストや運用コストの削減、ITの生産性向上などにつながる。一方のStoreVirtualは、開発環境、仮想化環境、クラウド環境、VDI、データ分析、IoTなど、さまざまな環境のワークロードに対応できることが特徴だ」(ハーバーフィールド氏)

オールフラッシュ「HPE 3PAR StoreServ」が評価される、3つの理由

photo 日本ヒューレット・パッカード ストレージ事業統括本部 ストレージエバンジェリストの高野勝氏

 続いて、オールフラッシュの最新事情を日本ヒューレット・パッカードの高野勝氏(ストレージ事業統括本部 ストレージエバンジェリスト)が「導入効果からみるオールフラッシュストレージ選定のポイント」と題する講演で詳しく解説した。

 高野氏はまず、オールフラッシュの導入状況が極めて急速に進んでいることを解説。HPE 3PARは、2014年から2015年にかけて売上高で237%、市場平均の1.7倍という成長率を見せたという。3PARのオールフラッシュ市場シェアは、2015年第1四半期の26%から2016年第1四半期には40%にまで拡大。一方のフルHDD製品は、同12ポイント減のシェア34%、ハイブリッド製品は3ポイント減の同26%という状況だという。

 「かつてフラッシュは、データベース、VDI、OLTPなどに用途が限られていたが、今や基幹システムやeコマース、アプリケーション統合など、あらゆる領域に拡大している。オンライン処理とリアルタイム化といった市場ニーズを受け、フラッシュはメインストリームになったといっていい」(高野氏)

 例えば日用品メーカーのライオンでは、基幹業務システムにオールフラッシュを採用し、これまで19時間かかっていた週次バッチ処理を7時間50分と60%短縮させた。単なる時間短縮ではない。8時間以内ならば、バッチ処理の単位を週次から日時へ変更できる。つまり、「ビジネスのスピード」をより高められることにつながる。また、物理サーバ台数やラック本数は半減し、3PARの一元的、効率的な運用管理性により、運用コストも大幅に削減できたという。

 また、インターネットサービスプロバイダーのインターネットイニシアティブ(IIJ)では、「IIJ GIOインフラストラクチャーP2」の中核にオールフラッシュを採用し、ストレージサービスのI/O性能保証を実現。ラック当たりのストレージ容量を3倍にする一方で、収容スペースを74%削減、かつ消費電力も大幅減を達成した。

photo 同一構成でもオールフラッシュの方が安価になってきたという

 その上で高野氏は、オールフラッシュストレージ選定のポイントとして、コストパフォーマンスストレージ機能可用性とサポートという3つに注目すべきだとアドバイスした。3PARはこの3つのポイントのいずれでも高い評価を得ているという。

 まず、コストパフォーマンスについては、ベンチマークの1つである「SPC-1 Price-Performance」で、3PAR StoreServ 8450がトップスコアを獲得したことや、最小構成例で数百万円からとする、かつてよりも安価な価格で提供できるようになったことを紹介。さらに、「トータルコストでの容量単価はHDDとほぼ同等といえるほどになってきている。性能は8倍以上で、集約率はHDDの約5倍。そして消費電力も4分の1に削減できる」と、「フラッシュは高速だが、HDDより割高。自社にはまだ早い」と考えるユーザーの思惑が、もう過去のこととなりつつあるメリットを解説した。

 また、ストレージ機能については、データタイプごとに最適なソリューションを選択できること、独自のストレージ処理専用ASIC(Application Specific Integrated Circuit)を用いてパフォーマンスを最大化できること、ストレージQoS(Quality of Service)として、IOPSだけでなくレイテンシも設定できること、高速バックアップやオンラインインポート機能などを備えることが差別化のポイントだと説明した。

 3つ目の可用性とサポートについては、99.9999%の可用性を実現していること、ストレージに精通したエンジニアによる定期的なファームウェアアップデートや障害状況の定期的な提供などを標準で提供する「プロアクティブケア」サービスを用意することが特徴だと説明した。

15分で構築し5クリックでデプロイできるHPEのハイパーコンバージド製品

photo 日本ヒューレット・パッカード ストレージ事業統括本部 ストレージテクノロジーエバンジェリストの井上陽治氏

 最後にハイパーコンバージド製品について、日本ヒューレット・パッカードの井上陽治氏(ストレージ事業統括本部 ストレージテクノロジーエバンジェリスト)が「新潮流"ハイパーコンバージド"の最新事情と活用例」と題する講演で詳しく解説した。

 井上氏はまず、ハイパーコンバージドの国内導入事情について、認知度が約5割、導入済み/検討中の層が3割強に達したとするIDCジャパンの調査結果を示しながら、欧米に遅れながらも、いよいよ日本でも導入意向が高まってきつつある状況を説明した。

 「ハイパーコンバージドは、インフラ大量生産時代の自動化マシンのようなものと想像してみてほしい。かつて人間の手作業で組み立てられていた自動車が、ロボットによって自動的に組み立てられるようになることで、いわゆる“モータリゼーション化”したのに似ている。ハイパーコンバージドは、サーバ、スイッチ、ストレージといったハードウェアが単純に統合されたものというだけではない。機能やアプリ、ツールも1つのボックスに統合されて、自動化できる点が大きなポイントだ」(井上氏)

 井上氏によると、HPEのハイパーコンバージド製品には、3つの大きな特徴がある。1つ目は、構築時間が短いことだ。電源オンからVMプロビジョニングも15分までかからない。2つ目は、デプロイが簡単なことだ。セルフサービスポータルを搭載し、テンプレートを選ぶだけで、5クリックで仮想マシンを払い出しできる。3つ目は専用のストレージエンジニアが不要なことだ。ツールを使って構築できるため、SI費用、構築時間も短縮できる。

photo ハイパーコンバージド、3つの特徴

 「仮想化、VDI、クラウド構築などは、今や自動化できる分野。規模に合わせて必要なサイズを選択し、用途に応じてアプリを選択していくだけでいい」(井上氏)

 実際、導入事例も増えている。写真サービスを展開するプラザクリエイトは、新サービスの基盤にハイパーコンバージドシステムを採用。機器の選定から4週間という早さでサービスインし、コストをパブリッククラウドの半分以下に抑えながら、俊敏性と信頼性を両立させたシステムに刷新したという。

 また、多店舗運営支援クラウドサービスを展開するある企業は、パブリッククラウド環境からオンプレミスのハイパーコンバージドシステムに移行した。一見、クラウド化の潮流を逆行するようだが、そうではない。専門の管理者を不要とし、セキュリティやコンプライアンスを確保した上で、リソースの払い出しの自動化や月額従量課金といったクラウドと同等の仕組みを実現し、ビジネスを加速させているという。

 さらに、ある大手鉄道会社では、クライアント統合とセキュリティ強化を図るために、HPEのハイパーコンバージドを使ってVDI環境を構築した。その際、最小2ノード/100ユーザーからスタートし、1600ユーザーにまでスケールアウトさせる構成を取り、効率的にシステムを拡大させることができたという。

 その上で井上氏は、ハイパーコンバージド活用のポイントとして、スピードや変化が求められる時代に備えられることクラウドをオンプレミスで実現できるようになることスモールスタート/スケールアウト環境に最適であることを挙げ、講演を締めくくった。

2つの製品群を1つに統合していくことも計画

 アイデアエコノミーに向けたIT変革では、IT環境、特にインフラで価値を創出することが重要になってくる。オールフラッシュとハイパーコンバージドは、それに向け、適応していくために重要な基盤となるので、各講演者が述べたポイントを踏まえながら、活用を積極的に進めていきたいところだ。

 なお、HPEは将来的に、この2つの製品群を1つに統合していくことも視野に入れているという。HPEの今後の取り組みにも注目しておきたい。

photo 次世代データセンターのビジョン
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