「ちょっと待ったーーーーっ!」――池澤さんの入社をはばむ男の正体は?
もしも、ギークタレント池澤あやかさんが実在の有名IT企業に転職するとしたら?――エンジニアなら、誰しも興味がある話題ではないだろうか。
本連載はそんな架空の設定の下、池澤さんにさまざまなIT企業で「エンジニアとして」面接を受けてもらう。
前回「ヤフー編」は、ソフトウェア開発職とサービス/プロダクトの企画職との間で、池澤さん自身のスタンスが曖昧だったことが、不採用という結果につながった。
そこで今回池澤さんが転職先に選んだのは、「ユカイ工学」だ。
同社は「ロボティクスで世の中をユカイにする」をテーマにネットとリアルをつなぐプロダクトをつくる開発会社で、家族をつなぐコミュニケーションロボット『BOCCO』、手のひらサイズのロボットドール『iDoll』といった人型ロボット製品から、ハンガー型次世代販売促進システム『チームラボハンガー』といったハンガー型のIoTプロダクトまで、幅広く開発、販売している。
脳波で動くネコミミ『necomimi』は、さまざまなメディアでも取り上げられているので、ご存じの方も多いかもしれない。
ハードウェア/ソフトウェアを組み合わせ、社員のアイデアを次々と商品化していく同社は、企画+開発を強みとする池澤さんにとってもうってつけの転職先といえるのではないだろうか。
事前に、ユカイ工学からは「自分を表す101のキーワードを書き出したもの」と「職務経歴」を持参する旨、指示があった。「101のキーワード」の提出は、同社で採用を行う際に、全ての応募者に課すものだという。
何だか本格的な面接になりそうな予感だ。どうなる池澤あやか!?
面接にはユカイ工学代表取締役社長の青木俊介氏が登場。まずは一通りの自己紹介を済ませ、池澤さんが応募の動機を語る。
「私がこれまでやってきたことは、技術を使って人を驚かせたり、楽しくさせたりすること。御社のビジネスには、とても近いものを感じています」(池澤さん)
そして話は池澤さんの「101のキーワード」に及ぶ。池澤さんのキーワードは、機械学習分野でよく使われているJupyter Notebookで記述されていた。青木氏はまずそこが気になった様子だ。
「なぜJupyterで書いてきたの?」(青木氏)
「マークダウンで記述したいと思い、普段から使い慣れていて、かつマークダウンで記述できるツールなのでJupyter Notebookを使いました」(池澤さん)
実は、この101のキーワードに体裁や提出方法の指定がないのは、どのようなフォーマットで提出するかも自己PRの一部だからだ。青木氏によれば、色紙にイラストを添えて提出してきた人もいたとのことだ。
今回の池澤さんの場合はJupyter Notebookを使い慣れていて、機械学習分野にも少なからず知見があるのではないかと判断できる。
青木氏がキーワードを読み始める。東宝シンデレラオーディション、慶応大学SFC(湘南藤沢キャンパス)、Ruby、ロボット女子会、AI勉強会、温泉、香港……。
「香港って?」(青木氏)
「幼いころ、短い間ですが住んでいたことがあります」(池澤さん)
ユカイ工学が、なぜ101個ものキーワードを提出させるのか。それは、多くの人にとって長所や得意分野だけで101個を埋めるのは難しいからだ。
そうなると、普段からやっていることや気に入っているもの、育ってきた環境など、さまざまな側面が見えてくる。その中にこそ、その人の本質が表れるし、ウソをついたり格好を付けたりしていたら食い違いが生じるのだという。
何がアピールポイントになるか分からない。自己PRできるチャンスがあれば最大限に利用しよう
101個の中から、青木氏がとりわけ気になったのが「出張を作る」というキーワード。青木氏が、これはどういう意味かと尋ねた。
「どこかに行きたくなったときに、その行き先に合わせて仕事を作るんです。以前、中国の深センに行ったときも、まず深センに行くと決めて、それからいろいろな企業にお声掛けして、仕事を受注しました」(池澤さん)
この行動力が青木氏の気持ちを大きく動かしたようだ。しばし考え込む青木氏。
もし池澤さんが社員になったら、エンジニアとしてはもちろん、商品のプロモーションビデオやカタログにも出演してもらえるかも……。
「ちょっと待ってください、社長!」
池澤さん入社後を想像して、頬がゆるみっぱなしの青木氏に待ったをかけたのは、同社COOの原田惇氏だった。思いがけない「ちょっと待ったコール」で雰囲気は一転し、雲行きが怪しくなり始めた。
原田氏は、池澤さんについて、過去にほろ苦い(?)思い出があるという。
まだ池澤さんの活動について、あまり知らないころの話。とあるイベントから戻った原田氏は、「今日、イベント会場に池澤あやかさんという人が来場していたけど何者? そんなにスゴイ人なの?」と、軽い気持ちでSNSに書き込んでしまった。
すると、その書き込みに対し、池澤さんのGitHubや記事のURLとともに「あいつはホンモノだ」「知らないのか?」といったレスが数多く付き、大変なことになったのだとか。
別に池澤さん本人は知る由もない話だったのだが、そうした経緯もあり、どうしても自分の目で確かめずにはいられなかった原田氏だった。
原田氏からも「ユカイ工学で何がやりたいのか」といった質問が出された。
「ハードウェアを駆使した面白いプロダクトを作っていきたいです。ディスカッションから実装まで、できる限りやりたいです」(池澤さん)
具体的な内容に踏み込んでいくと、やがて話題は機械学習へ。当初は険しかった原田氏の表情も、技術談義になると徐々に緩んでいった。
「御社には、IoTでセンシングしたさまざまなデータが集まるはず。それらを分析することで、新たなプロダクトや、より良いサービスに応用していけると思います」(池澤さん)
池澤さんは、ここで前回の面接で学んだ「この会社(あるいはサービス)をどうしていきたいか」という部分を、きちんと話題に盛り込んだ。さすが!
さて、注目の結果はいかに……?
「採用です」(青木氏、原田氏)
ナント、採用決定とのこと。理由は、池澤さんの「腕力」にあるという。腕力というのはあくまでも喩(たと)えだが。
同社では、エンジニアが「こういうモノを作りたい」と言い出したら、誰も「No」とは言わない。ただし、そのアイデアを商品やサービスとしてアウトプットするところまで持っていかないと、仕事は全てなかったことになってしまう。自由ではあるが、そこにはある意味の厳しさが伴っているのだ。
そこで必要とされるのが、さまざまな手段を講じてやり遂げる「チカラ」だ。池澤さんのキーワードにあった「出張を作る」という考え方が、まさにそこに合致していたのだ。
「1を2や3に増やせる人は世の中にも数多くいますが、0を1にできる人は少ない。池澤さんは後者だと判断しました。エンジニアには腕力も必要なんです(笑)」(青木氏)
で、気になる入社はいつから?
「当社では採用予定の全ての方に、インターンシップを経験してもらいます。池澤さんも例外ではありません。まずはインターンシップからスタートしましょう」(原田氏)
エンジニアには、やり遂げる「腕力」が必要
自分のやりたいことが、会社の製品やサービスと連動していると良い
池澤さんのインターンシップ採用がユカイ工学のオフィスに伝えられると、職場にどよめきが起こった。
「池澤さん入社するの?」「マジっ!?」「ヤッター!」
いやいや、あくまでも架空のお話なんですけどね。でも、今後のためにユカイ工学のオフィスを拝見しておきましょう。
注目は、同社の工房だ。NC旋盤、ボール盤、3Dプリンタ、はんだごて、オシロスコープ、エアブラシなどの機器類が整然と並べられ、棚にはブレッドボードやリード線、ステッピングモーター、ギア、TTLや各種CRパーツなどが引き出しに分類収納されている作業スペースは、モノづくりに少しでも関心がある人ならば心躍るはずだ。
3Dプリンタで制作されたBOCCOのデザインスタディなども並ぶ。
「けん玉型もあったんですか、スゴイ!」(池澤さん)
工房には、ちょうど、イベントに出品する作品を仕上げている社員がいた。スマホからのコントロールで、壁のスイッチをON/OFFするロボットだという。
作品をのぞき込んだ池澤さんは「あ、ちゃんと顔も作り込んである。でも、かわいいのに壁の方を向きっぱなしで見えないのはもったいないですね」と、いきなり鋭いツッコミを入れる。
もし、池澤さんがインターンシップで同社に来ることになったら、こんなやりとりが日常の光景になるかもしれない。
自分がやりたいことをトコトンやれるユカイ工学の社風や環境は、エンジニアにとって愉快で痛快!
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提供:株式会社リクルートスタッフィング
アイティメディア営業企画/制作:@IT自分戦略研究所 編集部/掲載内容有効期限:2017年2月16日