フラッシュファーストはもう終わった。「フラッシュは、もう標準の時代」に入っている。では、企業は「具体的」に、どんな要素を考慮して、どのオールフラッシュストレージを選択すべきなのか。「多角的なオールフラッシュ製品群」で企業のITトランスフォーメーションを支える、Dell EMCストレージ戦略の全貌を解説する。
「『FLASH FIRST』から、今では『FLASH is NEW NORMAL』、つまりフラッシュが標準となる時代に突入しました」と、EMCジャパン プライマリーストレージ事業本部製品SE部部長の森山輝彦氏は話す。
フラッシュは、記憶媒体として当たり前の存在になった。だからこそ社内データセンターの変革を推進する際の柱の1つとして、そのメリットを活用していく必要がある。
多くの企業において、従来型のITは変革を迫られている。ほとんどの企業が、既存のシステムの維持・運用にIT予算のほとんどを消費し、それらの拡張によってさらにインフラは複雑化し、運用コストや手間がさらに増大するという悪循環が発生している。
悪循環を断ち切るにはどうすべきか。ITの「体質」を変えていくしかない。Dell EMCでは、これを「ITトランスフォーメーション」と呼び、ITインフラを最新鋭化し、ITサービスデリバリーを自動化し、人およびプロセスの両面でIT運用を変革すべきだと考えている。
ITインフラの最新鋭化では、「フラッシュを活用」し、「スケールアウトがしやすく」、「ソフトウェア定義型」で、「クラウドに対応」し、「保護/信頼性に優れた」データセンターを構築していくことが求められる。
フラッシュの活用がITインフラの最新鋭化を促進できる理由は、データセンター全体の効率を大きく引き上げられるからだ。もはや当たり前の記憶媒体になったフラッシュを、あらゆるアプリケーションおよびITサービスのベースとすることで、パフォーマンス管理が容易になる他、ストレージハードウェアコスト、スペースコスト、電力コスト、データベースライセンスコストの改善などが図れる。
森山氏によると、こうした目的でオールフラッシュストレージを選択する際に、考慮すべき要素は次の通りだ。
HDDをベースとしたストレージシステムが、これまでのデータセンターを支えてきた。これを積極的にフラッシュストレージへ置き換えていけるようにするためには、フラッシュストレージ製品に信頼性と継続性が確保されていなければならない。
「フラッシュ」という言葉でくくられる技術は、急速な進化と変化を見せている。
例えば、企業が使うフラッシュといえば、5年ほど前(2012年ごろ)はSLCと相場が決まっていた。だが、NANDフラッシュの微細化が進み、短い間にcMLC/eMLCが主流となり、さらに現在では、TLCの利用も進んでいる。とはいえ、微細化も限界にきている。そこで登場したのがNANDフラッシュを垂直に積み重ねた「3D NAND」だ。2016年には、SSD開発ベンダー各社の3D NANDの量産化が一斉に始まったことで、今後さらなる大容量化と容量単価の低下が期待できる。また、「3D XPoint」という不揮発性メモリ技術は、これまでのNANDフラッシュメモリとは比較にならないスピードを生み出し、「ストレージクラスメモリ」としてメインメモリの拡張やストレージとして利用できるようにしている。こういったストレージメディアの高速化が進むとボトルネックになるのは、接続インタフェースの帯域幅であるが、PCI Expressを使ったフラッシュの接続インタフェースとして、SASやSATAに代わってNVMeが普及してきたことで、帯域幅の問題を解消できるようになった。
NANDフラッシュメモリの技術も媒体の種類やベンダーにより、おのおの特徴があり、癖もある。それぞれの欠点をカバーしながら対応していけるアーキテクチャや開発能力を備えているかどうかが、フラッシュストレージ製品選択において重要な基準の1つになる。
一方でNVMeは、2017年後半にかけて製品が増え、2018年には普及が進み始めることが考えられる。
オールフラッシュ製品が持つアーキテクチャが、これらのフラッシュ関連技術の急速な技術革新へ、いかに効果的に、かつ迅速に適用できるかという観点が、製品の継続性と企業投資の安全性を大きく左右する。
企業はそれぞれ、ストレージをさまざまな用途で利用する。ストレージに求める信頼性、可用性、機能、性能、管理などの要件も異なる。このため、多数の企業でそれぞれのデータセンター全体を変革するためには、多様な要件にマッチする、幅広いフラッシュストレージ製品のポートフォリオが提供されていなければならない。用途あるいは要件に合わない製品を無理やり適用しても、望むような効率が得られない可能性がある。
ストレージは、データを保存し、これを利用するための器というだけではない。運用では、ほとんどの企業がデータ管理のため、スナップショット、クローン、同期/非同期レプリケーションなどの機能を活用している。これらの機能は「データサービス」とも呼ばれる。
フラッシュストレージへの移行で気を付けるべきポイントに、これまで活用してきたこれらの機能、あるいは同様の機能をさらに効果的に提供できる機能を備えている製品かどうか、また、それを備えている場合にも、フラッシュの特徴を踏まえた実装が行われているかどうかを考える必要がある。
例えばスナップショットを有効にした場合のI/O性能は、そのスナップショット機能がHDD用の機能なのか、それともフラッシュを前提として最適化されたものなのかによって、数倍の違いが出てくる。重複排除を有効にした場合の性能も同様だ。カタログ値だけでは分からない。
Dell EMCは、オールフラッシュストレージで、主なものだけでもインテル® Xeon® プロセッサーを搭載している「VMAX ALL FLASH」「XtremIO」「Unity All Flash」「SCシリーズ」の4製品を提供している。また、「Isilon」「ScaleIO」でも、フラッシュを活用できる。これほどの選択肢を提供しているベンダーは他にない。
なぜ4製品もあるのか。前述の通り、オールフラッシュストレージが単なる対症療法的なツールではなく、企業におけるITインフラ全体の最新鋭化を進めるための基盤だと考えているからだ。
データセンターを単にオールフラッシュ化するだけでは不十分だ。企業における多様なアプリケーションやニーズのそれぞれに最適なオールフラッシュソリューションを適用し、その上で運用の自動化を勧めなくてはならない。
では、「VMAX ALL FLASH」「XtremIO」「Unity All Flash」「SCシリーズ」の4製品は、それぞれどのようなアプリケーションやニーズに適しているのか。以下ではこれを紹介する。
まず、VMAX ALL FLASH(以下、VMAX AF)がある。これは「ハイエンドストレージの代名詞」だといえる。
VMAXは「Symmetrix」の設計思想を引き継いだ後継製品だ。SymmetrixとVMAXは、メインフレームにも対応したハイエンドストレージとして、過去20数年間にわたり、世界中の基幹システムおよび重要システムを支えてきた。VMAX AFは、そのオールフラッシュ版として2016年に登場した。
基本的なアーキテクチャは当初から変わっていない。そう言うと、時代遅れになっているのではないかというイメージを持たれる方もいるだろう。だが、事実はその逆だ。
一般的なエンタープライズストレージ製品は、「磁気記憶装置にキャッシュを加えてパフォーマンスを向上する」という考え方を出発点としている。一方のSymmetrixは、当初からDRAMを主役に据えている。DRAMに入りきらないものを格納するために、補助的なバックエンドストレージとしてディスクを使うという発想から生まれている。このため、安定して高い性能が得られるようになっている。
また、このアーキテクチャでは、バックエンドストレージの記憶媒体がどのように移り変わっても対応しやすい。VMAX AFの場合は従来のHDDによるバックエンドストレージを完全な形で最新のSSDで置き換えており、堅牢性や信頼性、安定性を損なうことなく、平均的なレイテンシを向上できる効果が生まれる。
言い換えるなら、「いかなるミッションクリティカル環境でも安心して使えるオールフラッシュが出てきた」ということになる。メンテナンス、スペース効率、電力効率など考えれば最高の選択肢となり、もうハイブリッド構成のVMAXを選ぶ必要がなくなったといえる。
ミッションクリティカルな用途にオールフラッシュストレージは時期尚早なのではないかと考える方には、ぜひ検討していただきたい製品だ。
XtremIOは、フラッシュのために設計され、予測可能で一貫した性能を提供可能なオールフラッシュアレイだ。Dell EMCにおけるオールフラッシュストレージへの取り組みを象徴する機種であり、市場で最も売れている製品として知られている。
フラッシュのために一から設計されているというのが、この製品の最大の特徴だ。フラッシュの性能および機能をとことん生かし、その価値を最大限に引き出すことができる。
例えばオールフラッシュストレージでは、特にレイテンシが重要だが、XtremIOではぶれることがない。レイテンシがぶれる主な原因として、ワークロード特性や、ガベージコレクションのようなバックグラウンド処理の負荷による影響が挙げられるが、XtremIOは、ランダムIOによってキャッシュにヒットしない場合でも高速な性能が提供できるアーキテクチャを採用している。そのため、ワークロード特性にほとんど依存せずに高性能を発揮できる。また、ガベージコレクションの処理の負荷もオフロードできることで、使っていくうちに性能が劣化するという心配もない。さらに、前述のデータサービスの扱いは、群を抜いて優れている。
また、スケールアウト型であることも大きな特徴だ。ニーズに応じて後からストレージノードを買い足すことで、性能と容量を同時に向上できる。
使い勝手にも優れ、複雑な設定などに時間を費やすことなく、性能や機能をシンプルに活用していける。
VMAX AF とXtremIOは、どちらもハイエンドストレージだ。ではどういうときにどちらを選ぶべきだろうか。
企業内で、最もミッションクリティカルなアプリケーションを含め、フラッシュという記憶媒体を活用したIT変革を複数の業務環境で統合的に進めていきたい場合は、VMAX AFが最適だ。実際に基幹システムでの利用実績が非常に豊富で、安定した性能と、信頼性や可用性の双方について折り紙付きだということは、重要アプリケーションへのVMAX AFの適性を、何よりも雄弁に物語っている。
99.9999%の可用性など、最も信頼性が要求されるアプリケーションについて豊富な実績のあるオールフラッシュストレージ、あるいはメインフレームにも対応したオールフラッシュストレージとして、これ以外の選択肢は市場に存在しない。ディザスタリカバリーなどで、最も厳しい要件に対応したデータサービス機能を使いたい場合にも、VMAX AFを選ぶべきだ。
一方、XtremIOもハイエンドストレージとして、重要システムを含む多様なアプリケーションに数多く利用されている。オールフラッシュストレージが一部の限定的な用途のためではなく、企業のITインフラを支えられるということを、2013年の発売から4年近くの間に積み上げた実績で証明している。
デスクトップ仮想化基盤(VDI)、サーバ仮想化基盤、クラウド基盤など、ITインフラの利用ニーズがどれくらい伸びるかが、導入当初は予想できない、あるいはニーズの伸びに柔軟に対応できるITインフラを構築していきたいという場合に、XtremIOのスケールアウトアーキテクチャが最も生きてくる。
Unity All Flashは、ミッドレンジ/エントリストレージである「VNX/VNXe」を、オールフラッシュで効果的に活用できるように再設計を施した製品だ。こちらも、2016年の製品出荷以来、非常に多くの実績を積み上げている。
ミッドレンジストレージとして定番となっているUnityの特筆すべき点は、「ユニファイド」「シンプルさ」の2つになる。
Unity All Flashは、1台でブロックストレージと、ファイルストレージの2つの用途に使える。オールフラッシュストレージの世界では、エントリレベルのブロックストレージこそ多数存在するが、NASとしても使える製品の選択肢はあまり多くない。このことは、Unity All Flashの用途の幅を大きく広げている。あらゆる用途にフラッシュを最適な形で適用できてこそ、ITインフラを変革できるが、まさにこれを実現するための重要なツールの1つとなっている。
使いやすさも大きな特徴だ。直感的に分かりやすい、グラフィカルな運用ツールが備わっていて、このことは機動的な運用にも貢献する。
SCシリーズは、デルが2011年に買収したCompellentの技術に基づく、非常にユニークな製品だ。そのユニークさによって高度な経済性を実現した、「究極のミッドレンジストレージ」といえる。
SCシリーズのアーキテクチャ的な特徴は、階層化と仮想化が初めから考えられて設計されている点だ。これらにより、データのライフサイクル全体にわたる管理が、場合によってはこれ1つでできるようになっている。
SCシリーズには、内在的な機能としてデータ自動階層化が組み込まれている、複数の記憶媒体をSCシリーズに搭載し、データ管理のポリシーを設定しておくと、データのライフサイクル段階に応じ、「適切なデータ」を「適切な記憶媒体」に「適正なコスト」となるよう自動再配置する。しかもこのデータ自動階層化を、非常にきめの細かなデータ単位で実行できる。
これによって、全体的なコストを抑えながら、メリハリを利かせてフラッシュのメリットを活用できる。SLCとMLCといった、複数のフラッシュ媒体にまたがる自動階層化ができる点も興味深い。もちろん、より安価なディスクを利用したハイブリッド構成をとることも可能だ。
SCシリーズには、他にも多数の機能が備わっている。ミッドレンジストレージに見られるあらゆる機能が詰め込まれているといっても過言ではなく、この点でも注目に値する。
では、同じミッドレンジストレージであるUnity All FlashとSCシリーズは、どのように使い分ければよいだろうか。一言で表現すると、シンプルな運用がしたければUnity All Flash、機能を使いこなしてストレージインフラを高度にチューニングしたければSCシリーズということになる。
上記のように、Dell EMCのオールフラッシュストレージは、多様な選択肢を提供している。これによって、ほとんどの企業において後回しになってきた、社内データセンターの体質改善を図ることができる。
だが、冒頭のITインフラ最新鋭化の部分で、「クラウドに対応する」ことが要件の1つとなっていたように、パブリッククラウドの利用はもう特別なことではなくなってきている。各企業はそれぞれの考え方ややり方で、データのライフサイクル管理にパブリッククラウドを組み込もうとしている。こうした取り組みに積極的に対応すべく、Dell EMCではクラウド連携で豊富な製品・サービスを展開している。
例えばクラウドゲートウェイソフトウェアの「Cloud Array」を使うと、パブリッククラウドのストレージサービスを直接利用できる。このソフトウェアを社内で動かすと、クラウドストレージのキャッシュとして動作、社内からはNFSあるいはiSCSIで、クラウドストレージが社内にあるかのように活用できる。
さらに、「Data Domain Cloud Tier」を使えば、長期保管データをクラウドへ移行してシームレスに管理できる。
Dell EMCでは他にも、SaaSアプリケーションデータのクラウドからクラウドへのバックアップを行う「Spanning」や、パブリッククラウド上の仮想マシンを自動的に暗号化する「CloudLink」など、多様な製品・サービスが使えるようになっている。
フラッシュの世界は、今後も急速な進化を続けていくはずだ。これは、企業ITにおけるリスクを増大することにつながりやすい。
まず、現在最先端の製品を導入したとしても、5年後にこれが最先端である保証は全くない。つまり、オールフラッシュストレージを開発・提供するベンダーの側は、技術進化に対応できる体力のある企業でないと、付いていくことができなくなってくるだろう。ベンダーが開発努力を怠ると、ユーザー企業は先端技術をいち早く活用できないというリスクを被ることになる。
一方、ユーザー企業におけるIT技術の取り込み方は、その企業のITについての考え方や体制によってさまざまで、さらに同一の企業内でもアプリケーションによって異なる。少なくともフラッシュに関しては、ベンダーの側が、単一のアーキテクチャや考え方を押し付けるような時代は終わった。
Dell EMCは、できるだけ幅広い企業が、現在のIT運用を確実に続けながら、円滑に次世代のあるべき姿へと近づける取り組みを、支援していきたいと考えている。豊富なオールフラッシュストレージ製品と周辺技術・サービスは、このために存在している。
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2017年5月12日