デルが開発・提供してきたNutanixベースのハイパーコンバージドインフラ製品を、Dell EMCは今後も推進していくという。豊富な製品群が出そろったにもかかわらず、提供を続ける理由は何か。
Dell EMCが提供するハイパーコンバージドインフラ(HCI)の中で、米NutanixのHCI管理ソフトウェアとストレージソフトウェアを搭載した製品がインテル® Xeon® プロセッサーを搭載する「Dell EMC XC(以下、XC)」だ。
デルはNutanixとの協業に基づき、2013年よりXCを開発、販売してきた。デルとEMCの統合後もこれは変わらない。Dell EMCはHCIの選択肢の1つとして、XCを推進していく。
豊富なラインアップを擁するDell EMCのHCI製品において、XCを提供する意図は何か。EMCジャパン コンバージドプラットフォーム&ソリューション事業部vArchitectシニアマネージャーの三邉祥一氏は「グローバルな視点では大きく2つの理由があります」と指摘し、こう話す。
「1つはXCの実績です。Nutanixは2009年に設立され、HCI分野では歴史の長い企業です。同社といち早く提携してデルが世に送り出したXCは、多くのユーザーに支持されています。2つ目は、ハイパーバイザーの選択肢です。2017年4月現在、仮想化ソフトウェアとしてはVMware vSphereが8〜9割のシェアを獲得していますが、今後は市場の伸びとともに、Hyper-Vなどのハイパーバイザーを利用するユーザーも増加することが予想されます。こうしたユーザーに多くの選択肢を与えることが狙いです」(三邉氏)
Dell EMCとNutanixの協業は2013年にさかのぼる。「Dell EMC PowerEdgeサーバ」とNutanixのソフトウェアを組み合わせ、共同検証、共同サポートの体制を整えてXCの販売を開始したのは2014年11月。それ以降、GPUサポートやオールフラッシュ対応など、PowerEdgeサーバのハードウェアを生かすことで、HCIとしての魅力を高めてきた。
PowerEdgeサーバは、グローバルでサーバ出荷台数No.1(*)の実績を持ち、コスト、パフォーマンス、信頼性、安定性、調達のしやすさなど、多数の特徴がある。HCI製品の中でも、信頼と実績のあるハードウェアを使いながら、コストパフォーマンスを高められる選択肢の1つとして、XCは確固たる実績を築いている。
ハイパーバイザーについては、XCの場合、VMware vSphereのESXiに加え、Hyper-V、そしてKVMをベースとしてNutanixが開発したAcropolisハイパーバイザーに対応している。VDI(デスクトップ仮想化)におけるWindowsライセンスのメリットなどもあり、仮想化基盤にHyper-Vを選択するケースは明確に存在しており、今後も増えることが予想される。こうしたニーズに対応できる存在として、XCは位置付けられている。
ハイパーバイザーの観点からDell EMCのHCI製品を位置付けると、次のようになる。
Dell EMCはアプライアンス型のHCI製品として、「VxRail」と「XC」を提供している。VxRailはESXiをハイパーバイザーとして用いるVMware vSphereに最適化されている。一方のXCは、前述の通りESXiに加えて、Hyper-V、Acropolisハイパーバイザーに対応している。
ラックスケールのHCIでは、「VxRack SDDC」と「VxRack FLEX」がある。VxRack SDDCはヴイエムウェア環境に特化している。一方の、VxRack FLEXはVMware vSphereの他、オプションでベアメタルサーバに対応することによりHyper-V、KVMへも対応可能としている。
こうしてDell EMCは、アプライアンス、ラックスケールの双方において、vSphereに最適化した製品と、マルチハイパーバイザー対応の製品を選べるようにしている。
XCは、中小規模のITインフラ基盤、VDI、大規模で高集積な科学演算プラットフォームなど、幅広い用途で利用されているという。
この製品では、管理をシンプルにできることが大きなメリットとなっている。GUIベースの管理ツールからクリック操作だけでHCI基盤の基本的な運用ができる。例えば、重複排除や圧縮、スナップショット作成、レプリケーションなどの操作を数クリックで実行可能だ。
「HCIは新しい技術ということもあり、2017年現在は、誰でも簡単に使えるというほどまでにはなっていません。ただ、そうした中でもXCは、日々のITインフラ運用をシンプルにしたいというニーズに応えられるよう設計されています」(三邉氏)
IT担当者はいない。だが、本格的なメンテナンスやトラブルシューティングはシステムインテグレーターなどに任せる一方、仮想化基盤の利用に関わる部分は自分たちでやりたい――。こうした企業や部署には、採用しやすい製品だ。
XCのマルチハイパーバイザー対応については既に紹介したが、vSphereを使う組織でも、VxRailに比べてXCが利用しやすいケースがある。これは、VxRailとXCの、ストレージアーキテクチャの違いからくる。
VxRailでは、ストレージソフトウェアとして、ヴイエムウェアが提供するvSANを採用している。vSANはvSphere(ESXi)のカーネルに統合されている。このことが、パフォーマンスや機能、全般的なvSphereとの親和性という点で、決定的な優位性を生み出している。
一方、カーネルに統合されているということは、運用上不都合だと認識される場合もある。パッチなどの適用で、vSANに関わる部分のみをアップデートすることはできず、ESXiに対して適用する必要があるからだ。
世界的には、ソフトウェアアップデートを迅速に行っていくことが常識化している。特にHCIでは、「ITインフラを構築から利用へと変革していくこと」がテーマとなっている。クラウドサービスを利用する際に、基盤ソフトウェアの更新をユーザーは意識しないのと同様に、社内で運用するITインフラのソフトウェアアップデートは積極的に実施していくべきだ。これは、ITインフラ運用における情シス部門の意識改革に直結する、重要なトピックでもある。
とはいえ現実には、「特に基盤についてはソフトウェアアップデートを実施したくない」という、保守的な考えの組織がある。Nutanixのストレージソフトウェアの場合、カーネルに統合されておらず、アプリケーションとして動作する。このため、ストレージに関するソフトウェアアップデートだけを実施することが可能だ。
上記を踏まえて、Dell EMCのHCIの中で、XCをどういった基準で選択していけばいいのだろうか。三邉氏は、「ハイパーバイザーの利用実態」と「XCの利用実態の組み合わせ」で選択することを大まかな目安に挙げる。
具体的には、既存の仮想化環境のハイパーバイザーとしてvSphereを採用しているならばVxRailが勧められる。一方、Hyper-Vを採用するならばXCが勧められる。また、vSphereを採用しているとしても、XCの管理に慣れているならばXCを採用することが勧められる。
「ニーズに合わせて、幅広いラインアップを提供できることがDell EMCの何よりの強みです。それぞれの環境に合わせ、運用しやすい基盤を選択していくことで、トータルの管理負荷や運用コストを下げられる上、結果としてデジタルトランスフォーメーションの実践につながります」(三邉氏)
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2017年6月9日