オールフラッシュストレージ製品間の違いを見極めるには、設計を考える必要がある。XtremIOがオールフラッシュの世界でリーダーとなっている理由は、根本からオールフラッシュのための設計となっている点にある。
多数の製品がひしめくオールフラッシュストレージの世界で、既に確固たる地位を築いているのが、インテル® Xeon® プロセッサーを搭載した「Dell EMC XtremIO(以下、XtremIO)」だ。製品名は「エクストリーム アイオー」と読む。「極端に優れたI/O(を提供する製品)」という意味が込められている。
XtremIOは優れた実績を達成し、高い評価を獲得している。具体的には、例えばFortune 100にリストされる世界的大企業の65%以上がXtremIOを採用。また、調査会社ガートナーのソリッドステートアレイ分野における「マジッククアドラント」と呼ばれる評価レポートで、XtremIOはリリースされてから3年連続で「リーダー」に選出されている。
プライマリーストレージ事業本部 アドバイザリーシステムエンジニアの市川基夫氏は、XtremIOの優位性について、「フラッシュのためにゼロから設計された、スケールアウト型ストレージアレイだということにあります」と説明する。すなわち、「スケールアウト・アーキテクチャ」であること、そして「フラッシュを前提とした設計」であることの2点が、他社製品との決定的な違いだという。
まず、スケールアウト・アーキテクチャは、近年におけるIT利用の変化を背景とし、オールフラッシュストレージにおけるニーズが急速に高まっている。
オールフラッシュストレージは当初非常に高価だったため、導入企業は非常に低いレスポンスタイムが求められるデータベースの一部領域のみに利用するといった形で、適用対象を明確に限定していた。だが、SSDの価格が低下するとともに、オールフラッシュストレージのTCO(総所有コスト)低減メリットについての理解が高まるにつれ、VDI(デスクトップ仮想化)、サーバ仮想化基盤、そしてクラウド基盤のストレージへと利用が拡大していった。
VDIやサーバ仮想化、クラウド環境では、大規模化やストレージへのワークロードが変化するケースが多い。ところが、市場に出回っているオールフラッシュストレージ製品のほとんどは、ディスクシェルフを使って容量の拡張はできるものの、ストレージI/Oを処理するコントローラー数を増やせないスケールアップ型アーキテクチャのため、性能増加への要求に対応するのが困難である。
こうした問題に効果的に対応できるのがスケールアウト・アーキテクチャだ。XtremIOは、コントローラー(性能)とディスクユニット(容量)による「ブリック」の単位で構成される。このブリックの数を増やすことで、単一のストレージシステムとしての容量を拡張すると同時に、性能もリニアに向上する。XtremIOは、オールフラッシュストレージでこのスケールアウト・アーキテクチャを備えた数少ない製品だ。
XtremIOから見ると、他社のオールフラッシュストレージは、フラッシュを前提とした設計を施してはいるが、従来型ストレージのアーキテクチャを踏襲しているために、アーキテクチャレベルでフラッシュのさまざまな優位点を最大限に引き出す設計にはなっていない。このことが、長期的な性能の維持で、大きな違いを生み出すという。
具体的にいうとそれは、メタデータの保持方法、RAID実装、ポスト処理のデータ削減処理、ガベージコレクションの実装方法などである。従来型オールフラッシュストレージはこれらのうちいずれかについて従来型の設計を踏襲しているために、導入当初は高い性能を発揮しているように見えても、徐々に不安定となる、一貫した性能を提供できなくなるといった課題に直面する。XtremIOはアーキテクチャレベルでの対応により、これらの課題を解決している。
例えば、データの配置を管理する情報であるメタデータをどこへ置くかで違いが表れる。他社オールフラッシュストレージの場合、一部はコントローラーのメモリ上に置くものの、大部分をフラッシュ(SSD)側に退避させるようになっている。メタデータがフラッシュ上に存在する場合は遅延が発生し、レスポンスにばらつきが出てしまう。
一方のXtremIOでは、全てのメタデータをコントローラーのメモリに配置する。しかもこのメタデータ情報は、ストレージを構成している全てのコントローラーで均等分散され、保持される。従って、全データについて平等なアクセス性能が得られることになる。
RAIDについても、これまでのやり方では性能と容量効率のトレードオフを解消できない。このため、XtremIOでは独自実装「XtremIO Data Protection(XDP)」を採用した。XDPは従来のRAIDよりも広いRAIDストライプ空間で実装され、常に最も空きのあるブロックのストライプに対してフルストライプ書き込みを行うなどの工夫により、データの書き込み・更新時の遅延を最小化するとともに、SSDの寿命を延ばしている。XDPはアレイの容量利用率が高い状況においても、常にRAID1より低いオーバーヘッドでの書き込み処理を実現するだけでなく、RAID5より最大25%高いストレージ容量の使用効率、RAID6以上の高い保護性(ブリック内で最大7本のディスク障害に対応)といった、従来のRAID技術のメリットを全て上回る性能を備えている。
データの重複排除および圧縮は、他社製品では性能影響を与えないようポスト処理を採用しているのが大半だ。ポスト処理は、いったんデータをSSDに書き込んだ後で、事後的にデータ削減処理を行う手法を指す。これでは、余分にストレージ容量が必要であるとともに、ポスト処理およびデータ移動でCPU負荷が掛かり、性能がぶれる要因となってしまう。
対してXtremIOでは、インライン/インメモリでの処理を行う。データをディスクに書き込む前にコントローラー上のメモリでリアルタイムに、重複排除と圧縮を行ってからSSDにデータを保存する。この処理は全てのコントローラーに分散し、CPUを均等に利用するため、一貫した性能が担保できる。
具体的には、ホストからの書き込み要求が64KBだった場合、まず、64KBのデータが8KBごとのデータブロックに分割され、データブロックごとに算出されたハッシュ値からコントローラーのメモリ内でそれぞれ重複するデータが排除される。さらに圧縮処理が行われた後、SSDに書き込まれる。SSD書き込み後は、重複排除によるデータの移動や圧縮などは行われない。これが、フラッシュの耐久性向上、保存データの削減、GB当たりコストの削減につながる。
重複排除と圧縮がどのくらいデータ容量を削減するのか。EMCが実際のユーザー環境で調査したところ、2倍以上削減できたケースが全体の97%以上、3倍以上削減できたケースは77%以上、4倍以上削減できたケースは50%以上となった。VDIのような重複したイメージが多数並ぶ環境においては、10倍以上の削減効果を発揮している。こうした容量効率は、オールフラッシュストレージの価値をさらに高め、用途を広げることにつながっている。
ガベージコレクションへの対応は、オールフラッシュストレージ製品間の違いが最も出やすい部分だ。
オールフラッシュストレージを使い続けていると、SSDのデータブロックは徐々に「歯抜け」状態になる。だがSSDでは、既存データを部分的に修正する際にも直接上書きができず、データは必ず空き領域に書き込まなければならない。このため、連続した空き領域を常に用意しておく必要がある。ガベージコレクションとは、連続した空き領域を作り出すために必要な、保存データを移動するなどの作業のことだ。
ほとんどのオールフラッシュストレージ製品では、SSDの利用効率を高めるため、データの移動や整列をコントローラー側で行っている。アレイのデータ使用容量の増加とともに、この処理は頻繁に行われる。これがコントローラーのCPUに負荷を掛け、性能の不安定化につながる。つまり、ストレージを導入したてのときと、時間が経過したとき(データが埋まってきたとき)とでは性能に大きな違いが出てくることになる。
この点、XtremIOでは、ガベージコレクションにコントローラーを利用せず、SSDに任せるアーキテクチャを実装していることが特長だ。コントローラーがCPUに余計な負荷を掛けてしまうことを避け、ストレージ全体の性能が不安定になることを防いでいるため、利用容量に影響されることなく、常に期待通りの性能を提供し続けることができる。
上記で説明したように、XtremIOでは、記憶媒体としてSSDを利用することを出発点として考え、あらゆる機能を最適化している。これにより、長期にわたって常に一貫した安定性能を発揮するとともに、信頼性、コスト効率を高めている。
性能、信頼性、コスト効率。これらはオールフラッシュストレージ製品の選択において、最も重要な要素だ。全てを高いレベルで達成しているからこそ、XtremIOは高い評価を獲得している。
XtremIOは幅広い用途に使える製品だ。だが、強いて言えば、ニーズとの見合いで「性能と容量をスケールさせていく必要のある場合」に適している。また、企業内の「多様なワークロードを混在させた環境」でも有効だ。VDI環境、サーバ仮想化基盤、データベース環境、ファイルサーバなど、ワークロードの種類を問わず、長期にわたって安定したパフォーマンスを享受できる。
新たな展開としては、新製品「X2」に注目したい。XtremIOでは信頼性確保のためにeMLCを採用してきたが、加えて大容量のMLCにも対応した。X2ではブリック当たり最大72本のSSDを搭載できるが、最小構成がSSD 18本からと、ブリック内でスケールアップさせる構成も可能になった。つまり、今までの通りスケールアウトアーキテクチャも維持しながら、スケールアップにも対応した「Scale Anyway」を実現する。X2ではさらに、コントローラー処理性能およびデータ処理フローの強化によって、パフォーマンスを大幅に向上させた。Scale Anywayに性能向上が加わって、XtremIOの用途はますます広がっていくはずだ。
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2017年6月14日