デジタル化は、ビジネスやサービス、暮らしの中の体験にまで大きな変革をもたらした。イノベーションが従来の常識を次々と変えていく中、これを支える情報テクノロジーもまた大きな進化を遂げている。今、ITの世界でどんな変化が起こりつつあるのか、そして、これからどう変わるのか。日本ヒューレット・パッカード(以下、HPE)でデータセンター・ハイブリッドクラウド製品ビジネスの指揮を執る本田昌和氏に聞いた。
── 私たちは、暮らしやビジネスでさまざまな変化を体験しています。ITの世界では、どのような変化が起こっていますか?
日本ヒューレット・パッカード 本田昌和氏(以下、本田氏) 日々、私たちが体験している変化と情報テクノロジー(IT)の進化は、まさに表裏一体で進んでいます。デジタル化したビジネスも、オンラインで多様なサービスを利用するのも、新しいコミュニケーションのスタイルも、エンターテインメントも全てITの上に成立しています。そこから生まれる膨大なデータの分析と活用が、さらに新しい変化を生み出しています。
ビッグデータ、IoT、ディープラーニングといった切り口で語られるさまざまなイノベーションと、それを支えるITの進化には目覚しいものがあります。次世代のITを知ることで、次のイノベーションや、私たちのビジネスや暮らしの未来が見えてきます。
―― 今、まさに進行しているイノベーションにはどのようなものがありますか?
本田氏 分かりやすい例を挙げると、顔認証やランドマーク識別などの画像認識ソリューションは、今後は8K映像に舞台を移します。現行のフルハイビジョン映像に対して、次世代の8K UHD(Ultra UHD)の画素数はおよそ16倍。つまり、画像認識システムは2017年現在の10数倍もの処理性能が求められます。例えば先進的なクラウドサービスを提供するフリービット様は、こうした変化にいち早く着目し、「インメモリ処理」のためのIaaS(Infrastructure as a Service)環境を構築。パブリッククラウドの性能限界を打ち破る、画期的なサービスを開始されました。
この他、世界最大規模の外国為替事業を展開するSBIリクイディティ・マーケット様では、システムのセットアップや構成変更、運用を自動化する「コンポーザブル・インフラストラクチャ」の構築にいち早く取り組んでいます。2016年の英国EU離脱問題や米国大統領選挙では、予想外の結果にマーケットに激震が走りましたが、このお客さまのシステムはびくともしませんでした。「予測不可能な要求に適応できるシステム」は、決して夢ではないのです。
また、大型の装置に設置したセンサーの情報を収集し、クラウドに送らずその場で分析処理することで予知保全に取り組んでいるお客さまは、「IoT(Internet of Things)とインテリジェントエッジ」の先進事例といえるでしょう。
こうしたチャレンジは、明日「当たり前」になることの始まりなのだと思っています。そして、その次の「当たり前」のためにITは今日も進化しているのです。
―― 今後、ITの進化はどんな方向に進んでいきますか?
本田氏 私は、ITの進化を2つの軸で捉えています。1つは、データの地理的な移動を少なくすること。もう1つは、より高速なデバイスで処理することです。
―― 「データの地理的な移動を少なくする」とは、具合的にどのようなことですか?
本田氏 例えば、センサーデータをデータセンターに移動させず、IoTデバイスがあるその場所(エッジ)で分析できるとしたらどうでしょう。エッジデバイスが高度な処理能力とインテリジェンスを備えると、意思決定や次のアクションへの時間差は限りなくゼロに近づきます。
その一方で、より高度な処理はデータセンターに移動してワークロードごとに最適なITリソースを利用するのが効果的です。AI(Artificial Intelligence:人工知能)・機械学習、高度な解析処理、大規模な集計処理に、それぞれ最高のパフォーマンスを発揮するシステムを使い分けるのです。
例えば、米国貨物運送会社のUPSはさまざまな条件下で配送車両の最短ルートを割り出しています。中国検索エンジン大手のバイドゥは、ライドシェアリングサービス大手のディディ・チューシンとともに自動運転による新しいビジネスモデルを開発し、また、米国金融機関のバンク・オブ・アメリカは完全に自動化された無人店舗を試行しています。データセンターとエッジデバイス、それぞれのコンピュート能力を高めながら上手に分業させることで、革新的なサービスが生まれています。
―― 「高速なデバイスでの処理」についてもお聞かせください。
本田氏 遅延の大きなHDDから高速なSSDへ、さらに高速なメモリ上での処理へという流れはもはや必然です。DIMMスロットに差してストレージ領域として使える不揮発性メモリの規格「NVDIMM」も、間もなく大きなトレンドとなるでしょう。
HPEは、さらにその先の高速化を実現します。2017年5月、HPEは160TBという超巨大な単一メモリ空間を持つ「The Machine」の実証実験に成功しました。The Machineは、不揮発性メモリを中心に置き、システムオンチップが巨大なメモリプールにフォトニクスでアクセスする「メモリ主導型コンピューティング」と呼ばれるアーキテクチャを採用しています。The Machineが、これまでの常識を変える処理性能を提供するようになれば、ITが現在直面している課題は一気に解決に向かうことになります。
―― では、これからのサーバ選定をどのように考えるべきでしょうか?
本田氏 これからのオンプレミス環境は、クラウドと共存し続ける中で、さらにクラウドとシームレスになっていくでしょう。そこで着目すべき点は、「アジリティ(俊敏性)」「セキュリティ」「経済性」という3つだと考えます。
ビジネスの要求に、ITはいかに俊敏に応えるか――。この「アジリティ」というテーマは長きにわたって議論されてきましたが、HPEは「コンポーザブル・インフラストラクチャ」という明快な解答を示しました。
アーキテクチャーに対する全く新しいアプローチであるコンポーザブル・インフラ製品「HPE Synergy」は、パブリッククラウドで体感しているような自動化されたサービスをオンプレミスで実現します。しかも「仮想と物理が混在した環境」で、リソースの払い出し、返却、次の要求への再割り当てを、自由にかつ迅速に行えるのです。物理リソースの配備や役割変更を「分単位」で実現するのですから、これはまさに画期的です。
オンプレミス環境では、リソースが足りなくなると機器を追加導入しなければなりません。調達から利用開始までリードタイムを要するのが難点でした。これを解決するのが、HPE Synergyを従量制・月額料金で提供する「HPE フレキシブルキャパシティ」です。予備のリソースを無償で用意しておき、必要になった時点で即座にこれを利用できるのです。いつ使うか分からないリソースに先行投資せずに済むので、「経済性」という観点で非常に大きなメリットを提供できます。
HPE SynergyとHPE フレキシブルキャパシティを組み合わせることで、お客さまは「クラウドライクに使えるオンプレミス環境」をリーズナブルに手に入れることができます。
―― 「セキュリティ」についてはいかがでしょうか?
本田氏 私は、サーバの「セキュリティ」を全面的に見直す時期に来ていると考えています。セキュリティリスクは複雑化・巧妙化しているだけでなく、ハードウェアそのものに及ぶほど深化しているからです。背景には、ファームウェアの大規模化・高機能化があります。
アプリケーションやOSの脆弱(ぜいじゃく)性を突くさまざまな攻撃に対し、ネットワーク経路上の多層的な防御で備えている企業は多いはずです。しかし、最新の調査では、ハードウェアのコンポーネントを管理するファームウェアの脆弱性やセキュリティホールが指摘されています。サーバのBIOSやUEFIも例外ではありません。脅威検知システムなどの従来のセキュリティ対策ではサーバを守りきれないことが、潜在的なリスクを大きくしています。
HPEではこの問題にいち早く着目し、具体的かつ包括的な対策を取ってきました。サーバのBIOS/UEFIや管理プロセッサはHPE自社開発のものであり、サードパーティーのコードは1つもありません。また、RAIDコントローラーやHDD・SSD、NICといったコンポーネントのファームウェアに対しては、HPEの厳格な検証プロセスを経て認証されたものだけがサーバに実装されます。
「サーバはどれも同じ」という話を耳にすることがありますが、私に言わせれば「仕様は同じでも、中身は違う」となります。特に「サーバセキュリティ」「ハードウェアレベルのセキュリティ機能」に関しては、RFP(要件定義書)の項目として記載すべきだろうと考えています。
―― HPEは、x86サーバの業界標準をつくり続けてきました。
本田氏 HPE ProLiantサーバーの歴史は1989年にまでさかのぼります。HPEは「x86サーバを発明した会社」なのです。HPE ProLiantはx86サーバ市場で21年連続世界シェアNo.1(*)を獲得しており、この分野における実績は圧倒的です。私たちはx86アーキテクチャの普及だけでなく、業界標準テクノロジーとして広く活用されている仕様の策定にもリーダーシップを発揮してきました。
*IDC Worldwide Quarterly Server Tracker 2016Q4
HPE ProLiant独自の進化としては、サーバ管理・リモートコンソール機能をシリコンチップ化した「iLO(Integrated Lights-Out)」がユニークだと思っています。iLOは第4世代まで進化を遂げており、セットアップの自動化、エージェント不要のサーバ監視、異常の自動通報、ログ記録・管理までを1チップで提供できるようになりました。次世代iLOでは、セキュリティ機能も統合される計画です。
HPEでは、「新世代 HPE ProLiantサーバー」の発表を兼ねて『HPE サーバーフォーラム 2017〜新時代のコンピュート エクスペリエンス〜』を開催します。世界最先端のテクノロジーとソリューションを、最先端のお客さまによるご講演とともに体感していただく絶好の機会となります。皆さまのご来場をお待ちしています。
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2017年7月30日