Webサイト構築ソフトウェアの定番「WordPress」をパブリッククラウドの仮想マシンとして提供――。このユニークなビジネスモデルで大きな成功を収めているのが、プライム・ストラテジーだ。高速WordPress実行環境「KUSANAGI」で構築されたWebサイトは既に200以上。読売新聞の「yomiDr.(ヨミドクター)」も、その1つだ。
オープンソースソフトウェア(OSS)のコンテンツ管理システム(Contents Management System:CMS)として既に業界標準の地位を築いている「WordPress」――。そのWordPress実行環境を仮想マシンイメージとしてパブリッククラウドで提供しているのが「草薙沙耶(Kusanagi Saya)」のマスコットキャラクターで知られているプライム・ストラテジーだ。
「KUSANAGI」と名付けられた同社のWordPress仮想マシンの最大の特徴は、最高のパフォーマンスが出るようにチューニングされたWordPress本体に、OS、ミドルウェア、アプリケーションを組み合わせた状態で提供されていること。KUSANAGIには同社の高い技術力やノウハウが詰め込まれており「通常の10〜15倍のパフォーマンス」(代表取締役の中村けん牛氏)を容易に引き出せるので、システム構築の経験が少ない人でもハイトランザクションに耐えられるWebサイトを容易に立ち上げることができる。
インターネットの世界に特有の「フリーミアム」をメインのビジネスモデルとしていることも、プライム・ストラテジーのユニークな点だ。すなわち、パブリッククラウドでWordPress仮想マシンを入手して稼働させるだけなら、クラウドの利用料金を別にすれば、ライセンスはフリー(無料)。「90%以上がフリーミアムのお客さまです。弊社は、インテグレーションとマネージドサービスで収益を得ています」と中村氏は説明する。
中村氏がWordPress仮想マシンをビジネスの核に選んだ背景には、WordPressが企業Webサイトの構築用ツールとして最も広く利用されている、という事実があった。「国内では、CMSの80%以上がWordPressという状況です」と、中村氏。世界レベルでも、シェアは58%に達するという。
動作環境となるパブリッククラウドを選ぶにあたって中村氏がもう1つ重視したのは、世界的にシェアが高く、セキュアで使い勝手に優れたものを選ぶことだった。これらの条件を満たすパブリッククラウドとして、中村氏は、世界各地にデータセンターを開設し、充実したセキュリティ対策を実施済みであり、高度な自動化の仕組みが備わっているMicrosoft Azureを選択。2015年7月にサービスを開始した。
実際に、Azure上でKUSANAGIを稼働させるまでのステップは非常に簡単だ。「Azure Marketplace」の画面から「KUSANAGI for Microsoft Azure」を選んで「作成」ボタンをクリックすると、仮想マシンのデプロイがスタートする(画面1)。その後、仮想マシンとKUSANAGIの初期設定を済ませれば、ユーザーのニーズに合ったWordPress仮想マシンがすぐに動き始めるのである。
KUSANAGIの仮想マシンイメージに含まれているのは、WordPress、CentOS 7、Nginx、Apache、HHVM、PHP、MariaDB Galera Serverの各コンポーネント。Azure Marketplaceには最新版を組み合わせたイメージが登録済みなので、ユーザー側でバージョンを気にする必要はない。Azure仮想マシンの仕様としては「A2、またはD1インスタンス以上(メモリ3.5GB以上)」が推奨されている。
現在、プライム・ストラテジーは、複数のパブリッククラウド上でKUSANAGIを提供している。「当社のマネージドサービスをご利用のお客さまのうち、Azureをご採用されるお客さまは約4割です」と、中村氏。2016年2月に日本マイクロソフトがAzureとMicrosoft Office 365で「クラウドセキュリティゴールドマーク」を取得したことによって、大手企業からの受注や“エグゼクティブ案件”が増えているのではないか、と同社は見ている。
その結果、導入事例も豊富だ。中村氏によると、KUSANAGI for Microsoft Azureを利用している企業・団体のWebサイトは既に200以上とのこと。最近の大型導入事例としては、読売新聞の医療・健康・介護情報サイト「yomiDr.(ヨミドクター)」がある(図1)。
読売新聞の案件は旧ポータルサイトのリニューアルとして企画されたもので、「負荷対策」「災害対策」「運用保守費用の削減」「コンテンツ更新のしやすさ」「スマートフォン対応」などを狙ったもの。KUSANAGI for Microsoft Azureの導入によってこれらの課題は完全にクリアすることができ、月間3000万PVに耐えられる業界最大級のWebサイトが完成した。
2017年内には、さらに40件程度の導入事例が同社Webサイトやパンフレットで公開される見通しだ。
プライム・ストラテジーと日本マイクロソフトの関係が始まったのは、2010年ごろのこと。きっかけは、WordPressのコミュニティーでの活動だったという。「イベント会場でブースが隣り合わせになることも多く、そのうちに、日本マイクロソフトのエバンジェリストの方と親しく話すようになりました」と中村氏は振り返る。その関係がやがてセミナーの共同開催といったマーケティング協力へと発展し、日本マイクロソフトのISV(独立系ソフトウェアベンダー)パートナーおよびCSP(クラウドソリューションプロバイダー)パートナーとして活動する今へとつながっているのである。
そうした関係を通じて、中村氏は「マイクロソフトはソリューションの会社」という思いを強くしたという。ただ単にインフラとなる製品/サービスを提供するだけのITベンダーと違って、最適なソリューションを顧客に提供することを企業ミッションとするMicrosoftには、パートナー企業と一緒にビジネスを作っていく姿勢が感じられるというのだ。
現在の両社の協業の枠組みは、営業、マーケティング、技術を全てカバーするものになっている。
まず、営業面ではMicrosoftがリード管理とテレマーケティングを受け持ち、プライム・ストラテジーは単独またはMicrosoft同行で見込み客を訪問するというのが通常のスタイル。マーケティング活動の核となっているのは、共催のセミナーだ。
両社の関係がWordPressのコミュニティー活動から始まったという経緯もあって、技術面での協力は日本マイクロソフトのエバンジェリストなどとの交流が主になっている。「イベントでは、エバンジェリストの方々と一緒に登壇させていただく機会が増えました。また、技術面での課題を抱えているときなど、一緒に解決に向けて取り組んでいただいたり、詳しいことを知っている方を紹介していただいたり、ということもあります」と、中村氏。このような技術面での協力体制によって、AzureでのKUSANAGIのハイパフォーマンスは実現されているのである。
WordPress仮想マシンイメージをパブリッククラウドで提供するビジネスが順調に伸びていることを受けて、プライム・ストラテジーはAzure上で提供するサービスの内容をさらに拡大していこうと考えている。
例えば、KUSANAGIとMicrosoft Office 365やMicrosoft Dynamics 365を連携させたり、Microsoft Flow経由で各種Webサービスとやりとりしたり、という構想だ――。「マイクロソフト製品を中心としたAPI連携をAzure上で実現する、というのが1つの目標です」と、中村氏。既に、同社のイントラネットではKUSANAGIとOffice 365を連携させたシステムが稼働しているとのことなので、技術的には実現までにそう長い期間は必要としないだろう(図2)。
中村氏が今もっとも頭を悩ませているのは、そうした新しいものに取り組むための体制とマンパワーをどう確保するかということだ。「KUSANAGI for Microsoft Azureのメンテナンスと機能拡張をするだけで精いっぱいですね」(中村氏)という現在の状況から脱却するには現在の延長線の上でカイゼンを図るだけでは難しい、というのがプライム・ストラテジーの考えだ。
「弊社の強みは、WordPressに関する豊富な知見と経験を持ち、インフラ、ミドルウェア、アプリケーション、フロントエンドまでの全てのレイヤーでベストなチューニングとシステム構築を独自でできることです」と、胸を張る中村氏。協業を通じてマイクロソフトから与えられている多くの機会に応えるべく、この強みにさらに磨きをかけようと考えている。
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2017年7月29日