2017年9月18日から米ラスベガスで3日間行われたベリタステクノロジーズの年次イベント「Veritas Vision 2017」。デジタルトランスフォーメーションのトレンドが進展し、データ活用の在り方を見直す企業が大幅に増えている中、課題解決のあらゆる手立てが紹介された。本稿では、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の製品/技術担当である木島亮氏が、イベントの模様とポイントを徹底レポートする。
ベリタステクノロジーズ(以下、ベリタス)による、年次イベント「Veritas Vision 2017」が米ラスベガスで、9月18日から3日間行われた。4つのテーマ「マルチクラウド管理」「将来性のあるデータ保護」「SDS(Software-Defined Storage)」「コンプライアンス対策」で、64のブレークアウトセッション、48のハンズオンラボが行われた。2000人以上の参加があった。
私はCTCで製品/技術担当をしている。本レポートでは、ブレークアウトセッションなどから特筆するべき以下の3点を抜粋し、少しテクニカルな内容も含めて分かりやすく伝えたいと思う。
「360度データ管理」は昨年のVeritas Visionで発表されたNetBackupを中心とした、データ保護/可視化/コピーデータ管理/事業継続を統合する製品戦略だ。今年の発表では、より洗練された形に進化している。6つのアプローチで情報の力を引き出す「1つのプラットフォーム」として完成してきている。
進化は新製品の投入/製品間の連係強化にとどまらない。図の中心にある「インテリジェント・コア」がそれだ。ベリタスは、機械学習の活用、UX(ユーザー体験)の改善を行い、インテリジェンスを全ての製品/クラウドサービスに組み込み、管理対象の検出/データの分類/ポリシーベースの運用自動化を目指している。
参考リンク:Accelerate your digital business transformation with 360 Data Management(SlideShare)
6つのアプローチと対応する製品/サービスは下記の通りだ。各製品がREST APIで連係/統合されたデータ管理プラットフォームとなる。バックアップやSDSを単体で取り扱う他社ベンダーにはない付加価値を提供できる。
アプローチ | ベリタス製品/クラウドサービス |
---|---|
Data Visibility(データ可視化) | Infomation Map |
Compliance Readiness(コンプライアンス対応) | Enterprise Vault、Enterprise Vault.cloud、Data Insight、eDiscovery Platform |
Business Continuity(ビジネス継続) | InfoScale、Resiliency Platform |
Data Protection(データ保護) | NetBackup、NetBackup Appliance、CloudPoint、Velocity、Backup Exec |
Data Portability(データ可搬性) | CloudMobility |
Storage Optimization(ストレージ最適化) | Access、Access Appliance、HyperScale for OpenStack、HyperScale for Container、Cloud Storage |
ここでは「データ可視化」「ビジネス継続」「インテリジェント・コア」の発表について、下記に簡単にまとめる。「データ保護」「ストレージ最適化(SDS)」については後半で紹介する。
ベリタスの調査結果によると企業内のデータの52%をダークデータ(※)が占めるという。さらに残りの48%のうち33%が不要なデータで、必要なものは残りの15%だという。本当に必要なデータをいかに分類するか? Information Mapの出番である。今回、23のコネクタが追加され、クラウドストレージやオンプレミスのストレージ、メールサーバ/DBサーバ、それにベリタス製品のデータを可視化できるようになった。これにより、GDPR(General Data Protection Regulation:EU一般データ保護規則)などの法規制を順守するためにデータを可視化し、移動や削除の判断するための強力なツールとなった。
※保持していることを認識できていないデータ(参考リンク:隠れたデータを明らかにする)
2017年8月にリリースされた、Veritas Resiliency Platform(VRP)3.0にて、Microsoft Azure(以下、Azure)に対応し、VMware/Hyper-VからAmazon Web Services(以下、AWS)/Azureへの双方向マイグレーションが可能になった。
余談だが、この新バージョンの実証検証を国内先行でCTCが実施し、VMware-AWS間の動作確認が完了している。バージョンも3.0となり、動作も安定している。DR切り替えやクラウド移行というと、オンプレミスからクラウドへの片方向マイグレーションを想像されるかもしれない。VRPは「双方向で移行可能なシームレスなハイブリッドクラウド」を実現できる。クラウドの利用用途の常識も変わりつつある。
なお、2017年4月にリリースされた「CloudMobility」はクラウド移行のツールだが、新製品ではなく、クラウド移行用として分かりやすく作ったVRPの新たなライセンスと理解すると良いだろう。今後、VRPはパブリッククラウド間のマイグレーションや、マルチサイト対応が予定されている。
2017年8月に発表された「Integrated Classification Engine」はインテリジェンスの中核を担う。これはデータの中身をスキャンし、タグ付け、可視化する技術である。クレジットカードやパスポート番号などの個人識別情報を認識するパターンが100以上、規制対応のポリシーも60種類以上が搭載されている。本技術は、まずEnterprise Vault、Data Insightに取り込まれている。その他製品、Access、NetBackupなどには2018年以降に取り込まれる予定だ。
参考リンク:Exploring the Benefits of an Integrated Classification Engine: Lessons in Eliminating Dark Data(SlideShare)
Veritas Visionの初日1日を使用し、「NetBackup Forum」というNetBackupに特化したセッションが行われた。そこでは、NetBackupの各コンポーネントのPM(プロダクトマネジャー)20名以上が会場のテーブルにつき、自由に質問や意見交換が行える時間があり、私からの数点の質問にも答えていただいた。参加者の意見を真剣にメモするPMの姿が多数見られた。
NetBackup8.1が2017年9月26日にリリースされた。豊富な追加機能ばかりに目が行きそうだが、よりアジャイル開発にシフトしていることにも着目したい。新しいワークロード(※)やクラウドへの対応は、バージョンアップとは非同期に「アドオン」にて行われる予定だ。機能追加にフォーカスしたバージョンアップも少なくとも年に2回行われる。また、ベータプログラムの継続や、Customer and Partner Engagement Program(CPEP)の発足により、顧客とパートナーは開発に対して積極的な役割を担えるようになる。
※「ワークロード」という言葉がピンと来ない方は、「アプリケーションの種類/データの種類」と理解して差し支えないだろう
※一部、バージョン8.1リリース後のアドオンで対応予定
参考リンク:Deep Dive: a technical insider's view of NetBackup 8.1 and NetBackup Appliances(SlideShare)
今回のアップデートでモダンなワークロードへの対応が一気に進んだ。だが単に対応する従来のアプリケーションエージェントが増えたのではない。それぞれのワークロードに適した実装が行われている。
「Parallel Streaming」機能により、HadoopやHCIを構成する複数ノードから、エージェントレスで並列に複数ストリームでバックアップすることが可能になる。従来の単体のエージェントによるバックアップと比較して非常に高速化される。アプリケーションベンダーがプラグインを開発することも可能で、今後の多様なワークロードに追随できるアーキテクチャとなっている。
参考リンク:Protecting Big Data Environments Using NetBackup(SlideShare)
また、新製品「Cloud Point」が2017年8月にリリースされた。アプリケーションの整合性を確保した上で、IaaS(Amazon Web Services、Microsoft Azureなど)、ストレージ(HPE、日立製作所など)のスナップショットを統合管理する製品である。今回、新たにSaaS、Google Cloud、Nutanixに対応することが発表された。さらに、NetBackupと連係し、スケジュール/保持期限/インデックスの一元管理が可能になる。
参考リンク:Stop compromising your data in the cloud with Veritas CloudPoint (SlideShare)
NetBacukup Applianceのアップデートに話を移そう。物理/仮想アプライアンス共に最大容量が拡張された。特に仮想アプライアンスの利用が本格的に進むことになるだろう。また、ハイエンドモデルの後継「NetBackup Appliance 5340」がリリースされた。
そして、NetBackup Applianceの新機能が「Universal Share」である。バックアップAPIがあるワークロードはエージェントレスで直接、NetBackup Applianceの重複排除ストレージ領域(MSDP)にバックアップデータを書き込むことができる。バックアップAPIがないDBでも、NFS/CIFSでダンプファイルを書き込むことが可能だ。共に高い重複排除率が期待できる。
参考リンク:Deep Dive: What's New in NetBackup Appliances 3.1(SlideShare)
さらに、2018年4〜6月にNetBackupの次期バージョンアップが予定されている。そこでの注目機能が、新しいRBAC(役割ベースアクセス管理)と新しいWebユーザーインタフェースである。機械学習の技術を活用し、バックアップの成功率が向上するように、設定のリコメンデーションが行われるようになるという。また、UX(ユーザー体験)の改良にも積極的であり、運用コストの削減が期待できるという。
今どきのインタフェースの新興ベンダー製品に飛びつかなかった皆さま、正解である。今後は、見た目と内面を兼ね備えたNetBackupになる。コアのテクノロジーの歴史と実績と、それを提供/サポートしている実績あるパートナーと、インテリジェンスを兼ね備えたユーザーインタフェース……。リリースまで、あと半年の辛抱だ。
ベリタスは1980年終盤のベリタスソフトウェア時代からSDSの会社であると言っても過言ではない。Veritas Volume Manager/File Systemは商用UNIXにデフォルトで搭載され、UNIXが堅牢であるという常識を作った。また、Windowsのディスク管理機能やバックアップ機能も元はベリタスが提供したものである……脱線はこれくらいにして話を戻そう。
ベリタスは、今度はオンプレミス環境や仮想化環境とは異なる、“クセ”のあるパブリッククラウドやOpenStack環境を変えてきている。ベリタスのSDSは単なる「ソフトウェア製のデータ保管先」ではなく、多くの付加価値がある。それらの一部を発表から抜粋して見てみよう。
ストレージ管理とクラスタ機能を提供するInfoScale(旧名称:Storage Foundation[VxVM、VxFS]/VCS)はAWSへの対応が進んでいる。InfoScaleのFSS(Flexible Storage Sharing)機能で、EC2インスタンス間で仮想的な共有ディスクを作ることができる。そして、VCSのAWSIPエージェントは、AWSの外部アクセス用IP(Elastic IP)を切り替えることができる。これにより、オンプレミス環境の可用性を担保したまま、アプリケーションをクラウド上に移行できる。
参考リンク:Cloud Bursting: Leveraging the Cloud to Maintain App Performance during Peak Times and Seasons(SlideShare)
続いて、HyperScaleはOpenStack用データ基盤である。Horizonから統合管理でき、可用性、データ保護機能も併せ持っている。コンピュートプレーンとデータプレーンで構成されているアーキテクチャが特長的だ。ハンズオンに参加し、インスタンスのQoS変更のリアルタイム反映、コンピュートノード障害時のインスタンス切り替え、NetBackupと連係したインスタンスのバックアップ&リストアの動作を確認することができた。
参考リンク:Rethinking data protection for open stack and container workloads(SlideShare)
そして、Veritas AccessはスケールアウトNASを構築するSDSである。クラウドストレージと階層化ボリュームを構成でき、NetBackup/Enterprise Vaultからの長期間データの保存先に適している。OpenStack連係や、Infomation Mapによるデータ可視化も可能だ。さらに、物理アプライアンスでの提供も開始される。
参考リンク:Test Drive: Experience Single-Click Command with the Veritas Access User Interface(SlideShare)
また、「Veritas Cloud Storage」が新しく発表された。SDSのオブジェクトストレージでMQTT、COAPなどのプロトコルにも対応する。ワークフロー機能があり、Raspberry Piを使用した画像認識のデモが行われた。GAは2017年12月。現在、デモプログラムが開始している。
参考リンク:Introducing Veritas Cloud Storage: massively scalable data management (SlideShare)
新生ベリタスが誕生してからの2年間の進化が著しい。実績豊富な製品を機能強化しながら、新製品の投入、製品間連係を深め、付加価値を作りだす。これこそがイノベーション創出だ。CEO Bill Coleman氏、最高製品責任者 Mike Palmer氏の2人の存在が大きいだろう。Bill氏によると、多数のユーザーやパートナーからフィードバックをもらい、スタートアップ精神で、日々開発を行っているとのことだ。特に「CloudPoint」については「必要性を議論してから製品リリースまで5カ月で完遂した」とtheCUBEのインタビューで話していた。Bill氏は、イベント初日のジャパンメンバーの会合にも顔を出していただき、パートナー想いの一面も見せた。
今回もかなり技術的に中身の詰まったイベントだった。ベリタスの戦略/製品を学ぶことは技術者にとって醍醐味である。トレンドな周辺技術を学びながら、最新技術に触れることができるからだ。イベント実施後、さっそく多数の資料が公開されている。本記事末の『「Veritas Vision2017」リンク集』を参照してほしい。
次回のVeritas Visionは2018年11月に予定されている。9月から時期をずらしてきているところから、大きな発表が意図されているのではないか?と勘ぐらずにはいられない。次回も非常に楽しみだ。
※本レポートは掲載時点(2017年10月24日)の情報であり、最新のものとは異なる場合がある。あらかじめご了承いただきたい
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提供:伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2017年11月24日
分散したプラットフォーム、またオンプレミスの多様な環境を前に、ベストなバックアップ製品を模索している企業は多い。決め手となるキーワードは、「自動化」だ。企業規模を選ばないバックアップ/リストアの効率運用に迫る。