第49回 現場で学んだ知識をコンパスに、“面白いこと駆動”でキャリアを運べ――ITで物流業界を変える「オープンロジ」のエンジニアマイナビ転職×@IT自分戦略研究所 「キャリアアップ 転職体験談」

「転職には興味があるが、自分のスキルの生かし方が分からない」「自分にはどんなキャリアチェンジの可能性があるのだろうか?」――読者の悩みに応えるべく、さまざまな業種・職種への転職を成功させたITエンジニアたちにインタビューを行った。あなたのキャリアプランニングに、ぜひ役立ててほしい。

» 2017年11月01日 10時00分 公開
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 何か面白いことはないか?――これは、大学院を含めて3年間タンパク質の研究をしていたという丸井弘嗣さんが就活時に考えたことだ。

 多くの卒業生が食品系、化学系に向かう“バイオ系”の学部に在籍していた丸井さんは、2008年にバイオ系とは離れた“エンジニア”の道に向かう。社会人になったあとも時代の波を受けつつ、現在は物流をITで変えることを目的とした「オープンロジ」のエンジニアとして活躍している。

 常に面白いことがあると信じて新たな道を行く。丸井さんがこれまで歩んできた道、そしてその先に何があるかを聞いてみた。


【転職者プロフィール】
丸井弘嗣さん(34歳)

オープンロジ エンジニア(2015年1月入社)

【転職前】
大手IT企業で、会計システムの集計・照会機能の開発、保守に携わる

【転職後】
出荷作業や在庫管理などの物流業務をアウトソーシングしたい主に中小規模のEC事業者と、その物流業務を請け負いたい物流倉庫会社をつなぐプラットフォームを運営するオープンロジで、システム開発に携わる

畑違いの「エンジニア」へ

 丸井さんはもともと、物質電子化学を専攻する学生だった。

 2000年代は日本国内が「バイオ人材」を増やそうと力を入れ始めた時期で、丸井さんも大学院に進学、本来であれば研究者になるはずのレールに乗っていた。しかし、就職先として受け皿となるはずのバイオ系企業の魅力的なポストはほとんどなかったという。そのため丸井さんはバイオ系にこだわるのを辞め、創業間もないベンチャー企業への就職という選択をした。

 その理由は「面白そうな、楽しそうなイメージがあったから」とのこと。

 「両親が公務員で親戚も公務員が多かったので、逆に安定に憧れていなかったのだと思います。仕事に限らず、ちょっと人と違う選択肢を選ぶことが多いですね。冒険したい、というわけではないですが」

 待遇や規模にはあまりこだわらず、「楽しそうか」を判断基準に丸井さんが選んだのは、製造業の業務改善をITでサポートする会社だった。新卒1年目の丸井さんは、金型を製作している現場に常駐し、業務を見て「どのようにシステム化すれば良いのか」を検討する研修に入った。

 ところが、入社から間もない時期に大きな事件の余波が来た――世界的な不況をもたらしたサブプライム住宅ローンの焦げ付き、いわゆる「リーマンショック」だ。会社の業績は決して悪くなかったが、この影響を受けて民事再生手続きに陥ってしまう。丸井さんはそこで最初の転職を決断した。

 「実はその後、希望退職者の募集を行ったようですが、私はその前に辞めてしまいました。退職金はもらえませんでしたが、施策が行われるのを待ってタイミングを逃すよりは、思ったときに動く方が良いと思ったので」

実務経験なしでも、半年の研修で“モノ”にしてくれるって?

 転職先として選んだのは、ERPパッケージを提供している大手IT企業A社だ。転職のために情報を集めていると、多くの転職サイトでA社の名前が出てきた。しかも「これまでの経験は問わない(エンジニア未経験可)」という採用プログラムを実施していたことが、丸井さんの興味を引いた。

 前職では実務に入る前に転職となったため、その時点での丸井さんには、プログラミングやシステムエンジニアリングの実務経験がなかった。

 「趣味レベルでExcelのVBAなどはやっていましたが、プログラミング経験はほぼゼロ。でもA社では、半年間の研修期間の後に正式採用されるので実務未経験者でもエンジニアとして採用されるチャンスがあるという話でした」

 丸井さんは学生のころからPCに触れていたこともあり、プログラミングを「楽しい」と感じていた。さらに前職の1年間で、現場と会話しながらさまざまな問題解決をイメージしていたことも幸いした。採用プログラムはかなりの倍率だったそうだが、半年の研修を無事に修了し、採用が決定した。

寄らば大樹の陰、ではなく……

 A社に正式に採用された丸井さんは、同社の会計システムの月次締め処理部分を担当することになった。会計システムの要ともいえる部分だ。この開発から保守までが丸井さんの担当範囲だ。

 大きなシステムの一部分であるものの、パッケージを新たに導入する企業や既存企業から挙がる数多くの要望に対し、共通的に解決できるポイントを探り、開発を行う――丸井さんはこの業務に面白さを感じていた。

 「大きなシステムなので、全てを作り出すことはないけれど、担当範囲で問題を見つけ、開発をすることで解決へ導くという流れを体験できました。この開発は楽しかったし、今の仕事にも生きています」と述べる。

 しかし、やはり「部分」であることは否めない。

 「A社のERPシステムは規模がとても大きいので、携わることができる範囲はどうしても一部分のみ。もう少し全体が見えるようなこともやってみたいと思うようになりました」と丸井さんは振り返る。

 全体像が見える仕事、自分の力で会社や事業を拡大させているという実感が欲しい――少しずつ、そんな思いが丸井さんの頭の中を占めるようになってきた。大きなシステムのイチ構成員ではなく、会社の方向を考えるところからやりたい。

 「もっと裁量の幅が広い仕事をしてみたい。そう思ったのが、2回目の転職のきっかけでした」

 もちろん、A社で新たなプロジェクトを自らが立ち上げるという選択肢もあったはずだ。実際、丸井さんは同社での最後の1年間、新規プロジェクトに携わり、システム刷新にイチから参画するというチャンスに恵まれた。それでも、頭の中の思いは転職に向かう。

 「A社は既に大きな、立派な企業です。でも私はどちらかというと、会社がゼロから成長するところで、自分も成長したいと思いました」

 エンジニアとしてスキル、経験を積むことは重要だ。丸井さんはそれを「せっかくならばスタートアップで」体験したいと考えた。それが1番“面白そう”だと思ったからだ。

 「A社は楽しかった。そこで働き続けるのも選択肢の1つでしたが、技術の力を使って、何かを変えること、何より“面白い”ことをしたかったんです」

エンジニアとして現場の近くへ、物流の最前線へ

 現在、丸井さんは、物流をITの力で変えるべく、出荷作業や在庫管理などの物流業務を発注したい事業者と物流業務を請け負いたい倉庫会社をつなぐプラットフォームを運営するスタートアップ企業、オープンロジでエンジニアとして働いている。同社のサービスはオンライン上で完結でき、APIを使ってシステム連携が可能なため、多くの中小規模のEC事業者などに活用されている。

 オープンロジとの出会いは、代表の伊藤さんとの「気楽な打ち合わせ」だったという。「取りあえず話を聞いてみよう」と軽い気持ちでシェアオフィスを訪問した丸井さんは、立ち上げたばかりのサービスのビジネスモデルと、物流というレガシーな領域を、ITを使って効率化するという挑戦に興味を引かれた。会社にはまだエンジニアがおらず、サービス自体もプロトタイピングに近いようなソースコードのまま運用されているような段階だった。

 「0」から「1」を創るという点にやりがいを感じた。それが入社の決め手になった。

 オープンロジのメンバーとなった直後から、ビジネス領域である「倉庫」とも深い付き合いをすることになる。システムを使っているのは現場だ。ならばエンジニアは現場を知ることで、現場に合ったシステムを作り出せると考えたからだ。

 「メールやチャットではダメで、現場に足を運んで、直接要望を聞いたり、システムを触ってみたりして初めて分かることがいっぱいあります。そこから業務を改善したり、新しい価値を提供する機能の開発につながったりすることもあります」

 思いついたらフラリと現場に行く。現場で思いついたことをその場で開発する。このような柔軟な動き方ができることがスタートアップならではで、楽しく、幸せだと丸井さんは言う。

 「こういう働き方はいいなあと思います。新しい機能を作ると問題が起きることがありますが、『じゃあ現場に行こう!』と言えますから」

大企業からスタートアップへ――家族の反応は?

 オープンロジへの転職は、大規模システムを擁する大企業から、数名で立ち上げたスタートアップへという「非安定」路線のものだった。もちろん「給与は下がった」という。しかも、転職のタイミングで、丸井さんには家族が1人増えようとしていた。

 しかし、転職することについて家族は、「あなたが楽しそうならばいい」と言ってくれたそうだ。

 物流は今、激動の時代にある。実は奥さまは貿易事務の仕事をしていて、転職前から物流絡みの話を聞く機会が多かったそうだ。それもオープンロジを選んだ理由の1つだと丸井さんは言う。

 「転職して、いろいろなことが自分ごとになりました。通販で買った荷物が家に届いたら、それがどんな経路で倉庫から自宅に届くかを考えるし、あらゆることが仕事に結び付くようになりました。物流は、今1番“面白い”分野だと思います」

 現在、オープンロジには15人程度のエンジニアがおり、できるエンジニアも次々と入社している。丸井さんは既に古株的存在になっているが、彼らに刺激を受けることも“楽しい”と言う。

 今後オープンロジが安定期に入り、1人では把握できないぐらい規模が大きくなったとき、若手エンジニアが「全体の一部ではなく、裁量の大きな仕事をしたい」と、かつての丸井さんと同じことを考えたら、どう対応するのだろうか。

 「企業が安定期に入ったときでも、新しいことに挑戦できるという社風は維持していきたいです。それでも満足できなくなってしまったなら、会社から出て、新たな道を歩むことも歓迎です。新しい場所で新しいビジネスを作って、オープンロジと一緒に働いてくれるなら、うれしいじゃないですか。早く、そういう“悩む”フェーズになるといいですね」

 今1番面白いこと、それは「子育て」だという。

 3歳になった男の子の子育ては「予測ができなくて楽しい」と丸井さんは述べる。プライベートと仕事を行ったり来たりする毎日を、家族みんなで楽しんでいるという。これも、転職して前職より自由な働き方ができるようになったからこそだ。

 「人生の最後に、家族や友人に『楽しんで生きた人だったね』と言ってもらえたらうれしいです」

採用を担当した、CTO 五十嵐正人さんに聞く、丸井さんの評価ポイント

 当時拠点としていた渋谷のコワーキングスペースに初めて話を聞きにきてくれたのが、丸井さんでした。Web開発に関しては未経験だったものの、Javaをベースとした実務経験があり、人柄も誠実で、何より「未整備だからこそ、チャレンジしたい」という強い意欲を評価し仲間になってもらいました。

 入社後の活躍は、開発業務にとどまらず、倉庫現場にも足しげく通い、全方位でサービスを支えてくれています。

 「会社の成長も大事だが、そのために今の利用者を犠牲にするようなことはしたくない」と彼は言います。彼がいなかったら今のオープンロジはなかったと言っても過言ではありません。

 会社が成長するに従い、出てくる課題もどんどん大きくなってきていますが、徐々に頼もしい仲間も増えてきているので、今後もエンジニアのロールモデルとして活躍してくれることを期待しています。


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提供:株式会社マイナビ
アイティメディア営業企画/制作:@IT自分戦略研究所 編集部/掲載内容有効期限:2017年11月30日

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