リクルートライフスタイルとリクルートペイメントは、AirレジやAirペイなどのサービスを通じて、会計や決済処理にまつわるあらゆる煩わしさをなくし、ひいてはキャッシュレス社会の到来を支援したいと考えている。
「リクルート」と聞いて真っ先に思い浮かぶイメージは何だろうか? 転職や人材派遣だったり、ホットペッパーグルメをはじめとする身近なサービスの紹介だったりするかもしれない。しかし最近は、POSレジアプリ「Airレジ」と関連サービスを通じて会計・決済支援業務を展開し、国内で多くの顧客を支援している存在でもある。一般にはあまり知られていない側面だが、確実に「お店の回し方」に変化をもたらしている。
AirレジをはじめとするAirシリーズは、業種も規模も問わず、あまねくさまざまな店舗の業務効率化を目的にしたサービス群だ。2013年のAirレジの提供開始以来、順調に導入店舗が増加しており、2017年末時点でのアカウント数は31万を超えた。2018年1月末に開催された「Airレジカンファレンス 2018」では、Airレジで得られたデータを元に、店舗経営の改善を支援する「Airメイト」をリリースするなど、その歩みは止まらない。
Airシリーズは、iPhoneやiPadなどのタブレット端末から利用できる無料のPOSレジアプリからスタートしたが、ただ単にPOSレジ端末の役割を置き換えるだけでなく、「業種を問わず、人手が足りなかったり、会計の際にクレジットカードが使えなかったり、クレジットカードの手数料の料率が高かったり、といった店舗の『不』を解決することで、店舗がサービス本来の価値を提供することに時間を集中できる環境を作っていきたい」という思いがあると、リクルートペイメント 代表取締役社長の塩原一慶氏は述べる。
このAirシリーズの中で、スマートデバイスを用いてクレジットカードや電子マネーによる決済を実現する決済サービスが「Airペイ」だ。
「決済に関しても、店舗はさまざまな『不』を抱えています。クレジットカード1つ取っても複数の専用端末が必要で、回線も別々な場合があります。電子マネーも交通系、非交通系が入り交じっており、非常に複雑です。また、決済手数料の高さに悩む店舗も少なくありません。Airペイは手数料がリーズナブルなのに加えて、導入までのリードタイムが短く、しかも使い勝手が良く、Airレジとの親和性も高い『オールインワン』の決済プロダクトを目指しています」(塩原氏)
Airペイによって非現金決済を推進することで、幾つかの副次的な効果も期待できる。1つは、意外なように思えるが、犯罪の減少だ。クレジットカードや電子マネー、モバイル端末上のウォレットといった形で世の中のお金が電子化していけば、これまでのように、財布の中にお金を入れて持ち歩く必要はないし、店舗に現金が保管されることもない。従ってそれを狙う強盗も減るし、財布ごと現金をどこかに落とすといった事故も起こりにくくなる。
もう1つは、店舗の経営に役立つことだ。決済をつかさどることは、いつ、どこで、誰が、どんな頻度で購入したかという「データ」が手に入ることでもある。しかもリクルートライフスタイルには、これまでのメディア運営やインターネットを介した送客支援で培ってきた予約データも蓄積されている。こうしたデータを関連付けて分析すれば、ロイヤルカスタマーの抽出などで、マーケティングや販売促進活動をさらに効率化できるだろう。
「複合的にデータを持てることがわれわれの強みだと思います。飲食であれ、美容であれ、いつ、どういう世代の人が、どのお店を予約するかという世の中にはあまりないデータに加え、カスタマーの購買活動がデジタル化され、決済データをシームレスに活用することによって、マーケティングやCRMに生かせます。さらに、もしかするとカスタマーのニーズの一歩先を行って商品に反映するといったことも可能かもしれません。中長期的には、そんなふうにかゆいところまで手の届く販売促進活動を支援したいと考えています」(塩原氏)
もちろん、それがプライバシーの侵害につながらないようなバランスの取り方や、違和感なく提供する方法にも検討が必要だと考えているという。
こんなサービスを実現しているのが、「リクルートライフスタイル ペイメントグループ」と、カード決済事業を主とする「リクルートペイメント」のメンバーたちだ。会社や組織、職種の壁を意識することなく、「クライアントが本業に専念できるようにするにはどうしたらいいか」を決済の側面から追求している。
リクルートグループの中でもベンチャー的な位置付けということもあり、Airペイの事業に関わる人数はそれほど多くない。全員が1つのフロアに納まるほどの規模だが、逆に「加盟店審査も運用も、システム企画も、皆が同じフロアにいるので、有機的につながりながら仕事をしています。何かアイデアがあればすぐに塩原の席に行って、その場でプレゼンテーションして物事が決まることもあります」と、リクルートライフスタイル ネットビジネス本部の山本幸平氏は述べる。これまでに実施されているさまざまなキャンペーンは、そんなふうにして生まれてきたアイデアが採用されているそうだ。
その際大事にしていることが、「あえて空気を読まないチーム」を作ることだ。ミーティングで事業トップの塩原氏が述べた意見に対し、「それは賛成できませんね、ちょっと違うんじゃないですか」とどんどん言える空気がある。メンバーそれぞれの視点から生まれるさまざまなオプションを並べ、その中から最適なものを選ぶことで、限られた時間の中でより良いサービス実現につなげている。
また、「システム企画とマーケティング」といった具合に「兼務」が多いこともAirペイの組織の特徴で、1人2役、3役をこなすメンバーは少なくない。山本氏もその1人だ。新卒でリクルートに入社後、ホットペッパーグルメで長い営業経験を持つ同氏は、今はAirペイを通じたキャッシュレス社会の実現に向け、一言では表現できない仕事を担っている。企画を立て、事業計画を立て、マーケティング計画を立て、そのために必要なパートナーと交渉し、時には海外の企業とも調整し……と八面六臂(ろっぴ)の活躍ぶりだ。
「事業をテクノロジーとビジネスに分けたときの、ビジネス側の仕事のリーダーをしています。専門性を持ったメンバーが、それぞれ100持っている力を130%、140%発揮してもらえる環境を作るため、自分が得意な営業や調整といった部分を担っています」(山本氏)
Airペイという事業を成り立たせるには、クレジットカードのブランド運営会社や金融機関、ネットワークなどのインフラを提供する企業など、パートナーとの協力関係も不可欠だ。そのために、アライアンスの交渉、取り引きに当たっての役務分担や経済的な条件の交渉にはじまり、インフラやソフトウェアの実装、基幹システムの構築に至るまで、表には見えないところでさまざまな調整や作業に取り組んでいる。
事業を展開する中でも感じるのは、リクルートブランドへの期待だ。それを背に、キャッシュレスというマーケットをもっと大きくしていきたいと両氏は語った。
例えばスウェーデンでは、現金による決済は全体のわずか1〜2%で、キャッシュレス決済が98%を占めるに至っているという。これに対して「日本におけるキャッシュレスの割合はまだ20%で、8割はまだ現金という『現金大国』です。その20%の中でどうこうするのではなく、8割ある白地の開拓を、パートナーたちと協力しあいながら加速していきたいのです」(山本氏)
そのための布石は打ってきた。クレジットカードや交通系ICカードでの支払いに加え、国内でいち早くApple PayやiD、QUICPayといった決済手段をサポート。さらに「モバイル決済 for Airレジ」では、「Alipay」や「LINE Pay」との連携も行っている。今後もオールインワン戦略を推進するとともに、カスタマーにはテーブルで会計できることによるスキミング防止やポイントの一元管理、クライアントにはキャッシュレス化にともなう売上向上といったキャッシュレスならではのメリットを訴え、日本社会にいまだに強く根付く「現金が安心」というカルチャーを変えていきたいという。
「政府は『未来投資戦略2017』の中で、今後10年間でキャッシュレスの比率を4割程度に引き上げることをKPIに掲げていますが、われわれは、それは最低限のラインだと思っています。この数字をもう一段、二段引き上げていきたいですし、そこをリードしていくのがAirペイでありたいと考えています」(山本氏)
2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催も1つの起爆剤になるかもしれない。塩原氏は「日本人が海外に行った時、24時間営業しているコンビニエンスストアが歩いていける距離にないことに不便さを感じるように、海外から来た方は、電子決済が使えないことに不便さを感じるかもしれません。そうした『不』をなくしていきたいですね」と、Airペイを通じた「おもてなし」の実現にも意欲を見せている。
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提供:株式会社リクルートライフスタイル
アイティメディア営業企画/制作:@IT自分戦略研究所 編集部/掲載内容有効期限:2018年3月27日