富士通に聞く、ハイパーコンバージドインフラの「本当の話」「簡単・シンプル」は本当か?

広告などでは「簡単・シンプル」とうたわれることが多いハイパーコンバージドインフラ(HCI)だが、実際に導入・運用する視点に立つと、まだまだ情報が十分とは言えない。そこで本稿では、HCI製品「FUJITSU Integrated System PRIMEFLEX for VMware vSAN」の企業導入が急速に進展しているという富士通に、HCIのありがちな疑問や不安を導入・運用担当者の視点でインタビュー。HCIの「本当の話」を聞いた。

» 2018年02月28日 10時00分 公開
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HCIにまつわる疑問や不安を一掃

 ビジネスとITが直結している今、ITインフラにはビジネス展開に追従できる一層のスピードと柔軟性が求められている。これを受けて、仮想化、クラウドが多くの企業に浸透したが、システム構成が複雑化して運用負荷が増大し、かえってスピードや柔軟性を阻害している例が多い。加えて近年は、運用管理者のリソース不足やスキルの属人化に悩む声も多く挙がっている。こうした問題を背景に、国内でも急速に導入が進んでいるのがハイパーコンバージドインフラ(以下、HCI)だ。

 サーバ、ネットワーク、専用ストレージ装置を組み合わせた3層構造の基盤とは異なり、Software Defined Storage(以下、SDS)を採用することで、x86サーバにコンピューティング機能とストレージ機能を統合したHCIは、システム構成と運用管理、共にシンプルにすることができる。さらに定型作業の自動化機能により、運用管理スタッフのスキルレベルを問わず、簡単・確実な運用管理を可能にするとして、多くの企業の注目を集めている。

 だが一方で、「シンプル」「簡単」といったメリットばかりが注目されるあまり、HCIを実際に導入・運用する際の課題については、まだ情報が十分に浸透しているとは言えない状況だ。加えて昨今は、複数のベンダーが多様なHCI製品を展開している。では本当に自社にマッチする製品を選ぶためには、何に注目すればよいのだろうか?――

 本稿では、HCI「FUJITSU Integrated System PRIMEFLEX for VMware vSAN」(以下、PRIMEFLEX)を通じて、多数の企業の運用管理効率化を支援している富士通にインタビュー。「従来のVMware環境と何が違うのか?」「障害の原因特定が難しくなるのでは?」など、HCIにありがちな疑問や不安を聞くことで、導入・運用にまつわる“本当の話”を明らかにした。

運用コスト、運用負荷、人的リソース不足という3つの課題

── 御社では、国内におけるHCIの導入状況をどう見ていらっしゃいますか?

ALT 富士通 プラットフォーム技術本部 クラウドインフラセンター 太原泰介氏

太原氏 HCIが登場して数年がたった現在は、初期にHCIを導入した企業がシステム更改を迎える時期に入っており、このタイミングでリソースを増強したり、別のHCI製品にリプレースしたりという動きが活発化しています。弊社が「FUJITSU Integrated System PRIMEFLEX」でHCIの本格展開を開始したのは2016年11月ですが、発表直後から現在に至るまで、商談件数が右肩上がりで伸びています。

久保氏 新規導入も伸びていますね。用途としては、検証用として小規模のVDIを導入し、スモールスタートして徐々に大きくしていこうというケースが多いです。とはいえ、VDIに限らず、既存の仮想化基盤のリプレースなど、さまざまな用途で用いられるケースが増えてきました。企業規模や業種もさまざまです。

── 企業はHCIにどのようなニーズを寄せているのでしょうか?

太原氏 やはり「初期投資やTCOを削減したい」「運用管理負荷を低減したい」という要望が中心です。既存のITインフラにおいては、専用ストレージ装置の運用管理が大きな負担になっています。リソースを追加するたびに再設計・再構築が求められます。“ビジネスに直接寄与しないITに閉じた作業”はできるだけ効率化することで、コストを抑制したいというニーズは非常に強いです。

── コスト、人的リソース、運用負荷という大きく3つの面で課題を抱えているのですね。それらはHCIによってどう解決できるのでしょう?

ALT 富士通 データセンタプラットフォーム事業本部 コンバージドインフラストラクチャ開発統括部 コンバージドプロダクト開発部 久保勇人氏

太原氏 ポイントとなるのがSDS技術です。特にVMwareのSDSである「VMware vSAN」は、仮想化導入企業の大半が利用しているハイパーバイザー「VMware vSphere」(以下、vSphere)に組み込まれており、全ての処理をカーネル内で行います。これにより、ストレージとして高いパフォーマンスを担保しながら、多くの企業が使い慣れた管理ツール「VMware vCenter Server」(以下、vCenter)を使って、サーバからストレージまで統合管理できるため、インフラの運用を大幅にシンプルにすることができるのです。

久保氏 また、HCIに寄せられるニーズとして「機器のライフサイクル管理をシンプルにしたい」という要望もあるのですが、HCIでサーバとストレージを統合することでライフサイクルの不整合を解消することができます。ハイパーバイザーとSDSが同一ベンダー製であれば保守窓口を一本化できるため、トラブルの際にも面倒な切り分け作業がなくなるというメリットも注目されています。

「使い慣れた管理ツールをそのまま使えるか否か」が重要な選定基準の1つ

── HCIの一般的なメリットは分かりました。ではPRIMEFLEXの場合も、そうした特長を押さえているのでしょうか?

太原氏 はい。PRIMEFLEXの場合、サーバだけのシンプルな構成で最小2ノードからスモールスタートして、利用規模に応じて拡張していくことができます。ノード単位の拡張の他、CPU、メモリ、内蔵ストレージ単位でも拡張できることが1つの特長です。機器の増設作業も、リソースを追加するだけで、後は「自動構築ツール」が自動的に各種設定を済ませるため、すぐに使える状態になります。SDSにはVMware vSANを採用していますから、前述のように、ストレージ管理に難しさを感じていた方でも、サーバからストレージまで統合的に扱えるため、管理の負荷・コストを大幅に低減することができます。

── ただ、「HCIに変えると運用プロセスや管理ツールも変わってしまうのでは?」と懸念する声がよく聞かれます。PRIMEFLEXの場合、既存のvCenterをそのまま使うことはできるのでしょうか?

太原氏 はい。確かに、新しいツールの使い方を覚えるのは大きな負担ですし、システム更改に合わせて5年サイクルで運用管理ツールが変わると、管理プロセスまで変えなければなりません。国内では「同じ基盤を使うなら同じ管理ツールを」が基本だと思います。

久保氏 そこでPRIMEFLEXでは、「使い慣れたvCenterにログインして、HCI製品を統合運用してください」という考え方を開発コンセプトの1つとしています。ただ、vCenterでは仮想環境は管理できますが、サーバなど物理環境はカバーできません。そこで弊社では、物理環境も含めて管理できる運用管理ツール「ServerView Infrastructure Manager」(以下、ISM)を用意しました。このISMの開発で配慮したのも、「vCenterの使い勝手をそのまま踏襲すること」。具体的には、vCenterにISMをプラグインさせることで、vCenterにログインすれば、仮想環境と物理環境をトータルで管理できる仕組みとしています。

ALT 図1 vCenterからのプラグインダッシュボード。使い慣れた管理ツールを使って仮想・物理環境を統合的に一元管理できる《クリックで拡大》

 他社製品の中には、自社HCI製品専用の管理ツールを用意しているベンダーもありますが、vSphereを使っている場合、どうしてもvCenterが残ります。そのため、そうしたツールを使うと、結局はvCenterとHCI専用管理ツールという2つのツールを使い分けることになります。弊社としては、「vCenterにログインしたらストレージも含めて統合管理できること」が最もシンプルでスマートだと考えています。

── なるほど。ただ、最近のIT部門ではジョブローテーションなどによって専任のシステム管理者が減りつつあり、vCenterで管理する人が減少傾向にあるのも事実です。他業務と兼任の“1人情シス”も増えているなど、専門的なスキルがない中で多数の機器を管理しなければならないケースも増えていると思うのですが。

久保氏 そこでISMは「分かりやすさ」に力を入れて開発しました。特別なノウハウがない方でも、パッと見て瞬時に現状を把握し、どんな問題が起きているかを直感的に確認できるダッシュボードとしています。また「ラックビュー」機能を使うと、「どのラックの、どのスロットで、問題が発生しているか」も瞬時に確認できます。実際に問題に対処する方がノウハウがある別の方だとしても、その方へスムーズにエスカレーションできる情報を提供できるのです。

ALT 図2 「どのラックの、どのスロットで、問題が発生しているか」を視覚的に把握できる「ラックビュー」画面《クリックで拡大》
ALT 図3 3Dでも監視できる。運用管理スタッフがその場に行かなくても、管理画面上で確実に管理できるようにすることは運用効率化の1つのポイント《クリックで拡大》

 またISMでは、「ネットワークマップ」機能を使ったトラブルシューティングも可能です。ネットワーク機器の物理的な故障だけではなく、それが「どの仮想ネットワークに影響を与え、どのような異常が発生しているか」も確認できます。

ALT 図4 ネットワークマップの画面イメージ。ネットワーク機器の物理的な故障と共に、それが「どの仮想ネットワークに影響を与え、どのような異常が発生しているか」――すなわち障害原因個所からビジネスへの影響まで、全てを一元的に把握できる《クリックで拡大》

久保氏 もちろん富士通製のスイッチだけではなく、他社製スイッチの接続情報も表示できるので、導入時に機器をリプレースする必要もありません。監視対象は富士通製品である「PRIMERGY」や「ETERNUS DX」「ETERNUS NR1000」に限らず他社製サーバにも対応しているので、HCIを含めたITインフラ全体の運用管理を、既存の機器、運用プロセスを変えることなく、大幅に効率化できるのです。

国内と海外では、「簡単・シンプル」の中身が異なる

── 海外ベンダーのHCIも「シンプル・簡単」を特長としていますが、国内企業の場合、「シンプル・簡単」に加えて、「既存の運用プロセス、ノウハウ、機器は変えたくない」という要望が非常に強いのですね。

太原氏 そうですね。弊社としては、海外ベンダーが訴えている「簡単さ」と、国内で求められる「簡単さ」には違いがあると考えています。というのも、海外企業の場合は「スタッフの入れ替わりが激しく、ノウハウがたまらない、残らない」ことが前提となっています。これを解決するために、「既存のプロセスを変えない」といったことより、「全自動」を重視する傾向が強い。一方、日本では海外ほど人材の流動性が高くなく、ノウハウを残すことを重視しています。運用プロセスにしても「チェックポイントを設けて確認しながら作業する」ことが一般的です。

久保氏 そうした背景を踏まえ、PRIMEFLEXは日本企業の運用実態に即して製品を開発しています。例えばファームウェアのアップデートです。ファームウェアとパッチを一緒にアップデートすることは影響範囲が大きいため普通は怖くてやりません。また、安定稼働しているものに対してはいたずらにファームウェアをアップデートせず、必要なものだけを判断して実施するのが一般的です。ISMでは、アップデート版数をきちんと確認した上で、1台ずつファームウェアをアップデートいただくことが可能です。これにより、万一の際の影響範囲を抑え、トラブルに対処しやすくしているのです。

 また逆に、一度に複数台のファームウェアをアップデートしていく「ローリングアップデート」機能も実装しています。このようにファームウェアのアップデート一つ取っても、お客さまの運用に合わせた方法をご用意しております。そうした“運用管理の実態”にHCI製品がフィットしなければ、「簡単だが、使いにくい」ということになりがちなのではないでしょうか。

ALT 図5 一度に複数台のファームウェアをアップデートしていく「ローリングアップデート」機能《クリックで拡大》

── なるほど。一方、HCIの浸透に伴い「業務を止めない」手立ても重視されるようになっています。特にバックアップやセキュリティに対する懸念がよく聞かれますが。

太原氏 確かにご相談は多いですね。そこで弊社では多様なパートナーさまと協業し、システムの安心・安全を高める取り組みを進めています。

久保氏 例えばバックアップについては、国内でもユーザー企業が多い「Veritas NetBackup」「Arcserve」といったvSAN環境に対応したソフトと連携することで、迅速・確実なバックアップ/リカバリを実現しています。セキュリティ面では「Trend Micro Deep Security」と連携したサーバ保護、データ保護が可能です。

 UPS(無停電電源装置)もシュナイダー社製品を使用した電源管理や停電対応を実現しています。PRIMEFLEX環境で検証済みで、vSAN環境でも安全な電源管理ができます。バックアップ、セキュリティ、停電対策についても、運用管理ツール同様、PRIMEFLEX導入に際して“既存のツールをそのまま使える”よう配慮していることが大きな特長です。

“目的に最適な環境”を設計・構築

── ところで、HCIの代表的なユースケースであるVDIでは、ストレージI/O要求に波がある他、始業時のブートストーム問題もあります。VDI環境が大規模になるとパフォーマンス劣化が懸念されると思うのですが。

久保氏 基本的に、VDI環境においても規模の大小に関わらず、PRIMEFLEXを問題なく、安定的にご利用いただいております。ただし、ユーザープロファイル領域の運用によっては、専用の領域を確保するケースもあります。例えば、富士通社内のVDI環境では、ユーザープロファイル領域用に、「ETERNUS NR1000」シリーズを使用しています。

社内実践事例:http://www.fujitsu.com/jp/products/computing/integrated-systems/virtual/case-studies/vdi/

―― 一方で、これから仮想基盤を導入するに当たり、SDSか専用ストレージか、悩む場面が出てくると思います。SDSと専用ストレージを使い分ける基準についてはどう考えればよいのでしょう?

太原氏 「システムに求める要件」が判断基準になります。例えば、セキュリティ観点から「データの保管場所を業務ごとに切り分けたい」という要件がある場合、1つのサーバに全データを蓄積する仕組みのSDSより、データの蓄積場所を物理的に切り分けられる専用ストレージの方が向いているといえます。「日々のデータを蓄積し続けたい」場合も、サーバでは蓄積できるデータ量に限界がある点で、専用ストレージの方が向いています。逆に「1つの仮想化基盤で多数のシステムを効率的に稼働させたい」といった場合はHCIの方が向いています。

久保氏 一般に、SDSというと「基幹システムなどのミッションクリティカルシステムには、まだ向かないのでは」といった声もありますが、現在は専用ストレージ装置と比べてそん色ない信頼性・安定性を担保しています。つまり、使い分けの基準はストレージの信頼性・安定性ではなく、「求める要件に最適な機能やキャパシティなどがあるか否か」なのです。

── なるほど。ただ、SDSか専用ストレージかという判断の他、どれほどのコンピュート/ストレージリソースが必要かについては、コストやパフォーマンスに直接影響する部分だけに、判断が難しそうですね。

太原氏 そこでぜひ使っていただきたいのが、仮想環境の利用状況や将来的なリソース予測を行う「アセスメントサービス」です。豊富なノウハウと実績を持った弊社のエンジニアが、お客さまの現状のITインフラを分析・評価し、お客さまの利用目的に最適なITインフラをご提案するサービスを無償(※)で提供しています。今後は、これまで培った知見・経験に加え、AIを活用した高度な分析も提供予定です。こうした設計・構築からサポートまで、一貫した体制でHCIを提供できることは富士通の強みの1つだと思います。

※無償となる範囲は仮想環境が100VM以下の規模となります。100VMを超える場合については有償となります。
アセスメントサービスの詳細は、以下URLよりご確認ください。
http://www.fujitsu.com/jp/products/computing/servers/primergy/solution/virtual/assessment/?from=it_1803

── では最後に、HCI導入検討企業の方にメッセージをいただけますか。

ALT

久保氏 冒頭でのお話のようにHCIは「簡単・シンプル」といわれていますが、富士通では「国内企業の運用管理の実態」を重視し、スキルを問わず、誰にとっても扱いやすいインタフェースや機能を提供できるよう開発しています。これにより、ビジネスへの寄与につながる、より本質的な業務に集中いただけると考えています。今後もそうした方針の下、日本企業に合わせた機能やサービスを提供していきたいと思います。

太原氏 PRIMEFLEXは新規に導入しやすいのはもちろん、既存システムのリプレースやシステム拡張などにも柔軟に対応できる基盤です。ビジネス展開にスピーディかつ柔軟に対応できるインフラに向けて、“次世代の仮想化基盤”としてぜひ検討いただきたいと思います。

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提供:富士通株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2018年3月27日

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