複雑化した仮想環境の管理負荷低減が多くの企業で喫緊の課題となっている昨今、日々の運用を簡単・シンプルにするハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)が、その解決策として急速に浸透している。だが、「どのベンダーのHCI製品も同じ」というわけでもなければ、「ただ導入しさえすれば全ての問題を解決できる」というわけでもない。では自社の運用管理課題を解決し、ビジネスに貢献する最適なシステムを実現するには、導入・運用に当たってどのような着眼点が必要なのか?――単に「製品を提供する」のではなく、「製品を通じて、お客さま各社にとってのメリットを提供する」ことをポリシーに、多数の企業をHCI導入成功に導いている日本電気(以下、NEC)に、プロの目から見た“HCI導入の本当の要件”を聞いた。
ビジネスとITが直結している今、インフラ運用にはビジネス展開に追従できる一層のスピードと柔軟性が求められている。だが仮想化、クラウドの浸透を受けてインフラは年々多様化し、運用負荷増大が多くの企業で課題となっている。加えて、企業規模を問わず、人的リソース・スキル不足に悩んでいるケースも多い。
特に深刻なのが、サーバ、ネットワーク、ストレージといったハードウェア機器が混在し、物理環境から仮想環境、クラウド環境まで少人数で統合管理しなければならないケースだ。かつては、サーバ、ネットワーク、ストレージ、それぞれに専門スキルを持ったベテラン管理者が存在したが、現在は業務の運用管理者が、サーバ、ストレージなどのプラットフォーム管理も担当し、例えば、LUNやボリューム、RAIDなどの管理まで行わなければならなくなるなど、複数領域の技術を覚える必要も生じている。
企業における運用管理現場の実態をよく知る久保淳氏(ITプラットフォーム事業部 第二ソリューション基盤統括部シニアエキスパート)は次のように話す。
「アプリケーション運用業務で手一杯であったり、プラットフォームに知見のある管理者が退職してしまったりするケースが急増しています。特に人的リソースに限りがある中堅・中小企業では、管理業務を1人でこなさなければならない状況になっています。できるだけ手間を掛けることなく簡潔にインフラを管理するということは、喫緊の課題になっています」(久保氏)
一方、NECで基盤製品の開発を手掛ける伊藤正樹氏(ITプラットフォーム事業部 IT基統括部 マネージャー)は、「運用スキルを学ぶこと自体も負担になります」と指摘する。
「新たな仮想インフラを導入したくても、日頃の業務に追われて扱い方を覚える時間が不足し、労力をかけられない状況になっているのです。また、あるとき突然、新しい仮想インフラの運用を任されることも少なくないと聞いています。知識が十分に追いつかない中で、複数業務を統合した仮想インフラ運用を任された担当者は悲鳴を上げているのが現実でしょう」(伊藤氏)
そうした課題に応えるように、昨今、企業導入が急速に進んでいるのがハイパーコンバージドインフラストラクチャ(以下、HCI)だ。HCIは、ソフトウェアデファインドストレージ(以下、SDS)技術を使うことで、個々のハードウェアだったサーバ、SANスイッチ、外部ストレージをサーバハードウェアに統合し、複数台のサーバでシステムを構築してもシンプルに管理することができる仮想インフラだ。
主なメリットは「導入・運用の負荷の低減」「TCOの削減」「スモールスタートと拡張性」の3つである。特に運用負荷低減については、vCenterやSystem Centerなどサーバベースの運用管理ツールでストレージも管理できるため、外部ストレージ製品の管理を知らないサーバ管理者にとっても、インフラ全体の管理が可能になる点が大きな特長だ。
「サーバハードウェアのみになることで、システムアーキテクチャ自体もシンプルな構造となり、物理的なメンテナンスもサーバだけで済みます。すなわち、サーバベースの管理でシステム管理が可能となり、運用リソースに限りのある企業にとっては大きなメリットとなります」(伊藤氏)
また、登場当初は共有ストレージとしての実績やコストパフォーマンスが未知数であるが故、VDI用途での利用が多かったが、VDIで十分な実績が積まれてきたことやサーバ向けSSDが普及レンジに入ったことで、適用範囲が広がってきている。今ではテスト/開発環境、DR、プライベートクラウドなどの基盤として幅広く用いられるようになった。その結果、HCIは高まり続ける運用現場の人的リソース不足に対する救世主的な存在になりつつあるのだ。
2002年に他社に先駆けてVMware社と協業を開始したNECは、VMware製品の豊富な販売・サポート実績を持つ。
2014年には仮想デスクトップ環境に最適なサイジング・構成を実現した「VDI専用モデル」を、2016年にはシステム事前検証/設計済みの「vSAN Ready Node対応モデル」、2017年にはハードウェアやソフトウェアライセンスコストを抑えた「2ノードvSAN」を提供開始。圧縮/重複排除、イレージャーコーディング、ユニキャスト、暗号化など、アップデートと共に機能を拡張してきたVMware vSANの進化に合わせるようにして、PCサーバ Express5800シリーズによる対応モデルを提供している。
そうした実績と知見を基に、2017年10月に発表したのが「NEC Hyper Converged System」だ。ユーザー企業各社に最適な検討、構築、運用管理、データ保護、保守まで含めて、HCIの導入・運用に必要な全ての要素を組み合わせて提供することを最大の特長としている。
「例えばHCIでよく寄せられる課題の1つに、リソース増設の問題があります。HCIの場合、コンピュートリソースとストレージリソースをバランスよく増設していかなければなりませんが、将来的にこのバランスが崩れ、どちらかのリソースを余らせてしまうことになりがちです。そこで、NECでは『仮想化アセスメントサービス』という情報収集ツールを無償提供し、既存インフラの資産情報と性能情報を収集、必要なサーバ台数や構成など、最適な仮想化統合案を提示しています。このように、最適なITインフラは各社各様ですので、お客さまが求めるメリットを確実に享受できるよう、導入前の検討・構築支援から導入後の運用・保守まで、“トータルで支援するシステム”をNEC Hyper Converged Systemとしてソリューション化しました。日々の運用をシンプルにするだけではなく、システムライフサイクルも見据えたコスト効率の良い運用を実現します」(久保氏)
NEC Hyper Converged Systemの強みは大きく4つ。1つはHCIならではの導入の容易さだ。構築作業をNECサイトで行う「オフサイト構築」と、設置場所に専門スタッフが赴き作業を行う「オンサイト構築」を選択でき、ユーザーは電源投入後、すぐに仮想マシンの作成を開始できる。
2つ目は専用管理ツール「NEC Hyper Converged System Console」の提供だ。起動、停止などのノードや仮想マシンの操作を含めて、システム全体の状態をダッシュボード画面にまとめ、ひと目で把握できる。また、定期メンテナンスに配慮し、システム全体をワンクリックで安全に停止する機能も持つ。
「通常、vSANのシステム全体を停止するときは、まず仮想マシンを停止して、メンテナンスモードに移行し、クラスタから切り離して、という手順を繰り返して停止させる必要があります。これをワンクリックで行えるため、メンテナンス作業の効率・安全性が飛躍的に向上します」(伊藤氏)
なお 、NECの統合管理ツール「WebSAM SigmaSystemCenter」を使えば、HCI以外の既存システムの統合管理も行える。すなわち、物理・仮想を含めて、自社のインフラ全体のリソースの見える化をはじめ、障害予兆検知、自律運用など、運用効率を大幅に高められるのだ。
3つ目は、バックアップを容易にする「NEC Hyper Converged System Backup Option」(以下、Backup Option)だ。サーバ、ネットワーク、ストレージによる三層構造のシステムの場合、バックアップサーバを立ててバックアップシステムを構築するのが一般的だが、HCIでこうした構成を採用すると、バックアップストレージの選定から必要になる。Backup Optionは、HCIシステム専用のバックアップストレージとして準備され、バックアップシステムの構築を容易にしている。
「Backup Optionでは、独自の圧縮技術を用いてデータを最大20分の1に圧縮するので、バックアップに使用するストレージサイズをコンパクトにすることができます。データ暗号化によるデータ保護機能、安価な回線でも大容量データを遠隔転送できる機能も搭載し、災害対策にも活用することができます」(伊藤氏)
4つ目は「NEC Hyper Converged System保守サービス」だ。HCIとはいえ、構成によってはハードウェアとソフトウェアの保守窓口が分かれるケースが多い。これに対して本サービスは、ハードウェアとソフトウェアの窓口を一本化し、ワンストップでの保守を実現。さらに、顧客側での対応が必要だった内蔵ディスク交換時のvCenter操作などを保守サービス員に任せることもできる。
「NECでは、全国約400カ所(2017年3月現在)のサービス拠点を持ち、均一な品質の保守サポートを実施しています。本保守サービスによって全国一律、どこでも同じ品質でシステムを保守することができ、万一の障害時にも迅速な対応・復旧が可能です。また、ハードウェアからハイパーバイザー、SDSまで各分野の技術者の専門スキルとノウハウによりお客さまをサポートします」(久保氏)
ちなみに、NECがこれまでに提供してきたHCIシステムは50システム以上にもなり、更新を迎えるシステムなど成功事例も豊富だ。例えばVDI専用モデルを採用した東かがわ市では、従来の業務環境や使い勝手をそのままに、vSANを活用した「VDI専用モデル」に移行することで、コスト/運用管理負荷の大幅な低減に成功。この他にも、老朽化したアプライアンスサーバ(メールシステム)をHCIに更新することで、従来と同等のスペックを持つ環境を低価格で実現しながら、将来に備えた拡張性も担保したケースなどもある。“HCIにありがちな懸念や不安”をNECは多数の経験やノウハウによって解決しているのだ。
「HCIには大きなメリットがありますが、全てをHCIに置き換えればいいというわけではありません。例えばボリュームクローンやレプリケーションといったストレージ機能が重視されるシステムなど、SANストレージを使った三層構造のアーキテクチャの方が向いているケースも当然あります。HCIのメリットを享受するためには、自社にはどのような仮想化基盤が適しているかを把握すること、どのような課題を解決したいのかを判断することが大事です。弊社としては単にHCI製品を提供するのではなく、お客さまにとって最適なシステムは何かを考え、導入によってお客さまがビジネスをドライブできるかどうかが重要だと考えています」(久保氏)
冒頭で述べたように、多様化するシステム、煩雑化する作業という厳しい現実に疲弊している運用管理現場が増えているのが現実だ。だがITとビジネスが直結している今、インフラ運用の在り方はビジネス展開にも大きな影響を及ぼす。その点、HCIはもちろん、他の実現方法・ノウハウを数多く持ち、“ユーザーファースト”を常に考えているというNECは、自社の“ビジネスインフラ”とあるべき姿を見直す上で、心強いパートナーとなるのではないだろうか。
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提供:日本電気株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2018年3月31日
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