スマートフォンの登場により、多くの人が気軽にWebサイトやアプリケーションを触れるようになった。スマートフォンからは同時に膨大なデータが生み出されるようになり、そのデータをどのように活用すればいいか悩んでいる企業は少なくない。BIソリューションを提供するジールが導く解決策とは。
活用できるか否かにかかわらず、ビッグデータは企業に身近なものとなっている。そうなった大きな要因が、スマートフォンの普及だ。平成28年版の『情報通信白書』(総務省)によれば、2015年末時点で「携帯電話・PHS」の世帯普及率は95.8%、内「スマートフォン」は既に72.0%まで普及している。多くの人が利用するスマートフォンからは、膨大なデータが生まれる。それをうまく扱い、新たな価値にするのは企業にとって容易なことではない。
「スマートフォンでいつでもどこでも気軽にネットワークにつなげられるようになり、そこからすぐにデータが生まれます。100万人のユーザーがいるサービスならば、一瞬にして100万レコードのビッグデータが生まれるでしょう」と言うのは、ジール アナリティクスソリューションセンター ソリューションアーキテクトの鈴木祐司氏だ。生まれたデータを全て蓄積するには、膨大なストレージが必要である。また、検索のためのコンピュータリソースもすぐに足りなくなってしまうだろう。
「既存のデータウェアハウスでは、必要な容量やリソースを見積もりそれに対応できる環境を準備します。増え続けるビッグデータの活用では、そのような仕組みではもはや耐えられません」(鈴木氏)
例えばあるメディア会社では、会員向けにWebサイトで情報発信をしていた。以前はそのWebサイトにそれほど多くのアクセスはなかったが、発信したコンテンツがソーシャルネットワークなどで話題になると、スマートフォンからのアクセスが急増するようになった。その急増したアクセスのログを全て蓄積しようとすると、システムに大きな負荷がかかりサービスが停止することもあった。
この状況を解消したいとジールに相談があり、解決策として提案したのがクラウド上に処理をオフロードする対策だった。コンテンツの人気は事前に計り知れないため、いつどれぐらいのアクセスがあるかを予測することは難しい。想定外のアクセスをオンプレミスの仕組みで対処するには、コストをかけてまれに起こるアクセスピークに合わせ大規模なハードウェアを増強する必要がある。一方、クラウドであればアクセスのピークのときだけ柔軟にリソースを増やせば良くなるため、あらかじめ大規模なストレージを用意する必要はなくなり、コストを最適化できる。
ジールでは想定外のアクセスをクラウドで対処しただけでなく、ビッグデータをクラウドで蓄積し、分析できるようにもした。その際、クラウドに新たなビッグデータ分析環境を構築するのではなく、分析したいデータをクラウドから抽出し、従来使っていたオンプレミスのデータ分析環境に渡す方法を提案した。ビッグデータからの抽出や加工などの処理をクラウドで行うので、新たなビッグデータを対象に分析したとしても、オンプレミスの分析環境に過大な負荷をかけない仕組みにしたのだ。
このメディア会社では、処理をクラウドにオフロードし、ビッグデータ分析ができる環境を整えたことで、どのような会員がコンテンツの情報を閲覧しているかをすぐに把握できるようになった。
「スマートフォンからアクセスしてきた人が、何をきっかけにWebサイトを訪れどんなコンテンツに興味を持っているのかが分かります。そこからユーザー拡大につなげられる企画のアクションが取れるようになりました」(鈴木氏)
「多くの企業が、データがどこにあり、それをどう活用できるのかに悩んでいる」(鈴木氏)
それらの課題を整理しデータを活用できるようにするのが、ジールが得意としているところだ。ジールはBI(Business Intelligence)ソリューションの提供に特化したビジネスを、既に20年近く行っている。そのため企業がデータ活用を行うためのさまざまなノウハウが、豊富に蓄積されているのだ。
「今はBIという土台の上に、IoT(Internet of Things)のような新たなデータソースが生まれています。ジールには既にビジネスで活用してきたBIの土台があるので、IoTやAIなどの新たな技術もビジネスに結び付けやすいのです」(鈴木氏)
一方で、ビッグデータを活用し切れない企業の多くは、データ分析で止まっていると鈴木氏は指摘する。データを分析し知見を得て、そこからアクションに結び付けられないとビジネスには貢献できない。ではなぜ、データから得られた知見をビジネスに結び付けられないのか。
「そこにはシステム部門と業務部門の壁がある」(鈴木氏)
業務部門がやりたいことが、システム部門が構築したシステムで実現できないことが少なくないのだ。このギャップが、ビッグデータをビジネスに活用できない原因となる。
「業務部門とシステム部門のギャップを解消するために、ジールでは顧客の業務部門に入り込んで現場の声を聞くところからアプローチしていきます。業務部門の担当者と一緒にデータ活用を考えることで、現場担当者はデータ活用を肌で感じることができ、データ活用が自分たちのためだと理解してくれます」(鈴木氏)
そんなジールが手掛けたデータ活用の事例には、前述したメディア会社の他にもさまざまなものがある。その1つであるグローバル展開を行っている食品会社では、国の事業会社ごとに経営数字の報告様式がばらばらでタイムリーに経営状況を把握できない課題があった。ジールは、この課題解決のためにクラウドでデータ集約する提案を行い、Microsoft Azure(Azure)に統合的なBI基盤を構築した。さらに使い慣れたMicrosoft Officeの延長線上でデータ分析ができるよう「Power BI」を採用し、2カ月という短期間で事業会社にデータ分析環境を構築することに成功している。
改めてビッグデータ活用を始めようとすれば、大規模なハードウェアを用意しなければならない。それを最初に一気にそろえるのは企業にとって大きな負担であり、ビッグデータ活用が進まない要因の1つだ。これをクラウドで始めれば、小さく始めて大きく育てることが可能だ。クラウドであれば、メディア会社の例のように想定外の規模のデータが突然発生しても柔軟に対処できる。
「これからのビッグデータ活用では、クラウドの利用がポイントになります」(鈴木氏)
またデータ分析も今はクラウドが最適だ。機械学習のような新しい技術も、「Azure Cognitive Service」のようにPaaS形式で提供されているからである。ビッグデータをクラウドに蓄積し、PaaSを活用して分析する。このようにクラウドをうまく活用することで、素早くビッグデータ分析環境を構築できる。この俊敏性もクラウドの大きなメリットだ。
一方でクラウドを活用するとしても、AIや機械学習に万能性を求めるとビッグデータ活用はなかなかうまくいかない。まずはあまり大きな目標を定めず、現実的な課題解決を目指すほうが良い。目標が定まればおのずと使うべき技術も決まってくる。多くの場合はPaaSとして必要なものは用意されており、それらを組み合わせれば課題は解決できる。一方で大きすぎる目標を設定してしまうと、用意されている道具だけでは足りなくなる。その場合は自分たちで必要なものを作らなければならず、これには手間とコストがかかることを十分認識する必要がある。
ジールでは、顧客の要望や目標が固まっていない段階から相談に乗り、方針が見えたならばPoC(Proof of Concept:概念実証)で検証を行う。そのPoCの結果から情報活用の形を明らかにし、実際にデータ活用基盤を構築するのだ。またでき上がった情報活用の仕組みが社内にきちんと定着できるよう、ユーザートレーニングなども実施する。
「社内にデータ活用に対し勘のいい人がいると、一連のプロジェクトがスムーズに進みます。とはいえ、その人に依存した仕組みにならないことも重要です。そうしないと、その人がいなくなったときにデータ活用がうまく回らなくなるからです。そのためにユーザートレーニングを実施し、データ活用が属人化しないようにします。また新規性だけを追求するのではなく、ビジネスに対しきちんと貢献できるかを常に意識することがデータ活用を継続する上で重要となります」(鈴木氏)
ジールでは、Azureをデータ活用基盤のプラットフォームに選んでいる。その理由は、多くの企業が「Microsoft Office」製品を使っており、それらツールとAzure上の仕組みを容易に組み合わせて使えるからだ。またAzureであれば、低コストで素早く始められるクラウドのメリットも最大限に生かせる。その上でAIや機械学習などのさまざまなツールがPaaSの形でそろっており、それらを組み合わせるだけでやりたいことがすぐに実現できる優位性もある。
開発者の立場からもAzureを選ぶメリットがある。オンプレミスで実績の多い「.NET Framework」が使えるのはもちろん、「Python」をはじめとする機械学習技術を活用する際の言語にも対応している。さらにMicrosoft製品だけでなく、Clouderaのようなデータ活用で開発者が使いたくなるようなオープンソースソフトウェア(OSS)も、Azureには既に用意されている。
「AzureならもともとMicrosoft環境で開発をしてきた人も、OSS技術を使いこなしてきた人も、一緒に開発できるのが便利なところです」(鈴木氏)
またMicrosoftを選ぶことは、顧客の安心感にもつながる。システムを構築の際に懸念されるのが、利用する技術やサービスの継続性だ。Microsoftはクラウドでもリーダー的立場にあり、AI技術でも業界を先行している。そういうベンダーであれば、顧客も安心して選択できるのだ。既にジールでは、Azureを活用するパートナーのソリューションメニュー「Cloud Everywhere」にPower BIで登録をしている。今後は「Azure Bot Service」など、さらにAzure上でデータ活用をするメニューを増やしていく予定だ。
ビッグデータの活用はまだまだ広がりの余地がある。鈴木氏は、ビッグデータの広がりについては次のように話す。
「例えば、人の流れの分析などは十分にできていません。テーマパーク内などのどこに何人の人がいて、その人たちがどう行動するのか。ビッグデータとAI技術を使えば、行動を予測し最適な顧客対を提案できるでしょう。さらには翻訳のようなものもAIは得意で、AIを使えばさまざまな国の人たちにより良いサービスを提供できるはずです」(鈴木氏)
現在、ビッグデータ活用に悩んでいる企業や、人流分析、翻訳サービスのような新しい取り組みを考えている企業は、Azureを使ってビッグデータ分析したり、寄り添って情報活用を支援するジールに相談したりしてみてはいかがだろうか。
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