「機器リプレースでのデータ移行だけで3カ月かかった」「クラウドに移行したらデータ転送量で高額な請求がきた」「ダウンロードしたら想定の何倍も請求されることがわかった」──組織が扱うデータがPB(ペタバイト)クラスに拡大する中、こうしたデータにまつわる課題はより深刻化することが予想される。どうすればいいのか。ニューテック、レッドハット、メラノックステクノロジーズ ジャパン、EIZOメディカルソリューションズが出した解答は。
企業や組織が取り扱うデータの重要性は増すばかりだ。データ量は年々増え続け、画像や動画などの「非構造化データ」のファイルも増えている。ファイルの保存場所が部署ごとにばらばらでサイロ化が進んでいるケースも少なくない。その一方で、データを長期的に保存し活用することが重要になりつつある。特に、医療機関や研究開発機関、映像関連企業などでは、機器リプレース時の移行手段などを含め、膨大なデータを長期にわたって効率良く管理することが強く求められている。
一般的に大容量データに対するソリューションは、クラウド上のオブジェクトストレージを想定されることが多い。オブジェクトストレージは「非構造データの保存」や「大容量データの保存」「データ移行」の課題を解決する手段の1つではあるものの、特有の管理スキルを学んだり、クラウド上での管理コストがかかったりと課題になりやすい。
例えば、オブジェクトストレージでは、WindowsやLinuxのようにファイルを直接OS上からコピーしたり、ダウンロードしたりできない。新しいアクセス方法を学んだり、特別なGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)を備えたソフトを使ったりする必要がある。また、クラウドに移行する際にアプリケーションの書き換えが必要になったり、クラウドに保存した大量のデータを転送する際に料金がかかったりする。つまり、本来意図しない運用管理コストが発生するのだ。
そんな中、大容量データの保存と活用、将来的なデータのライフサイクル管理を見据えた製品を開発したのが、ニューテックだ。
ニューテックはストレージ専業ベンダーとして高品質でコストパフォーマンスの高いストレージシステムを展開する国内企業だ。一般企業の情報システム部門を始めHPC(High Performance Computing)向けや医療情報システム向けなど業種業態に特化したストレージ製品の他、監視カメラ向け、アーカイブ向けなどエンタープライズ全般で使える高品質なNAS製品を展開する。
増え続けるデータに対して国内企業はどのような課題を持っているのか。ニューテックの新井英記氏(技術部 システム技術課 課長)は、次のように話す。
「非構造化データやログデータが爆発的に増えることで、将来的な管理に不安を感じている企業は多い。毎年数百TBというペースで増えている企業も多く、それが今後PBクラスになるとデータのバックアップや移行、活用に向けたアーカイブが難しくなります。『必要なときに容量を増やしたい』『日々の管理作業や機器リプレースに伴う移行作業は最低限にしたい』といったニーズが寄せられています」
こうしたストレージの課題に応えるために、レッドハット、メラノックステクノロジーズ ジャパン(以下、メラノックス)、EIZOメディカルソリューションズ(以下、EIZOメディカル)とのパートナーシップの下、開発したのがスケールアウト型大容量NAS「Cloudy NAS/GLS」だ。
Cloudy NAS/GLSはストレージ基盤として、レッドハットが提供するスケールアウト型のソフトウェアデファインドストレージ(SDS)である「Red Hat Gluster Storage」(Gluster Storage)を、ストレージインタフェースにはノード間の高速ネットワークを担保するためにメラノックスの広帯域イーサネットを採用した。さらに、販売では、国内の多数の医療情報や映像関連のシステムのインフラを提供し、顧客ニーズを把握するEIZOメディカルとタッグを組んだ。
「Cloudy NAS/GLSは、4社それぞれの強みを発揮することで、大容量データの保存や活用に関するさまざまな課題を解決できる製品です」(新井氏)
Cloudy NAS/GLSが解決する課題の1つは、「従来型ストレージにおける容量拡張の難しさ」だ。一般的にストレージを導入する際は、5〜7年のリプレースを踏まえて、必要な容量やI/O性能を見積もり、ボリュームやLUN(Logical Unit Number)などを設計する。だが、昨今のデータ容量の増加は、そうした予測を超えてしまうことが多い。また、新しい事業や組織の統廃合などによってデータが急増することもある。
ストレージ容量が足りなくなった場合、追加で機器の増強が必要になり、あらためてボリューム設計をやり直す必要が出てくる。そのため、増強するときは、機器コストだけではなく容量の設計や運用の作業負荷もかなり高くなるのだ。
「こうした容量拡張の課題に対応するのがスケールアウト型ストレージです。スケールアウト型ストレージの特長は、ストレージ筐体のスケールアップの上限を超えて容量をスケールアウトさせていくことができる点です。スモールスタートして必要なタイミングで必要な分だけノードを増やして容量を拡張できます」と、レッドハットの宇都宮卓也氏(テクニカルセールス本部 ソリューションアーキテクト)は説明する。
スケールアウト型ストレージは、データ移行という課題も解決する。データ量の増加によってバックアップ時間が長くなり、週末の夜間バッチで動かしているフルバックアップが1日で終わらないというケースも珍しくない。PBクラスのデータになるとバックアップはもちろん、機器リプレース時のデータ移行だけでも数日から数カ月かかる一大プロジェクトになることも少なくない。
データ移行の課題について、EIZOメディカルの伊東秀和氏(技術部 シニアエンジニア)は次のように述べる。
「医療機関で使われている医療情報システムでは、画像や映像などの大容量データが増え続けています。画像管理システムのPACS(Picture Archiving and Communication Systems)では数MBのデータを数千万件という規模で管理します。法令によって保存期間が決められていることから、5〜7年のリプレースごとに数カ月かけて新システムにデータを移行します。そのことに大きな負担を感じ、単一システムを数十年にわたって管理したいというニーズが強くあります」
スケールアウト型ストレージは、システムに一度データを保存すれば移行作業が必要ない。それが大きなメリットになるのだ。
「医療機関では技師の方が、研究機関では研究している先生が、ストレージの運用管理していることも少なくありません。Cloudy NAS/GLSを使って手間を削減することで、技師の方や先生は本来の業務に集中することが可能になります」
Cloudy NAS/GLSは、ネットワーク接続型でNFS(Network File System)やCIFS(Common Internet File System)/SMB(Server Message Block)といった一般的なプロトコルに対応する。WindowsやLinuxのファイル共有の仕組みを使って、そのままファイルを保存できることは、専任のシステム担当者やストレージエンジニアがいない組織にとって大きなメリットだ。こうした柔軟性や管理効率の高さは、運用管理コストの削減に大きな効果として跳ね返ってくる。
また、Cloudy NAS/GLSは、既存ストレージシステムを利用するプロセスを変えずにシステム管理できるので、クラウドのオブジェクトストレージを使うことで発生する、管理スキルを学ぶ教育コストやクラウドの管理コストを最小限に抑えることが可能だ。
大容量データの管理にこのようなさまざまなメリットを生み出すスケールアウト型NASだが、弱点はある。その1つが、ノード間で高速なネットワークが必要なことだ。メラノックスの小宮崇博氏(パートナー営業本部 シニアソリューションアーキテクト)は、次のように説明する。
「スケールアウト型NASは、複数の筐体を1つにまとめて、筐体を相互にアクセスできる仕組みを作ります。データの冗長性を確保するためにデータコピーのトラフィックが通常のNASよりも多く発生します。このため、非常に広帯域ネットワークが必要になるのです」
それを可能にするのがメラノックスの広帯域イーサネットスイッチだ。標準仕様は40ギガビットイーサネット(GbE)で、クライアントは40GbEの他、10GbE、1GbEでも接続可能だ。メラノックスの製品はバッファーリングのメカニズムに特長があり、遅延が300nsec(ナノ秒)という速度を誇る。つまり、これによってスケールアウト型NASの課題を克服し、メリットを最大限に引き出すことができるのだ。
4社協業によってどんなメリットがもたらされるのか。まず、ニューテックとEIZOメディカルの協業の歴史は長く、医療機関や医療機器メーカー向けに15年以上にわたって共同ソリューションを展開してきた実績がある。ユーザーがどんな課題を抱えており、どういったソリューションがふさわしいかを熟知していることが大きな強みだ。
「大容量データを扱うための容量や性能は重要です。その一方で、使いやすく管理しやすい基盤が求められています。Gluster Storageを事前にセットアップし、ケーブルをつないですぐ稼働できるCloudy NAS/GLSは、お客さまにとって大きな魅力です。また、スケールアウト型NASであることを生かして、小さなサイズからスタートができ、きめ細かなカスタマイズも可能です。これからも、お客さまのニーズに応じた提案をしていきます」(伊東氏)
また、ニューテックとメラノックスはNAS製品「Supremacy」で協業してきた経験がある。業界内に「ストレージアタッチのイーサネットならメラノックス」という定評があるように、ニューテック社内にもメラノックスのファンが多いという。数々の共同ソリューションや共同検証を行い、それをユーザーに還元してきた。
「イーサネットスイッチはみんな一緒と思われるかもしれません。しかし、実際にお客さまが望むのはベストな製品で、メラノックスは低レンテンシーという特長でそれに応えています。また、今後はAIや機械学習向けのGPUコンピューティングが進む中、CPUを経由せずにGluster StorageとGPUやFPGAなどのアクセラレーターをつなぐ『RDMA』(Remote Direct Memory Access)技術が重要になってきます。今後も新しい提案をどんどんするつもりです」(小宮氏)
レッドハットとの協業はCloudy NAS/GLSへの採用が初めてだが、オープンソース業界のリーダーであり、Gluster Storageという優れた製品を開発する技術力とサポート力を高く評価している。
「Gluster Storageは、独自のファイルシステムを作らず、ストレージサーバが持つLinuxネイティブのファイルシステムを使うシンプルな仕組みです。また、メタデータサーバは必要なく、スケールアウト型ストレージによく見られるような『メタデータサーバが単一障害点やボトルネックになる』といったリスクもありません。非常にスケールアウトしやすく、シンプルなアーキテクチャを備えています。さらに、OSS(オープンソースソフトウェア)であるため、ベンダーによるロックインを回避し、ロードマップが公開されているので、将来の見通しが立てやすいというメリットがあります」(宇都宮氏)
ニューテックの製品は、製品に内蔵するHDDの全数検査を行うなど非常に高品質なことが特長だ。また、ユーザーのニーズをくみ取って必要な機能を強化し、パートナーと協業しながら、使いやすいソリューションに仕上げることにも定評がある。
「ニューテックの強みはハードウェアだけではなく、ソフトウェアや運用サポートまでを含めて、お客さまの立場に立って提案できることです。オンサイト保守が必要な場合、エンジニアが全国規模で対応しますし、ディスクなどの部品の修理、セキュリティなどに不安がある場合、それも対応します」(新井氏)
デジタルビジネスやセキュリティ、コンプライアンスなどの観点からデータの重要性は増している。大容量データの保存と活用に向けて、Cloudy NAS/GLSは大きな助けになるはずだ。
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提供:株式会社ニューテック
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2018年5月15日