単なるクラウド活用で発生する“二重管理問題”、ハイブリッドクラウドの真のメリットを得る方法とはパブリッククラウドとオンプレミスの両方を使うだけがハイブリッドクラウドではない

パブリッククラウドに限界を感じた企業が従来型のオンプレミスへ回帰する動きがある。しかし、それは本当に正しい道なのだろうか。そんな疑問に答えるように、パブリッククラウドのメリットをオンプレミスへ拡張するソリューションとして注目を集めている「Azure Stack」。提供元のMicrosoftと、ディストリビューターであるソフトバンク コマース&サービスに話を聞いた。

» 2018年05月14日 10時00分 公開
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クラウドとオンプレミスの二重管理が招く"不幸"

 パブリッククラウド(以下、クラウド)の利用が進むにつれ、「なぜクラウドと同じようなことが社内のシステム基盤ではできないのか」と、ユーザーから疑問の声が寄せられるケースが増えていないだろうか。メールやスケジュール管理といった情報共有基盤の多くはSaaS(Software as a Service)に移行し、Webシステム環境などではPaaS(Platform as a Service)の利用が進んでいる。さらに最近では、受発注システムや販売管理などの基幹系システムでもIaaS(Infrastructure as a Service)を中心としたクラウド環境への移行が始まっている。しかし、そうしたクラウドの流儀に慣れてくると、オンプレミスで動いている社内システム基盤の"あら"が目に付いてしまう。

 例えば、デジタルトランスフォーメーションの領域では、IoT(Internet of Things)や人工知能(AI)といった先端技術の登場によって、ビジネスの計画や展望が大きく変わりつつある。このような先端技術をいち早く使うことで、競合に打ち勝つ可能性を高める必要があるが、従来のオンプレミスシステムの多くは、提供されるサービスの更新頻度が低く、新しい機能やサービス、先端技術から遠い存在になってしまっている。

 また、インフラを調達するスピードが遅く、スケーラビリティも乏しいため、ビジネス部門が必要なリソースを適切に提供できないことがある。企業の社内システム基盤のほとんどは仮想化環境になり、物理的なインフラを調達するのに比べてスピードは格段に上がった。しかし、IT部門に申請し、仮想マシンやストレージ領域を作成してもらってようやく利用できる状態は、10年近く変わっていない。セルフサービスが基本で、ソースコードさえあればサーバレスでさまざまな機能が利用できるクラウドと比べると、どうしても動きが鈍くなってしまう。

日本マイクロソフト パートナー事業本部パートナー技術統括本部 パートナーテクノロジーストラテジストの高添修氏

 一方、IT部門の目線で見ると、クラウドとオンプレミスで管理体系が異なることが大きな課題だ。企業がクラウドを活用する場合、これまでオンプレミスを見てきたIT部門は、クラウドの管理技術とスキルを新たに習得する必要がある。しかし、すぐにオンプレミスがなくなるわけではない。結果、作業負荷が"倍増"してしまい、日々の運用で疲弊しているIT担当者がさらに忙殺されることになる。

 日本マイクロソフト パートナー事業本部パートナー技術統括本部 パートナーテクノロジーストラテジストの高添修氏は、「多くの企業では、クラウドとオンプレミスという異なる2つの世界を“使い分けて”います。こうした状況を『ハイブリッドクラウド』と呼ぶには違和感があります。それは、オンプレミスがクラウドと同レベルの使いやすい状態にないのと、本来のハイブリッドクラウドが持つメリットを享受できていないからです」と指摘する。

 クラウドとオンプレミスの二重管理によって、ユーザーのメリットは限られ、IT部門も不幸になっているのだ。

ハイブリッドクラウドの真のメリットを引き出せ

 二重管理を改善するには、管理体系を統合してしまうことだ。例えば、全てのシステムをクラウドに移行することで、管理体系は1つになり、ユーザーとIT部門が抱える不満は解消される。実際、「クラウドファースト」を旗印に、そうした取り組みを進めてきた企業は少なくない。

 ただ、既存システムを持たない新興企業なら、フルクラウドでの実装はたやすいかもしれない。しかし、ほとんどの企業が資産としてシステムやデータを既に保有している。そのことを考えると、既存システムの運用ポリシーや、企業が手掛けるビジネスの特性によって、全てのシステムをクラウドに移行することが適さないケースが出てきてしまう。

 「金融業界でクラウドを積極採用する動きがあるように、多くのシステムはクラウド上でも動きます。全てをクラウドに移すことを決断し、実際に成果を挙げている企業もあります。ただ、現実的には、一部をオンプレミスに残したまま、クラウドを使ってビジネスを行うケースがほとんどでしょう。業種の制約や会社のルールがクラウド化を阻む場合もありますし、クラウドには応答の遅延(レイテンシ)や、長い時間かかってしまう大容量データの移行など、技術的な課題が残っているのも事実です」(高添氏)

 例えば、下記のようなシステムは、技術的な制約によってオンプレミスに残して運用するケースがある。

  • 外部との通信でミリ秒単位のレイテンシが許容できない商取引関連システム
  • ファイル容量が膨大で、その場で処理することのメリットが大きい医療データシステムや映像関連システム
  • データを外部に出すことが難しかったり、外部に出してもメリットが得られなかったりする研究開発部門のシステムや工場のIoT関連システム

 「クラウド移行は決してゴールではありません。ビジネスのゴールに近づく手段としてクラウドとオンプレミスをうまく活用すればいいのです。現在、全てをクラウドに移行することなく、ハイブリッドクラウドの二重管理を解消し、オンプレミスでも最新ITが使えるようになる方法があります。それは、クラウドのメリットを享受できる環境をオンプレミスに構築する方法です。これを実現するソリューションが『Microsoft Azure Stack』(以下、Azure Stack)です」(高添氏)

Azure Stackが企業にもたらす価値とは

 Azure Stackは、2017年9月末から出荷が始まった「Microsoft Azure」(以下、Azure)をそのまま企業のオンプレミス環境で利用できるようにしたソリューションだ。

 特長は、Azureが持つクラウドのアジリティやスケーラビリティ、フレキシビリティをそのままオンプレミスで実行できる点にある。サーバやストレージ、ネットワークといったIaaS基盤の機能は、Azureで利用している技術を使ってAzure Stackに実装されている。具体的には、仮想マシン、Dockerコンテナ、仮想ネットワーク、VPNゲートウェイ、オブジェクトストレージなどが使える。

 また、PaaSを中心とした革新的な機能を自社専用の環境で利用できるメリットも大きい。PaaSとしては、アプリケーション開発/実行基盤、サーバレス基盤、マイクロサービス、コンテナ管理基盤が標準サービスとして利用できる。また「Cloud Foundry」をはじめとするオープンソースPaaSやブロックチェーン技術などを活用できるAzure Stack用のテンプレートが用意されている。

 Azureには、機械学習や予測分析のための「Azure Machine Learning」、IoTサービスを構築するための「Azure IoT Suite」、AIサービスの「Microsoft Cognitive Services」などがあるが、これらの一部はコンテナ形式でAzure Stack上に展開することも可能だ。

 またAzure Stackの最大のメリットは、クラウドとオンプレミスで管理体系を統合できる点にある。Azure Stackの管理ユーザーインタフェース(UI)は、Azureで仮想マシンやコンテナサービス、各種プラットフォームサービスを管理するのとほぼ同じだ。コマンドやスクリプト、ツール類も共通化されており、さらにアプリケーションのソースコードもAzureとAzure Stackの両方に展開できる。

 「Azure Stackが提供する機能も、エコシステムも、今後どんどん拡充されていきます。これにより、ユーザーはオンプレミスが条件のシステムであってもクラウドと同じ利便性を手に入れることができ、開発者やIT管理者はスキルやノウハウを学び直すことなくインフラやアプリを効率良く開発、管理することが可能になります。ハイブリッドクラウドの真のメリットは、ITサービスを一貫した環境で利用できることです。Azure Stackはそれを実現できる基盤なのです」(高添氏)

Azure StackはAzureと管理UIがほぼ一緒のため、スキルやノウハウを新たに学ぶ必要がない

Azure Stackの代表的な3つのユースケース

 高添氏によると、Azure Stackの代表的なユースケースは大きく3つある。

 1つ目は、鉱山や船舶のように常時安定したネットワークに接続できない環境や、工場の機械などレイテンシに厳しい環境など、パブリッククラウドを使いたくても使えない場所での利用だ。例えば、米国のクルーズ会社カーニバルクルーズライン(Carnival Cruise Lines)は、客船そのものにAzure Stackを乗せて、インターネットに接続できない海洋航行中でもクラウドネイティブなアプリケーションを利用できるようにしている。システムは生き物なので、航行中にも改善策が見つかることもある。開発はクラウドで進められ、港に停泊したタイミングでネットワークにつなぎ、システムをアップデートするといった運用もできる。

 「ネットワーク接続の制約などで、クラウドを使えない、最新技術を使えないと諦める必要はありません。カーニバルクルーズラインさまのように、インターネットと相性が悪い企業でも、従来の仮想化基盤では難しかったクラウドネイティブなアプリケーションにチャレンジしています」(高添氏)

 2つ目は、金融やヘルスケア業界など、規制によってデータをクラウドに置けず、オンプレミスで処理する必要があるケースだ。例えば、南米の投資銀行ABSA投資銀行(ABSA Capital Investment Bank)やデンマークの投資銀行サクソバンク(SAXO Bank)などでは、AzureとAzure Stackでハイブリッドクラウド環境を構築し、規制やルールに準拠したデータ活用を進めているという。

 また、グローバル企業がAzureのデータセンターのない国に対して、Azure Stackを配置するケースもある。国内企業の三菱日立パワーシステムズ(MHPS)は、ICTソリューションのプラットフォーム基盤でAzureを活用しており、グローバル展開に当たって、Azureのデータセンターがない国や地域で、Azure Stackを活用してサービス拠点を構築する予定だという。

 3つ目は、クラウドアプリケーション基盤での利用だ。アプリケーションの一貫性が保たれているため、オンプレミスとクラウドのどちらでアプリケーションを実行するかに関わらず、同一の方法でアプリケーションを開発、展開することができる。オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ Bank)では、AzureとAzure Stackを活用してDevOpsを実践し、次世代のバンキングアプリを開発したという。

Azure Stackの導入課題を解消するソフトバンクC&Sのサービス

ソフトバンク コマース&サービス ICT事業本部 MD本部 ハードウェア統括部 サーバー・ストレージマーケティング部 部長代行の坪井克成氏

 では、実際にAzure Stackを導入しようとした場合、何が必要になるのか。Azure Stackのディストリビューターであるソフトバンク コマース&サービス(C&S)でICT事業本部 MD本部 ハードウェア統括部 サーバー・ストレージマーケティング部 部長代行を務める坪井克成氏は、こう話す。

 「Azure Stackにおいて、最低限必要なものはAzure StackサーバとAzure Subscriptionです。Dell EMC、HPE(Hewlett Packard Enterprise)、Lenovo、Cisco Systemsなどがキッティング済みのアプライアンスサーバを提供しています。これらはライフサイクルを意識したシステムで、Azureに合わせて進化を続け、高い親和性を持つことが特長です」(坪井氏)

 基本的には、これらのアプライアンスを導入すれば、Azureの進化に合わせて、基盤をアップデートできる。ただ、単にインフラを構築するだけでは、ハイブリッドクラウドのメリットを生かし切ることは難しい。ソフトバンクC&S ICT事業本部 MD本部 ビジネスソフトウェア統括部 第2BSWマーケティング部 ビジネス企画課 課長代行の野田泰宏氏は、活用のポイントをこう話す。

ソフトバンク コマース&サービス ICT事業本部 MD本部 ビジネスソフトウェア統括部 第2BSWマーケティング部 ビジネス企画課 課長代行の野田泰宏氏

 「Azure Stackは、『ハードウェア』『ソフトウェア』『運用システム環境』の3階層で構成されるシステムです。これは『アプライアンス費用』『Azure Subscription費用』『運用システム費用』と言い換えることができます。ハードウェアやソフトウェアの選定、購入では、自社のシステム要件を定め、どんなサーバが必要か、どんなオプション機能を利用するかをしっかり決めることがポイントです。また、サブスクリプションでは、自社に適したライセンスプログラムを見定め、従量課金や年間サブスクリプションなどを検討してクラウドのコストメリットを引き出すのがコツです」(野田氏)

 アプライアンスを購入して3〜5年の期間で運用するという従来のやり方から、従量課金や年間サブスクリプションを使って、ビジネスに応じた柔軟な基盤運用を行うやり方に変えることが重要なのだ。

 だが、Azure Stackは新しいソリューションであるため、こうしたポイントを押さえた導入や運用を企業単独で行うのは困難な面もある。

 「そこで、ソフトバンクC&Sでは『Azure相談センター(Azure Stack窓口)』を設けています。ヒアリングから提案、構築、導入、運用まで、顧客が抱えるさまざまな課題を解決できるようにしています」(野田氏)

 具体的には、Azureの仕様をはじめとするMicrosoftの公開情報を案内する「情報提供」、フィット&ギャップ分析や設計、構築などに課題を抱えている顧客に対して構築実績のある協業パートナーを紹介する「パートナー紹介」、設計された構成のAzure月額利用料を案内する「利用料概算見積もり支援」、Azureのライセンスを解説する「ライセンス紹介・説明」などだ。

 ソフトバンクC&Sで企業のITインフラにおけるさまざまな課題をサポートしてきた坪井氏が「クラウド化が進み、ビジネスにおいてITの役割が増している中、実はオンプレミスの投資も伸びています」と話すように、クラウドの利用が進んだことで、メリットや限界も見えてきた。社内のシステムを全てクラウド化するのは現実的ではない。一方で全てをオンプレミスに戻すという選択肢も大きなリスクになる。そのような中、クラウド環境をオンプレミスに拡張することでクラウドのメリットを引き出すAzure Stackは、これからの企業ITシステムの方向性を示す有望な選択肢になり得るものだろう。

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提供:ソフトバンク コマース&サービス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2018年6月13日

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