AI、IoT、ブロックチェーンなど、新たな技術を使ったデジタルトランスフォーメーション(DX)のトレンドが加速している。ただ、製造、流通、小売りなど従来型企業がDXを推進するためには、既存のITと新しいITで構成される「ハイブリッドIT」をうまく管理していくことが求められる。そのポイントになるものとは何か?――2018年7月25日に開催されたヒューレット・パッカード エンタープライズの年次イベント「Discover Forum 東京 2018 」におけるキーパーソンの講演に、その解を探る。
ヒューレット・パッカード エンタープライズ(HPE)が主催する年間最大のイベント「Discover」は、年に2回、米国とヨーロッパで開催し、1万人規模のユーザーが参加している。日本では2017年に初開催され、今年は7月25日に「Discover Forum 東京 2018 」を開催。今回は「未来を加速する」をテーマに、AIやIoT、ブロックチェーンなど新しい技術を使ったデジタルトランスフォーメーション(DX)を、企業がどう進めるべきか、どのようなプラットフォームが必要となるのかなど、国内外の最新事例も含めて紹介。CIOやIT部門責任者、経営層など幅広い層から約1000名が参加する大盛況となった。
特に来場者の注目を集めたのは、企業のDX推進に不可欠となる「新旧のITの融合」だろう。例えば製造業では、単にモノを製造するだけではなく、製造したモノからデータを集め、新しいサービスを展開し始めている。その際には、膨大なデータをAIで分析し、人間では発見できないような知見を得られるようにもなっている。
だが、こうした取り組みは新しい技術だけで推進できるわけではない。例えば機械やシステムのログデータ、商品の販売データ、顧客情報など、AIを適用したいと考えるデータがトラディショナルなITに蓄積されているケースは多い。また、IoTやAIを使って得た知見を基に新しいサービスを構築する際にも、トラディショナルなITと新しいクラウドネイティブなITとのシステム連携が必要になることがほとんどだ。つまり、基幹システムをはじめ、既存のオンプレミスITが存在する従来型企業にとって、こうしたトラディショナルなITに保存されてきたデータをいかに有効活用できるかが、DX推進の大きなカギとなる――そこで重要になってくるのが「新旧のITの融合」というわけだ。
だが、この融合は決して簡単なものではない。トラディショナルなITも、新しいクラウドネイティブなITも、さまざまなバリエーションがあり、一筋縄ではいかないことがほとんどだ。例えばIoTやAIも、必ずしもクラウドだけで完結するわけではない。「エッジコンピューティング」という言葉が示すように、データが生成されているその場でAIを使ってデータを処理することも行われるようになっている。クラウドもパブリックなものからプライベートなものまでさまざまな利用形態があり、複数のクラウドを使い分けたり、それらを自在にオーケストレーションさせたりするシーンが増えた。
では一体どうすれば、こうした「新旧のITの融合」を実現し、DXをスムーズに進められるのだろうか?――この問いに対し、イベントでは「データ中心の自律型IT」という考え方の下、ITを統合的に管理するヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)の提案がさまざまな角度から示された。ここでは基調講演に登壇したHPEのアラン・アンドレオリ氏と、特別講演に登壇したHPEのDr. エンリン・ゴー氏、2人の講演から、いま企業が目指すべき「これからのITの在り方」を探る。
HPEのハイブリッドITグループ担当SVPであるアンドレオリ氏は、今日のエンタープライズITが置かれた状況について、こう話す。
「74%の企業がハイブリッドITを経験済みという調査結果があります。ハイブリッドITとは、データがさまざまな場所から収集されるようなITの在り方のことです。従来はコアとなるデータセンターだけを管理すればよかった。しかし今は、コアとクラウド、クラウドとエッジ、プライベートクラウドとマネージドクラウドといったように、さまざまな組み合わせがあります。そして約6割の担当者がこうしたハイブリッドITのシームレスな運用が必要だと回答しています」
IoTやAIの活用が進む中、ハイブリッドITはますます広範で多様になり、複雑性も増している。そうしたIT環境を「シームレスに運用するカギになるのがデータだ」とアンドレオリ氏は話す。ハイブリッドIT自体は多様で複雑だが、「データが生み出される場所の違い」と捉えれば、データを共通の指標にすることで管理の見通しが立てやすくなる。
「データを軸にして、さまざまなITを自律的に運用できるようにします。このことをHPEでは、『データ中心の自律型IT』と呼んでいます。データ中心の自律型ITは、製造業、金融サービス業、モバイルワークスペース、スマート小売り、スマート交通システムといった領域で幅広く活用され始めています」
例えば製造業では、PLC(Programmable Logic Controller)やSCADA(Supervisory Control And Data Accusation)システムなどエッジで生成するデータを、コアのデータセンターで機械学習やディープラーニングで処理し、さらにクラウドを使って遠隔モニタリングや予知保全を行う、といったことに役立てている。
小売業では、モバイルアプリやビーコンなどエッジ側から収集したデータを基に、倉庫管理や配送管理をクラウド上から行ったり、コアのデータセンターでAIによるレコメンデーションを行ったりしている。ロボット倉庫やドローン配送の取り組みも進んでいる。
アンドレオリ氏は、データを「新しい通貨だ」とたとえる。実際、データは一定の価値を持ち、使い方によってビジネスを推進させたり、信用を創造したりすることができる。そうした“新しい通貨”を使って新たなビジネス価値を創造することが、まさしくDXというわけだ。
では以上のような、DXの推進に欠かせない「データ中心の自律型IT」の実現には、具体的に何が必要なのだろうか? アンドレオリ氏は「5つの基本原則がある」と話す。
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2018年9月20日