Windows Server 2008/2008 R2が、1年半後にサポート終了の日を迎える。残された期間は決して長くない。まだ移行プロジェクトを立ち上げていない企業は、1日も早く取り掛かるべきだ。基幹系システムの移行先としては、Windows Server 2016ベースのシステムの他、検証済み構成のWindows Server Software Defined Solutionsもお勧めできる。
「2020年1月14日」、Windows Server 2008/2008 R2がサポート終了(End Of Support:EOS)を迎える。サポート終了後、Windows Server 2008/2008 R2は全く更新されず、機能の追加、変更はもちろんのこと、セキュリティ対策を含むパッチ類も提供されなくなる。
Windows Server 2008が登場したのは2008年2月。その1年半ほど後の2009年9月には、マイナーチェンジ版のWindows Server 2008 R2も発表された。
「当時はハードウェアの性能向上に伴って、サーバの能力を1つのOSで使い切ることが難しくなり始めた時代。そこで、複数の仮想マシンを1台の物理サーバ上で動かし、ハードウェアの能力をフルに引き出す仮想化テクノロジーに注目が集まっていました」と語るのは、日本マイクロソフトの梅田成二氏(執行役員 コンシューマー&デバイス事業本部 デバイスパートナー営業統括本部長)。Microsoftの仮想化テクノロジー「Hyper-V」を標準搭載したWindows Server 2008は短期間で市場に受け入れられた、と振り返る。
そうした経緯もあって、市場ではまだ多くのWindows Server 2008/2008 R2が業務処理に使われている。日本マイクロソフトの試算では、2018年4月現在で利用されているWindows Server 2008/2008 R2は国内に約56万台。これを2020年1月までに限りなくゼロに近づけていくことを目指し、同社は2017年から精力的に活動を続けている。
「2015年7月にWindows Server 2003/2003 R2のEOSがありましたが、その時の移行進捗率を現在のデータに単純に当てはめると、2020年1月には30万台程度が残る見通しです。ただし、Windows Server 2008/2008 R2のインスタンスの多くは仮想化されていますから、Windows Server 2003時代の“物理から物理”への移行よりはハードルが低くなるはず。実際には、もっと少なくなると考えています」(梅田氏)
このような“待ったなし”の状況に直面しているIT管理者にとって、これからやるべきことは多い。
日本マイクロソフトが勧めるシステムの更新期間(移行期間)は、最短でも約2年。状況と移行範囲の確認に3カ月、移行先と移行方法の検討に半年、テスト環境での動作確認に9カ月を費やし、EOSの半年前に当たる2019年6月に本番運用を開始するという日程だ(図1)。
これなら、新システムへの移行に伴って何か問題が発生しても十分に余裕をもって対処でき、基幹系などの重要システムも確実に移行できるというベストシナリオである。
ただし、その前の「2019年7月9日」にMicrosoft SQL Server 2008/2008 R2のEOSが控えている他、「2020年1月14日」にはWindows 7、「2020年10月10日」にはMicrosoft Office 2010もEOSを迎える。また、業務アプリケーションについても、2019年5月に改元、2019年10月に消費税率改定(標準税率10%と軽減税率8%の2本立て)が予定されており、情報システム部門全体としては“改修ラッシュ”がしばらく続く見通しだ。
では、Windows Server 2008/2008 R2のEOSへの対処として、IT管理者はまず何から手を付ければよいのか――。
梅田氏が初手(しょて)として勧めるのは“システムの棚卸し”だ。「Windows Serverは取り扱いが簡単なので、現場の部門が“勝手に”導入してしまっていることも珍しくありません」と、梅田氏。この機会に、どの部署で、どのようなサーバが、どのような目的で使われているのかを調べることから始めるべきだと指摘する。
次に、棚卸しの結果を基に、それぞれの移行先と移行方法を決めていく。これまでのWindows ServerのEOSと違い、「今回はクラウドという選択肢もある」(梅田氏)のが特徴。業務システムやサーバごとに「重要性」「戦略性」「使用頻度」などを勘案し、まずは「オンプレミス」「クラウド」「塩漬け(例外的)」の3種に大別すればよいとのことだ。
オンプレミスからオンプレミスへの移行が適するのは、基幹系システムのように「重要性」「戦略性」「使用頻度」のいずれもが高いシステムだ。この種のシステムは企業の優位性を確保するための武器となるので、コストが多少かかるとしても社内に残す(つまりクラウド化しない)企業は多い。一方、情報系システムのように、そこまでの重要性や戦略性、使用頻度がないものはクラウドに移行すればよいのである。
数はそれほど多くないものの、塩漬けにせざるを得ないシステムもあり得る。例えば、移行のためにコストをかけて改修しても、それに見合った効果を見込めないシステムや、数年以内に廃止することが決まっている業務のためのシステム――。
「このようなシステムについても、サポートなしの状態で使い続けるのではなく、今回、Microsoftが用意した“2つの延命策”(後述)を利用していただきたいのです」と、梅田氏。2つの延命策を使うと、必要最低限のセキュリティパッチを一定期間は入手できるようになるので、システムが“ノーガード”の状態になることだけは避けられる。
具体的な移行方法として日本マイクロソフトが示しているのは、オンプレミスからオンプレミスの移行では以下の3種類。
(1)現状のままで後継のWindows Serverに移行
(2)Microsoft HCI powered by Windows Server 2016に移行
(3)SSD Applianceに移行(SQL Serverのみ)
また、パブリッククラウド/プライベートクラウドへの移行には以下の4種類で、合わせて7種類の移行方法を用意している(図2)。
(4)Microsoft Azure Stack
(5)Microsoft Azure Virtual Machine(Microsoft Azure IaaS)
(6)Microsoft Azure SQL Database Managed Instance(SQL Serverのみ)
(7)Microsoft Azure PaaS/SaaS
このリストにある「後継のWindows Server」としてお勧めしたいのは、現行バージョンのWindows Server 2016だ。「リリースから約2年が経過して動作が安定しており、安心して移行できます」というのが、Windows Server 2016に対する梅田氏のコメント。サイバー攻撃を瞬時に検知、分析して対処する「Windows Defender Advanced Threat Protection(Windows Defender ATP)」を標準搭載していることも大きな魅力だ。
また、サーバ、ストレージ、ネットワーク機器の選定と調達に要する手間を軽くするには、検証済みの構成で出荷される「Microsoft HCI(Windows Server ソフトウェア定義ソリューション)」も良い選択肢となる。このカテゴリーにはMicrosoftのパートナー企業からさまざまなソリューションが発表されているが、特に導入が容易なのは、Windows Server 2016に標準装備されている「Storage Spaces Direct(S2D)」を利用したソフトウェア定義ストレージ(SDS)型のハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)だ。
この他、業務システムの特性によっては、Microsoft Azureへの移行が適するケースもある。業務アプリケーションの移行は、仮想マシン(VM)にリフト&シフトする「再ホスト」方式と、「Windows Serverコンテナー」に変換してから移行する「リファクタリング・再設計」方式のどちらでも可能。データベース層には「Microsoft Azure SQL Database Managed Instance(Azure SQL Database MI)」を使うことになる。
クラウドへの移行には、ハードウェアを選定、調達しなくて済むという魅力もある。「ただし、業務アプリケーションがクラウドできちんと動作するかどうかの確認は欠かせませんし、ソフトウェア設定についてもIPアドレスなどの変更は必要です」と、梅田氏。データ容量が大きい場合は、「Microsoft Azure ExpressRoute」のような専用線サービスを一時的に利用したり、ディスクを使ってデータをAzureデータセンターに配送する「Microsoft Azure Data Box」のようなサービスを使ったり、といった対策も考えなければならない。
さらに、どうしても“塩漬け”になってしまう業務システムのために、Microsoftは2種類の延命策を用意している。
一つは、Windows Server 2008/2008 R2をリフト&シフトし、Microsoft Azureの仮想マシンで動作させること。この場合は、必要最低限のパッチを提供する「延長セキュリティ更新プログラム」を3年間利用できる。
もう一つは、ソフトウェアアシュアランス(SA)またはサブスクリプションライセンスの保有者に対する「延長セキュリティ更新プログラム」の有償提供だ。こちらはオンプレミスのシステムにも適用できるので、クラウドにも移せないような大型の業務システムに向く。
以上のようなEOSに向けた諸施策を円滑に進めることを目指し、日本マイクロソフトは「マイクロソフトサーバー移行支援センター」を2018年8月8日に開設。パートナー企業57社と連携して、Windows Server 2008/2008 R2とSQL Server 2008/2008 R2からの移行を目指す企業や団体の支援に乗り出した。
また、移行の実作業に当たるエンジニアのスキルを高めるために、2019年6月までに全国で240回、7000人規模の移行支援セミナー「Azure Migration Roadshow」も開催する。目標は、移行スキルを有するエンジニア4000人の育成だ。
さらに、情報提供Webサイトとして「Windows Server 2008移行ポータル」も2017年末から運用中。各種の情報やドキュメントを提供するとともに、サーバ移行支援パートナーとなる以下の5社のWebサイトにもリンクを張っている。
「Windows Server 2008/2008 R2からの移行は、新しいテクノロジーにチャレンジしていただく良い機会でもあります。最新のWindows ServerやMicrosoft Azureには、10年前のWindows Serverでは利用できなかったさまざまな機能が盛りだくさん。デジタルトランスフォーメーションなどのビジネス変革に活用されることを強く望みます」(梅田氏)
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