Dell EMCが、2018年9月12日に国内発表したキネティック インフラの「Dell EMC PowerEdge MXシリーズ」。今回、特別に米Dell EMCの同製品関係者たちからその詳細を聞くことができた。
Dell EMCが2018年5月に米ラスベガスで開催したDell Technologies Worldで、ハイレベルな製品コンセプトが発表されたモジュラー型インフラストラクチャ「Dell EMC PowerEdge MX」。2018年9月12日にいよいよ国内での出荷開始が正式に発表され、その全貌が明らかになってきた。今回、特別に米Dell EMCの関係者たちから同製品の詳細を聞くことができたので、報告したい。
話を聞いたのはDell EMCアドバンスドインフラソリューションズ部門、グローバルディレクター/エンタープライズテクノロジストのアーニー・フレッチェル(Ernie Frechel)氏、同部門エンタープライズテクノロジストのケン・ミヤモト(Ken Miyamoto)氏、同部門エンタープライズテクノロジスト(ネットワーキング担当)のデフォレスト・セスムス(Deforest Sessoms)氏だ。
「サーバをCPU、ストレージ、ネットワークといった要素に分解し、これをニーズに応じてレゴのように組み合わせる」。PowerEdge MXには、そうした考え方を具現化しながらも、他社製品にはない強みがあるという。Dell EMCは、PowerEdge MXについて、「キネティック インフラ」という設計思想と「ITアンバウンド(制約からの解放)」というゴールを説明している。
フレッチェル氏は、PowerEdge MXを理解するために、まず企業におけるITニーズの根本的な変化を認識すべきだと話す。
「あらゆる業界で、テクノロジーの先取りをし続けない限り、競争に取り残されてしまう可能性が生まれてきています。例えば、分子工学を用いた創薬や病気治療法の開発が急速に進んでいます。他の業界においても、データ分析や機械学習を取り入れる動きが活発です。こうしたワークロードは、従来型アプリケーションとは大きく異なる要件を、IT部門に突き付けています。エンタープライズITで重要なのは、だからといって従来のITニーズが消え去るわけではないということです。従来のITとソフトウェア定義による新しいタイプのITを密結合しなければならないケースも増えてくるでしょう。飛躍的なスケーラビリティを確保し、さらに多様なワークロードの混在および統合利用に対応する必要が出てきます。この対応におけるキーワードは、『クラウド的な柔軟性と迅速性』です」
「幸い、ITインフラ関連のさまざまな新技術が実用段階に入ってきました。将来にわたり、新たなアプリケーションに対して新技術を容易に適用できるようにすると同時に、企業が前述の要件を満たしていくための新たな基盤となるのがPowerEdge MXです」
メモリ/ストレージ関連では、ストレージクラスメモリの活用や、ネットワークを通じたストレージの高速アクセスを可能にする技術が成熟化しつつある。一方ディープラーニングでは、GPUやFPGAの活用が進んでいる。
「こうした技術を最大限に活用したいのに、ITインフラハードウェアのせいでできない」といったことがないようにしたいと、フレッチェル氏は強調する。
PowerEdge MXシリーズは当初、以下の製品ラインアップで構成される。
PowerEdge MX7000 シャーシ
7Uサイズのモジュラー型シャーシで、シングル幅の2ソケットコンピュートモジュールを8台、ダブル幅の4ソケットコンピュートモジュールを4台搭載できる。シャーシ共有の電源、冷却ファン、管理モジュールを備える。
PowerEdge MX740c コンピュートモジュール
28コアのインテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーを2基まで搭載可能。24のDDR4 DIMMスロットで、現在最大1.5TBのメモリを搭載できる。また、内蔵ストレージとして最大6基の2.5インチSAS/SATA/NVMe SSDを収容可能。M.2ブートにも対応。
PowerEdge MX840c コンピュートモジュール
28コアのインテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーを4基まで搭載可能。48本のDDR4 DIMMスロットで、現在最大6TBのメモリを搭載できる。また、内蔵ストレージとして最大8基の2.5インチSAS/SATA/NVMeストレージを収容可能。M.2ブートにも対応。
PowerEdge MX5016s ストレージモジュール
2.5インチのSASドライブを最大16基搭載可能。ドライブ単位で異なるサーバに割り当てられる。単一のMX7000シャーシにMX5016sを最大7台搭載でき、合計で112ドライブを収容できる。
ネットワーク関連では、「MXスケーラブルファブリックアーキテクチャ」としてMX9116n ファブリックスイッチングエンジン、MX7116n ファブリックエクスパンダ―モジュール、MX5108n イーサネットスイッチ、MXG610s ファイバーチャネルスイッチが提供される。ネットワークはPowerEdge MXの重要な特徴だ。これについては後で詳しく説明する。
上記のように、PowerEdge MXを構成する製品について、表面的になぞったような紹介をしただけでは、「なんだ、ブレードサーバと変わらないではないか」と考える読者もいるだろう。だが、この製品シリーズはブレードサーバとは外見が似ているようで、中身は全く異なる。
まず、PowerEdge MXがブレードサーバに似た、シャーシと各モジュールによる構成となっているのは、統合管理、運用効率、密度、そしてシステム拡張性のためだ。ニーズに応じてレゴのように構成できるITインフラを目指すからといって、細かく分割されたバラバラなコンポーネントを提供するのでは、非効率極まりない。電源装置や冷却ファン、そして管理については、可能な限り共有を図り、リソース利用効率を高めるべきだ。PowerEdge MXがモジュラー型インフラとして、シャーシを中心としているのは、このためだ。
「ブレードサーバには、例えばハイパーコンバージドインフラ(HCI)に向かないなど、アーキテクチャ上のさまざまな制限や制約があります。その制限を極限まで取り払うことを目指しているのがPowerEdge MXです」とフレッチェル氏は説明する。
まずMX7000で特徴的なのは、シャーシ内部にファブリック用ミッドプレーンが存在しないという点だ。ミッドプレーンとは、ブレード型インフラの内部にある、サーバとファブリックスイッチなどのモジュールを接続する装置だ。ファブリックのI/Oについては、現在関連技術が急速に進化しているところであり、いずれかの技術に固定化してしまうと、ユーザー組織は今後の技術進化に対応できないということになってしまう。PowerEdge MXでは、「でしゃばることのない」シャーシ設計を活用し、今後主流となるさまざまな最新I/O技術を迅速に取り込める設計となっている、プロセッサーでいうと、このシャーシは今後最低でも3チップセット世代にわたって使い続けられるようにしている。
PowerEdge MXにおけるもう1つの重要な特徴は、コンピュート/ストレージモジュール個々のスペックにある。PowerEdge MXのMX740c、MX840cの場合、CPUについてはそれぞれ最大56、112コア。メモリは単一モジュールでそれぞれ最大1.5TB、6TBを搭載できる。ひと昔なら1ラックを必要としたかもしれないコンピューティングパワーが、単一モジュールに集約されている。モジュール1枚だけでも、これまでに対応がしにくかったアプリケーションへの効果的な対応ができる。
シャーシ全スロットにこれらのモジュールを挿した構成が、とてつもない性能を発揮することは、一目瞭然だ。さらに、各SASドライブを柔軟に各CPUへ割り当てることにより、ストレージリソースプールの柔軟で効率的な利用が可能になっている。
また、今後のニーズを考えた場合、複数シャーシにまたがるシームレスなアプリケーション拡張を支えられなければならない。そこで不可欠な要素となってくるのが、従来とは異なるネットワークアーキテクチャだ。ブレードサーバとPowerEdge MXの、大きな違いの1つはここにある。
「今後のビジネスを支えるネットワークでは、余計なプロトコルや中継処理により、オーバーヘッドやレイテンシ(遅延)が発生することを避ける必要があります。そうでなければ、ビジネスに対して即座にITが追従するようなシステムを構築できません。例えばスケールアウトしさえすればいいというわけではありません。タイムラグや遅延を伴ったスケールアウトでは満たせないニーズが増えてくるからです」と、セスムス氏は指摘する。
PowerEdge MXではまず、モジュール/シャーシ間のネットワーク遅延を最小限に抑えることが、重要なテーマの1つとなっている。
では具体的にどうするか。従来のブレードサーバでは、各シャーシに専用のスイッチを備えている、一方PowerEdge MXでは、シャーシ単位でのスイッチングを行わない。論理的には各コンピュート/ストレージノードが直接トップオブラック・スイッチ(通常ラックの最上部に配置される、ラックごとのスイッチ)につながる形となっている。これによって多数のシャーシによる大規模構成でも、遅延の少ない相互通信ができるようになっている。
PowerEdge MXでは、10Gbps、25Gbpsのイーサネットに始まり、ニーズの高まりとコストパフォーマンスを見据えながら、これ以上の速度への対応を進めていく。 既に400Gbpsも視野に入れているという。並行して、最新のネットワークI/O技術にも対応していくことになる。
PowerEdge MXが「サーバ3世代以上にわたって使えるアーキテクチャ」と言える理由は、ここにもある。
どれほど柔軟でスケーラブルなITインフラであっても、運用や利用に手間が掛かってはこれからのビジネスに役立たない。PowerEdge MXでは、PowerEdgeシリーズ用のOpenManage Enterpriseと同じコードベースに基づく専用運用管理ツールを、複数シャーシにわたって利用し、統合的にIT運用管理ができる。ファームウェア/ドライバーのバージョンアップをはじめ、ITインフラハードウェアに関わるさまざまな作業を自動化できる。サーバの各種設定から仮想MACアドレスなど仮想I/Oの設定、さらにはVLANなどネットワーク設定まで、全てをプロファイルとしてシャーシのサーバスロットへ紐づけておけるというから、サーバ追加時の工数削減効果が容易に想像できる。
柔軟な構成が可能なインフラでは、用途に合わせたハードウェアの構成をどうするかが、特に大きな課題になる。ここで活躍するのが、Dell EMCの培ってきたエコシステムだ。Dell EMCはVMwareやMicrosoft、Pivotal、その他ソフトウェアデファインドストレージ(SDS)やデータベース、コンテナなどのソフトウェアベンダーの協力を仰ぎながら、各ソフトウェアに最適な構成を、テンプレートのような形で提供する取り組みを進めていく。これによって、PowerEdge MXの柔軟性を活用した最適化が、即時に行えるようになる。
Dell EMCは、PowerEdgeシリーズでAPIを整備し、オープンな運用管理の選択肢を提供してきた。PowerEdge MXではこれをさらに強化していくという。
ミヤモト氏は、「PowerEdge MXのテーマは『ITアンバウンド(制約からの解放)』です。オープンなシステムでなければ、これを実現することができません。このシリーズでは、Dell EMCのこれまでの取り組みを生かし、構成自動化ツールや商用の統合運用管理ツールなど、それぞれの運用担当者にとって最適なツールをTPOに合わせて使えるようにし、ITをビジネスに近づけるお手伝いをしていきたいと考えています」と話している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:デル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2018年9月27日