HCI(ハイパーコンバージドインフラ)は、既に大企業の社内IT基盤でも普通に使われていると、大手システムインテグレーターである伊藤忠テクノソリューションズの情報通信事業企画室、管敏浩氏は話す。データベースサーバも、HCIの上で稼働させるのが一般的になり始めているという。HCIの生みの親とも言えるNutanixとハードウェアを提供するDell EMCの担当者を交えて話を聞いた。
HCI(ハイパーコンバージドインフラ)は、2、3年前までは「本当に普及するのか」と、懐疑的な目を向けられていた。しかし、今は大企業の社内IT基盤でも普通に使われていると、大手システムインテグレーターである伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)の情報通信事業企画室、管敏浩氏は話す。データベースサーバも、データ量の多いものでない限り、HCIに載せるのが一般的になっているそうだ。
どのようなHCIソリューションを選べばいいのか、現時点でのメリットや将来的なアドバンテージについて、HCIの生みの親とも言えるNutanixとハードウェアを提供するDell EMCの担当者を交えて話を聞いた。
CTCといえば国内トップクラスのシステムインテグレーター。顧客は製造業や金融、通信などの大企業や公共機関がメインだ。そうした組織は、新しいIT製品の採用に慎重というイメージがある。ハイパーコンバージドインフラ(以下、HCI)も敬遠されそうなソリューションの一つだ。しかし、実はそんなことはないと、CTCの管氏は言う。
「当社のお客さまでも、HCIをデスクトップ仮想化(VDI)などの特定用途だけでなく、プライベートクラウドの基盤として使うところが増えてきました。基幹システムにHCIを使っているケースもあります。ほとんどのお客さまは、HCI製品の仕組みといったものは理解されていますし、導入をためらうことはなくなってきたと思います」(管氏)
スモールスタートして順次拡張していけるHCIは、需要予測の難しいシステムや新規ビジネスに適している。しかし、それだけではないようだ。システムインテグレーターは顧客企業の要件に合わせた構成を提案するが、HCIには過剰投資を避けるという利点もある。従来のIT基盤構築は、例えば5年後の需要を予測して、それなりの規模で一気に投資する。しかし、更改時期を迎えてもリソースを100%使い切っていることはまずない。一方、HCIは現時点で必要な容量だけで構築し、足りなくなったら後から追加するという考え方ができる。「結局使わなかった」というロスを、極限まで減らすことができるわけだ。
「社内のIT基盤として提案する場合にお聞きするのは、『今回更改する基盤は、リソースがどのくらい余りましたか』ということです。70%しか使っていないなら、また同じような構成で更改しても、結局リソースが余ることにならないでしょうか。今見えているリソースでHCIを使って構築すれば、足りなくなったら追加が可能ですし、予算を他のことに回せます。そうした提案で採用されたことが何度かあります」(管氏)
HCIが普及することによって、数年に一度大きな予算を取るという方法から、毎年予算化する、あるいは部署の決裁権の中で段階的に購入するなど、IT投資のやり方に変化が起きているようだ。また、HCIでは、異なる構成を混在させることもできる。インフラ更改は、仮想マシンを移行すればよい。それを管氏は、「基盤が古くならず、だんだん若返りができる点もメリット」と表現する。
HCIのパイオニアと呼べる存在がNutanixだ。Nutanixの純正アプライアンス「Nutanix NX」の他、Dell EMCやレノボ、IBMなどがNutanixのソフトウェアを使ったHCI製品を販売している。
マルチベンダーのシステムインテグレーターとして複数のHCIソリューションを扱っているCTCが、主要な選択肢の一つとしてNutanixを推進している理由を聞くと、次のような答えが返ってきた。
「弊社は国内で販売できるさまざまなHCI製品を取り扱っていますが、Nutanixを選ぶ理由としてはまず、HCIを作ったパイオニアであるという信頼感があります。また、HCIで重要な部分はソフトウェアストレージですが、私たちは自社による検証に基づき、NutanixのNDFSを非常に高く評価しています。かつては、『HCIを導入したい』という場合、Nutanix以外に選択肢はありませんでした。その後いろいろな製品が出てきましたが、私たちも7年ほど扱っていて、製品に関するノウハウがあるNutanixは、現在でも有力な選択肢です」(管氏)
CTCが取り扱うHCI製品のうち、最近特に伸びているのが、Dell EMCのPowerEdgeサーバとNutanixを組み合わせた「XCファミリー」だという。Dell EMCのHCI分野での収益は、IDCの調査によるとグローバルで前年比約2倍と好調だが、Dell EMC インフラストラクチャーソリューション事業統括 シニアプリンシパルエンジニアの池亀正和氏によれば、「CTCによる販売はそれを超える伸び率」だという。管氏は、XCファミリーが2018年上期の時点で、2017年の年間売上を超えたと話している。
「Dell EMCにとって、CTCは国内で最も重要なパートナーの一社です。今年のゴールデンウィークにラスベガスで開催されたグローバルパートナーサミットでも、アジア・太平洋地区で初めて、最も販売に貢献したパートナーとして表彰されました。今後もさらに、Dell EMCの製品を提案・販売していただきたいと考えています」(池亀氏)
XCファミリーはPowerEdgeサーバをベースにしており、CTCとしてはその部分にもノウハウがある。さらに管氏は、XCファミリーを選ぶ理由として以下のような点を挙げた。
XCファミリーはCPU、メモリ、SSD、ハードディスクといったリソースを柔軟に選択できるため、顧客の要求に限りなく近いスペックのものを提供できる。従って前述の、「IT基盤更改の際に前回の余剰分を考慮して最適化する」という考え方を後押しできる。また、メインモデルは1U 100Vなので小規模から大規模までカバーでき、電源工事も不要。さらに、1Uなら障害の切り分けも容易で、「ファン程度なら活性交換してしまえばいい」(管氏)。
XCファミリーの場合はDell EMCがハイパーバイザーをOEM提供しているため、Dell EMCが一次受けをして障害対応、切り分けを行う。さらに、5年以上の保守が必要な場合は、最大7年までの長期保守の提供が可能。また、Dell EMCのメーカー保守とCTCテクノロジーが行う自営保守のどちらかを選択でき、自営保守は全国で対応可能だ。
「各拠点の教育にも力を入れているので、自営保守は全国どこでも、東京と同じクオリティの対応が可能です」(管氏)
昨今は顧客から短納期を求められることが多くなり、「Nutanixの場合はソフトウェアストレージ部分の設計が少なくて済むので、短納期に貢献しています」(管氏)。XCファミリーは、カスタマイズしたうえで速やかに調達できるのも強みだ。
XCファミリーは2018年9月にSAP HANAの認定HCIプラットフォームとして認定されており、SAP HANAに精通しているCTCとの相乗効果は高い。ちなみに、2018年10月16日時点で、SAP HANA認定HCIは4社5製品あり、そのうち2製品、5機種がDell EMCの製品である。
その他、XCファミリーは2枚のM.2ドライブをRAID1で構成して耐障害性を高める「BOSS(Boot Optimized Storage Solution)」や、使用率の高いCPUに向けたファンだけ回転数を上げる「マルチベクタークーリング機能」なども搭載している。また、購入方法を柔軟にするため、サーバ本体とNutanixソフトウェアを別々に調達可能な、「XC Core」というラインアップも用意している。
ニュータニックス・ジャパン パートナービジネス事業本部 シニアシステムズエンジニアの川田智史氏によれば、Nutanixは2009年創業で2011年から製品出荷を開始、現在は四半期ごとに約1000件の顧客が新規導入しており、現在、グローバルで1万以上の顧客が利用しているという。Dell EMCへのOEM提供が始まったのは2014年だが、Nutanixのビジネスに占める割合は非常に大きい。Nutanixの年次イベント「Nutanix .NEXT in Tokyo」では、毎年さまざまなカテゴリのパートナーを表彰しているが、OEM部門ではDell EMCが2017年、2018年と、2年連続で受賞しているという。
「XCファミリーは、2018年7月31日現在、グローバルでの顧客数が2500社以上、出荷ノード数は約2万5000ノード以上と、当社のビジネスにとって重要な存在になっています。過去数四半期は、国内で成長率の高いプラットフォームです」(川田氏)
顧客の業種・業態に偏りはなく、ユースケースも拡大しているという。
「過去、Nutanixは、VDIの基盤でご利用いただくことが多かったのですが、最近では、新規導入されるお客さまでVDIは約25%程度、その他の多くはサーバ仮想化環境でご利用いただいています。加えて、データベースサーバやExchangeサーバのような、ビジネス観点でクリティカルな役割を果たすサーバ基盤での利用が増えています」(川田氏)
データベースといえば、やはり専用ストレージを用意してIOPSをしっかり担保するというイメージがあり、HCIを使うケースは少ないのではと感じる。しかしCTCの管氏によれば、それは「規模による」という。
「巨大なデータベースの場合は、専用ストレージ装置を使って従来のデータベース構成をとるケースがあります。しかし、それほど大容量ではなく、性能も極端なハイパフォーマンスを求めないのであれば、データベースをHCIに載せることは普通になってきました」(管氏)
「Nutanixには、iSCSI経由で外部サーバにブロックレベルのストレージサービスを提供する機能(Nutanix Volumes)があり、この機能を利用して、大きなデータベースサーバを運用しているお客さまもいます」(川田氏)
いずれにしろ、「お客さまは、以前に比べ、HCIに載せるアプリケーションやサーバの内容を選ばなくなりました」(管氏)という。
DellがEMCを買収してVMwareが傘下に入ったことで、Dell EMCとしてはVMware vSANによるHCIに舵を切り、Nutanixの関係は疎遠になるのではという見方が出たこともある。しかし、「ビジネス面での影響は全くありません」とNutanixの川田氏は言う。Dell EMCの池亀氏も、「棲み分けを正しく説明しているので、2社の製品は競合しません。お客さまの考え方に応じた選択肢が複数用意されているのがDell EMCのポートフォリオです」という。
「『SDSの機能拡張・強化は、ハイパーバイザーと可能な限り独立した形で運用をしたい』というニーズが意外に多いです。ハイパーバイザーはVMware、SDSはNutanixという組み合わせで、十分に共存していけますし、仮想化のコストをさらにセーブしたいお客さまの間では、検証をした上でHyper-VやAHVを選択するケースも出てきています」(池亀氏)
CTCの管氏は、「NutanixのHCIが他と圧倒的に違うのは、運用コストやDevOpsといった、オペレーション部分に注力している部分なので、そこは今後うまく生かせるようにしていきたいと考えています」と話す。さらに、「どこのHCIも普通のSDS基盤として提供されていますが、Nutanixだけはどんどん機能追加しています。HCIの次の姿を作ろうとしていると思うので、ぜひ追いかけていきたいです」という。
「Nutanixでは『シンプルな操作・管理・運用、高いTCO、お客さまのコスト削減』を主眼に製品開発を行い、高い頻度で機能拡張されたバージョンを提供しています。機能も、従来のHCIが担っていたコンピュート、ストレージ、仮想環境の管理機能を超えて、アプリケーションのライフサイクル管理、ネットワークや運用コストの可視化するための機能なども提供し始めました。アプリケーションのライフサイクル管理機能『Calm(カーム)』は、Prismを通じて、Nutanix環境だけではなく、Amazon Web Services、Google Cloud、Microsoft Azureといったパブリッククラウド環境にもアプリケーションを展開することができます。最近の弊社におけるメッセージである、『エンタープライズクラウド』、『One OS, One Click, Any Cloud』は、まさにこのことを意味しています」(川田氏)
Dell EMC 池亀氏は、次にネットワークの仮想化がHCIと連動して動くようになると予想している。
「15年前には『サーバ仮想化なんて使えるわけない』と思われていましたが、今はもうスタンダードになっています。これに続き現在では、SDSがスタンダードになりつつあり、それよりも速いスピードで、今後SDN(Software Defined Network)もスタンダードになっていくと考えています」(池亀氏)
さらに池亀氏は、HCIを導入したかしないかで、ストレージの大規模移行作業にかかるコストやリスクに差が出ると予想している。
「HCIに移行することで、導入後はストレージの移行作業がなくなります。今後もお客さまの所有するデータ量は飛躍的に増加し続けると思います。このことに後から驚くという状況が起きるのではないかと、楽しみにしています」(池亀氏)
IT管理者の負担を減らし、かつビジネスのスピードに追従できる基盤として、HCIとその進化形が貢献することは間違いなく、今後のNutanixの開発やハードウェアベンダーの努力に期待したいところだ。
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2018年11月28日