「転職には興味があるが、自分のスキルの生かし方が分からない」「自分にはどんなキャリアチェンジの可能性があるのだろうか?」――読者の悩みに応えるべく、さまざまな業種・職種への転職を成功させたITエンジニアたちにインタビューを行った。あなたのキャリアプランニングに、ぜひ役立ててほしい。
「このままで、将来もやっていけるのだろうか」「もっとスキルを磨いておかないと生き残れないのではないか」など、エンジニアは誰しも、将来に対する不安を感じる瞬間がある。
「現状のままではダメ」とは分かっているものの「では、どうすればいいのか?」と問われると、答えられないという人も多いのではないだろうか。
「大丈夫。自分は成長している」と思っている人も、もし、それが錯覚だったとしたら、どうだろう。
今回は、自分が置かれている現状に将来がないと気付いた時に、ぬるま湯から熱湯に飛び込み、将来への不安を解消したエンジニアの転職体験をご紹介する。お話を伺ったのは「情報戦略テクノロジー」に転職した岡野谷知孝さんだ。
【転職者プロフィール】
岡野谷知孝さん(39歳)
情報戦略テクノロジー ソリューション本部技術戦略推進部(2012年入社)
【転職前】
クライアント企業の二次請け、三次請けが中心の、SESと自社パッケージ開発を行う中堅SI企業にて、システムの開発〜運用を手掛ける。トータル5年間、同じシステムに携わり続けたものの、給与も上がらず、先輩の姿を見て将来に不安を感じる。
【転職後】
さまざまな開発プロジェクトを手掛けスキルセットを増やし、アーキテクトチームとしてシステムの共通機能の策定や開発工程の自動化などもこなした他、一次請け案件の上流工程における問題解決能力などを磨き、エンジニアとしての価値を高めながら成長。やりたいことの実現、給与アップ、将来の不安解消という3つの目的を果たした。
大学時代は情報通信工学科で、主にアルゴリズムを勉強してきたという岡野谷さん。就活ではIT業界をターゲットに会社選びをしたという。
「大学の就職課や、就職サイトで、自社製品や自社サービスを開発している企業を念頭に探しました。初任給は気になりましたね(笑)。後は会社説明会の雰囲気で選びました」
そして2005年4月、中堅SI企業に入社する。
3カ月の研修を経て、最初に配属されたのは自社パッケージの開発プロジェクトだった。
「宿泊管理、購買管理のシステムでした。最初はドキュメント作成を担当し、その後、開発にも携わったのですが、既に保守、運用フェーズだったこともあり、改修時も、満足なコードレビューを受けられませんでした」
岡野谷さんは、1年ほど同プロジェクトに携わった後、プロジェクトを異動する。今度は客先でのプロジェクトだ。
「最初は、とてもうれしかったですね。官公庁の貿易保険に関するシステムですが、テストチームからスタートし、設計、開発などにも携わりました。コードレビューもきちんと受けられましたし(笑)」
ところが岡野谷さんは、あることに気付き始める。
「同じ現場で、同じ仕事をしているのに、他社のエンジニアと給与が違うんです。最初のうちは、自分のスキルや経験が足りないからだと思っていたのですが、どうもそれだけではないらしい、と」
岡野谷さんの会社は、同プロジェクトにおいては三次請けというポジションだった。一次請けや二次請けの会社から来ているエンジニアとは、そもそもベースとなるエンジニア一人月当たりの受注単価が違っていたのである。
それでもトータル5年間、同じプロジェクトで活躍した。ずっと同じシステムの運用や開発を続けることに不満や不安はなかったのだろうか?
岡野谷さんは、「一つのプロジェクトに長く携わることで、対象となる業務の知識に詳しくなれるし、人からも感謝されるので、悪い気はしませんでした。むしろ『自分はできるエンジニアに成長できている』と思っていました(苦笑)」と、当時を振り返る。
岡野谷さんは、その後、それが錯覚であったことを知る、決定的な出来事に出会ってしまうのであった。
ある日、用事があって客先からの帰りに自社に立ち寄ると、そこには経験豊富な40歳代の先輩エンジニアの姿があった。聞けば、次のプロジェクトが決まらずに自社で待機しているとのことだった。
「その先輩は、担当していたプロジェクトが終了したので、次のプロジェクトを探しているということでした。けっこう長い間決まらずに待機していたそうです」
この時岡野谷さんは、同じプロジェクトで限られたレイヤーの仕事ばかりを続けていたら、新しい能力が身に付かないばかりか、今持っているスキルも時代に取り残される可能性があることに気付いた。既に自身も30歳を超えていたので、先輩の姿に10年後の自分を重ね、不安になったという。
しかし、たとえ会社に申し出て他のプロジェクトに異動させてもらえたとしても、行った先のプロジェクトで同じことが繰り返されるのは目に見えていた。そこで岡野谷さんは、自身の市場価値を確認するためにも転職活動を始める。転職サイトに登録し、転職フェアにも足を運んだ。
岡野谷さんの転職先選びのポイントは3つ。自分が「やりたい」と思えるプロジェクトを手掛けられること、実力に応じて給与がアップすること、そして求められ続けるエンジニアになれることだった。
ちなみに、岡野谷さんが会社に退職したい旨を伝えると、上長から理由を聞かれたので「給与が上がらないから」と答えると、「それなら仕方がないな」と、あっさり受け入れられた。引き留められなかったことで会社のエンジニアに対する気持ちが垣間見えたような気がして、ショックだったという。
転職サイトなどで情報収集して、どこの会社に転職しても給与が上がることは分かっていた。「身に付くスキルセットは、現状から広げられるのであれば何でもOK」とも考えていた。
しかし、転職先はどこでもいいわけではない。岡野谷さんは、現状が良くなるだけではなく、将来必要とされなくなる不安を解消してくれる会社を探し求めていたのだ。
情報戦略テクノロジーと出会ったのは、転職フェアの会場だった。
ブースの担当者が「ウチはエンドユーザー企業から直接受注する案件が多いし、将来的には、多角化、グループ化を考えている。そして、各社のIT部門でエンジニアの活躍の場を創造する」と話していたことに興味を持った。しかし担当者は、こうも続けた――「ただし、ウチは厳しいよ。ぬるま湯から熱湯に飛び込むようなものだから」。
普通なら「厳しいよ」と言われたら、ひるむところだが、それこそが岡野谷さんの求めていたものだった。将来も必要とされるエンジニアであるために、多少厳しくても、スキルアップできる環境を求めていたからだ。
情報戦略テクノロジーは、顧客企業の社員と一緒になって業務上の課題を解決する「ゼロ次請け(R)」を標ぼうし、エンドユーザー企業からの一次請け案件のみを手掛けているSI企業だ。プロジェクトを通じたエンジニアの育成にも積極的なことで知られている。
「担当者や社長から聞かされる話が、いちいちもっともで、全て納得できました(笑)」と、岡野谷さんは同社を選んだ決め手を教えてくれた。
情報戦略テクノロジー入社後は、それこそ年に1つのペースで、業務系、金融系、Androidアプリ開発など、多様なプロジェクトを手掛けてきた。
入社前に「厳しい」と脅かされたが、同社ではステップを踏んでエンジニアを育成する仕組みが確立しており、二次請けのプロジェクトからスタートした(※)。前職での仕事スタイルから大きく変わりはしないが、プロジェクト内で、少しずついろいろな経験値を上げていくのだ。
「大手商社の基幹システム開発では500人規模の大きなプロジェクトを経験し、大手製造業のシステムリプレース案件ではアーキテクトチームとして、システム共通機能の策定や開発工程を一部自動化するための技術選定なども行いました」
入社3年目には、いよいよ一次請けのプロジェクトに配属された。
「インターネットリサーチ会社のアンケート集計、配信システムの開発でした。アジャイル型の開発も初体験しました」
アジャイル型開発では、ビジネス的な要求を市場にタイムリーにリリースするために、フレームワーク利用による開発の効率化やCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)構築の経験を積んだ。
要件定義、設計、開発、運用保守の全工程を担当し、最近はITアーキテクトとしてシステム設計を一任され、要件定義のさらに上流――企画フェーズからプロジェクトに参画するようにもなった。
岡野谷さんは現在、通算で7つ目のプロジェクトを手掛けている。
「新しいプロジェクトに就く際は、常に3〜4つの候補の中から選ばせてくれるのがうれしいですね」と、同社のプロジェクト配属方針についても満足しているようだ。
もちろん、ここに至るまでは簡単な道のりではなかった。熱湯さながらの日々の中で、がむしゃらに学び、考え、努力を重ねてきた。岡野谷さんはここ数年の自分を振り返り、対応領域が広がった、活躍の場が増えた、視野が広がった、そして同じ志を持つ仲間が増えた、と評する。ぬるま湯の中で小さな成長に満足していたころに比べると、今はメキメキ成長しているのを実感できて将来への希望が持ちやすいという。
エンジニアの中には「上流工程に進みたいのに会社がプロジェクトを移らせてくれない」「やることは増えていくのに一向に給与が上がらない」「今のままでは成長が見込めず、将来が不安だ」といった悩みを抱えている人もいるかもしれない。
会社と掛け合っても解決の兆しが見られないようなら、いっそ、現状の「ぬるま湯」から脱却して「熱湯」に飛び込むという選択肢もあるはずだ。岡野谷さんの転職体験は、そんな悩めるエンジニアたちに新たな第一歩を踏み出す勇気を与えてくれただろう。
わが社は、技術力だけを見て人を採用するということは当時からありませんでした。
岡野谷さんは、ビジネスパーソンとしての素養、コミュニケーション能力の高さ、明るさ、タフさ、そして、現状をどうにかしたいという渇望感と行きつく目標が明確にあったことを評価しました。
入社当初は技術力の面でかなり難がありましたが、今では、多様な顧客ニーズに応え、デリバリーしたシステムをいかに使っていただくかに主眼を置く、ユーザー目線でプロジェクトを推進できるエンジニアになりました。
アーキテクト面では、単純非機能要件における提案、問題解決だけではなく、未知の領域も貪欲に学習し、適応するだけではなく最善となるソリューションの提案、構築を行っています。
最近、若手社員から「岡野谷さんのようになりたい」の声が聞こえるようになりました。今後は「岡野谷さんにはすご過ぎてなれない」の声が聞こえるようになるまで突き抜けてくれることを期待しています。
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提供:株式会社マイナビ
アイティメディア営業企画/制作:@IT自分戦略研究所 編集部/掲載内容有効期限:2018年11月30日
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