VMware Cloud on AWSの登場で、日本のクラウドサービス市場はどう変わる?協業か、はたまた競合か

2018年11月、VMware Cloud on AWSの日本における本格提供が始まった。「今後国内クラウドサービス事業者のビジネスがどうなっていくのか」に注目が集まる中、VMwareはクラウドパートナープログラムの大胆な拡張を打ち出している。

» 2019年02月04日 10時00分 公開
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 VMwareのクラウドが勢いを増している。国内約160社のクラウドプロバイダーパートナーに加え、2018年11月にはAmazon Web Services(以下、AWS)の東京リージョンにおけるVMware Cloud on AWSの提供が開始された。ユーザー企業からの引き合いは、非常に強いという。

 一方、VMware Cloud on AWSの好調さが伝わるほど、気になるのはVMwareのクラウドパートナーとの関係だ。VMwareは、同社のVMware vSphereVMware Horizon 7などの技術を活用するクラウドサービス事業者向けのパートナープログラムとして「VMware Cloud Provider Program」というライセンス/支援プログラムを提供している。このプログラムに参加し、仮想サーバや仮想デスクトップなどのクラウドサービスを展開している国内パートナーは約160社に上るが、こうした企業はVMware Cloud on AWSにビジネスを奪われることになるのだろうか。

ヴイエムウェア ソリューションビジネス本部クラウドサービス統括部統括部長、神田靖史氏

 ヴイエムウェアでクラウドサービスを統括する神田靖史氏にこれを聞くと、「VMware Cloud on AWSの国内での提供開始の発表以降、非常に多くのお客さま、パートナー各社さまからの引き合いをいただいているのは事実ですが、一方でこれは弊社がお客さまに提供する選択肢の一つでしかありません。お客さまの求める要件はそれ以上に多岐にわたります。いわゆるIaaS(Infrastructure as a Service)環境の利活用で完結するということはありません。また、特に日本ではほとんどの場合、ユーザー企業がVMware Cloud on AWSを弊社と直接契約するということはなく、既存のクラウドプロバイダーやシステムインテグレーターを通じて利用することになります。VMwareはクラウドパートナープログラムを通じて、従来からの製品提供に加え、VMware Cloud on AWSをはじめとしたその他の多岐にわたる技術を”As a Service”としてパートナーに提供していきます。パートナーはこれらを取捨選択して活用することで、これまで以上に付加価値を発揮し続けることができます」と答えた。

 VMwareは単にクラウドサービス事業者になろうとしているわけではない。今後の企業ITおよびクラウドサービスニーズの動向について独自の知見を持ち、過去2、3年にわたってVMware Cloud on AWS以外に、「VMware Horizon Cloud on Microsoft Azure」やGoogle Cloud Platform(GCP)と連携する「VMware Pivotal Container Service(以下、PKS)」、さらには「CloudHealth by VMware」などのマルチクラウド管理サービスを発表してきた。

 これらの重要な発表の全てが、VMwareによるクラウドプロバイダーパートナー支援に直結する。

VMwareはクラウド市場の動向をどうとらえているか

 神田氏は、今後の日本国内におけるクラウド市場の動向について、「ノンアセット/アセットライト化」と「マルチクラウド対応」の2つの点を指摘する。

 第一の、「ノンアセット」とはそもそも資産を持たないということ。一方、「アセットライト」とは資産が少ないという意味だ。神田氏は、世界的にノンアセット/アセットライトのクラウドプレイヤーが増加しており、日本でもこの傾向が強まってきていると話す。

 つまり、他社の提供するクラウドサービスを独自の付加価値を伴う自社サービスとして組み込み、ユーザーのために管理するサービスだ。技術サポートを含むユーザーからの問い合わせについては、全て一次窓口として機能する。既にこうした役割を果たしている事業者は多数存在するが、これらが今後、主要なクラウドプレイヤーに加わる可能性も出てきたという。

 「これまでクラウドサービス事業者は自社設備をもとに差別化を図ってきました。しかしこれでは、ますます多様化するユーザーのニーズに対応することや、日々進化を続ける技術に追随し続けることが困難になる一方であることが分かってきました。自社設備によるサービスの場合、規模の大きな事業者であればその規模のメリットを生かし、新たなサービスを比較的低リスクで提供できます。一方、小規模なクラウドサービス事業者では、ユーザーのニーズは把握できていても、継続的に一定量のビジネス成長が見込めないと設備投資が容易にはできないため、このサービスを提供できない、つまり事業機会を失うことになってしまいます。ユーザーニーズにきめ細かく対応できないのでは、今後の差別化が難しくなってしまいます。従って、自社設備投資主体の国内クラウドサービス事業者の間でも、他社サービスを組み込んでマネージドサービスとして提供する動きが広がると考えます」(神田氏)

 ノンアセット/アセットライトに関連して重要なのはマルチクラウド対応だ。

 「国内ユーザー企業においても、複数のクラウドを目的や求める機能に応じて使い分けようとする動きが顕著になってきています。すると企業として大きな課題となるのは、複数クラウドの利用による『クラウドのサイロ化』です。つまり必要なのはマルチクラウド環境におけるネットワーク、セキュリティ、ガバナンス、コストなどの統合管理と、これに基づく最適化です。この課題をユーザーと共に解決できるクラウド事業者、あるいはManaged Service Provider(MSP)が、今後注目を集めることになるでしょう」(神田氏)

VMware Cloud Provider Hubは、クラウドプロバイダーパートナーの差別化のためのツールボックス

 上記の2つのトレンドを踏まえ、VMwareはクラウドパートナープログラムの大幅な強化を推進している。その核となるのが、2018年8月に発表した「VMware Cloud Provider Hub」だ。早くも同年11月には、バージョン2.0がGA(本格提供開始)となった。

 VMware Cloud Provider Hubとは、クラウドプロバイダーパートナーがVMwareのさまざまなサービスを取捨選択して提供するための、プロビジョニング/オーダリング/ビリングのプラットフォームだ。パートナーはこうしたサービスをオンデマンドで調達し、自社ブランドで提供できる。

 2018年末時点で対象となっているのは、VMware Cloud on AWSおよび「VMware Log Intelligence」。Log Intelligenceは、「VMware vRealize Log Insight」をベースとしたログ分析サービスで、VMware vSphereとVMware Cloud on AWSにまたがって、インフラおよびアプリケーションの運用における異常を検知、トラブルシューティングを支援できる。

 今後、デスクトップ仮想化の「VMware Horizon Cloud」、デジタルワークスペース管理の「VMware Workspace ONE」、バージョンに関係なくvSphere間でのVMware vSphere vMotionでの移行やバルク移行を実現する「VMware HCX(Hybrid Cloud Extension)」、アプリケーションレベルでのエンドポイントセキュリティ「VMware AppDefense」、クラウドネイティブなログ分析の「Wavefront by VMware」をはじめ、マルチクラウド環境におけるコスト管理などの「CloudHealth by VMware」、ハイパースケールクラウドとの連携機能など、VMwareの提供するSaaSやマルチクラウド運用支援サービスは原則的に全て、Cloud Provider Hubを通じ、クラウドプロバイダーパートナーに提供される。またサードパーティ製品の利用も可能とするマーケットプレイス機能も搭載していく計画だ。

VMware Cloud Provider Hubは多段マルチテナント対応で、各プロバイダーはユーザーそれぞれに対して専用メニューを通じ、VMwareの運用するさまざまなサービスを自社ブランドで提供できる

 VMware Cloud Provider Hubの登場により、将来的にはvSphere環境を資産として持たない、完全にノンアセットのクラウドプロバイダーパートナーも出てくると考えられる。これまではヴイエムウェアと縁の薄かった各ハイパースケールクラウドに特化したクラウドインテグレーターなどからの、参加に関する問い合わせも増えているという。

 一方、自社資産としてvSphereのサービス基盤を持つパートナーも、自社の付加価値サービスや運用ノウハウ、トラブル原因究明能力を今後も生かし、自社インフラでユーザーの基幹システムを運用し、他方で自社としての投資判断がしにくいようなサービスについては、VMwareのサービスを活用することでタイムリーにユーザーニーズを満たすといったことができる。

 また、VMwareのマルチクラウド管理ツールを自社サービスとして提供することにより、「クラウドブローカー」とも呼ばれる複数クラウド利用最適化のパートナーとしての役割を担うことで、ユーザーにとっての自社の価値を高めることができる。当然ながら、VMwareのマルチクラウド管理ツールは、クラウドプロバイダーパートナーが自ら運用するvSphereインフラ、およびユーザーのデータセンターにおけるvSphereインフラを管理対象に含めることができる。このため、クラウドプロバイダーパートナーは、IT運用全般についてユーザーに助言するといったことができるようになる。

 ヴイエムウェアのシニアクラウドスペシャリストである金子真人氏は、「ユーザーに対してさまざまなサービスをワンストップで提供できる。これが、各パートナーの差別化の源泉となっていきます」と話す。

 VMware Cloud Provider Hubは、2019年中にバージョン3.0が登場し、プラットフォームとしての最終形が確立する予定になっている。

クラウドプロバイダーパートナーが足元を固めるための支援策とは

ヴイエムウェア ソリューションビジネス本部クラウド技術統括部 シニアクラウドスペシャリスト、金子真人氏

 とはいえ、大多数のクラウドプロバイダーパートナーは、そこまで一足飛びに考える状況にはないはずだ。こうしたパートナーについて金子氏は、まずはSoftware-Defined Data Center(SDDC)への移行を積極的に進めてもらいたいと言う。

 現状、一部のクラウドプロバイダーパートナーは未だVMware vCenter ServerとESXiを基盤とした仮想サーバホスティングサービスに留まっている。CMP(Cloud Management Platform:統合クラウド管理プラットフォーム)を用いたマルチテナントクラウドサービスの提供にまで至っていないケースも多い。VMwareでは、こうした状況を打破し、クラウドプロバイダーパートナーの進化を促進・支援するために、プログラムで提供されるソフトウェアライセンスの有効活用を訴えている。VMwareのクラウドプロバイダーパートナー向けのライセンスプログラムでは、最低料金のライセンスバンドルパッケージでも、マルチテナントコントロールパネル(コンパネ)/CMPのVMware vCloud Director(以下、vCD)に加え、VMware NSX Data Centerのスタンダードエディション相当の機能も使えるという。

 「vCDとNSX Data Centerを組み合わせることで、最低料金のバンドルでも、SSL VPN/IPsec VPNやエッジファイアウォール/ロードバランサーが使えます。VPNでは、ユーザー組織別のネットワーク分割を、ネットワーク機器に対する設定を伴う従来のVPNから、NSX Data Centerによる仮想ネットワーク分割に移行することで、運用コストを大きく低減できると共に、柔軟で迅速な設定が可能になります。ロードバランサーについても、基本的な機能はNSX Data Centerの機能で賄えます。NSX Data Centerをうまく活用し、基盤をモダナイズすることで、コスト効率を高め、自社サービスの付加価値向上に注力していただきたいと考えています」(金子氏)

 ちなみに、vCDについては、「既に提供を終了する方向にある」という誤った認識がされている向きもあるようだ。確かにエンドユーザー向けの提供は数年前に終了したが、クラウドプロバイダーパートナー向けには、米国本社でも専門の製品開発部門を立てて、引き続き中核製品として精力的なバージョンアップが続けられており、かつてvCDをオンプレ環境で利用していたユーザーからは、今こそvCDを自社クラウドで利用したいという声もあるという。

 また、以前は「vCDとNSX Data Centerの連携について、自前で構築するには情報が足りない」「vCDのインテグレーションを提供するシステムインテグレーターが少ない」といった採用への敷居の高さも課題とされていたが、ここにきて革新的なツールが提供されているようだ。前出のVMware Cloud Provider Hubと同時に発表された「VMware Cloud Provider Pod」がそれだ。

 VMware Cloud Provider Podは、vCDやvSphereに加え、NSX Data Center、VMware vSANも含めてクラウドインフラの自動展開ができるもの。クラウドインフラの構築に必要な設定情報(パラメーター)をVMwareのクラウドサービス上で定義し、これに基づいてほぼ完全に自動化されたインストールを実現するためのスクリプトが生成される。さらに、その設定情報を仕様書としてドキュメントに残す機能を備えている。現在は初期インストールのみだが、今後ライフサイクル管理に対応し、バージョンアップも簡単に行えるようになるという。

 VMware Cloud on AWSを自社で手がける一方で、VMware Cloud Provider Podのようなツールの提供によってVMware製品を活用したサービスインフラの構築・維持を容易に行えるようにもする。自社資産としてサービスインフラを構築・維持するクラウドプロバイダーパートナーにも、VMwareに支援の手を休める気配はない。

それでも「VMware Cloud on AWSは敵」と言うクラウドプロバイダーパートナーへのメッセージ

 上記の説明を聞いても、やはり「VMware Cloud on AWSは自社からビジネスを奪うのではないか」という疑念がぬぐい切れないクラウドプロバイダーパートナーに対し、ヴイエムウェアが言えることとは何か。前出の神田氏によると、次のようになる。

 「確かに数年前は、ユーザーにとってもクラウドプロバイダーパートナーにとっても、『あのクラウドか、このクラウドか』という、『or』の状況がありました。しかし単一のクラウドサービスで多様なユーザーニーズを満たすことは困難ですし、全てを自社で保有することも現実的ではありません。いま求められる重要なことは、『あのクラウドも、このクラウドも』、つまり『and』をいかに提供できるかです。ユーザーが選択するクラウドサービスの種別によってビジネスの成否が決まるというスタイルでは限界が見えてきてしまいます。VMwareのクラウドの最大の強みは、自社でVMware Cloud on AWSを提供していることではありません。それを含めて、国内160社、全世界4200社におよぶ最大級のクラウドパートナーエコシステムを有していることです。それぞれのサービスには特徴があり、得手不得手もあります。VMwareは、パートナーの皆さまのサービスの強化に向けた製品提供と、マルチクラウドの実現に向けた技術の開発に努めていますが、このエコシステムに参加いただいているパートナーの皆さまには、VMwareの製品とサービスと、また同じエコシステムにいる他のパートナーとの協業によって、ユーザーの多様なニーズに応え、お客さまの事業の成長に寄与することに努めていただきたいと心から期待しています」

本記事内の製品・サービスおよびVMware Cloud Provider Programに関するお問い合わせはこちらから

VMware認定Aggregator(※法人格を除く社名50音順)

社名:SB C&S株式会社

部署名:ICT事業本部 MD本部 ICTソリューション販売推進統括部 仮想化クラウド販売推進室 担当者

メールアドレス:SBBMB-sbb_vmware@g.softbank.co.jp

URLhttps://licensecounter.jp/vmware/

社名:ダイワボウ情報システム株式会社

部署名:販売推進2部 PH1グループ 谷水・菊池

メールアドレス:disex-vm@pc-daiwabo.co.jp

電話番号:03-5746-6394

URLhttps://www.pc-daiwabo.co.jp/

社名:株式会社ネットワールド

部署名:ソリューションマーケティング部 SDソリューション課

メールアドレス:vmware-info@networld.co.jp

電話番号:03-5210-5187

URLhttps://www.networld.co.jp/product/vmware/pro_info/vcpp/

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提供:ヴイエムウェア株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2019年2月10日

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