第57回 エンジニアがきちんと評価される環境を!――将棋アマ五段が指す、定跡にとらわれない最善の一手マイナビ転職×@IT自分戦略研究所 「キャリアアップ 転職体験談」

「転職には興味があるが、自分のスキルの生かし方が分からない」「自分にはどんなキャリアチェンジの可能性があるのだろうか?」――読者の悩みに応えるべく、さまざまな業種、職種への転職を成功させたITエンジニアたちにインタビューを行った。あなたのキャリアプランニングに、ぜひ役立ててほしい。

» 2019年02月28日 10時00分 公開
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 入社時に聞いていた話や、自身が思い描いた状況と入社後の状況が違っていた、という話はよくある。

 ギャップにすぐに気が付けば傷はまだ浅いが、数年勤めた後で気が付くというケースもある。特に組織や制度面での問題点は、入社してすぐには分かりにくい。仕事が面白くなり、成果を出して昇進し、自分の立場や役割が変わったときに初めて、問題点に気が付くというケースも珍しくない。

 今回お話を伺った白浜隆男さんは、前職や前々職時代にそうした問題点に直面。仕事そのものではなく制度に疑問を感じたのだ。そして二度の転職の末に、ようやく理想の組織、制度を自ら作り上げていくチャンスを手にしたのである。


【転職者プロフィール】 白浜隆男さん(31歳)

インティメート・マージャー CTO(2018年入社)

【転職前】 2012年に、ソーシャルゲームプラットフォーム大手に入社。ポータルサイトの開発業務を一貫して手掛ける。しかし、エンジニアの成長と給与が連動しない人事評価制度や給与テーブルに疑問を感じ、2017年に同じ業界の会社に転職。転職先でも同じ問題に直面。成熟した会社での、既存の組織や制度を変えることに限界を感じる。

【転職後】 2018年8月。インティメート・マージャー入社。開発実務から、組織、制度作りまでをトータルに手掛け、CTO(最高技術責任者)に就任。さらなる組織拡大に向け、柔軟性のある評価制度や給与テーブルなど、エンジニアにとって理想的な環境作りに努めている。

将棋の強い会社か? 成長ナンバーワンの会社か?

 白浜さんは、DMP(データマネジメントプラットフォーム)事業を営む「インティメート・マージャー」のCTO(最高技術責任者)。子どもの頃からPCやプログラミングに触れ、学生時代も数々のコードを書き続けてきたのだろうと思われそうだが、決してそうではなかった。むしろプログラミングとの出会いは、開発に携わる多くの人より遅かったかもしれない。

 「子どもの頃は、祖父と将棋を指してばかりいました。小学5年生の時に祖父が亡くなると、対戦相手を求めて日本将棋連盟の支部に通うようになり、いろいろな人と将棋を指すようになりました」

 将棋が楽しくて楽しくて仕方がない、という子ども時代を過ごしたそうだ。やがて「祖父に教えてもらった将棋で日本一になりたい」という思いがふつふつと湧いてくる。そして高校、大学へと進学し、日本将棋連盟の全国オール学生将棋選手権、全国支部将棋対抗戦で優勝する。白浜さんは、アマチュア五段の腕前にまで成長した。

 勉強の方は、大学院に進んで宇宙物理学を専攻し、宇宙線の研究をしていた。宇宙線とは、銀河系や太陽を源とし、宇宙空間を飛び回る高エネルギーな放射線の総称であり、地球上にも降り注いでいる。白浜さんは、研究の一環として、米国ユタ州の研究施設に出向き、実際に宇宙線の観測なども行っていたという。

 「宇宙線が大気中の窒素や酸素の原子核と衝突する際に発生する光を観測していました」

 それは、ノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊博士が岐阜県神岡鉱山に作ったカミオカンデのような装置だったそうだ。当時、周囲に何もない米国の研究施設に長期間滞在し研究を進めていた白浜さんは、寂しさから「日本人と話したい」と思うようになったという。

 「ユタの砂漠の真ん中でmixiを使って、日本語でいろいろな人とやりとりをしました(笑)。そうしているうちに、インターネットのサービスそのものに興味を持ち、その仕組みを知りたいと思うようになりました」

 これがきっかけで、ソフトウェア開発エンジニアを志すようになったという。

 白浜さんが就職活動を始めたのは2010年ごろのこと。研究室からはJAXAに就職する人や、観測で扱う光学機器メーカーに就職する人が多いという。

 白浜さんは、2つの就職先で迷った。

 一つはプリンタなどの光学機器を開発、製造、販売する大手老舗メーカー。そしてもう一つは、SNSやソーシャルゲームのプラットフォームを提供する大手インターネット企業だった。

 「光学機器メーカーは、社員に将棋の強い人がたくさんいることで知られていました(笑)。インターネット企業を志す人は周囲にはあまりいなかったのですが、私が希望した企業は、ものすごい成長をしているインターネット業界の中でも、当時ナンバーワンの成長を見せていました。ナンバーワンで働く=自分もナンバーワンの成長ができるのではないかと興味を持ちました」

 他の学生が複数社にエントリーするのを尻目に、白浜さんは早い段階からこの2社に絞り込んでいたという。将棋を指す白浜さんだけに、独自の戦略があったのだろうか。その辺りを本人に尋ねてみると、次のような答えが返ってきた。

 「将棋は判断の速さがものをいいます。与えられた時間内に何十、何百と考えられる手の中から、刈り込んでいき最善手を選ぶ必要があるのです。就職先候補を早い段階で絞り込んだのは、身に付いていた習慣かもしれません(笑)」

 白浜さんは大手インターネット企業を選んだ。

 「将棋はあくまでも趣味。成長著しい企業に身を置くことで、自身も成長できるのでは、と考えました。インターネットに興味を持ったきっかけであるSNSの開発に携わりたいという気持ちもありました」

優秀なエンジニアのために会社の制度改革に挑むも……

 インターネット企業入社後は、同社が運営するメインサービスのポータルサイト開発チームに所属する。しかし、学生時代は宇宙と将棋尽くしだったため、本格的にプログラミングを学んだのは入社時の研修が初めてだったという。

 「仕事は企画担当が企画し、それ以降の工程を一貫してエンジニアが担当する、やりがいの大きいものでした。今でも同社のポータルサイトには、私が手掛けた部分が残っていて懐かしく思います」

 そうしてポータルサイトの開発を続けながら、5年ほどたった頃のこと。白浜さんは複数のチームのマネジャーを兼任していた。その中に、周囲よりも成長が著しく、技術力が群を抜いているエンジニアがいた。

 「その人はずばぬけて優秀だったので、実力に見合う報酬を受け取るべきだと判断しました。それを上長や会社に掛け合ったのですが、答えは『NO』。給与テーブルにない待遇は難しいと言われました」

 会社に大きく貢献している人が、既存の仕組みから突き抜けているというだけで損をするのはおかしいと考えた白浜さんは、「制度の方を変えるべきだ」と進言したが、かなわなかった。仕事には何も不満がなかったが、これをきっかけに「制度を変える」ことを実現できる環境を志すようになった。

 一見、風通しがよく、柔軟性に富んだ組織体に見えるインターネット企業であっても、組織が巨大化するにつれ、柔軟さを失い、硬直化してしまうということかもしれない。

 そして白浜さんは、転職した。

 転職先は大手インターネット企業だ。しかし、同じ業界、同じ規模の会社。同じ問題があるかもしれないとは考えなかったのだろうか。

 面接で前職の退職理由を正直に語った白浜さんに、採用担当者は理解を示し「ウチで一緒に仕組みを作っていきましょう」という言葉を掛けてくれたそうだ。ちょうど主力サービスをオンプレミスからクラウドに移行する時期でもあり、会社が変わろうとしている空気が感じられたという。

 しかし、こちらも1年ほどで退職することになる。

 「やはり仕事は面白かったのですが、仕組み作りの部分は『もう少し待ってほしい』の繰り返しで、思い描いていたものとは違いました。やはり、大きくなった組織の制度をすぐに変えるのは難しいのかな、と思いました」

 ちょうどその頃、最初の会社で一緒に仕事をしていた簗島(やなしま)亮次氏から白浜さんに声が掛かる。簗島氏は2013年にデータマネジメントプラットフォーム(DMP)企業である「インティメート・マージャー」を立ち上げていた。

インティメート・マージャーで最善の一手を

 社員数30人、うちエンジニアは4人というコンパクトな企業であるインティメート・マージャーは、ようやくサービスが軌道に乗り始めたところで、制度整備はこれから。開発業務にも制度作りにも力を発揮できる、白浜さんには願ってもいない環境だった。

 「これまではSNSやソーシャルゲームでしたが、今度はビッグデータを活用したマーケティングサービスがメイン。少し勝手は違いますが、B2B2Cのサービスプラットフォームを提供しているという点では変わりません。しかも、4.7億ユニークブラウザによる膨大なデータを既に保有している点は大きなアドバンテージです。大量のトラフィックを処理するなど、技術的にも興味深いですね」

 一方、会社側にとっても、エンジニアの数は増え、組織化していく時期に、白浜さんのような視点を持つエンジニアは貴重な存在だったという。

 同社における白浜さんの業務領域は、前職時代に比べて格段に広がった。開発実務はもちろん、制度面を含めた組織づくりにも取り組み、既にエンジニアの採用や、部内のカルチャー醸成を手掛けている。問題意識を持っていた分野に取り組めるとはいえ、かかる負荷も大きいのではないだろうか。

 「確かに責任は大きいのですが、大きな裁量も持たせてもらい、決定権もあります。社長と毎日1on1ミーティングを行っていますので、意思決定がスピーディーで、物事を進めていく上でのストレスはありません」

 白浜さんにとって、2019年は大きな正念場になる。というのも、エンジニアが10人を超える辺りから、制度作りが次第に難しくなってくるだろうと考えているからだ。そして2019年中にエンジニアの数は10人を超えるはずだ。前職や前々職時代のような融通が利かないものではなく、柔軟性に富みながらも破綻がなく、仕組みを突き抜けた人が損をしない制度が設計できるかどうか、試されようとしているのだ。

 将棋の世界には、先人たちが長年にわたり築いてきた「定跡」というものがある。定跡は、将棋で勝つために知っておくべき手筋ではあるが、必勝法というわけではない。「名人に定跡なし」という格言があるように、将棋の名人は、数々の定跡を踏まえた上で、その上を行く独創的な一手を指し、周囲の人たちを驚かせるという。

 「年内には骨格を作り上げ、エンジニアが力量や成長に見合った評価と報酬を手にできる、そんな組織にしていきたいですね」

 白浜さんは既に、定跡を超える最善手を指すための思考を始めている。

採用を担当した 代表取締役 簗島亮次さんに聞く、白浜さんの評価ポイントと入社後の活躍の様子

 わが社はアドテクノロジーの業界の中でも取り扱うデータがかなり多く、効率良く、大量のデータを扱う機会が多いので、白浜さんの大量のユーザーデータを処理して活用しているソーシャルゲームの業界経験がマッチすると思い、採用いたしました。

 白浜さんはソーシャルゲームのプラットフォームの基盤の開発を行っていたので、大規模なデータを、高速に決められた時間内で処理し、エンドユーザーに対して提供するスキルに長けています。今後、より利用者数、データ規模が拡大していくであろうわが社には最適な人材だと思いました。

 入社後は、期待以上に活躍してくれています。サービス内の多岐にわたる領域で課題を解決してもらい、以前よりも一段スケールが上がった事業に耐えられる基盤、バックエンド、APIの構築を実現しました。

 本年からは新規サービスや新規事業のための基盤の構築も開始しており、開発面からの事業の創出もトライしてもらいたいと考えています。


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写真:浦本康平

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提供:株式会社マイナビ
アイティメディア営業企画/制作:@IT自分戦略研究所 編集部/掲載内容有効期限:2019年3月31日

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