今やWebサイトは企業にとって重要な顧客接点となっている。その制作・運用の在り方が収益・ブランドに直結することも広く認識され、トラフィックが増減する中でも安定的に運用し、いかに機会損失を防ぐかが重視されている。だがSNSの浸透などを受け、突然のトラフィック急増なども増えている今、この安定運用を担保することがなかなか難しい。では人気テレビ番組で紹介された企業の場合、どのような対策によってこの課題に対応したのか?――多数の企業のWebサイト制作・運用実績を持つトライド(TRYD)に、実際のプロジェクト事例を聞いた。
DX(デジタルトランスフォーメーション)のトレンドを背景に、Webサイトが企業の収益・ブランドを左右する重要な顧客接点となって久しい。自社Webサイトを持つことはもちろん、自社サイト上でECを展開する例も当たり前になっている。
ただ一般に、Webサイトへのアクセス数を予測するのは難しい。そのため、「想定したピークに合わせてリソースを調達すると、平常時に無駄が生じてしまう」「コストを抑えたところ、予期せぬトラフィック増にサイトが落ちてしまう」といった問題が起こりやすい。「Webサイトの安定性とコストのバランスをどう取るのか」という課題は、規模・業種を問わず、今多くの企業を悩ませているといえるだろう。
では一体どうすれば、トラフィックの急増にも耐え、機会損失・信頼失墜を防げるWebサイトをコスト効率良く制作・運用できるのか?――その一つの解を提示するのが、企業向けのWebコンサルティング/Webサイト制作業務を展開しているトライド(TRYD)のプロジェクト事例だ。
福岡県福岡市を拠点とするトライドは、規模・業種ともに幅広い顧客を持ち、そのサービス提供エリアも全国におよぶ。というのも、同社は単なるWebサイト制作会社ではなく、集客や売上など、「Webサイトを通じたコンバージョン向上」をビジネスの主軸としている。その“成果”にコミットする点が支持され、着実に実績を積み重ねてきたのだという。トライドのプランナー・Webマーケターの船間英晃氏は次のように話す。
「現在は企業規模を問わず、ホームページが重要な顧客接点になっています。単純にホームページを制作するだけでは、施策としてあまり意味がありません。問い合わせや資料請求の数を増やしたり、Web通販の売上を伸ばしたりといった“コンバージョンを意識したサイトづくり”を提案することが、われわれの中心的な提供価値だと認識しています」
なお、同社では常に固定のスタッフがコンサルティング/サイト制作を担当するのではなく、まずプランナー/マーケターがクライアントニーズを聞き出し、“ゴール”に最適な知見・スキルを持つパートナー企業やクリエイターを選出。案件ごとにチーム編成するスタイルを採っている。一般に、Web制作というとデザイナーやプログラマーなど、自社に所属するスタッフの強みを生かした提案を行うケースが多いが、ともすると提案するポイントがデザインに偏ったり、プログラムに偏ったりしがちな傾向もある。「Webサイトを通じたコンバージョン向上」というゴールの明確さと、そのための独自のチーム編成というスタイルも、同社の強みを支えているといえるだろう。
そんなトライドがWeb制作を進める上で、近年特に懸念するようになった問題が、「想定を超える突発的なアクセス増が、世間一般で頻繁に起こるようになったこと」なのだという。
「近年はスマートフォンの普及によりWebサイトへのアクセスが容易になった他、SNSも浸透し、特定のトピックが急激に拡散されることが増えています。これを受けて、ある製品/サービスがニュースサイトやテレビなどで紹介されて、情報提供元のWebサイトがダウンするという事象が珍しくなくなっています。特に近年は、テレビを見ながらSNSに投稿したり、スマホから注文したりといった消費行動が当たり前に見られます。その分、Webサイトへの負荷が高まっているのです。Webサイトのレスポンスが低下したり落ちたりすれば機会損失に直結するわけですから、成果の獲得を目標とするクライアント、弊社ともに、Webサイトの安定性をコスト効率よく担保することは大きな課題だったのです」(船間氏)
無論、こうした状況に対応するために、もはやクラウドは欠かせない存在となっている。負荷に応じてWebサーバやデータベースなどをスケールアウトさせることで、レスポンスの遅延やサイトダウンを防ぐことができる。だが、クラウド利用にはハードルも存在する。
「Webサイトを納期内で迅速に立ち上げ、低コストで運用する上ではレンタルサーバーを使うのが効率的です。しかしアクセス負荷への対策を考えれば、クラウド利用を検討することになります。とはいえクラウド利用するには、インフラ構築・運用のスキルを持ったエンジニアの力が必要ですし、スケールアウトすることで利用料金の追加もあり得ます。つまり、スキルや人件費、コストの問題をどうクリアするかが大きな課題になるのです」(船間氏)
そしてある日、“懸念”が現実となった。トライドの顧客である七洋製作所の社長、内山素行氏がテレビ東京の人気経済番組「カンブリア宮殿」に出演することが決まったのだ。七洋製作所は「南蛮バッケン」という業務用オーブンを開発した福岡県のメーカーだ。有名洋菓子店や製パン店を中心に、同所の南蛮バッケンが全国で続々と採用されていたことを受けて、番組で取り上げられることになったのだという。
この番組は2018年11月29日、「絶品スイーツを陰で支える魔法のオーブン! 倒産を乗り越え生み出した"大逆転ものづくり"」と題して放送された。だが出演が決まった当時は、トライドが七洋製作所のWebサイトを制作中の段階であり、放送日も2019年1月が予定されていたという。
「人気番組ということもあり、放送に伴うアクセスの急増が予想されました。当初はレンタルサーバーを利用していたのですが、おそらくアクセス増に耐えられません。しかし、クラウドを使えば、人件費をはじめ制作・運用コストが上がってしまう。さらに、途中で放送日が11月に変更されたことを受けて、納期も3カ月短縮することになりました。どうすれば求められたコスト、納期で、アクセス急増にも耐えられるサイトを制作・運用できるのか――これには頭を抱えました」(船間氏)
そんな時に出会ったのが、GMOペパボの「ロリポップ!マネージドクラウド」だった。以前からの知人であったGMOペパボ ホスティング事業部の林田祥氏が、個人のSNSで、ロリポップ!マネージドクラウドの特長を紹介していた投稿が、たまたま目にとまったのだという。
「SNSに書かれていたのは『御社のWebサイトはバズったときに耐えられますか』という内容でした。ロリポップ!マネージドクラウドは突発的なアクセス増に強いサーバであり、クラウドのように自動的にスケールアウトできる。同時にレンタルサーバー同様の使い勝手を備え、運用もGMOペパボに任せることができる――まさに求めていたサービスだったのです」(船間氏)
タイミングも絶妙だった。SNSへの投稿を目にしたとき、船間氏はクラウド利用を前提とした見積書を作り終え、翌朝には七洋製作所に持参するところだったという。船間氏は、すぐに林田氏に連絡し、説明を受けるためのアポを取り付けたそうだ。林田氏はロリポップ!マネージドクラウドの特長についてこう話す。
「ロリポップ!というブランド名がついているように、まさしくロリポップ!レンタルサーバー同様の使い勝手の良さを持ちながら、クラウドのようにオートスケール機能を備え、突発的なアクセスにも柔軟に対応できることが大きな特長です。オートスケールにはコンテナ技術を活用し、アクセスが急増すると自動的にコンテナが追加され、負荷分散してサイトが落ちないようにする仕組みです」(林田氏)
また、クラウドは従量課金が基本。前述のように、オートスケールによって利用料金が跳ね上がる場合もあるが、「そうしたことがないよう、一定の料金に達したら追加するコンテナ数を増やさないように上限を設ける、アラートを発するといったこともできる」点が支持されているという。
さまざまなアプリケーション環境のコンテナが提供されており、Web制作に必要な基盤を簡単に構築できることも大きな特長だ。WordPressなどのインストール・設定を自動で行える他、PHP、Ruby on Rails、Node.js、Golang、Pythonなど、プロジェクトに必要な言語やライブラリ、フレームワークをワンボタンで選択・設置できる。WordPressで構築したサイトをそのままオートスケールさせることも可能だ。つまり、開発者はWeb制作に集中でき、納期短縮にも寄与するわけだ。
さらにマネージドサービスであるため、OSやミドルウェアのアップデート作業もGMOペパボに一切を任せることができる。その後の運用においても、手間とコストを抑えながら、安定性とセキュリティを同時に担保できる格好だ。
船間氏は、GMOペパボからのアドバイスとサポートを受け、制作過程だった七洋製作所のWebサイトをロリポップ!マネージドクラウドに移行した。前述の特長から制作はスピーディーに進み、前倒しされた納期にも余裕を持って対応することができた。そして2018年11月29日、いよいよ「カンブリア宮殿」の放送当日を迎えることになった。
「シミュレーションはしていましたが、当日のアクセス数はやはり相当なものでした。放送開始直後から膨大なアクセスが殺到し、トップベージのレスポンスがもたつく瞬間はあったものの、その後すぐ遅延なくレスポンスを返すようになり、放送終了までトラブルなく乗り切ることができたのです」(船間氏)
1時間の放送中のユニークユーザー(UU)は実に約2万UU、PVは6万PVに達していた。最大オートスケール数は50台に及んだという。
アクセス過多を乗り切り、Webサイトの安定性を担保したことによる効果は絶大だった。放送終了から1カ月間で、七洋製作所には500件以上の製品問い合わせが来たという。それまではおよそ月に20件程度。約25倍にコンバージョンが向上したことになる。
一般的なWebマーケティングのシミュレーションでは、B2B案件の場合、1件の問い合わせを獲得するために、約2〜5万円の広告費がかかることが多いという。これを基に単純計算すると、500件で数千万円分の広告効果を生んだことになる。
船間氏は、「Webサイトのレスポンスと安定性を担保することがいかにビジネスチャンスにつながるかがよく分かるケースでした。もしサイトが落ちていたら、こうした成果の多くを失っていたことになります。われわれの責任の重大さをあらためて実感しました」と振り返る。Webサイトの制作・運用コストについても、見積もりの段階で検討していたパブリッククラウドと比較して、人件費などを含め、大幅に削減することができたという。
なお、放送当日は、林田氏も過去のテレビ放送の事例を基にシミュレーションを重ねた上で、GMOペパボのオフィスにスタンバイしていたそうだ。特別に個別対応したわけではないが、サポートの一環として事態の推移を見守っていたという。
「PVはほぼ想定通りでした。ただ、七洋製作所さまのWebサイトはハイスペックなオーブンという商品特性や、作り手としてのブランドを伝えるために、画像や動画を豊富に取り入れたリッチなページで構成されています。その分、容量は大きくなり、サーバに負荷がかかりやすい作りになっているのです。また最近はスマートフォンからのアクセスが多いため、ユーザビリティを担保するために、できるだけページ遷移をさせない導線を築いています。つまり1ページ当たりの容量が自ずと重くなるのです。実際、七洋製作所さまのWebサイトのトップベージは、1アクセスで発生するリクエスト数が一般的なトップベージの約10倍です。こうした特性を持ちながら、トラブルなく乗り切ったことで、私自身もロリポップ!マネージドクラウドの信頼性を確認することができました」(林田氏)
船間氏は、「放送終了から多くの問い合わせを受けたことで、七洋製作所のビジネス拡大に貢献できたことが何よりの喜びです」と話す。七洋製作所からも感謝され、内山社長からは破顔一笑、食事をごちそうにもなったそうだ。これを受けて、新たなWebサイト企画も立ち上がっているという。船間氏は、ロリポップ!マネージドクラウドを活用したことの意義を次のように語る。
「最も大事なのは、Webサイト制作・運用を通じて“具体的な成果”を出すことです。Webサイトを制作したり、インフラを構築・運用したりすることではありません。そうした前提の下、ロリポップ!マネージドクラウドは、まさしく“本来的な業務”に集中できる環境を提供してくれました。今回は、弊社の考える“Webサイト制作プロジェクトのあるべき姿”に非常に近いものだったと考えています」
林田氏も、「Webサイトが重要な顧客接点となっている今、その安定運用はサイト運営に関わる誰もが切実に願っていることです。ただ、クラウドを使うための技術的ハードルや管理コストは大きく、安定運用を実現するためのハードルが高かったのではないでしょうか」と概観する。
「ロリポップ!マネージドクラウドは、まさしくそうした方々に応えられるサービスです。例えばプランナー/ディレクター、エンジニア、デザイナーという3人のチームで安定したWebサイトの制作・運営を担うことも可能なのです。ぜひ本来業務に集中するための手段として、ロリポップ!マネージドクラウドを幅広い方々に活用いただきたいと思います」
レンタルサーバーの使いやすさとクラウドのメリットを兼ね備えたロリポップ!マネージドクラウド。トライドと七洋製作所のように、Webサイトを通じてビジネスチャンスをしっかりとつかむ企業がこれからも増えていくに違いない。
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提供:GMOペパボ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2019年4月11日