日鉄ソリューションズの数あるソリューション部門の中で異彩を放っているのが、IoXソリューション事業推進部だ。正解のない世界で、多様な人材が持つ知識や技術を複合的に駆使し、人に役立つシステムを追い求めている。
「モノのインターネット」を意味するIoT(Internet of Things)の概念は、現在では製造や物流をはじめ、幅広い業界や企業に知られることとなった。工場の製造ラインの要所に設置された設備や機器から各種センサーを用いて稼働データを収集し、生産性向上や予防保守に役立てるなど、実用システムの構築も進んでいる。
だが、こうしたITの導入効果が、まだまだ十分に行き渡っていない領域も数多く残されている。「ヒト」はその最たるものだ。
例えば、工場内で働く作業者の安全はどのようにして守られているだろうか。工場内では常にヘルメットを被り、安全靴に履き替えるなど安全対策が取られているが、これだけで危険を回避できるわけではない。安全の根本的な部分はルールの徹底や教育などを通じて、作業者自身に委ねられているのが実情だ。
もちろんそれで事故が起こらなければいいのだが、多くの現場で事故がなくならないのが現実だ。不慣れな作業による操作ミス、逆に慣れ過ぎた現場での気の緩み、体調不良や日常生活での心配事を抱えた中で起こしてしまう不注意など、人間であるが故のリスクを完全に排除することはできない。
この課題に目を付けたのが「日鉄ソリューションズ」(呼称:NSSOL「エヌエスソル」。2019年4月に「新日鉄住金ソリューションズ」から社名変更)で、IoTに「ヒトのインターネット」を意味するIoH(Internet of Humans)を融合した「IoX(Internet of X)」というコンセプトを打ち出した。モノとヒトによって営まれているあらゆる現場を対象とし、IoTとIoHの高度な連携、協調を図ることで現場の動きをデジタル化する。これによって高度な安全、安心を確保し、なおかつスマートな現場業務への変革を促していく仕組みを意味するものである。
このIoXのビジネスを本格的に展開していく母体組織として2016年4月に立ち上げられたのが、IoXソリューション事業推進部である。
そこでは今、どのような活動が繰り広げられているのだろうか。同推進部の専門部長として数々のプロジェクトとそこに携わるメンバーを見てきた本堂直浩氏と、キャリア採用として2017年7月にメンバーに加わったエキスパートの鈴木秀一氏に話を聞いた。
9人で2016年4月にスタートしたIoXソリューション事業推進部は、それから丸3年が経過した2019年4月現在、総勢46人の組織へと拡大している。どのような人材が集まったのかというと、その顔ぶれは実に多彩だ。
「製造業向けのシステム構築を担当していた人、中央官庁のシステム構築をマネジメントしてきた人、金融向けの先端ソリューションを開発していた人、海外のグループ会社から戻ってきた人、システム研究開発センターでAI、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)を研究していた人など、異なるバックグラウンドや経験、スキルを持ったタレントを結集した。IoXのソリューション開発は正解のない世界で、より良い道はないかと探し求めるようなものだ。多様な知識や技術を複合的に駆使しながらプロジェクトに当たる必要がある」と本堂氏は語る。
その意味でIoXソリューション事業推進部はNSSOL社内でも異彩を放ち、ベンチャー的な雰囲気を醸し出しているという。
「私は前職で製造業向けの業務システム開発の他、PLMやERP、IoTなどのパッケージの提案、導入支援に従事してきた。ここでは私と似たような経歴を持つ人はあまりおらず、それぞれ違った技術分野を専門とする人たちが混在している。NSSOL生え抜きの人だけではなく、私と同じようにキャリア(中途)採用で前の部門に入社した人が3分の1くらいを占めている。そんな組織だから、『新参者』といった引け目など全く感じることなく、入社したその日からフルスロットルで活動を始められた。これは良い意味での驚きだった」と鈴木氏も語る。
IoXソリューション事業推進部が手掛けるビジネスの特長として特筆しておきたいのが、多数のプロジェクトが同時並行、かつ短サイクルで進められていることだ。こうした背景もあり、組織の立ち上げからわずか3年という短い期間にもかかわらず、開発してきた多くのシステムが、さまざまな現場で既に実用化されているのである。
工場やプラントなどで働く作業者の「安全見守り支援」もその一つだ。
作業者にスマートフォン、スマートウォッチなどの端末を装着してもらい、一人一人の作業者の現在位置やバイタルなどの情報を管理者がリモートで把握できるようにするものだ。また、作業者自身も自分が正しい安全な場所にいるのか、心身の状態は正常か、同僚は近くにいるかといったことを確認できる。
「NSSOLは長年にわたって親会社である日本製鉄のシステム構築や運用を支えてきた実績があり、製鉄という過酷な現場を熟知している。安全見守り支援はその知見をフルに生かしたもので、例えば作業者が危険エリアに侵入したり、作業場所で転倒したりといったインシデントが発生した場合、即座にアラートを発信する」と本堂氏は語る。
ある物流現場では「ピッキング作業支援」というIoXソリューションが導入された。
インターネット通販などの発送業務を担っている倉庫の現場は、クリスマスや入学、進学時期など、シーズンによって業務の繁閑の差が激しく、熟練した作業者を安定的に確保するのが難しい状況だ。このため繁忙期には未経験者や初心者を一時的なピッキング作業者として大量に採用するのだが、作業効率の低さや商品の取り間違い、教育の負担などが課題となっている。そうした課題に対してこのIoXソリューションは、ウェアラブル端末(スマートグラス)を活用することで、経験の浅い作業者に対するハンズフリーのナビゲーションを行うのである。
スマートグラスを装着した作業者がモニター画面に表示されたピックリストを見ると、商品が収められている棚まで音声や矢印などで誘導が行われる。棚にたどり着くと、区画ごとにQRコードが貼付され、緑(OK)と赤(NG)で色分け表示される。緑で表示された区画の中に目的の商品が収められているわけだ。さらに、取り出した商品のバーコードを見ると、リストと合っているかどうかの判定が色と音声で返される。
このように最小限の教育で、効率的かつミスのないピッキング作業を実現することができるのである。実はこのIoXソリューションの導入プロジェクトを主導した人物こそ、ほかでもない鈴木氏なのだ。
「前職ではウェアラブル端末を扱う機会がなかったが、NSSOLに入社して初めて扱うことになった。スマートグラスに内蔵されたCPUはスペックが低くメモリ容量も少ないので、かなりシビアなアプリケーション設計が要求されたが、ウェアラブルに詳しいメンバーから意見やアドバイスをもらいながら、何とか性能面の課題をクリアできた。苦労したのは事実だが、その分、知識の幅を広げられた」と鈴木氏は振り返る。
鈴木氏は現在、別のプロジェクトを主導している。店舗を訪れた顧客に対して、スマートフォンを通じて探している商品の売り場を案内したり、お薦め商品を案内したりするRFIDを活用した小売業向けのシステムだ。
「『安全見守り支援』の開発にも加わったので、入社してからの約1年半で手掛けたプロジェクトは3つ。これがIoXソリューションビジネスのスピード感だ」と鈴木氏は強調する。
もちろん今回のRFIDも、鈴木氏にとって取り扱うのは初めてだ。無線系のデバイスだけに、机上の計算通りに店舗内で電波が届くわけではないので、現場に足を運んで機器を調整するなど、苦労も多い。
「さまざまな判断が求められるプロジェクトの局面で、一人一人にかなりの自由度と裁量が与えられているので動きやすいが、納期や予算もあるから、かえって責任は重大だ」と語る鈴木氏は、「プレッシャーにあふれていて、波乱万丈の毎日です」と楽しそうに笑う。
前職とは180度異なる刺激的な日々を過ごしている鈴木氏だが、その分やりがいも大きくなったという。
「私が手掛けたシステムが、もしかしたら工場やプラントの現場や、物流、小売りなどの慢性的に人手不足な状況の現場で活用されることで、働き方改革が進むかもしれない。自分が社会課題の解決に貢献しているという実感は、NSSOLでIoXソリューションビジネスに関わっているからこそ得られる喜びだ」と鈴木氏は目を輝かせる。
一方で本堂氏は、「ヒトと深く関わっていくシステムだからこそ、人間にしか作り出すことができません」とIoXソリューションの本質を説く。今後は、ビジネスをさらに加速させ、拡大していくために、多様な個性をもった、より多くの人材を社内外に求め、IoXソリューション事業推進部における組織の活性化とメンバー間の創発を促していく考えだ。
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提供:日鉄ソリューションズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT自分戦略研究所 編集部/掲載内容有効期限:2019年5月1日
製造や物流をはじめ多くの現場は「Humans(ヒト)」と「Things(モノ:機械・製品など)」によって支えられています。当社は、機械・部品が互いにつながる「IoT(モノのインターネット)」と、ヒトがIT武装によって互いにつながる「IoH(ヒトのインターネット)」が、高度に連携・強調することにより大きな成果を出すコンセプトを「IoX」と総称して、各種IoXソリューションを展開しています。