「ハイブリッド/マルチクラウド環境のデータ管理」は本当にシンプルにできるのか?PoC実施企業に聞く、NetApp製品の評価と感想

「多種大量のデータからいかに価値を引き出すか」がビジネス差別化のカギとなっている今、企業には効率よくデータを保管・活用できる環境の整備が求められている。このためにはパブリッククラウドが不可欠だが、オンプレミスとは“作法”が異なるクラウドとのハイブリッド環境でデータを管理するのは決して容易なことではない。ましてやそれぞれ作法が異なる複数のクラウドを使うとなればなおさらだ。では一体どうすれば、ハイブリッド/マルチクラウド環境でデータを効率良く管理・活用できるのか?――NetApp製品でPoCを実施した企業に、その評価と感想を聞いた。

» 2019年05月14日 10時00分 公開
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効率的なデータ蓄積・活用のカギ、「ハイブリッド環境」実現の難しさ

 デジタルトランスフォーメーション(DX)トレンドに伴い、収益の源泉であるデータから「いかに価値を引き出すか」が企業経営を左右する状況になって久しい。特にクラウドは多種大量のデータを柔軟かつ効率良く蓄積・分析できる基盤として重要度が増している。

 だが言うまでもなく、単にクラウドを使うだけではデータを生かすことは難しい。オンプレミスと組み合わせて、多様なデータを安全・確実に保存したり、ニーズに応じて効率よくアクセスしたりできる“仕組み”を作ることが不可欠となる。無論、クラウド上にDR(災害復旧)サイトを構築して業務を守るなど、「価値」を引き出す以前に、データ保全の確実性・安全性を担保することも大前提となる。すなわち、データを活用するためには、オンプレミスとクラウドを連携させ、目的に応じて使い分けることが強く求められるのだ。だが「ハイブリッド環境」という言葉の浸透とは裏腹に、多くの企業にとって、このテーマは依然として難しいままだ――。

 こうした課題感に基づき、企業のクラウド活用をいち早く支援してきた1社が、新潟放送グループのシステム関連会社、BSNアイネットだ。1966年に創立した同社は、新潟市を本拠に約10年前からプライベートクラウドサービスの提供を開始。2019年4月には、プライベートクラウドと複数のパブリッククラウドを組み合わせ、柔軟に使い分けられる新サービス「iNET Cloud Gateway」も提供開始した。BSNアイネットの坂田源彦氏はこう話す。

画像 坂田源彦氏 BSNアイネット 市場開発部 部長

 「データをクラウド上に安全に保存したいというニーズを受けて、2008年にプライベートクラウドサービス『iNET IMAGE BANK』を開始しました。これはクラウドに特有のスキル・知識が必要になることや、セキュリティ面の不安など、クラウド活用のハードルを解消し、手軽かつ安全にメリットを享受いただくために作った閉域網型のサービスです。10年の提供実績があり、多くの企業にご利用いただいていますが、近年はデータの安全・確実な保管に加え、活用を求める声も高まってきました。そこで2019年4月、プライベートクラウドサービスにAWS、Azure、Salesforceなどのパブリッククラウドを連携させ、目的に応じて使い分けられるようにするハイブリッドクラウドサービスiNET Cloud Gatewayの提供も開始したのです」(坂田氏)

 通常なら、プライベートクラウド、各パブリッククラウドを個別に契約・運用する必要があるが、iNET Cloud Gatewayでは契約・運用をBSNアイネットが取りまとめて一元管理できるようにする。プライベートクラウドには閉域網での接続が可能なため、セキュアにハイブリッド環境を利用できるようになる。すなわち、“データ活用の前提条件”をサービスとして実現する格好だ。

ハイブリッド環境でのデータ管理を容易かつシンブルに――「NetApp Cloud Volumes ONTAP」と「NetApp FabricPool」を検証

 BSNアイネットは、そうしたiNET Cloud Gatewayをさらに進化させるため、NetAppの「NetApp Cloud Volumes ONTAP」(以下、Cloud Volumes ONTAP)と「NetApp FabricPool」(以下、FabricPool)の機能検証を実施したという。というのも、BSNアイネットでは、iNET IMAGE BANKのサービス基盤にストレージOSの「ONTAP」をはじめ、NetAppのストレージ製品群を長年活用してきたためだ。iNET Cloud Gatewayも、「データファブリック」という概念に基づくNetApp製品群がサービス着想・開発のカギになったという。NetAppの笹岳二氏はNetApp製品について次のように話す。

画像 笹岳二氏 ネットアップ アライアンス 営業推進本部パートナーSE部 部長

 「NetAppのストレージ製品群は『データファブリック』というコンセプトの下、オンプレミス、クラウドを問わず、どの環境でも、同じ操作、同じ仕組みでデータにアクセス・活用できることを特長としています。Amazon、Microsoft、Google、Alibabaといったハイパースケーラーとパートナーシップを結び、各クラウドに多様なデータサービスを提供しているため、クラウド間でデータを移行したり、オンプレミスに戻したりといったことも容易に行えるのです。単一のクラウドから、ハイブリッド、マルチクラウドまで、あらゆる環境の全てのワークロードを支援することがわれわれの狙いです」(笹氏)

 長年にわたり、BSNアイネットのサービス基盤構築を支援してきたディストリビューター、SB C&Sの羽尾和弘氏も次のように話す。

画像 羽尾和弘氏 SB C&S ICT事業本部 MD本部 ICTソリューション販売推進統括部 HCI&Storage販売推進部 部長

 「DXトレンドを受け、単にデータを安全にためるだけではなく、ためたデータをどう生かしていくかが問われています。そこで重要になるのがデータマネジメントです。一方で、データ活用に一層の効率とスピードが求められている今、クラウド活用が不可欠になっています。つまり、“ハイブリッド環境下でのデータマネジメント”が、データ活用の成功のカギを握っているといえるでしょう。NetAppの製品群は、まさしくそうしたハイブリッド環境でのデータマネジメントを実現・高度化を支援する機能を備えているのです」(羽尾氏)

 ではBSNアイネットが新たに着目した2製品は、具体的にはどのようなものなのか?――まずCloud Volumes ONTAPは、クラウド上にデプロイできるソフトウェアデファインド型のONTAPだ。ONTAPがストレージOSとして提供する各種データ管理機能をAWSやAzureで利用することができる。

画像 図1 「NeaApp Cloud Volumes ONTAP」の概要と特長。クラウド上のデータもオンプレのONTAPと同様に管理できる

 具体的には、NFS/CIFS/iSCSIを統合したストレージアクセスや、重複排除・圧縮、暗号化、スナップショットなど各種機能を備えている。もちろん、ONTAPの既存ユーザーから定評のある遠隔地レプリケーション機能「SnapMirror」、バックアップ機能「SnapVault」も利用できる。また、専用管理ツール「OnCommand Cloud Manager(OCCM)」を使うことで、オンプレミスのONTAPとクラウド上のONTAPを一元管理できる点も特長としている。

画像 図2 専用管理ツール「OnCommand Cloud Manager(OCCM)」。クラウドとオンプレのデータを一つのWebUIから一元管理できる

 一方、FabricPoolは、オンプレミスのフラッシュストレージとクラウドストレージを連携させ、1つのデータプールを作る技術だ。アクセス頻度によってデータを自動階層化し、「高頻度でアクセスされるホットデータはフラッシュに、あまり使われないコールドデータはクラウドストレージに移動させる」といったことができる。細かな設定は不要であり、ユーザーはコストを抑えながらデータ活用に集中できる。

画像 図3 オンプレとクラウドで1つのデータプールを作り、データへのアクセス頻度に応じて自動化的に階層化、コスト効率とデータ活用の利便性を両立させる

 BSNアイネットはそうした特長に着目。iNET Cloud Gatewayをさらに進化させるため、NetAppのCloud Volumes ONTAPとFabricPoolの機能検証に乗り出したというわけだ。

オンプレで培ったONTAPのノウハウをそのまま利用できる。

 検証はSB C&Sと共同で実施した。検証に携わった天木聡氏は次のように話す。

画像 天木聡氏 BSNアイネット市場開発部

 「主にDRを想定してAzure環境で検証を行いました。検証項目は、大きく操作性の部分と実装の部分です。まずAzure上にCloud Volumes ONTAPを構築し、オンプレミスのAll Flash FAS(AFF)とFabricPoolを使ってデータプールを作成しました。操作性については、特にFabricPoolは設定が容易で、ユーザーにとっても非常に使いやすいことを確認しました。NetApp製品は機能追加やバージョンアップも速く、私自身が知っているNetAppと異なる部分も多いのではないかと懸念していましたが、まったくの杞憂(きゆう)でした。シンプルなUIでセットアップに困ることはまったくありませんでした」(天木氏)

 天木氏とともに共同検証に携わったSB C&Sの土肥達郎氏もこう評価する。

 「Cloud Volumes ONTAPについては、拠点間ネットワークの知識やAzure側での事前準備が必要にはなりますが、それをクリアしてしまうと、Cloud Managerから全管理が可能になります。設定自体は30分ほどで終了しました。NetAppに慣れた人はもちろん、クラウドに慣れていない人でも簡単にクラウド上にDRサイトを構築できます」(土肥氏)

画像 土肥達郎氏 SB C&S MD本部技術統括部 第1技術部1課

 特に「AzureのBLOB(Binary Large Objects)側でBLOBコンテナなどの設定をする必要がなく、Cloud Volumes ONTAP側からキックして自動的に階層化のティアを作成できる」点は操作性の面で高く評価できるという。また「遠隔地レプリケーション機能のSnapMirrorをドラッグ&ドロップ操作で設定できる」点も大きな特長だ。

画像 ドラッグ&ドロップでレプリケーションの操作が可能

 「これらには個人的にかなりの衝撃を受けました。NetAppがユーザー視点で製品を仕上げていることを実感しました」(土肥氏)

 DRサイトの設定とデータ移行だけではなく、リストアの検証も行った。特に評価できるのは、既存の操作手順を踏襲した管理が継続してできることだという。

 「FabricPoolは、ユーザー/アプリケーションから見ると、データのありかがオンプレかクラウドかを意識せずに済み、今まで通りのONTAPの手順でリストアを実施できます。クラウドを使っていることを意識せずに、クラウドのストレージ効率を活用できるわけです。まさしくユーザビリティとコスト効率を両立させた製品だと感じました。これはCloud Volumes ONTAPにもいえることです。Azure上にデプロイさえしてしまえば、オンプレミスとまったく同じONTAPが利用できる。今回はDR想定での検証ですが、DRのために新しい操作体系を覚えることはムダでもあります。慣れ親しんだUIで同じ手順が踏襲できることは運用において大きなメリットになります」(土肥氏)

 天木氏も、「オンプレで培ったノウハウがムダにならないことが、あらためて安心感・信頼感につながりました」と明かす。

 「長年のONTAPユーザーとして、クラウド上でのONTAPがどんなものかを確認したいという気持ちもありました。実際に触って気付いたのは、オンプレで培ったノウハウをそのまま生かすことができ、これまでも感じていた信頼感がそのままクラウドに拡張されているということです。システム規模が大きくなればなるほどONTAPへの信頼感が高まっていくと感じています」(天木氏)

製品の強みを各社各様の課題解決策に昇華――NetAppとSB C&Sの強力タッグ

 羽尾氏は、ディストリビューターという視点から見たNetAppの魅力を次のように話す。

 「マルチクラウドやハイブリッドクラウドという言葉こそ浸透してきましたが、実現はなかなか難しいのが現実です。しかしNetAppは、マルチクラウド、ハイブリッドクラウドを考慮した製品づくりを進めており、BCP(事業継続計画)やDRサイト、高度なデータ活用基盤を、コスト効率良く、簡単に構築・運用することができます。今回、BSNアイネットさんとのPoC(概念検証)を通じて、NetApp製品を使ったハイブリッドクラウドソリューションの高度な実現性・有効性とともに、ハイブリッドクラウドの効果やメリットをあらためて実感しました」(羽尾氏)

 一方、NetAppから見たSB C&Sについて、笹氏はこう評価する。

 「われわれはベンダーであり製品を開発・提供する立場です。しかし企業の目的、インフラは各社各様であるため、メリットを十分に引き出すには各社のニーズに応じてソリューションとして提供する必要があります。その点、ハイブリッドクラウドの構築でカギとなるネットワークをはじめ、NetApp製品とインテグレーションに豊富な知見があるSB C&Sは、多数のパートナーと連携し、まさしく“解決策”を提供しています。よりセキュアなデータ回線の構築、データマネジメントやAI活用の提案などはもちろん、そのPoC手順の支援まで、さまざまなシーンでユーザーを支援できることがSB C&Sの強みだと思います」(笹氏)

 なお、NetAppでは今後、「クラウド上でもONTAPを動かすことで、オンプレミスとのファブリックプールを実現する」という基本コンセプトをさらに追求していく構えだという。具体的には、中小・中堅規模の環境でも使いやすいONTAP製品の展開や、FabricPoolのティアリング機能の拡充、データ移行をより効率化するツールなどを開発・提供し、ハイブリッドクラウド、マルチクラウド環境のユーザーの裾野を拡大していく考えだ。

 こうしたNetAppの展開は、BSNアイネットのビジネスにも生かされていく。坂田氏は、「実はiNET IMAGE BANKも、NetAppとSB C&Sとのタッグによって実現したものです」と両社を評した上で、次のように今後のビジネスを展望する。

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 「新潟は2004年に中越地震を経験していることもあり、BCP/DRへの強いニーズがあります。この点で、首都圏の大手企業とは異なる中堅・中小規模の企業にもふさわしいソリューションが必要です。今後もユーザーに寄り添いながら、新しい技術・製品をキャッチアップし、着実・迅速にニーズに応えていきたいと考えています。また、新たなサービスを作る上では関係者との信頼関係も大切です。引き続き、NetAppとSB C&Sとの強い信頼関係の下で、新潟をはじめ全国のユーザーにメリットをもたらすサービスの開発・展開に力を入れていきたいと考えています」(坂田氏)

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提供:SB C&S株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2019年6月4日

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