デジタルトランスフォーメーションを支えるネットワークの姿とは?「つながる」だけではない、オートノマス・ネットワークのこれから

しばしば聞かれる「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という言葉だが、具体的にはどのような変化を意味するのだろうか。米Extreme Networksのペリー・コーレル氏はInterop Tokyo 2019の基調講演の中でDXによる変化をひもとき、DXを支えるネットワークに求められる要素を説明した。

» 2019年07月16日 10時00分 公開
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米Extreme Networksのペリー・コーレル氏

 いま、あらゆる領域で「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という言葉が叫ばれている。DXを実現する鍵の一つであるネットワークには、どのような要素が求められるだろうか。

 約30年にわたってネットワーク業界に携わり、業界団体でWi-Fiなどの仕様策定にも加わってきた経験を持つ米Extreme Networksのプロダクトマーケティング担当ディレクター、ペリー・コーレル(Perry Correll)氏が、2019年6月13日に行われたInterop Tokyo 2019の基調講演に登場し、これからのネットワークの在り方を占った。

DXの本質とは?

 DXの捉え方はさまざまだ。スイッチやWi-Fi機器だけでなく、その上でソフトウェアを生かしてさまざまなサービスや管理支援機能を提供してきたコーレル氏の場合は、今あるさまざまなテクノロジーを活用してよりよいユーザー体験、よりよいビジネスを生み出していくことをDXの本質だと捉え、「オートノマス・エンタープライズ」(自律型企業)と表現している。これを可能にするのが、無線接続も含めて場所を問わずに利用でき、高速で、セキュアで、いつでもつながる冗長性を持ち、しかもインテリジェントなネットワークプラットフォームだ。

 ただ、それはあくまでも人の能力を拡張する補佐役としてであって、技術が人に取って代わることを意味するものではない。コーレル氏は、かつて地図とコンパス頼りで飛行機を飛ばしていた航空業界で、自動ナビゲーションシステムや自動操縦、着陸支援技術の進展により、パイロットが余裕を持てるようになったことを例に挙げ、「テクノロジーはわれわれにより多くの能力を提供し、よりよい仕事をできるようにしてくれる」と述べた。

あらゆる領域を変えた「デジタル化」

 コーレル氏は自分自身の経験も交えつつ、デジタル化の前と後を比較した。昔の職場は、各人が与えられた職務に専念するものだった。誰が何をやっているか、可視性もなければコラボレーションもほとんどなかった。教育現場も一対多の画一的なものだったし、買い物は、店舗が開いている時間に合わせてこちらが出向き、限られた在庫の中から選択するしかなかった。

 今ではそうした世界は変わったとコーレル氏は続けた。「全てが互いにつながるようになり、好きなところで働けるようになった。私自身、つい先日、Wi-Fiセキュリティプロトコル『WPA3』に関するウェビナーをホテルの部屋から配信したばかりだ。さらにIoTがつながることによって、オフィスの中でも自由に移動し、指定のプリンタではなく最寄りのプリンタから印刷できるようになった。来客にも同様の体験を提供可能だ。一度きりの来客か、それとも契約社員なのかをアナリシスによって判断し、適切なアクセスを提供する。それも、いちいち受付で書類を書いてもらう必要はなく、自動的に進む。ネットワークがよりスマートになれば、こういった事柄を自律的に行えるようになる」(同氏)

 職場以外の領域も変化しつつある。学校ならば、ネットワークを介してオンライン授業を行い、誰が出席しているか顔認識技術で分かる。逆に、学生以外の不審者がいないかどうかも確認できるため、警備員が常駐しなくても仮想的な境界線で囲まれた「ジオフェンス」セキュリティが可能だ。もし見知らぬ人、不審者がいることが分かれば、そこで初めて警備員を呼べばよい。

 ショッピングの在り方も大きく変わった。技術とネットワークの進化により、オンラインショッピングで豊富な品を選べるだけでなく、実店舗側も変わりつつある。アナリティクスを活用して「この客はこのディスプレイに興味を持っているようだから、このクーポンを提供しよう」といったマーケティングを展開でき、店員側もモバイルPOSを活用して即座に在庫確認が可能だ。

 医療の世界でも、もちろんデジタル化が進んでいる。コーレル氏は「私自身は古い人間なので、まだちょっと抵抗があるけれども」と前置きしつつ、遠隔地にいる患者に対し、画像を見、コラボレーションしながらロボティクス手術を進めたり、言葉の通じない患者に対し音声認識を組み合わせてコミュニケーションを図ったり、ネットワークにつながる自動投薬ディスペンサーを実現したりと、これまでにない医療が可能になると予想した。

 このような世界が実現するための2つの条件も挙げた。「大事なのは、膨大なデータを活用しつつセキュリティを確保すること。この両方の要素が大切だ」(コーレル氏)

ネットワークを介したデータ収集と分析がインテリジェンスを実現

 このように、生活や仕事のあらゆる局面が変わろうとしている。それを可能にしているのが、「デジタル化」だ。「今や、スイッチやWi-Fiを介して膨大なデータが収集されている。これだけ大量のデジタルデータを人間が精査することは不可能であり、適切なセキュリティを確保する必要もある」(コーレル氏)

 例えば、自宅に設置した室温計のデータをネットワーク越しに見ることができれば便利だし、面白い使い方もあるだろう。けれどそのデータが、国外の見知らぬIPアドレスに送信されるようなことがあれば、懸念を抱くのが普通だろう。

 「そこで出番となるのが、自律型ネットワーク『オートノマス・ネットワーク』だ。普段と異なるおかしなことがあれば警告して人間の判断を仰いでもよい。さらに自動的に遮断、対処まですすめてもよい。いずれにせよ、ポリシーに基づいて自律動作するネットワークが必要だ」(コーレル氏)

 それを可能にするには、さまざまなデジタルデータを分析し、学習していく要素に加え、ITとビジネスを統合させ、さらにそれらをソフトウェアによって管理する仕組みが必要になるという。

 コーレル氏はさらに、「現在の問題は、20世紀のデバイスやネットワーク、さらにはメンタリティに縛られていることだ。中には『いまうまくいっているのだから問題ない』と思っている人も多いだろう」と述べた上で、かつてグローバル市場の覇者であったXeroxやEastman Kodak、それにNetflixを手に入れるチャンスをふいにしたBlockbusterといった企業の名を挙げた。

 「小さな企業も、オンラインの世界でならば大手百貨店Macy'sと競争できる。Airbnbなどの企業は、ネットワークとその上で動くサービスをうまく活用して、多くの人のニーズを満たしている。こうした事柄を受け入れなければ負け組になってしまうだろう。これを認識できるかどうかがポイントだ」(コーレル氏)

ネットワークは自律型企業の「神経系」に

 このような変化を支えるのが、Extreme Networksが推進する「オートノマス・エンタープライズ」コンセプトだという。

 オートノマス・エンタープライズに不可欠な要素は幾つかある。ソフトウェアベースで制御できる「アーキテクチャ」と「インテリジェンス」「自動化」だ。

 中でも重要なのはインテリジェンスだという。レイヤー2スイッチやWi-Fiで高速に接続することは当たり前、その上でどのようなサービスが動いているか、互いにどうつながり、どのようなセキュリティ、さらには満足度を提供できているかといった事柄を把握したインテリジェントなネットワークインフラが重要だという。

 それには、得られたデータを基に「インサイト」を分析し、機械学習(ML)や人工知能(AI)技術を活用してデータを「かみ砕き」、活用していかなければならない。それも一回きりで終わるのではなく、一連のサイクルをプロセスに落とし込み、自動化していくことが必要だとした。

 分かりやすい例はセキュリティ制御だろう。「例えば、パスワード入力を3回間違えたなら、『ユーザーがど忘れしたのかな』と思える。だが数十回も、それも短時間のうちにパスワード入力を間違えたら、これはおかしいと判断できる」と同氏。このような具合に、人手では難しい処理と判断を、機械なら実現できるとした。

 「重要人物が接続している場合、あるいはCisco WebExなどで重要な会議を進めるときには必要な帯域を割り当て、干渉を防ぎ、遅延の少ない形でスムーズに利用できるようにする。逆に隣の部屋で社員の1人が使っている私用のSkype通話の優先順位は引き下げる。こういった処理を、ヘルプデスクにいちいち問い合わせなくても自動的に行えるようにしていく」(コーレル氏)

 こうした判断を下すには、インテリジェンスが欠かせない。ネットワークから得られる大量のデータの中から通常時の振る舞い、すなわち「ベースライン」を見いだし、継続的なモニタリングの中でそこから逸脱した動きがあれば気付き、異常が発生したとアラートを投げる。そこでは人の関与も必要になってくる。自ら対応しても構わないし、機器に対処まで全て任せてもよい。ただ、いずれにせよ人が関与して決めた「ポリシー」に基づいて対応していく形だ。

 コーレル氏は「鍵を握るのはネットワーク。ネットワークは、オートノマス・エンタープライズの神経系だ」と宣言した。オートノマス・エンタープライズがよりスマートになっていくには、互いにつながり、CRM(顧客関係管理)や基幹システム、受発注システムなどと連携し、ネットワーク上で何が起きているかを可視化することが必要で、それによって初めてインテリジェンスが生まれるという。

 オートノマス・エンタープライズのもう一つのポイントとして同氏が挙げたのは、「誰のためのネットワークか」という視点だ。「ネットワークは長らく、IT管理者のために設計されてきた。だがそうではなく、管理者以外のユーザーを念頭において設計されなければならない」

 MACアドレスなどを基に、現在接続しているユーザーが誰かを認識し、サービスやアプリケーションから得られる情報を基に「今日はご家族の誕生日ですから、プレゼントはいかがですか」といったアドバイス、提案を行う。VIPがつながっていれば、優先的に帯域を割り当てる――実際にこのような対応をするかどうかにかかわらず、このような処理を自動的に行うネットワークの実現に必要な「技術」が既にそろっているという。

自動化やソフトウェアドリブン、オープンなエコシステムが不可欠に

 問題が起きたら、技術者を送り込んで調査するのではなく、自動的に修復するネットワーク。新しいアプリケーションが追加されたら、その特性に合わせて最適化するネットワーク。普段のトラフィックやパフォーマンスのベースラインを基に異常を検知するネットワーク――このようなオートノマス・ネットワークには条件がある。自動化でき、分析学習機能と統合され、ソフトウェアドリブンで、しかも1社に閉じたものではなくさまざまな企業の力を借りられるオープンなエコシステムに対応し、かつセキュアなものでなくてはならないと同氏は述べた。

 大事なのは、そうした自律的なインフラの上で、人間の意思を反映しつつループを回していくことだ。ポリシーに基づいてオーケストレーションを行い、結果を分析し、うまくいけば記録し、うまくいかないなら修正し、再度トライする……そのようなループを回すことが可能な世界を実現できれば、ビジネスはもちろん、教育も、医療も、あらゆる領域の在り方が変わっていくだろうとまとめた。

 コーレル氏は最後に、アーサー・C・クラークの「十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない」という言葉を引用し、オートノマス・ネットワークが可能にするのは魔法ではない。技術で可能なことを、人が指示した内容にそって進めてくれる――それが、DXやオートノマス・ネットワーク、オートノマス・エンタープライズの本質だという。

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提供:エクストリームネットワークス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2019年7月29日

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