プロエンジニアの道を選んだ4者4様のスタイルフリーだからこそ実現できる、「Work」と「Life」のバランス

プロフェッショナルエンジニアとしてフリーで働くとはどんな感じなのか、仕事と生活、趣味のバランスがどのように取れるのか――30年にわたってフリーランスエンジニアを支援してきたPE-BANKが開催した「プロエンジニアフォーラム 2019 -WORK FOR GOOD LIFE -」で、その実践例が紹介された。

» 2019年07月29日 10時00分 公開
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 働き方改革が叫ばれる昨今、「フリーランス」という働き方への注目が高まっている。特に、スキルや経験を備え、腕に覚えのあるエンジニアにとっては、働く時間や内容を自分で選べるフリーランスという選択肢が現実味を帯びたものになっている。

 とはいえ、会社勤めの身からフリーランスへの転身には、さまざまな不安がつきまとうのも事実だ。果たして継続的に仕事が得られるのか、収入は減らないか、むちゃな要求を突き付けられはしないだろうか、それに万一病気やケガをした場合はどうしたらいいのか……むしろ、何の心配も抱かずにいられる方が少数派ではないだろうか。

 だが実際には、思い切ってフリーランスエンジニアとなり、仕事と趣味、仕事と家庭の両立を実現して、自分らしい働き方をしている「先輩」たちがたくさんいる。

 「PE-BANK」は、前身の「首都圏コンピュータ技術者」時代から30年にわたり、共同受注体の形で営業や経理、総務といった側面からフリーランスエンジニアを支援してきた。そして今、コンプライアンスをはじめ同社が定める7つの基準を満たしたフリーランスエンジニアを「プロエンジニア」として認定する仕組みを整え、企業側が安心して発注でき、かつプロエンジニア側も安心して仕事ができる環境作りを整えている。2019年10月にはプロエンジニアの「ライセンスカード」を発行し、より働きやすい環境を整えていく方針だ。

 2019年6月22日に開催した「プロエンジニアフォーラム 2019 -WORK FOR GOOD LIFE -」で行われた「P1-グランプリ」には、全国各地でプロのフリーランスエンジニア、「プロエンジニア」として活躍する4人が登場し、プレゼンテーション形式で自身のワーク&ライフスタイルを紹介した。

東京〜仙台を週3回往復しながら母親を介護、今は多彩な趣味を楽しむ

伊藤研氏

 杜の都、仙台在住の伊藤研氏は、サーバ回りを得意とするインフラエンジニアだ。20年ほど正社員として会社に勤めていたが、転勤など会社の都合に振り回される一方で、自分がやりがいを感じる仕事に専念できない状況にストレスを感じ、2007年にプロエンジニアに転身。培ってきたスキルを生かせる上、当初不安に感じていた収入面もむしろ1.5倍以上に増え、東京で順風満帆の日々を送っていた。

 転機が訪れたのは、母親が病気に倒れ、介護が必要になったことだった。さすがに契約の解除も考えた伊藤氏だったが、当時のクライアントの好意で、東京と仙台を週に3回往復する新幹線通勤の形で仕事を継続することになった。「交通費まで出していただいた分、3日でも1週間分のパフォーマンスを出そうと心に決め、成果を出した」と伊藤氏は振り返った。

 仕事と介護を両立させる上で、自由に動ける平日があることは大きかった。公的な福祉関連の手続きは平日にしか行えないことが多い。「土日しか休めないサラリーマンのままでは、一連の手続きにずいぶん時間がかかっていたのではないか」という。

 その後、東京での仕事が一段落ついたことを機に東北支店に転籍した伊藤氏。所属する支店こそ変わったが、PE共済会を継続して利用できたため、妻が体を壊して入院したときに大いに助かったそうだ。

 そして今、伊藤氏は自分の時間をさまざまに生かしている。「フリーランスなんだから、別に商売をやってもいいよね」と思い立ち、もともと趣味だったコーヒーの自家焙煎の延長で受注生産式のコーヒーショップを開店。そのつながりで仙台周辺で行われるイベントに出店したり、コミュニティーFMの番組スポンサーになったり、学生時代の友人のつながりからバンド活動を始めることになったり……。

 思いもよらない出会いに恵まれながら、アクティブに活動している伊藤氏。「今後は、障がい者支援団体と共同でカフェを運営できないかと考えている。個人的には、ライブができるカフェ、ITを駆使したAIカフェができたらいいな」と考えているという。

思いがけない出来事で味わったどん底から「V字回復」

平岩高子氏

 中部支店の平岩高子氏は、名古屋でJava関連の開発案件に携わっている。余暇の時間には「人にやさしいIoT」を目指して介護や育児などを支援する新しい製品の開発に取り組んだり、子ども向けのプログラミング講座で講師を務めたりと充実した日々を送っている平岩氏だが、その道のりは決して順調ではなかった。

 2008年のリーマンショックが多くの企業に影響を及ぼし、リストラの波が広がったことはいまだに記憶に新しいだろう。その波をまともにかぶったのが平岩氏だった。COBOLエンジニアとして働いていたが、リーマンショックの影響で、1年半にわたり仕事も収入もゼロという状態が続いたという。

 「Javaの案件ならあるんだけどね」という言葉を頼りに、PE共済会の資格取得支援制度を使ってJava関連の資格を得たものの、今度は実務経験のないことがネックとなり、思うように仕事が得られない日々が続いた。だが平岩氏はそこで諦めなかった。

 「まずテスターとして現場に入り、3年ほどコツコツ経験を積んで、2017年に初めてJavaプログラマーとしての仕事に携わることになった」(平岩氏)

 並行してOracle Java Silverも取得し、Goldを目指し始めた矢先、今度は別の出来事が平岩氏を襲った。父親が病に倒れたのだ。介護のためには一にも二にも先立つ物が必要……ということで、昔取ったきねづかを生かし、昼はJava、夜はCOBOLというダブルワークで父親の治療費、介護費を捻出したという。残念ながら父君は2018年末に他界されたが、「最後まで寄り添えたので、後悔はない」と振り返る。

 このように山あり谷ありの道のりを歩んできた平岩氏は、自らを「V字回復エンジニア」と表現する。「この先何が起きるのか、自分にどんなアクシデントが降り掛かるかは予測できないが、立ち止まることなく、自分の人生を自分で作っていくことが大事。不安かもしれないが、自分の心に素直になり、信じて一歩踏み出せば世界は変わるし、サポートしてくれる人も現れる」と断言した。

充実した仕事があるから私生活も充実、地域にとけ込みながら活動

黒田直人氏

 九州支店の黒田直人氏は鹿児島生まれ。東京のソフトウェア企業などで働いた後、子どもが生まれたことをきっかけに、自然の中でのびのびと子育てしたいと熊本県に移住した。最初は自力で仕事を探していたが、未払いトラブルなどに直面。紆余(うよ)曲折を経てPE-BANKと契約し、熊本で働き続けている。

 黒田氏は今、熊本県の菊陽町にマイホームを構えて地域にとけ込み、東京にいたころには考えられなかったようなさまざまな活動に携わっている。1つは地元の消防団への加入だ。2016年に発生した熊本地震では地元にも大きな被害があったが、「夜中にすぐ消防団で集まり、倒壊家屋や一人暮らしのお年寄りの見回りをしたり、崩れたブロック塀を片付けたりしたし、それ以降も救援物資の配送などに携わった」そうだ。

 こうした有事だけでなく、普段から地域に密接に関わり合うことの重要性を感じた黒田氏は、地域の子供会を設立し、クリスマス会やバーベキューパーティなどさまざまな催し物を開催している。「次はぜひ子どもたちにプログラミングを教えたいと考えており、自宅で『電磁波クラブ』を開催したり、『CoderDojo』を見学したりしている」という。

 熊本の地に足を付け、充実した生活を送っている黒田氏だが、移住直後はハローワーク通いをした時期もあったという。「独立したばかりのときは、とても仕事と私生活のバランスを取る心の余裕はなかった。仕事が充実してはじめて私生活も充実できる、そんな相乗効果があるのではないか」と、自らの体験を基に振り返った。

誰かに何かの「きっかけ」を与えたい、遊び心も交えながら子どもたちを支援

富田大介氏

 P1-グランプリを受賞したのは、中部支店の富田大介氏だ。

 エンジニアとして20年以上にわたる経験を持つ富田氏だが、幼いころは、見知らぬ人とは思うように言葉を交わせない、引っ込み思案の子どもだったという。けれどある日、公園にやってきた石焼き芋屋のおじさんがやさしく語り掛けてくれたことが、「人と話をするのって、そんなに怖くないのかも」と思える「きっかけ」になった。

 自分も、誰かにそんな「きっかけ」を与えられるような人になりたい――そんな思いが、富田氏の仕事に対する姿勢の原点になっているようだ。

 「『遠くの人と話ができたらいいのに』という願いをかなえたのが電話であるように、仕事とは、不安や悩み、不満を解消する方法だと思っている。全ての仕事というものは、どこかの誰かを幸せにしているはず」(富田氏)

 かつての石焼き芋屋のおじさんが富田少年にきっかけを与えてくれたように、次世代の子どもたちに何らかのきっかけを与えられないかと、小学校で「父親協力委員」を務め、運動会や学校への宿泊、新聞発行など、さまざまなイベントを企画している富田氏。その延長で、学校の入口で受付役を果たしてくれる「自作ペッパーくん」を作成したところ、子どもたちには大ウケだったそうだ。この中から、新しいテクノロジーに興味を持ち、世界で活躍する人材が生まれてくるかもしれない。

自作ペッパーくんと富田氏

 特別審査員をつとめた作家、ジャーナリストの佐々木俊尚氏は表彰式で、「人生にはいろいろな波風が起こるが、それをうまく、なだらかに吸収し、どのように持続的に気持ちのいい人生を送るかというスピリットが大事なのかもしれない」と感想を述べた。そして、富田氏の「遊び心」あふれる自作ペッパーくんに触れ、「20世紀は仕事と遊びを切り分ける考え方が一般的だったが、今はそこの境目がなくなりつつある。仕事をしながら遊ぶ、Work for Good LifeとLife for Good Workがシームレスで入れ替え可能な時代になりつつあるのでは」と総括した。

 この日行われたパネルディスカッションには、「エンジョニアプロジェクト」の動画に登場する4人のプロエンジニアが登場。ものづくりやギター製作、ウェイクボードに自動車レースといったそれぞれの趣味と仕事、キャリアアップをどのように両立させているかを紹介した。これまでに培ってきた技術力を生かしながら新しい技術にキャッチアップしていくことも重要だが、同時に「コミュニケーション能力」「信頼関係」を培い、人脈を広げていくことが、プロエンジニアとして生きていく上では重要だと異口同音に語っていた。

動画が取得できませんでした

「プロフェッショナル」とは何か――元サッカー日本代表や人気俳優が語るそのポイント

 特別講演には「第二の人生」と題して、「マイアミの奇跡」を起こした前園真聖氏が登場した。

 前園氏はマイアミの戦いを振り返り、「自分がフォワードとして100%を出せばそれがチームのためになると思っていたが、サッカーはそれだけでは勝てない。11人、さらにはベンチやメンバー外の選手、スタッフ、全員が1つの方向を向いていないと勝てない」と、チームで戦うことの大切さを呼び掛けた。

 また、飲酒が原因で引き起こした自らの失敗にもあえて触れた。多くの人に迷惑を掛けることになったが、それがきっかけで「自分一人で働いていたわけではないこと、周りに生かされていたことに初めて気が付いた」と前園氏。どん底のときに声をかけてくれた仲間のありがたみを知り、感謝の気持ちを持てるようになったといい、その意味で「うまくいかないことは、失敗ではなく経験だ」と感じたという。

前園真聖氏

 また表彰式には、PE-BANKのイメージキャラクターを務める俳優、要潤氏もサプライズで登場した。

 要氏はかつて、ドラマ「東京トイボックス」でゲーム会社の天才クリエイターの役を演じたことがある。「基本的に1人で台本を読んで役作りをしていく役者とは違い、さまざまな部署が関わり、皆で共同で作っていくのがエンジニアなんだなと、ちょっとうらやましく感じた」そうだ。

 仮面ライダーアギトでのデビュー以来さまざまな役を演じ、一線で活躍し続けてきた要氏。その中で変わらず抱いているのは「いい芝居をしたい、そして周りに喜んでもらったり、何かメッセージを受け取ったりしてもらいたい」という思いだ。とはいえ役者という仕事にはエンジニアと違って、数字だったり、資格のような分かりやすい指標はない。何度やっても「満足することのない仕事」だというが、その中で「与えられた役に挑戦し、評価してもらう。それを1回や2回ではなく、何年も何年も繰り返し、やり続けていくのがプロではないかと思う」という。

 現場は常に快適な環境とは限らず、時にしんどいこともある。が、「そのしんどさを乗り越えたときのゴールを思えば、いろいろな邪念が消える」と同氏。もともと抱いていた夢であり、人生であり、趣味でもある役者という仕事を楽しみ、これからも求められる限りそこで生きていきたいとした。

 同時に、役者という仕事は1人でできる仕事ではない。演出、カメラ、美術、さまざまなスタッフの力があって初めて形になるものだけに、「こうしたスタッフの皆さんに常に感謝している」と要氏は述べ、同じように社会を縁の下で支えるエンジニアに対しても「とても尊敬しているし、これからも世の中をよくするために頑張ってほしい」とメッセージを寄せた。

要潤氏
写真:山本華漸

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提供:株式会社PE-BANK
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2019年9月4日

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