半導体大手としての技術力を生かし、IoTや5G時代に向けた新たなチャレンジを進めているインテル。その取り組みのカギとなるのが、「パートナー企業との連携・協業」という“業界ごとのエコシステム形成”だ。これにより、各業界特有の課題解決策や新たな価値の創出を強力に推進している。ではIT業界で、ニュータニックス・ジャパンと連携する理由とは何か。インテル 執行役員 インダストリー事業本部長 張磊氏と、インダストリー事業本部 エンタープライズ事業統括部長 糀原晃紀氏に話を聞いた。
企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みが活発化している。特に国内では政府の後押しもあり、働き方改革や、社会的課題をITの力で解決して未来の社会を創造する「Society 5.0」など、各産業分野で高度なIT活用が促されている。これを受けて、今後さらに、5Gの実用化、電力法的分離など、日本社会で大きな変化が起こることが予想されている。ビジネス、社会を変えるドライバーとして、テクノロジーの重要性はますます高まっているのだ。
そうした中、テクノロジー企業として自らもIoTやDXに積極的に取り組み、あらゆる価値を迅速に提供し続けているのがインテルだ。同社は半導体メーカーとして、CPUやSSD、AI/IoTソリューションなどを企業に向けて展開する一方、社会的課題の“解決策”にも力を入れている。執行役員 インダストリー事業本部長 張磊氏は次のように説明する。
「これまでの当社のビジネスは、CPUメーカーとしてOEM先に部品を提供することが中心でした。しかし近年はそれだけではなく、『いかにテクノロジーを使ってビジネス課題を解決するか』という点に注力しています。どういう価値を届けられるかが重要であり、単にCPUが速くなればいいというだけではないからです。2019年からはDXを推進する戦略チームを立ち上げ、さまざまな業界にフォーカスしながら、お客さまと直接対話し、顧客企業の課題/社会的課題を解決するための取り組みを積極的に推進しています」(張氏)
事実、米国カリフォルニア州サンノゼ市とのパートナーシップによる「IoTスマート・シティ」のイニシアチブ推進、「ポスト2020」に向けた5Gビジネスに関する企画推進、さらに経済産業省「DXレポート」が指摘している「2025年の崖」を解決するための社会施策など、同社の活動対象は企業だけではなく、社会インフラの領域にまで及ぶ。
「こうした取り組みでカギになるのが、オープンなプラットフォーム上でパートナー企業とともに形成するエコシステムです。インテル単独で取り組むのではなく、弊社の技術・ノウハウとパートナー各社の技術、ノウハウを融合させることで、各業界の課題解決に資するさまざまな価値を生み出すことができます。例えば電力自由化の波が高まる中、弊社は新しいチャンレンジを続ける電力会社と協業しており、つい先日も共に作り出した価値を紹介するイベントを開催したばかりです。もちろんIT業界内でのパートナーシップも強固なものにしています。ニュータニックス・ジャパンとのパートナーシップも、その1つなのです」(張氏)
このように、インテルの取り組みはさまざまな業界に及ぶが、張氏によると「どの業界にも共通する課題が目立つ」という。例えば電力業界でいえば、他業界にも共通する課題として、「インフラの老朽化」や「メンテナンスコストの増加」があるという。電力を作る資源が乏しい中で、いかに既存インフラを効率的に維持、運用して、安定的に電力を供給していくかが大きな問題となっているわけだ。
一方で、電力自由化で競争が激化する中、「新しい価値をいかに提供していくか」という課題もある。電力を誰でも売れる時代になり、電力小売り事業者は国内100社を超える規模だ。そんな中、既存顧客を維持するためには、従来のビジネスだけではなく、新しいサービスを創出して流出を防いだり新規に顧客を獲得したりすることが重要になってきているという。いかに既存ビジネス/システムを守りながら新たな価値を創出するか――これはまさしくDXの潮流において、多くの企業が直面している課題といえるだろう。
「電力業界は今、変革の真っただ中にあります。既存インフラを維持しつつ、新しいサービスを創出しなければならない。いわばディフェンスとオフェンスを同時に行わなければならないのです。また、こうした電力自由化による競争の先には“Utility 3.0”の世界があります。そのときにどうするか。よく引き合いに出されるのがエジソンの白熱電球のエピソードです。彼は単に電球を作って売ったのではなく、ニューヨークの発電所から半径1キロ圏内に電灯を設置することで『照明サービス』を提供した。これによって電球が広く普及した。今もまさに、モノを作って売るだけではなく、『価値というサービス』を提供することが求められています」(張氏)
インテルが“サービスという価値”の提供に取り組む背景にはそうした考え方があるわけだ。もちろん電力業界の他にもすでに多様な実績がある。例えば物流業界向けでは、日本通運、ハネウェルと連携して「IoTを活用した輸送状況可視化サービス」を開発した。医療品や精密機械など、厳格な品質が要求される輸送を行う際に、貨物に取り付けられたセンサータグから温度、湿度、衝撃、傾斜、照度、位置などのデータを計測し、トラックや倉庫内に設置されたゲートウェイを通してデータをクラウド上にアップロードすることで、輸送状況をリアルタイムに把握する、というものだ。
「これまでは、医薬品や精密機械などを適切なリードタイムで提供することができていませんでした。というのも、例えば日本から米国に製品を出荷しても、米国に到着して荷物の中身を実際に検分した上でないと、製品が壊れずにきちんと届けられたかを調べる術がなかったのです。壊れていた場合は再注文することになり、時間とコストの両面で多大なロスが発生していました。しかし物流業界、IT業界のプレイヤーとエコシステムを作ることで、こうした積年の課題も解決することができるのです」(張氏)
この他、社会インフラの領域では、データを活用した社会環境のモニタリング、スマート照明、モビリティー、パブリックキオスクなど、エッジからクラウドにわたるさまざまな技術を提供する「スマートシティIoTソリューション」や、コネクテッドカーをサポートし、サプライチェーンを最適化する5Gネットワーク構築を支援する「コネクテッド・トランスポーテーション」などがあるという。
こうした中、インテルがニュータニックスとのパートナーシップによって取り組んでいるのが、「次世代データセンター実現に向けたソリューション」の提供だ。インダストリー事業本部 エンタープライズ事業統括部長 糀原晃紀氏はこう話す。
「インテルでは、ワークロードに合ったソリューションを実現するために、インテルのチップとパートナー各社の技術を組み合わせた『インテル® Select ソリューション』を展開しています。インテル® Select ソリューションには、AI活用、ネットワーク変革、ビッグデータ分析、HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)などのソリューションがあります。近年はIT戦略に不可欠な要素としてハイブリッドクラウドの採用が急速に進んでいます。そこでインテルはハイブリッドクラウド化を推進する企業を支援するために、『Intel ® Select Solution for Hybrid Cloud』の提供を開始しました。パートナー企業であるニュータニックスとは、先日開催したイベントでも両者の取り組みや先進的なテクノロジーをご紹介しました」(糀原氏)
周知の通り、ニュータニックスはハイパーコンバージドインフラ(HCI)のパイオニアであり、近年はハイブリッドクラウドソリューションに力を入れている。インテルとニュータニックスは、テクノロジーアライアンスパートナーとして、次世代のデータセンターの実現に向けた取り組みで協業関係にある。
両者が提供するHCIソリューションとしては、「Intel® Data Center Blocks for Nutanix Enterprise Cloud」がある。これは「Nutanix Enterprise Cloud OS」で検証および認定された、インテルのテクノロジーを活用したデータセンターソリューションだ。コンピューティング、ストレージおよび仮想化をオールインワンボックスで運用することができる。 まさしくクラウドライクなオンプレミス環境を実現するソリューションであり、「パブリッククラウドライクな俊敏性とシンプルさに加え、プライベートクラウドに必要なセキュリティと制御を実現できること」(糀原氏)が大きな特長だ。
「多くの企業において、これまでのオンプレミス環境は、サイロ化したインフラを人手中心で管理するスタイルが中心でした。しかし近年はビジネス展開をコスト効率良く、スピーディーに支えることが強く求められています。その点、HCIならパブリッククラウドとの連携も含めて自社のITインフラをシンプルに一元管理できるようになり、インフラの柔軟性、拡張性も大幅に向上させることができます。ニュータニックスとのパートナーシップで、そうしたメリットを各社各様の悩みを持つ企業、組織に最適な形で提供できれば、結果としてビジネスをスケールさせやすくなり、日本経済の活性化にもつながると思うのです」(張氏)
なお、ニュータニックスは独自ハイパーバイザーの「AHV」を提供しているが、そのために開発したソフトウェアの一部が、インテルのSPDK(ストレージパフォーマンス開発キット)プロジェクトでも使用されるなど、踏み込んだ協業が行われている。また、2019年5月に米国アナハイムで開催された「.NEXT Conference 2019」では、第 2 世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーとインテル® Optane™ SSDを採用し、より高度なパフォーマンスを発揮する「Intel® Select Solution for Nutanix HCI」の発表も行われた。
両者が提供するHCIソリューションは、すでに多くの企業で採用実績がある。例えば、配電システムを提供するフィンランドの企業のELENIA Groupでは、スケーラブルで止められないSCADA(監視制御およびデータ収集)アプリケーションの要求を満たすスマートグリッドの基盤として、インテルとニュータニックスのテクノロジーを採用している。
日本国内では、東北インフォメーション・システムズ(TOiNX)、エネルギア・コミュニケーションズ(エネコム)、オプテージ(旧関電システムソリューションズ)といった電力業界での採用も進んでいるという。また、北海道総合通信網(HOTnet)では、札幌−東京−沖縄間でのマルチハイパーバイザーによるDR(ディザスタリカバリー)の実証実験に採用するなど、通信事業者などへの展開も進んでいる。ミッションクリティカルシステムの基盤として、あるいはコスト効率の良いDR実現基盤として、“両社が創出したソリューション”は着実に浸透しているのだ。
以上のように、単なる「製品の提供」ではなく、「企業や社会が求める価値の提供」に注力していることについて、糀原氏は次のように解説する。
「これまでインテルは、どちらかといえば『PCセントリック』なビジネスでした。しかしDXトレンドが進展し、データ活用の時代を迎えるに当たり、『データセントリック』に変わろうとしています。データ中心で何ができるか、どのような価値を届けられるのか。重要なのは、センサー、エッジコンピューティング、クラウドの3つと、それらをつなぐ高速でセキュアなネットワークです。ただ、これらの要素を単に組み合わせるだけでは使いにくく、価値を十分に引き出せません。そこでインテルでは、それらを使いやすい形にパッケージ化し、顧客の課題解決に役立つ形で提供しているのです」(糀原氏)
「どういう価値を届けるかが重要である」と冒頭で述べた張氏は、今後の展開を次のように話す。
「DXや働き方改革などで苦労されている企業、組織は日本にたくさんあります。インテルとしては、パートナー企業とのエコシステムによって“ソリューション”を創出し、パートナー企業やイベントなどを通じて、困っている全国の企業、組織をすみずみまでサポートしていきたいと考えています。今後も各業界のプレイヤーとのパートナーシップをより強固にすることで、企業や社会が求める価値の提供に注力していく考えです」(張氏)
インテルとニュータニックスは、2019年9月13日に開催される「.NEXT Japan 2019」に加え、9月から11月にかけて日本全国4拠点(大阪、名古屋、福岡、札幌)で開催される「Nutanix X Tour」で共同ソリューションを紹介していく予定だ。こうしたイベントをうまく活用しながら、新しい時代に立ち向かっていくためのヒントをつかみたい。
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提供:ニュータニックス・ジャパン合同会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2019年9月13日