プロジェクトマネジメントの横断的支援を行う「PMO」(Project Management Office)が注目されている。なぜ今PMOが必要とされているのか。PMOのサービスを提供するマネジメントソリューションズの高橋信也氏にその理由を聞いた。同氏が語る「日本企業に対するPMOのあるべき姿」とは。
新製品の開発や新しい事業の立ち上げ、組織の改革など企業内にはさまざまなプロジェクトが日常的にあふれている。一般的にプロジェクトマネジャー(PM)は主幹部門からアサインされ、プロジェクトの進捗(しんちょく)や予算の管理をする。だが、特に日本企業が推進するプロジェクトでは、このマネジメントがうまく機能していないケースがよくあるという。
その理由は、プロジェクトマネジャーの「実行力」不足だ。プロジェクトは、通常のライン組織の枠組みを越えた活動であることが少なくない。このためプロジェクトチームを管理する能力はもちろん、目的を達成するための実行力が何よりも重要だ。だが主管部門内であればうまく管理できる担当者であっても複数の部門を横断的に管理するのは簡単ではない。
こうした課題への対策として欧米を中心としたグローバル企業で一般的となっているのが、「PMO」(Project Management Office)と呼ばれる専門組織の設置だ。PMOは、PMを含めたプロジェクト全体に対して横断的に支援する。だが自社内でそういった管理ができる人材やノウハウがある企業は多くない。このため近年では他の間接業務と同様に外部のPMOサービスを利用したり、PMOをアウトソースしたりという動きも起こっているという。
欧米で始まったPMO導入の流れから遅れ気味だった日本にも、プロジェクト支援を打ち出した戦略実行型マネジメントのコンサルティング会社が登場している。その内の1社が2005年に設立されたマネジメントソリューションズ(MSOL:エムソル)だ。
エムソルは日本企業にどんな変革を起こそうとしているのだろうか。創業者である代表取締役社長兼CEOの高橋信也氏の経歴から、その思いを読み解いていきたい。
上智大学経済学部で組織論を学び、日本的経営を研究してきた高橋氏が、最初に入社したのが、アンダーセン コンサルティング(現アクセンチュア)だ。
「大学を卒業したのは1996年のことで、インターネットが急速に普及していく中でITが企業経営で本格的に活用されるようになり、ビジネスや組織を大きく変えていく時代のうねりを感じていました。その最前線に立つために、一番適した会社としてアクセンチュアを選びました。そしてエンジニアとしてプログラミングから業務設計まで幅広い工程を経験してきました」と高橋氏は振り返る。
一方で「このままアクセンチュアに居続けたのでは、自分でプロジェクトをマネジメントしていけるポジションに立つまでに時間がかかる」という思いが次第に高まっていったという。入社3年目を迎えた1999年、日本法人を設立してまだ間もなかったアーンスト・アンド・ヤング コンサルティング(現EY Japan)に転職を決断し、コンサルタントとして新たな道を歩んでいくこととなった。
同社で「SAP ERP」導入プロジェクトの他、月次決算の早期化、バランストスコアカードの導入、パフォーマンスマネジメントなどの領域で、コンサルティングの経験を積んだ高橋氏。さらに2001年に転職したキャップジェミニでは、マネジャーとして経営管理と業績管理のコンサルティングプロジェクトに携わった。
一見、順風満帆にキャリアアップしてきたように見えるが、高橋氏はこのころから「コンサルタントの限界」を感じ始めたという。
「ある大手飲料メーカーのコンサルティングを担当したとき、自分としては自信満々で『貴社の業績管理をこう見直すべき』と提案しました。ですが、その企業の経営トップからは『高橋さんの言うことは100%正しい。でも、社内にはそれをやる(やれる)人がいない』という答えが返ってきたのです」
「どんなに正論を訴えたとしても、実行力が伴わなければ、結局は絵に描いた餅でしかない」と強く考えさせられたという高橋氏は、コンサルタントからはいったん距離を置き、外部の目からだけではなく、内部の目からマネジメントを経験してみよう、と思い立った。
そして高橋氏が、次に身を置いたのがSONY Global Solutionsだ。当時として最年少プロジェクトマネジャーに抜てきされた同氏。グローバルシステム開発プロジェクトのPMOリーダーとして「Oracle E-Business Suite」(Oracle EBS)導入におけるインドへのオフショア開発などを経験した。そこでの日々はこれまで経験したことのない苦労の連続だったと高橋氏は語る。
「20社近いベンダーを束ねながらプロジェクトを推進しました。改めて痛感したのが、外からコンサルティングを行っていたときには分からなかった発注側の苦しみです。社内に人材がおらず、予算も限られている状況でプロジェクトを最後まで遂行し、確実に結果を出すことが求められるのです」と高橋氏は語る。
結局「ひとごと」になってしまうコンサルタントの限界を感じ、内部から変えようとした高橋氏。だがそんな同氏を待っていたのは、厳しい制約と社内政治などプロジェクト以外に時間を取られる日々だった。
「クライアントに寄り添いながら『プロジェクト全体をいかにしてより良いものにしていくか』『どうやって実行力を持たせるか』といった発想を持つためには、外部でも内部でもない立ち位置が良いという結論になりました」
この思いからPMO派遣、つまり「プロジェクトマネジメントの実行支援」というサービスの形が出来上がった。
具体的にエムソルはどんなサービスを提供しているのか。詳しく見てみよう。
中心に位置するのが「プロジェクトマネジメント実行支援サービス」。全社、部門、プロジェクトといったあらゆる単位で、プロジェクトの目的や成果の合意形成、計画策定、プロジェクト状況の見える化、意思決定支援など、PMOに関するノウハウやナレッジ、課題を解決に導くサービスを提供する。これを通じて企業のマネジメント成熟度を上げ、プロジェクト成功率を向上させる。
このプロジェクトマネジメント実行支援サービスは、IT系のサービス開発といった用途だけではなく、運用保守の刷新や新規ビジネスの立ち上げ、グローバル展開などにも利用できる。業界も金融、エネルギー、製薬、自動車といったさまざまな分野に導入可能だ。東証一部上場企業における大規模プロジェクトを中心に、三菱重工業や東京ガス、オムロン、リクルートテクノロジーズなど既に多くの企業の間に採用が広がっているという。
一方で中堅中小企業に向けては、リモートでのサポートやサービス単位で利用できる「Shared PMO」というメニューも用意している。
高橋氏がこれらのサービスを展開する大きな理由は「日本企業に対する危機感」だ。
「エレクトロニクスや自動車業界などを見ると、市場経済は楽観できないということが分かります。日本の大手企業のリストラなども話題になっており、雇用面も心配です。このままではギリシャの財政危機がひとごとではなくなってしまいます。ですから『日本企業を元気にして若者が将来に希望を持てる世の中にする』ことが私の目的です」
そのため、高橋氏はエムソルを日本にとって存在意義のある、世の中にインパクトを与えられる会社にしたいと考えているという。
昨今、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、マルチクラウドといったテクノロジーを活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性が叫ばれているが、そうした変革を推進していく現場では、技術やロジックでは解決しきれない数々の問題が発生する。そうした問題を解決するためには業務現場の“泥臭い”対応をもいとわない強い「人間力」が求められると高橋氏は言う。
「有名なコンサルティングファームにいた人や偏差値の高い有名大学を出た人ほど優れたプロジェクトができるかというと決してそんなことはなく、因果関係はありません。どちらかといえば多くの失敗を経験し、その中で磨いてきたコミュニケーション力やメンタリティーでリカバリーを図ってきた苦労人が向いています」
マネジメントに関するあらゆる仕事に「絶対に成功する方法」はない。過去の経験から導き出されたセオリーも、いつでも通用するとは限らない。困難なプロジェクトほど途中課程において失敗はつきもので、最終的な成果はプロジェクトを終えるまで分からない。失敗を糧にしながら、成功へとつなげていくことが大切なのだ。
「理想論で物事が進むほどプロジェクトマネジメントは甘くありません。しかも、新たなテクノロジーを使ったプロジェクトでは先進性や複雑性が増せば増すほど、PMOの難易度が上がります。エムソルはそのような高難易度のプロジェクトでも実行力を持って推進します」
エムソルは、そうした実行力でプロジェクトを支援し、組織に内在する構造的な問題を解決することで、企業の持続的な成長を後押ししていく。
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提供:株式会社マネジメントソリューションズ
アイティメディア営業企画/制作:@IT自分戦略研究所 編集部/掲載内容有効期限:2019年12月4日