デジタルトランスフォーメーション(DX)の時代、クラウドの時代となった現在、企業のIT部門における人手不足、知見不足が深刻になりつつある。この課題の解決先はどこにあるのか――。ソフトクリエイトのイベント「SC Relationship 2020」では、IT部門の「人材不足」を主要テーマの一つとして、その解決策が語られた。
ここ数年、注目を集めている「デジタルトランスフォーメーション(DX)」。いよいよ本腰を入れて取り組む企業も増えているが、その“要”となるIT部門はというと、人材不足で四苦八苦しており、「DXまで手が回らない」というケースも少なくない。
特に深刻なのは、DX実現のキーになると思われるクラウドの活用に関して、自社は当然のこと、パートナーであるSIer(システムインテグレーター)においても知見がないことだ。これでは、DXに舵を切ろうとしても、SIerに頼ることができない。人手不足、知見不足の中、企業のIT部門にとっては、DX時代、クラウド時代の自身の働き方や仕事が不透明になりつつある。これらの課題の解決先はどこにあるのか。
2020年2月14日に開催されたソフトクリエイトのイベント「SC Relationship 2020」では、企業のIT部門における人材不足を主要なテーマの一つとして挙げ、その解決策が語られた。
イベントでは、ソフトクリエイトの執行役員 事業戦略本部 副本部長である白岩健一氏がファシリテーターを務め、日本マイクロソフトの業務執行役員 本部長 浅野智氏、ソフトクリエイト 執行役員 技術本部 本部長 小嶌尚臣氏によるパネルディスカッションが行われた。
ソフトクリエイトで技術部門のトップを務める小嶌氏は、自社の状況について「中途採用の募集をかけても人材が集まりにくくなっているのが現状です。今後は、さらにクラウドサービスに対応できる人材が求められますが、採用するだけでなく、既存エンジニアのスキルチェンジも進めていきたいと考えており、経営命題の一つだと感じています」と述べた。
オンプレミスのハードウェアがクラウドへと移行していくにつれ、エンジニアに求められるスキルも大きく変わっていく。新たな人材採用と併せて、既存人材のスキルチェンジも人材不足解消の鍵といえる。
日本マイクロソフトは、さらに一歩踏み込んだ取り組みも進めているという。
浅野氏は、「弊社でも、クラウドを扱える人材やデータサイエンティストは特に不足しています。これからは誰もがITを活用する時代にもなりますから、業務にかかわらず、人事や経理の担当者も含め、社員全員が『Microsoft Azure』の資格を取得するように取り組みを始めています」と説明した。
つまり、日本マイクロソフトでは、社員全員が「小さなエンジニアになる」ということだ。一般企業にとっては、日本マイクロソフトほどのドラスチックな変革は難しいかもしれないが、事業部門のメンバーもITやデータ活用の知識、スキルを身に付けることが、DX推進の後押しとなるのは間違いないだろう。
DXでは社内システムに眠るデータをいかに活用するかということも鍵となり、やはりIT部門の活躍が期待されるケースが多い。しかし、ソフトクリエイトの代表取締役社長 林宗治氏は「日本国内でDXを成功させるには、ユーザー企業のIT部門だけでは難しいのではないか」と指摘する。
そもそも、日本国内ではエンジニアの75%がSIerに所属しており、エンドユーザー企業のエンジニアはわずか25%と数が少ない。
さらに林氏は、「経済産業省のDXレポートでは、IT部門の業務を大きく『バリューアップのビジネス』と『ランザビジネス』に分けています。ランザビジネスは既存業務を継続するために必要な運用、保守などが該当し、重要ではありますが、DXを成し遂げるには企業価値を向上させるバリューアップのビジネスにも取り掛からなければなりません。現状は、ユーザー企業のITリソースのうち、8割がランザビジネスに費やされています。5年以内にバリューアップのビジネスの割合を少なくとも5割にまで持っていかなければ、未来はないでしょう」と続けた。
ソフトクリエイトが実施したアンケート調査でも、エンドユーザー企業のIT部門はヘルプデスク業務やPC管理、システム監視などのノンコア業務に多くの時間を取られていると回答した企業が約7割だったという。ノンコア業務はまさにランザビジネス業務といえるものだ。
「ランザビジネスの業務はパートナーやSIerの力を借り、バリューアップのビジネスに注力するのがこれからのIT部門のあるべき姿でしょう」(林氏)
クラウド移行が加速する現在、SIerでも着々とそのノウハウやスキルを蓄積する企業が増えている。ソフトクリエイトではクラウドソリューションを展開するに当たって、自社のシステム基盤をクラウドに移行したという。
「2010年ごろに、最初のシステムをクラウドへ移行しました。2014年からMicrosoft Azure環境への本格移行を開始し、現在、オンプレミスにはDHCPやPBXなどがわずかに残るのみとなっています」(小嶌氏)
ソフトクリエイトは、自社の業務システムをクラウドに移行した知見をベースに、Microsoft Azureの構築/運用サポートなどをワンストップで行うサービスを展開。多くの企業のクラウド移行を手掛けることで、さらに多くのノウハウを蓄積している。
「現在は、Microsoft Azure関連のMCP(Microsoft Certified Professional:マイクロソフト認定プロフェッショナル)を1人でも多く取得できるように取り組んでいるさなかです。今後もエンジニアのクラウドへのスキルチェンジを拡大し、お客さまをサポートする体制を確立していきたいと考えています」(小嶌氏)
ソフトクリエイトがさまざまなクラウドサービスからMicrosoft Azureを選んだことにも理由がある。Microsoft Azureには「Productive(拡張性、生産性の高さ)」「Hybrid(オンプレミスとの親和性)」「Trusted(信頼性、セキュリティ)」「Intelligent(最新のAIサービスを提供)」「Open(オープンな技術との連携)」の5つの強みがあり、最もビジネス的に活用しやすいクラウド基盤だと考えたからだ。
浅野氏は、「クラウドに移行することがゴールではなく、クラウドに蓄積したデータをいかに活用するかが重要です。スケーラビリティやセキュリティはもちろんですが、“オンプレミスと行き来できるクラウド”という点において、Microsoft Azureの価値は大きいと考えています」と語る。
常に新しいサービスをリリースし、進化を続けるMicrosoft Azureについて全てを詳細に理解することは、エンジニアにとってもハードルが高い。
「日本マイクロソフトとしてもAIなどの実事例を紹介していくことで、活用方法の“気付き”を提供できるのではと考えています。ソフトクリエイトはさまざまな企業への導入実績が豊富にありますから、どういったシーンでどう活用できるのかといった引き出しが多いのではないかと期待しています」(浅野氏)
DXとセットで語られることの多いクラウドだが、両者はもちろんイコールではない。そもそもクラウドに移行する最大のメリットは、「資産、保守体制を社内に持つ必要がない」ことだ。クラウドへの移行によりIT部門の負担を軽減し、空いた時間をどう使うかがDX実現の鍵となる。
「クラウド移行などにより、保守にかかるコストと労力を削減しながら、いかに“ランザビジネス”から“バリューアップ”にシフトするかが課題です」(浅野氏)
そうした流れの中では、SIerなどによるITアウトソーシングサービスをうまく利用することも有効だ。長らくITアウトソーシングサービスを提供してきたソフトクリエイトでは、自社システムをクラウド移行したノウハウなどをベースに、クラウドサービスの運用サポートも展開。既存資産からクラウドまで柔軟に対応し、日々の運用の基本となる“ランザビジネス”に当たる業務を的確にサポート、IT部門の負担軽減にも大きく貢献する。
林氏は「面倒な運用管理をソフトクリエイトにお任せいただくことで、IT部門はバリューアップやDXに注力できる体制を実現できます」と語る。
DXと一言でいっても、IT部門だけで進むものではなく、事業部との連携が必要だ。しかし、「日本では事業部側とIT部門の溝が深く、それをいかに乗り越えるかも問題です。どうやってITで稼ぐ会社になるかを考えるためにも、多面的なアプローチで互いに歩み寄ることが求められます」(浅野氏)。当然だが、この取り組みは片手間でできるものではない。IT部門がしっかりとDXに向き合える体制が不可欠だ。
ソフトクリエイトではITアウトソースサービスを中心に、さまざまな取り組みの推進をサポートしている。その中核として、2020年3月までは「\ZEROキャンペーン」を実施し、RPA(Robotic Process Automation)や仮想デスクトップなどのPoC(Proof of Concept:概念実証)にかかる初期費用を0円で提供中だ。
「DXではさまざまな施策について試して検証し、継続するかどうかの判断を高速で回すことが重要です。こういった取り組みをサポートするためにキャンペーンを展開しています」(林氏)
このキャンペーンは、DXの実現に向けて一歩を踏み出すために有効な一手となるのではないだろうか。
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提供:株式会社ソフトクリエイト
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2020年4月9日