「データからいかに価値を生み出すか」というテーマに多くの企業が取り組んでいる。だが、データ活用の成果を左右するマスターデータ管理については、予算、スキル、人員不足などの制約を受け、さまざまな課題を抱え続けている例が多い。そうした“積年の課題”を短期間で解決できる手段とは何か? 詳細を探った。
デジタルトランスフォーメーション(DX)のトレンドを背景に、ビジネス変革の取り組みが加速する中、「いかにデータを活用するか」というテーマに多くの企業が取り組んでいる。データは「価値」を生む源泉であり、データを分析することで業務効率化や生産性向上、新しいビジネスの創出につながる。
ただし、データを活用するためにはデータのメンテナンスがしっかりとなされていることが大前提となる。データの「ヌケモレや不整合」は分析の精度を落としてしまうし、分析のためのデータ準備に時間がかかるようでは、実ビジネスに適用する機会を失うことにつながってしまう。特に近年、あらためて問題になっているのがマスターデータ管理(MDM)だ。
MDMは、データ活用における永遠のテーマと言える。さらに近年のDXトレンドを受け、「いかに効率的、かつ安全、確実にMDMを実施するか」がより重要になってきたという。日立ソリューションズ ビジネスイノベーション事業部の技師である東雲吉範氏は、こう説明する。
「言うまでもなく、マスターデータはビジネスを支える非常に重要なデータです。しかし、人手でメンテナンスすることが多く、ビジネス展開のスピードにメンテナンスが追い付いていなかったり、メンテナンスの負担が増えてしまっていたりする例が多いのです。このことがシステムや業務に悪影響をもたらす原因となっています」(東雲氏)
多くの企業のシステム導入、構築、保守プロジェクトを支援している日立ソリューションズにおいて、多数の支援実績を持つ、産業・流通システム事業部 技師である水谷和之氏は、「マスターデータ管理については、“従来、取り組んできたMDM”の延長線上で捉えられていることも多く、これが課題解決を難しくしているケースも増えています」と指摘する。
「マルチクラウドやマルチプラットフォームの環境が増えている中で、システムの在り方そのものが複雑化しています。つまり、データの持ち方、ユーザーのアクセス方法、メンテナンスの方法などが変化しているため、これまでのMDMツールでは対応できないケースも増えているのです」(クロスマーケット・サービス本部の主任技師である日高恵司)
また、MDMシステムはスクラッチで開発されることも多く、そこにも課題があるという。
「近年は、より少ないリソース、より短納期でシステムを構築したいというニーズが高まっており、予算や人的リソースをMDMシステムに投入しにくくなっています。業務知識やSQLのスキルを持ったエンジニアが減っているという事情もあり、スクラッチでMDMシステムを構築、維持すること自体も難しくなっています」(日高氏)
ITインフラの仕組みが変容し、データ活用の重要性が増す一方でありながら、マスターデータのメンテナンスという課題は半ば置き去りにされてきた。特に昨今は、社内だけに限らず、取引先など社外のプレイヤーともデータを軸に協働するなど、柔軟なデータ活用が求められている。人手不足、スキル不足といった問題も受けて、マスターデータ管理の在り方にも大幅な見直しが求められているのだ。
同社によると、マスターデータのメンテナンスにまつわる課題を大きく6つに分類できるという。それは「SQLなどのスキル不足」「コストの増加」「監査ログ取得の難しさ」「作業負荷の増大」「セキュリティリスクの増大」「タイムリーなデータ更新の難しさ」だ。
「SQLなどのスキル不足」とは、業務データに関する専門知識やデータベースを取り扱うためのSQLのスキルがないために、メンテナンスが難しくなるという課題だ。特に近年は、担当者の退職や異動に伴って問題が発生する例が増えているという。スキルの属人化がデータ更新の遅れなどを招き、ビジネスに影響を及ぼす一因となっているわけだ。
「コストの増加」とは、業務システムのEOL(End of Life)に関連して発生するケースが目立つという。EOLに合わせてクラウドへの移行を検討するが、そもそもデータがどう管理されているのか分からず、調査やデータ統合などに予想以上のコストがかかってしまう。マスターデータ管理を外部のベンダーやパートナーに依頼している場合は、システム移行に伴い追加コストが発生することもある。
「監査ログ取得の難しさ」は、内部監査や外部監査で必要になる操作ログを適切に取得できていないというケースだ。取り扱うデータ量が膨大になるにつれ、人手でのログ取得は限界に達する。そこでツールを使うことになるが、それでは「誰が、いつ、何をしたか」といった詳細な操作ログまでは取得できないという問題が起こり得る。
「作業負荷の増大」は、事業部門がシステム部門にデータ抽出を依頼する頻度が増えたことを指している。データ分析のニーズが高まるにつれて、マスターデータからデータを抽出するシーンが増え、作業者の負担が高まっている。加えてデータベース製品ごとに異なるメンテナンスツールを使っているため効率が悪いという背景もある。
「セキュリティリスクの増大」は、「適正な人に、適正な範囲で、どのようにデータを使わせるか」という課題だ。事業部門にデータを修正させたい場合もあるが、操作ミスなどでデータが壊されたり、情報漏えいにつながったりすることは避けなければならない。データの一部をマスキングして表示したいが、ツールでそうした機能を実現することが難しいことも多い。
6つ目の「タイムリーなデータ更新の難しさ」は、MDMツールの機能や使い勝手の問題だ。リアルタイムにデータを更新したり、上長の承認を経てデータを更新したりといったことができないという課題だ。任意のタイミングでデータを変更していく仕組みが望まれる。
以上のように、マスターデータに起因するリスクは、コスト、運用負荷、セキュリティ、コンプライアンス、ビジネス展開のスピードなどあらゆる領域に及ぶ。こうした課題を解決するために、日立ソリューションズが提供しているソリューションが「MasterInfinity」だ。MasterInfinityは、マスターデータの保守と修復を、自由なパラメーター設定によって汎用(はんよう)的に実現するデータベース参照・更新システムだ。
「GUIを使って、誰でも簡単、確実にデータメンテナンスができることが大きな特長です。例えば簡易画面では、『WHERE』『SELECT』『ORDER BY』『AND/OR』『JOIN』といったSQL文をGUIで操作し、データの抽出や加工ができます。画面上に自動的にドロップダウンリストやフィールドが表示されるので、SQLの構造を知らなくても直感的に操作できるのです。適切なユーザー権限やアクセス権限の下で、誰でも安全かつスピーディーに、データベースをメンテナンスできるようになります」(東雲氏)
データベースサーバとして「HiRDB」「Oracle Database」「Microsoft SQL Server」「PostgreSQL」「MySQL」などに対応し、1つの画面上から複数のデータベースサーバにシームレスにアクセスできる点も特長だ。
データの操作以外にも、ファイルの入出力(CSV)、バッチ処理、データのマスキング処理、入力規則と入力チェックの設定、Active Directoryと連携したログイン、監査やJ-SOX法に対応した操作履歴の提供といった機能を提供する。
なお、必要に応じてSQLで直接データベースを操作したり、処理を定型化したりすることもできる。すなわち、属人化の問題を解消できるだけではなく、担当者のスキルや状況に応じて作業効率を柔軟に高めることもできるわけだ。
「前述した6つの課題をMasterInfinity一つで解決できるのです。このため、製造や流通、金融、医療、自治体など、さまざまな業種や業態の106社で採用されています。MDMツールとして利用するケースの他、スクラッチ開発したデータメンテナンスツールと併用するケース、その他にも、BI(ビジネスインテリジェンス)ツール、不正データのチェックツール、データマスキングを施した上でデータ共有ツールとして使うなど、さまざまな利用ケースがあります」(東雲氏)
数ある事例の中でも、DXに取り組む企業にとって興味深いのが、あるオープンイノベーション施設でのケースだ。この施設には、次世代医療やAI開発、ベンチャーキャピタルといったさまざまな組織が集っている。入居組織の入れ代わりや新規の設備投資などが頻発することから、オープンに際し、入居組織が共同利用するファシリティや組織会員などの管理を、柔軟かつ安全に行えるシステムの開発が求められていた。
具体的には、プラットフォームにクラウドを採用し、予約システム、請求管理システム、データ分析のためのデータベースシステムという3つのシステムを、全て3カ月間で開発することが求められたという。プロジェクトをリードした日高氏はこう話す。
「問題は『3つのシステムのデータをどう統合管理するか』にありました。3カ月でMDMシステムをスクラッチ開発するのは現実的ではありません。また、運用を外部に委託する予定だったため、SQLや業務の知識がなくても利用できることはもちろん、高度なセキュリティも求められました。そこで高く評価されたのがMasterInfinityだったのです」(日高氏)
評価のポイントは、「Amazon Web ServicesやMicrosoft Azureといったマルチクラウド環境でも問題なく利用できること」「データのマスキングやアクセス権管理、ワークフロー機能などで高度なセキュリティを担保できること」「SQLのスキルがなくても運用環境の変化に合わせて柔軟にデータの維持管理ができること」だった。実装を担当した水谷氏はこう話す。
「データベースのメンテナンスに特化したツールですから、さまざまなシステムと組み合わせて利用することが簡単にできます。ユーザー権限の設計や入力チェックの設計、定義ファイルの作成などをノンプログラミングで行えるため、導入に際して工数削減や早期稼働、早期品質確保が可能です。操作トレーニングの実施、確認テストも含め、予定通りにカットオーバーできました」(水谷氏)
2018年11月に稼働を開始し、運用で高い効果を確認できたことから、1年後にはデータやログをより詳細に確認できるよう機能を拡張したという。導入期間やコスト効率、品質担保に貢献するパッケージソリューションとしての利点を持ちながら、担当者のスキルに応じた操作ができる、機能拡張ができるといった柔軟性も併せ持つ点は、各社各様の課題解決に応え続けてきた日立ソリューションズならではの特長といえるだろう。
冒頭で述べたように、マスターデータのメンテナンスは古くて新しい課題だ。10年以上前からMasterInfinityを提供しているが、クラウド、IoT、AIを中心にDXの取り組みが加速する中、問い合わせは年々増える状況にあるという。価格は「標準画面1-100テーブルライセンス」で185万円(税別)からと、MDMプロジェクトとしてはスモールスタートしやすい点も魅力だ。
「DXや働き方改革にもつながる、効果的かつ効率的なデータ活用を実現する上では、マスターデータのメンテナンスが大きなカギとなります。これを簡単、安全に実施する手段としてMasterInfinityがあることを、ぜひ多くの方に知っていただければと思います」(東雲氏)
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2020年4月21日