IT人材不足が約43万人に拡大する2025年に向け、DXを支える開発者に快適な環境とツールが必要な理由リモートワーク/オフショア開発をアジャイル化する極意

デジタル技術を駆使してデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するには、新しいソフトウェアを素早く開発していく必要がある。このような状況においてより多くの優秀なエンジニアを採用しなければいけないのだが、IT人材の争奪戦は加熱している。優秀なエンジニアを採用するために企業はどのような工夫をしたらいいのだろうか。3人の専門家に尋ねた。

» 2020年04月07日 10時00分 公開
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激しさを増す優秀なIT人材獲得競争

 経済産業省が公開した「DXレポート」では、レガシーシステムのメンテナンスに追われ、新しいデジタル技術を生かしたデジタルトランスフォーメーション(DX)が進まないままでは、2025年以降、最大で年に12兆円の経済損失があると予測。「2025年の崖」として問題を提起している。

 DXレポートで指摘されるまでもなく、自社の競争力強化や成長拡大を目指してDXに取り組もうと考えている企業は少なくない。だが、その実現の前には、幾つかのハードルが立ちはだかっている。

 その一つがIT人材不足だ。DXレポートでも「2025年にはIT人材不足が約43万人に拡大する」と予測されている。ただでさえグローバル化が進む中、優秀なIT人材の獲得競争は激しさを増している。優秀なエンジニアに魅力的な職場環境、開発環境を提供すると同時に、既存の社内リソースのポテンシャルを引き出し、時には遠隔地にいるメンバーやオフショア開発チームと協力しながら、開発効率を極力高めていくことが求められている。

 目指すべき方向は見えているが、一体どのように実現していけばいいのだろうか。開発者と企業、どちらも幸せになるには何が必要なのだろうか――。開発の現場を知る3人のプロフェッショナルにヒントを尋ねた。

開発現場への投資がエンジニア獲得の鍵に

ALT GitHub
シニア・ソリューションズエンジニア
田中裕一 氏

 ウォーターフォール式に決められたスケジュールに沿って、1つの部屋にたくさんのエンジニアを押し込んで開発を進め、人手が足りなければ追加して……というやり方で進められることが多かったこれまでのソフトウェア開発。だが、状況は変わった。現在は、なるべく技術的負債をためないように開発サイクルを迅速に回し、1つのチームとして情報を共有しながら、いかに柔軟に開発を進められるかが問われている。

 これは開発効率を高めるだけでなく、優秀なエンジニアを獲得する上でも重要なポイントになる。

 「ただでさえITエンジニアは売り手優位市場である上に、今や、ソフトウェアやWebサービス企業だけでなく、自動車や家電、金融など、ありとあらゆる業界業種がソフトウェアの力を活用するため、IT人材の獲得に乗り出している。つまり、こうした大手企業と人を奪い合っていかなければいけない」と、GitHubのシニア・ソリューションズエンジニアの田中裕一氏は指摘した。

 そのとき、給与などの待遇面もさることながら、もっと重要なポイントがある。エンジニアにとってPCや開発環境は大切な「仕事道具」。匠(たくみ)の大工がより良い道具を求めるのと同じように、余計なことに煩わされずに開発に専念できる環境が不可欠だ。企業として開発現場に投資し、PCというハードウェアや慣れ親しんだ開発/デプロイ環境などのソフトウェアに加え、その企業が効率的な開発プロセスを整備し、エンジニアにとってより良い環境が用意されているかどうかがポイントになる。

 事実、エンジニアに優しい開発環境が用意されている企業には優れたエンジニアが集まり、そうした優れたエンジニアと一緒に仕事をし、自身も成長したいと考える有望なエンジニアが自然に集まってくる。

 オフショア開発を支援してきた経験を持つ日商エレクトロニクス プラットフォーム本部 フィールドマーケティング部 1課 課長の近藤智基氏は、最近は海外でも人材獲得競争が激しくなっていることもあり、「性別や国籍にとらわれず、どこにいようと効率的に開発できる体制を整え、多様な人材が活躍できる、リモートワーク環境を整えることが重要だ」と述べた。

PCの払い出しや環境構築に手間をかけず、すぐに開発に取り掛かれる状態に

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日商エレクトロニクス プラットフォーム本部
フィールドマーケティング部
1課 課長
近藤智基 氏

 リモート環境を構築するにあたりネックになるのが、開発者に提供するPCや開発環境の払い出しだ。

 企業によっては、複数の開発プロジェクトが並行して走り、フェーズに応じて異なるチームに加わるエンジニアも少なくない。そんなとき、いちいち稟議(りんぎ)書を書いて、ハードウェアを調達して、OSをインストールして、開発環境や必要なソフトウェアなどを追加して……とやっていてはあっという間に1〜2週間かかってしまう。せっかくアジャイル開発を取り入れて開発を効率化していても、環境の準備がボトルネックになってしまうのでは意味がない。

 そこを補うのが、Microsoftが提供するクラウドベースのVDI(仮装デスクトップ環境)である「Windows Virtual Desktop」(以下、WVD)と、アプリケーションの開発/テストを支援するラボ環境をMicrosoft Azure上に構築できる「Azure DevTest Labs」だ。イメージファイルを用意しておけば、管理者の設定に沿って展開され、すぐに必要な環境が用意できる上、オンプレミスのVDIと異なり拡張性に優れ、コストマネジメントも容易だ。

 WVDとAzure DevTest Labsのもう一つのメリットは、できる限り柔軟性を確保しつつ、セキュリティやガバナンスを確保できること。Azure Active Directory(Azure AD)と連携することで、IPアドレスベースのアクセス制御にとどまらず、ユーザーに応じた柔軟な制御が可能。このとき、二要素認証で認証を強化できる他、いわゆる踏み台サーバ機能を提供する「Azure Bastion」を組み合わせればRDP(Remote Desktop Protocol)接続を必要以上に解放せずに済み、脅威の入り口を最小化できる。

 「『特定のユーザーに特定の権限を与え、アクセス経路を整理し、OSやミドルウェアのバージョンの設定を統一する』といった複雑な設定作業に数週間、場合によっては数カ月かかっていたのを、数時間から数日に短縮した例もある。1つの設定を済ませるだけで、いろいろな背景のエンジニアやプロダクトマネジャーに環境を提供し、設定された権限の中で自由に作業ができるようにする」と、日本マイクロソフトのインテリジェントクラウド統括本部 Azure AppDev テクノロジー スペシャリスト、服部佑樹氏は説明した。

 「Visual Studio」をはじめ、さまざまな開発環境を駆使して開発をするエンジニアにはAzure DevTest Labsを、またプロジェクトの進捗(しんちょく)管理や仕様の取りまとめも担うマネジャーならばExcelをはじめ「Office 365」をフルに使えるWVDをという具合に、適材適所で活用できるだろう。

 とはいえ、「仮想デスクトップは、レスポンスの感触をはじめ、使ってみないと分からないことも多い」(近藤氏)のも事実。そこで日商エレクトロニクスでは、WVDなどをPoC(概念実証)的に利用できる環境を用意し、「導入してみたのはいいけれど、思わぬ落とし穴があった」といった事態が起きないように支援している。

リモートワークの懸念事項、開発者の生産性

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日本マイクロソフト
インテリジェントクラウド統括本部
Azure AppDev テクノロジー スペシャリスト
服部佑樹 氏

 エンジニアに限ったことではないが、リモートワークを推進するなかで懸念事項としてあがるのが、「社員の生産性」だ。リモートワーク環境だと、誰がどの仕事を行っているのか、進捗はどうなのかを把握するのは難しい。4000万人のエンジニアに利用される開発プラットフォーム、「GitHub Enterprise」(以下、GHE)の新機能「GitHub Insights」を使うと、頻繁にコミットやレビューを行っているのは誰か、よく一緒にペアを組んで仕事をしているのは誰と誰か、といった事柄が可視化される。さらには、チーム内で分断されているメンバーがいないか、きちんとコミュニケーションが取れているか、負荷が集中しているボトルネックはないか、といった事柄も把握でき、開発プロセスや割り振りの改善につなげることができる。こうすることで、適切に人材を配置することが可能となり、エンジニアの追加採用の抑制や離職防止にもつながる。

 開発効率を高める上でもう一つ課題となるのが、開発者間、チーム間のコラボレーションだ。とりわけ、複数の拠点を結んだリモート開発やオフショア開発では、コミュニケーションの質が効率を左右しかねない。

 自身もWeb系開発に携わったことがあるという田中氏によると、コミュニケーションの密度が異なると、円滑な開発が妨げられがちだという。特に、1つの主要拠点があり、残りのメンバーがリモートで開発に加わっているパターンだと、「拠点において口頭で決めたことがオンラインで共有されないまま進んでしまうと、リモートで開発しているメンバーは『え、それいつ決まったの?』となってしまい、心が折れてしまう」(田中氏)

 そこを補うには、プロセスや文化の変化が不可欠だが、うまくツールを使いこなすことも大きな手助けになる。GHEでソースコードを一元的に管理することで、開発者がどこにいようと、「今、誰がどんなコードを書いているのか」「どんな問題があるのか」を開発者全員が共有し、コードベースのコミュニケーションが可能になる。

 また、DXを実現するうえで重要なのはタイムリーな機能リリース。そこで避けなければいけないのは“車輪の再発明”だ。実現したいと考えている何らかの機能は、他のチームが既に実装しているかもしれない。多くの企業では開発プラットフォームを統一していないため、社内にどのようなコードが存在するかを横串で把握することができない。GHEに社内のコードを集約しておけば、社内に存在する全てのコードが可視化され、リモートも含めどこで働いていようと簡単にコードを再利用できる。現に、GHEを活用して開発者間で活発にコラボレーションを進め、海外も含めた3つの拠点にまたがってAI系ソリューションの開発を進めているAWL株式会社のような例もある。

エンジニアに最適な環境を提供することで、人材争奪戦に勝つ

 WVDとAzure DevTest Labs、Azure AD、それにGHEといったソリューションを組み合わせることで、開発者にすぐに必要なリモートワーク環境を提供し、開発に専念できるようになる。AzureをはじめとするMicrosoftのソリューションとGHEのインテグレーションが進めば、1つのポリシーに基づいてセキュリティを確保しつつ、より柔軟に開発できる環境が広がるだろう。

ALT ▲リモート開発環境 概要(Azure Windows Virtual Desktop)
ALT ▲リモート開発環境 概要(Azure DevTest Labs)

 ただし、エンジニアが好むリモートワーク環境を用意したとしても、アジャイル開発を通じたDXの実現は、一朝一夕にはいかないと3氏は声をそろえる。ツールや環境を整えるだけで終わるのではなく、企業の文化やプロセスを見直し、適宜変えていかなければ効果は発揮できないというのだ。

 新しい開発スタイルの導入に成功した企業の多くは、社内で勉強会を開催したり、チームで学習し、うまくいった事柄を共有したりと、時間をかけながら少しずつ広げていったという。MicrosoftやGitHubでは、そんな啓発活動を支援する教育コンテンツや検証環境も豊富に用意している。これらを積極的に活用してみるとよいだろう。

 IT人材不足は現実のものになっている。エンジニアに好まれるリモートワーク環境の導入によって優秀なエンジニアを確保し、2025年の崖に備えるべきだろう。

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提供:日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2020年4月17日

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