「Kubernetesがキャズムを越えた」今、企業が注目すべき“VMware Tanzu”とは問われる「活用の指針」

コンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」の勢いが加速している。2020年7月28日に開催されたヴイエムウェア主催オンラインイベントのレポートからKubernetes活用の最新状況を解説する。

» 2020年08月25日 10時00分 公開
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 「Kubernetes」はコンテナオーケストレーションツールのデファクトスタンダードになっている。市場には関連するツールやサービスが次々登場しており、既にKubernetesを導入している企業はもちろん、これから導入を考えている企業も最新動向が気になっているだろう。

 そこで本稿では、ハイパーバイザーレベルでのサポートやKubernetesプラットフォーム「VMware Tanzu」を発表したヴイエムウェアの取り組みとして、2020年7月28日に開催されたヴイエムウェア主催オンラインイベント「VMware KubeNative Day 〜Kubernetesで変わるビジネスとVMwareの Kubernetesへの取り組み」の内容をレポートする。

Kubernetesは「アプリケーションモダナイゼーションのキーテクノロジー」

 KubernetesはこれまでWeb系企業を中心に採用されてきたが、最近では一般企業からも高い関心が寄せられているという。そう語るのはIDC Japanの入谷光浩氏(ソフトウェア&セキュリティグループマネージャー)だ。

 「多くの企業がKubernetesの価値を認め、アプリケーションを構築する『プラットフォームのためのプラットフォーム』として存在感を高めている状況にある。実際、国内でも採用企業は増え続けており、エンタープライズ用途で稼働するコンテナインスタンス数は2018年から5年間で33倍成長すると予測している。新しい技術が市場に普及するまで『アーリーアダプター』と『マジョリティー』(多数派)の間にある深い溝(キャズム)を超える必要があるが、市場では既に『Kubernetesはキャズムを越えた』と評価する声がある」(入谷氏)

画像 注目されるKubernetes

 ヴイエムウェアの高橋洋介氏(チーフストラテジスト)は、Kubernetesが求められる背景には「デジタルエコノミーへの対応」があると指摘する。

 「ビジネスのデジタル化においては、アプリケーションやシステムをさまざまな観点から見極める必要がある。現行ビジネスをどのように維持するのか、今後の成長につながる投資をどう実施するのか、変革をどのように推進していくのか。そこで重要になるのが『アプリケーションのモダナイゼーション』であり、そのキーテクノロジーとなるのがKubernetesだ」(高橋氏)

OSSプロジェクトを支えながら製品を強化するVMware

 KubernetesはOSS(オープンソースソフトウェア)プロジェクトとして開発されており、VMwareも多くのコントリビュート(支援、貢献)をしている。VMwareによるとKubernetesのSteering Committee(運営委員会)の担当者7人のうち2人、SIG(興味を持つ人のための特別グループ)をリードする55人のうちの13人がそれぞれVMwareの社員だという。他にも、Kubernetes関連ツールを開発するHeptioやパッケージングツールを提供するBitnami、コンサルティングやプラットフォームを提供するPivotalなどの買収による新しい技術の獲得にも積極的だ。

 高橋氏は「『Heptio Contour』を利用すればL7ロードバランシングが可能になる。エンタープライズ向けのコンテナレジストリ『Harbor』を使えば、コンテナの脆弱(ぜいじゃく)性を定期的に自動チェックするため、常に信頼性の高いコンテナイメージを安全にデプロイできる」とVMwareがさまざまな技術を使ってKubernetesのエンタープライズ向けサポートを強化していることを紹介した。

 Kubernetes関連製品の中でもVMwareが特に力を入れているのが「VMware Tanzu」(以下、Tanzu)だ。Tanzuは、Kubernetesコンテナで稼働するアプリケーションのライフサイクルを支援する製品群だ。モダンアプリケーションの構築(Build)、Kubernetesの実行(Run)、アプリケーション開発者とIT管理者のための包括的なKubernetes管理(Manage)とい3つのカテゴリーで構成される。

画像 Tanzuの構成イメージ

 セミナーでは、3つの製品を取り上げた。Kubernetesディストリビューション(コンテナランタイム)の「Tanzu Kubernetes Grid」、PaaSプラットフォームを提供する「Tanzu Application Service for Kubernetes」(以下、Tanzu Application Service)、コンテナの自動払い出しをする「Tanzu Build Service」だ。

さまざまなクラウドに展開可能なコンテナランタイム「Tanzu Kubernetes Grid」

 Tanzu Kubernetes Gridについて、ヴイエムウェアの古山早苗氏(ソリューション技術本部クラウドプラットフォーム技術部 部長)が解説した。古山氏はまず、サーバ仮想化ソフトウェア「VMware vSphere」(以下、vSphere)のユーザーに最適なKubernetes環境とは何かをテーマに挙げ、次のように述べた。

 「エンタープライズ企業がKubernetes環境を構築する際には、これまで蓄積された経験や知識を活用しつつ、新しい課題に挑戦することが重要だ。既存資産を活用することで学習コストや導入コストを抑えられるからだ。現在運用しているvSphere環境の延長線上で管理することで合理的、効率的に課題を解決できる」(古山氏)

 既存資産の有効活用という視点で効果を発揮するのがTanzu Kubernetes Gridだという。

 「Tanzu Kubernetes Gridを使うことで、さまざまなクラウドにKubernetesクラスタを構築できる。アクセス権限管理やセキュリティ管理など既存の仕組みを流用することも可能だ。『VMware Cloud Foundation』と組み合わせれば、マルチクラウド環境に構築したSoftware-Defined Data Center(SDDC)上で、コンテナを仮想マシンと同じポリシーで管理できる」(古山氏)

 「Kubernetesクラスタの管理がゴールではない。重要なのは、これまでと異なるアーキテクチャと考え方を受け入れながら、自身が変わっていくこと、そして変わり続けることだ。われわれは変化を恐れず挑戦するIT部門をサポートし続ける」と、古山氏は訴えた。

開発と運用、それぞれのニーズに応える「Tanzu Application Service」

 Tanzu Application Serviceについて、ヴイエムウェアの橋谷信一氏(モダンアプリケーションプラットフォーム事業本部 シニアプラットフォームアーキテクト)が解説した。

 橋谷氏はKubernetes環境下でのアプリケーション開発について次のように指摘する。

 「アプリケーションをKubernetes環境で稼働させるということは、インフラの仮想化とは異なるアプリケーション観点での変更が必要になる。運用チームはKubernetesクラスタというインフラリソース管理が新たに必要になり、開発チームではこれまでパッケージング領域外だったコンテナとアプリ構成も含めたパッケージングが必要になる」

 開発チームは開発に専念し迅速にアプリケーションをデプロイしたい一方で、運用チームはガバナンスを確保して安定運用を実現したい。これらの相反するニーズに応えるためのサービスがTanzu Application Serviceだと橋谷氏は語る。

 「Tanzu Application Serviceは、OSSのPaaSであるCloud Foundryをベースにしたプラットフォームだ。Java、.NET、Node.jsなどのさまざまな言語をサポートする」(橋谷氏)

画像 開発者は「cf push」というコマンドを打つだけでいい

 「開発者が『cf push』というコマンドを実行するだけで、アプリケーションコードのビルドや必要なパッケージング、コンテナ化、アプリケーション構成、実行環境へのデプロイが自動的に実施される。これらの作業で運用チームの手を煩わせる必要はなくなり、開発者と運用者の生産性を高め、負荷を低減できる」と橋谷氏は解説した。

コンテナのビルドや管理を自動化する「Tanzu Build Service」

 ヴイエムウェアの伊藤 忠司氏(モダンアプリケーションプラットフォーム事業本部 プラットフォームアーキテクト)は、「Dockerfile」を使ったコンテナ運用の課題について指摘した。

「Dockerイメージの作成にDockerfileを使うのが一般的だが、コンテナが50個を超えるような場合には、OSパッチの適用などコンテナイメージのセキュリティ対応やベストプラクティスに沿った記述が必要だ。他にもアプリケーションごとにDockerfileを作成しなくてはならない。こうした『コンテナ化のための作業』がアプリケーション開発者の負担になっている」(伊藤氏)

 Tanzu Build Serviceを用いることで、コンテナイメージやアプリケーション実行環境のメンテナンスが不要になるという。

 「アプリケーション開発者はDockerfileを作成しなくてよくなり、負荷が減る。さらにセキュリティやガバナンスの確保もできる。強力な自動化とガバナンス機能により開発、運用チームの負荷を低減し、企業が必要とする『ワークフローの利便性』を提供する」(伊藤氏)

画像 自動化とガバナンス機能により開発、運用チームの負荷を低減する

 Kubernetesが普及する中で、VMwareが投入するTanzu製品群は企業のコンテナ活用を一段と加速させるだろう。

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提供:ヴイエムウェア株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2020年9月24日

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