「全ての企業でデジタルトランスフォーメーション(DX)が必須、それにはクラウドシフトが最適解」――。だが、企業にはオンプレミスでデータ分析や機械学習を行うニーズが厳然として存在する。とはいえ、ビジネスのスピードに対応するアジリティが必要なことは、クラウドだろうとオンプレミスだろうと違いはない。それを実現するためのキモとなる管理の自動化について、アイティメディア @IT編集部の三木泉が、デル・テクノロジーズの岡野家和氏および相場宏二氏に聞いた。
クラウドへの移行がさまざまな場面で推進されているが、実際にアプリケーションを運用している現場では、クラウド化には適さないと判断されるケースもある。このためハードウェアベンダーもそれをキャッチアップして、それぞれのワークロードに適したハードウェアの開発を続けている。
ただし、「ITをビジネスのためのツールとして使いたい」「インフラの管理や運用に余計な手間をかけたくない」というのは、クラウドだろうとオンプレミスだろうと違いはない。オンプレミスのサーバがあるために、運用管理に時間をとられるのでは困るというのが担当者の本音だ。
「Dell EMC PowerEdge」シリーズでサーバの主要ベンダーとなっているデル・テクノロジーズは、2020年10月、大量データを対象とした高度な分析や機械学習に焦点を当てた、特徴に富むサーバ機をリリースした。同時に統合管理コンソールの「OpenManage Enterprise」で、新たな機能の統合を発表した。これにより、「サーバの管理などしたくない、ただオンプレミスでのデータ活用に集中したい」という人たちが、サーバをツールとして使いやすくなったという。アイティメディア @IT編集部の三木泉が、デル・テクノロジーズ データセンターコンピュート&ソリューションズ事業統括の岡野家和氏とカスタマーソリューションセンター長の相場宏二氏に話を聞いた。
三木 データ分析や機械学習/AI(人工知能)を行う人たちが便利に使える、面白いサーバを発表したそうですね。
岡野氏 ええ。2020年10月9日に、「PowerEdge XE7100(以下、XE7100)」の販売を開始しました。
XEは、「Rシリーズ」や「Tシリーズ」といった汎用(はんよう)的なPowerEdgeとは別の、特定市場に徹底してフォーカスしたシリーズです。今回のXE7100は、そのモデルの一つとして、ストレージサーバ用途にフォーカスした製品になっています。
5Uのラックサーバですが、3.5インチの大容量ドライブが最大で100本入るので、1サーバで最大1.6PB(ペタバイト)の総ストレージ容量を提供可能です。他社にもこの手の製品はありますが、主流はドライブ60本までといった程度なので、比較すると搭載本数が67%多い。そこが、分かりやすい差別化ポイントになっています。
三木 特に、どんな用途で使えそうですか?
岡野氏 大容量のストレージサーバ製品は以前からありますが、新たな用途としてはAIを使ったビデオ解析が台頭してきています。それを意識して、XE7100では「NVIDIA V100」のGPU(Graphics Processing Unit)をサポートしています。このタイプのサーバでは、GPUサポートは他社にはまだ少ないのでこれも差別化ポイントです。
もちろん、昔ながらといいますか、オブジェクトストレージという用途も想定しています。さらにこれからメディアストリーミングにフォーカスしたタイプもリリース予定で、こちらは「NVIDIA T4」を最大4基搭載できます。
三木 オブジェクトストレージは水平にスケールする構成もありますが、これだけの容量のデータを1台にまとめることができ、GPUなども即座に適用できれば、便利だと感じる人たちはたくさんいるでしょうね。
岡野氏 手元に入手できた大量のデータを、例えばAI処理のためにクラウドにコストと時間をかけて転送するといったこともしなくて済むので、ハイブリッドクラウド運用の中でもこの領域はやはりオンプレミス志向が強いように思います。
三木 ただ、このように明確な目的があり、ITをツールとして使いたい場合、面倒なITインフラの管理などにできるだけ煩わされたくないですよね。
岡野氏 そこでデル・テクノロジーズが推進しているのが、OpenManage Enterpriseです。XE7100と同時に、このツールの重要な拡張を発表しました。
OpenManage Enterpriseは、大規模システムの全てのデバイスを一元管理できる管理コンソールです。これと、PowerEdgeの標準搭載の管理プロセッサである「iDRAC(integrated Dell Remote Access Controller)」の組み合わせで、サーバのいわゆる「ライフサイクル」全体をカバーできます。さらに注目していただきたいのは、細かなサーバ管理に関わる設定を自動化することで、サーバの専門家でなくとも、安定した活用が図れることです。
また、OpenManage Enterpriseの最新バージョンは3.5ですが、これまで別ツールで提供されてきた機能をプラグインとして統合する拡張を進めています。最近では、電力管理ツールの「Power Manager」と、エラーやハードウェア障害の自動通報を担う「SupportAssist」のプラグインが追加されました。2020年12月には、ファームウェアやドライバのアップデートやリポジトリ管理を一元化する「Update Manager」のプラグインが提供される予定です。これによって、ライフサイクル全体を管理できるようになります。
三木 XE7100をツールとして利用したい人にとって便利なOpenManage Enterpriseの機能には、具体的にどのようなものがありますか?
相場氏 XE7100のような製品は実装密度が高く、GPUなども使うことになれば、消費電力と熱の問題への対応が必要になります。OpenManage EnterpriseにPower Managerのプラグインを入れれば、電源管理と監視というタブが追加されます。そこから、過去1年間の電力使用量、温度、CPU利用率、I/O利用率、メモリ利用率、エアフロー(ファンの稼働率)がグラフィカルに確認できます。データセンター単位やラック単位、サーバ単位など、さまざまな単位で確認できますし、レポートも簡単に作れるので、利用部門が課金する際の資料として使っているケースもあります。
100本ものディスクを搭載できるサーバですから、ストレージ管理機能も重要です。iDRACの機能によって、仮想ディスクの作成やRAID構成が、OSを起動したままクリックするだけで簡単にできます。また、ディスクの廃棄は、従来なら物理的に穴を開けたり業者に廃棄を委託したりするといったことが必要でしたが、暗号消去という方法で簡単に廃棄できます。PowerEdgeはデータを暗号化してディスクに保存するので、その暗号キーを消去すれば、ディスクにはアクセスできなくなるのです。
三木 いろいろ機能があっても、ユーザーはとにかくインフラの運用に時間を取られたくありません。
相場氏 そのために自動化が随所に盛り込まれています。先ほどの熱や消費電力に関しても、しきい値を設定しておくだけで、自動的に制御ができます。Power Managerは、使用する電力の上限を何ワットと設定すると、それ以上にならないようにサーバがクロック数を自動的に落とすというのが基本的な機能です。これだけ大容量のサーバだとかなり熱も発するので、空調能力的にそんなに熱くなると困るという場合は、排気温度を設定することも可能です。排気温度はデフォルトでは70度ですが、例えば40度に設定すれば、それ以下の排気温度になるように、CPUのクロック数を自動的に落とします。
相場氏 さらに岡野が先ほどお話しした重要な新機能として、「SupportAssist Enterprise」というツールを統合したことが挙げられます。
SupportAssist Enterpriseは、サーバ、ストレージ、ネットワーク製品の障害発生時に、デル・テクノロジーズのテクニカルサポートに自動的に通知する仕組みです。しきい値を超えると自動的にログ収集して転送し、サポートが「どうやらファンが壊れている」「もうすぐメモリが壊れそうだ」などと判断し、メールやお電話でお客さまに連絡してパーツ交換に伺う、というものです。問題が発生してからお客さまがサポートの連絡先を探して詳細情報を提供していただくのと比べて、問題解決までの時間を短縮できます。
これは、従来はOpenManage Enterpriseとは別ツールでした。つまり、SupportAssist EnterpriseのサーバのためにハードウェアとOSライセンスが必要だったということです。OpenManage Enterpriseに統合されたことで、その部分がコスト削減できます。
また、テクニカルサポートに自動通知されると「ケース」として作成され、SupportAssist Enterpriseの画面上で確認できるようになります。この「ケース」は、SupportAssistによる自動通知だけでなく、お客さまがメールやチャットで連絡した通常のサポートでも作られるのですが、それらが全て同じ画面上に表示されます。つまり、SupportAssistが統合されたOpenManage Enterpriseがあれば、社内のデータセンターにある全機材の稼働状況管理と、障害があった場合の障害通知、今の対応状況がまとめて確認できるわけです。さらに、OpenManage Enterpriseはさまざまな他社ツールとも連携できますので、ほとんどのお客さまの要望に応えられるようになっていると思います。
三木 あらためて、サーバをツールとして使うことに集中したい、運用管理に時間をとられたくない、個々の設定を細かく見るのは面倒という人に、OpenManage Enterpriseを使うことでどのようなメリットがあると言えますか。
相場氏 とにかく自動化ですね。OpenManage Enterpriseでは、しきい値を設定して、いろいろなイベントについてアラートを出すだけでなく例えば管理者にメールを送信したり、スクリプトを実行したりといったアクションまで自動化できるようになっています。電源管理もそうですし、SupportAssistも、障害対応を自動化することで、ダウンタイムを減らすというものです。
ファームウェアのアップデート作業も、以前ですと個別にサーバのファームウェアバージョンを調べて、デル・テクノロジーズの最新のサポートサイトにアクセスして、ファームウェアのカタログをアップデートして、どれが最新なのかマニュアルで比べて……、と手作業でやる必要がありますが、OpenManage Enterpriseを使用する事で自動化できます。さらに2020年12月リリースの「Update Manager」を使用すると、例えば最新のファームウェアではなく、一世代前のバージョンで設定したいなどの高度な設定が可能になります。OSのインストレーションも、どのサーバにどのOSをインストールしてどの設定情報を入れるかプロファイルとして登録しておき、スケジュールを決めてまとめて実行できるなど、細かい、面倒な作業が自動化できます。お客さまは、OpenManage Enterpriseを入れて、これだけチェックしておけば安心というものになっているのが強みだと思います。
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2020年12月17日