早期評価パートナーが指南する、Azure VMware Solution導入の理想と現実

2020年秋にサービス提供を開始したAzure VMware Solution(AVS)の魅力と導入のポイントを早期評価パートナー2社が解説した。

» 2021年01月27日 10時00分 公開
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 プライベートクラウドとパブリッククラウドを併用するハイブリッドクラウドや、複数の異なるクラウドサービスを利用するマルチクラウド、オンプレミスやプライベートクラウドからパブリッククラウドにシステムを移行するマイグレーションで大きなハードルとなるのが、展開先のクラウドにおける仮想マシン環境の構築や、クラウドとオンプレミスでの運用の一貫性を確保することだ。

 クラウドサービスのメニューとして、「VMware vSphere」「VMware vCenter」のような仮想マシン環境構築ソフトウェアや統合運用ソフトウェアが提供されていれば、こうした悩みの多くは解決できる。

 実際にVMwareでは各クラウドベンダーと協業し、Amazonは「VMware Cloud on AWS(VMC on AWS)」、Googleは「Google Cloud VMware Engine(GCVE)」、そしてMicrosoftは「Azure VMware Solution(AVS)」を発表、海外から順次サービスの提供を開始してきた。

 日本国内でも2020年秋ごろから各サービスの提供が始まり、日本マイクロソフトは、2020年12月1日にMicrosoft Azureの東日本リージョンでAVSのサービス提供を開始した。

 AVSの国内提供開始を前に、日本マイクロソフトの一部パートナーが2020年5月から海外でAVS早期プレビューを行ってきた。本記事は、その検証に基づくAVS導入のポイントやメリット、注意点を紹介するWebセミナー「Azure VMware Solutionの導入に向けて」をレポートする。

AVS、直近のアップデート

マイクロソフトコーポレーション Global Black Belt Advanced Migration Technical Specialist 前島鷹賢氏

 冒頭で、マイクロソフトコーポレーションのGlobal Black Belt Advanced Migration Technical Specialistである前島鷹賢氏が、AVSの直近のアップデートを紹介した。

 AVSは2020年9月にAzureの4つのリージョン(米国西部、米国東部、西ヨーロッパ、オーストラリア東部)で一般提供を開始、同年12月1日には東日本でも提供を開始した。同日英国南部でも提供を開始したため「2020年12月時点で計6リージョンにおいてサービスの利用が可能となった(前島氏)」という。

注:2021年1月に米国中北部およびカナダ中部でも提供を開始し、2021年1月現在、8リージョンに拡大

 最低3ノード以上から利用という制限があるものの、課金は1時間単位からで可能。長期利用に向くリザーブドインスタンスも用意されており、同契約ならば3年の長期利用で50%以上の割引が受けられるという。そのため「例えば日常的に利用する10ノードは3年予約で購入し、季節変動で増減するノードは時間単位で、という利用も可能」とのことだ。

 また同サービスの利用は、2020年10月までは日本マイクロソフトとユーザー企業との包括契約であるエンタープライズアグリーメントを結ぶ必要があったが、現在はクラウドソリューションプロバイダー(CSP)に正式対応し、日本マイクロソフトに登録された販売代理店、Azureパートナーを通じた提供が可能である。そのため、システム開発事業者にとっても、エンドユーザー企業にとっても煩雑な手続きが少なくなった。システム開発事業者から独自の付加価値を追加したAVSが提供されることも期待される。

AVSの理想と現実

日商エレクトロニクス プラットフォーム本部 第三プラットフォーム部 MS推進課 課長 近藤智基氏

 セッションの2番手は、AVS早期パートナープログラムに参画していた日商エレクトロニクスのプラットフォーム本部 第三プラットフォーム部 MS推進課 課長 近藤智基氏が、AVSの使用感と、検証結果を報告した。

 近藤氏は「AVSは非常に魅力的なソリューション」だが、「利用には想像以上に高い壁があるのも事実」とし、利用に当たっての注意点を紹介した。

 AVSは、VMware ESXiを搭載した専用サーバを使いAzure上に構築したソリューションで、使われるVMware製品の各種コンポーネントの構成とバージョンは次の通り。

Azure VMware Solution の構成

 AVSのホストモデルは、2020年12月現在「AV36」という1種類のみが提供されている。スペックと料金は次図の通り。クラスタ構成になるため最低3ノードからの利用となり、AV36、3台が最小構成となる。

料金にはVMwareのライセンスコストも含まれている。また、ホストの拡張は1ホスト単位で可能で、拡張にかかる時間も数十分だという

 「AVSで最も注目されているのが、オンプレミスサーバのL2延伸ができるVMware HCX」だという。これは、オンプレミスのネットワークアドレス帯をAzureまで延伸できる機能で、オンプレミスとAzure間でのVMware vSphere vMotionや、アドレス変更なしでの移行などが行えるものだ。

VMware HCXのイメージ。L2延伸などを利用し、オンプレミスとクラウドのリソースを抽象化し運用可能なハイブリッドクラウド

 日商エレクトロニクスは、このL2延伸も含めたAVSの利用は、次のようなユーザーに大きなメリットがあると考えているという。

  1. オンプレミスのVMware vSphere環境のDR(災害対策)サイトとして活用することを検討
  2. IPアドレス帯の問題でIaaSに移行できなかった環境の移行を検討
  3. Windows ServerのEOS(サポート期間終了)対応を検討
  4. 「VMware Horizon」などVMwareのソリューションからの移行

 それぞれ、どのようなメリットがあり、どのような点を考慮する必要があるのだろうか。

オンプレミスのVMware vSphere環境のDRサイトとして活用を検討するユーザーのケース

 ハードウェア/ソフトウェアの購入や5年ごとのライセンス更新などの費用がかからないというメリットは、どのタイプのユーザーにも共通だが、DRサイトという常時利用ではないサイトの構築は、特に恩恵を感じやすい。

 一方、利用時の注意点として、バージョンの問題がある。VMware HCXは「VMware ESXi 5.1」以上で動くといわれるが、使いたい機能によっては5.5以上でなければならないケースもあるなど、要件に合わせた環境調整が必要だという。また、L2延伸ではVPNがサポートされていないため、ExpressRoute(閉域網)が必要となる。さらに、現状では東日本のみの提供であるため、物理的に分散させたいDRとしての利用においては考慮の余地があるかもしれない。

IPアドレス帯の問題でIaaS移行できない環境の移行を検討するユーザーのケース

 AVSでは、VMware HCXにより、現行のオンプレミスのアドレスをそのままにL2延伸できる。ただしこの場合、オンプレミスのVMware 仮想化環境をなくすことができない。また、L2延伸の環境は2重化されていないため長期の利用には向かず、どこかのタイミングでAzure上への移行を考慮する必要がある。そのため、事前にそれを見越したネットワーク設計も重要になるという。

VMware製品のEOS対応を考えるユーザーのケース

 Windows Server 2008は2020年1月14日で延長サポートが終了し、以降はアップデートやセキュリティパッチが配られることはなくなる。しかし、ユーザーの中にはシステム構成上の都合からWindows Server 2008を利用し続けなければならないケースもある。その解決手段がAzureへの移行だ。Azureに移行すれば、さらに3年間の拡張セキュリティ更新プログラム(ESU)が受けられる。既にオンプレミス環境でもVMware vSphere環境でWindows Server 2008を運用しているのであれば、AVSに移行するのが手っ取り早い。

 AVSへの移行方法には、コールド、ウォーム、ホットの3つがある。

期待が大きいホットマイグレーションだが、オンプレミス側のvSphereのバージョン要件が厳しい

 オンプレミス環境でLinkedCloneやAppVolumesなどを組み込んでいて、この環境を継続利用したいユーザーは、AVSを導入することで、Azureに移行してもHorizonをはじめとするVMware製品独自の機能を利用できるメリットがある。

HorizonなどVMwareのソリューションを継続利用したいユーザーのケース

 このケースでの注意点は、VDI(仮想デスクトップインフラ)環境を運用している場合だ。一斉に仮想デスクトップを起動する際のブートストームを回避するため、企業の中には、非常に高い性能のストレージ環境を構築するケースが多いが、AVSで同等の対応ができるかどうか事前に調査、検討する必要があるとのことだ。また、VDIについてはAzure上にHorizon Cloudという別ソリューションもあるので、そちらへの移行を検討するという手もあるという。

 近藤氏によれば、AVSは単体で利用するのは容易だが「オンプレミスと接続して移行していこうとすると、さまざまな技術、知識が求められる」という印象を受けたという。そのため、AVSへの移行を成功させるには、信頼できるパートナー選びが重要であり、VMwareとAzureに精通しているパートナー、オンプレミスのストレージやネットワークに詳しいパートナー、直近であればAVS検証済みのパートナーを選択することが大切であるとのことだった。

PoC結果による導入のポイント

日本ビジネスシステムズ(JBS) クラウドプラットフォーム4部 エキスパート 野中邦政氏

 最後のセッションは、日本ビジネスシステムズ(JBS)のクラウドプラットフォーム4部 エキスパート 野中邦政氏が、PoC(Proof of Concept:概念実証)結果から得られたAVS導入のポイントを中心に紹介した。

 JBSが行った機能検証実施項目は次の通りだ。

JBSで行った機能検証実施項目

 基本的な各項目で得られた具体的な注意点は次の通り。

機能検証考察(vSphere/NSX-T)
機能検証考察(ネットワーク接続性/仮想マシン移行性)

 L2延伸については、オンプレミスでロードバランサー(LB)を運用している場合に、AVSの環境とLBとの距離が離れてしまうことを考慮する必要があるという。また、AVSはvDS(vSphere Distributed Switch)を使用しているため、オンプレミスでもvDSを利用していれば、そのまま移行可能だが、そうでない場合、L2延伸移行時にvDSを考慮する必要があるという。

 野中氏はVDIを扱う部署に勤務しているため、AVSのサービスの1つであるHorizon on AVSについての検証も詳しく行っている。検証に用いた構成は下図のようなもの。

検証環境では、Azure IaaS上にコネクションサーバ(CS)を2台構築し、AzureのLBで負荷分散を行い、EventDBをPaaSのSQL Databaseに構築したVDI環境を構築。ユーザープロファイルの保持はFSlogixを使用している

 検証の結果、次のようなメリットと注意点が得られたという。

VDI環境構築時のメリットと注意点

 ユーザー数が増えた際のノードの拡張も、オンプレミスと異なり、ハードウェアを意識することなく、数クリックするだけで行えるという点は魅力的だ。また、オンプレミスで使用していたマスターが、そのまま流用できるという点も移行を容易にしている。さらに、Microsoft 365の利用では、Azureのバックボーン経由で高速な通信が可能になるという点はVDI環境構築時のメリットだ。

 野中氏は、Azure Backup、Azure File Sync、Azure Update Management、Azure Security Centerなど、Azureの各種サービスとAVSとの連携についても紹介。AVS単体で利用するだけでなく、これらのサービスを併用することで、運用・管理を容易にしたり、セキュリティを高めたりできるのもAVSならではの使い方だ。

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提供:ヴイエムウェア株式会社、日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2021年2月23日

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