1カ月に10〜20機能のリリースを繰り返して進化する基幹業務システム――8年間の活用で実感したローコード開発基盤のメリットとは日々刻々と優先順位が変化する多数の業務要求(機能追加)に短期間で対応するには

マンションやビル、不動産の管理事業を手掛ける日本ハウズイングは、ローコード開発基盤を使って社内の基幹業務システムを刷新した。その後8年以上にわたり、改善と機能追加を繰り返しながら今も日々進化を続けている。ローコード開発基盤を8年間活用して感じているメリットなどについて同社に聞いた。

» 2021年03月22日 10時00分 公開
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 1958年創業の日本ハウズイングは分譲マンションやビルの管理をはじめ、建物の営繕工事、不動産の賃貸・仲介といった事業を国内外で幅広く展開する企業だ。主力事業の一つである「マンション管理」では2020年3月末時点で9750棟(45万9551戸)の管理業務を受託する実績を持ち、その数は国内トップクラスだ。

 同社は2012年、それまで社内で利用していたマンション管理や販売管理といった業務システム群の統合と改善を目的に、新基幹業務システム「ハウネット(Hou-NeT)」を構築。開発基盤として採用したのは、ウルグアイの企業GeneXusのローコード開発環境「GeneXus」だった。

写真 日本ハウズイングの佐野広幸氏

 同社はその後約8年間ユーザビリティの向上、業務フローの改善に合わせた機能修正、頻繁に改正される法令へのシステム対応、OSやWebブラウザのバージョンアップ対応などを繰り返してきた。現在もその進化は続いている。基幹業務システムの領域であっても、変化の激しいITの世界で8年間はかなりの長期間といえる。旧来型のインフラやプラットフォーム、開発手法で作られたシステムであれば、いわゆる「レガシー」として全面的なリプレースが検討されていてもおかしくない年数だ。

 日本ハウズイング システム企画部 システム事務企画グループでグループマネージャーを務める佐野広幸氏は次のように話す。「B2C(Business to Consumer)とB2B(Business to Business)の機能を併せ持つハウネットを長く運用していく中で、WebブラウザやOSといった環境の変化に対応することも重要です。周辺の環境が変わっても、ハウネット上の機能をきちんと使える状態を維持する必要があるからです。この8年の間にそうした変化は幾つもありましたが、大きな問題がなくフォローアップできている理由の一つには、GeneXusを採用したこともあると感じています」(佐野氏)

1カ月に10〜20機能(改修要望)のリリースを繰り返して進化し続けるハウネット

 ローコード開発基盤であるGeneXusの特徴は、ユーザーが業務を進める際に必要な要素や手順、情報の流れといった業務仕様から、実装環境に合わせたビジネスロジックのソースコードや、データベースのテーブル、ユーザーインタフェース(画面)を自動で生成できることだ。短期間でシステムを開発できる点がメリットの一つだ。加えてGeneXusは、いわゆる保守開発フェーズにおいてこそ真価を発揮する幾つもの有用な機能を併せ持つ。

 例えば、2017年8月にハウネットの利用環境であるWebブラウザのバージョンアップ(Internet Explorer 8から同11)のためにインフラを刷新して、約800もの問題が発生してしまった際の保守だ。特に、インフラ刷新の際にアップグレードしたGeneXusの当時の新機能が生きたという。例えば、ユーザーチェックで問題があり、修正し、検証してもらう場合、同じような作りをしているところをGeneXusで調べて同じように修正する際だ。仮に30カ所で同じ作りのところがあっても、1カ所のユーザーの検証で済むという保守性の良さがある。検証にかかるコストを大幅に削減できるのだ。

 約800の問題の修正は3人で10カ月を想定していたが、半年ほどで終わったという。残り約3カ月は既存機能の改修、追加に充てることができた。ハウネットでは現在、細かいものも含めると、1カ月当たり10〜20機能、年間で50回以上の改修や新機能のリリースを行っている。ドキュメントは業務フローと要求機能書のみで、アジャイルに保守開発を進めているという。「仕様を決めるときはユーザーとの打ち合わせの中でホワイトボードなどに手書きしながら、実装機能の優先順位を決め、細かい仕様はGeneXusで作成したプロトタイプを確認しながら機能を追加しています。現在はWeb会議ベースで画面を見ながらエンドユーザーと仕様を決定するニューノーマルのスタイルで改修作業を実施しています」(佐野氏)

 GeneXusにおけるプロトタイピングは、仮のモックアップや設計書などのドキュメントではなく、本番環境同様の動く画面がメインだ。画面をユーザーに見せながら確認できるので、コロナ禍のリモート開発でも機能追加がアジャイルに進めやすい。優先順位の高いニーズに対して、70%ぐらいの機能充足で早くリリースして、そこから完成形まで育てることができる。

プロトタイプは動く画面がメインとなる

 また、次々と優先順位が変わる上に、数が多い業務ロジックなどの追加において、ローコード開発基盤であるGeneXusの機能が大きな意味を成す。データベースの生成、再編成にも対応しており、実行順序を考慮せずにルールを追加しても、GeneXusが推論を行い、きちんと実行順序を考慮してアプリケーションを生成するからだ。

 加えて、GeneXusは機能追加などによる影響の分析も行える。別途、影響分析のためのツールを導入する必要がないのだ。例えば、1カ所の項目を追加する際に、一般には追加前に影響分析や工数の見積もりをして、検討に入ることが多い。GeneXusの場合は、取りあえず項目を追加し、いったんビルドして、追加の影響を受ける既存機能を一覧で確認し、既存機能がこれまで通り動くかどうか、影響分析が可能なのだ。

影響分析の例

 これにより、いわゆるデグレードも起こらず、高品質を保つことができる。コーディングバグが入る余地がなく、実装者が代わっても問題がないという使い勝手の良さがある。例えば、2020年の4月にGeneXusのプロジェクトに入った者でも、コロナ禍によって対面でシステムのレクチャーを受けられなかったにもかかわらず、同6月には自分で調べてリモートで開発できるようになったという。人材の確保や教育におけるコストを少なくでき、内製化を進めるユーザー企業には有益なツールといえるだろう。

 なおオプションの「GeneXus Server」は、バージョン管理も可能だ。業務プロセスの変更で問題が起きたときも、どの改修のバージョンが影響しているのかが分かるので、改修履歴を見て、業務プロセスの追加や変更を提案できるという。例えばリリース直前にリリース対象に変更があった場合でも、リリースモジュールの柔軟な変更が可能だ。

 このような機能を持つGeneXusを用いて、ハウネットでは、この8年で顧客へのサービス内容や現場の業務効率を大きく変えるような機能を強化した。例として3つ紹介しよう。

写真 日本ハウズイングの森嘉兼氏

 その一つが、管理業務を受託しているマンション管理組合との間で、銀行口座の入出金承認、押印書類のやりとりを電子化する「スマート承認サービス」だ。また、銀行口座の入出金データをネットワーク経由で取得し、帳票に出力することで、手作業による記帳やコピー、照合の手間を削減し、会計業務を効率化するシステムでもGeneXusを活用した。さらに、協力会社に対して支払い通知書を発行し、紙による請求書の発送と目視での確認を不要とするシステムの開発などにも役立ったという。

 「従来は協力会社から送られてきた紙の請求書と取引記録を、担当者が1件ずつ目視で確認していました。明細の件数は4万件近くあり、毎月多くの時間と人件費を要していました。この部分について支払い承認のプロセスを簡素化し、さらに承認された案件を深夜にバッチ処理して、支払い通知書を各社へ自動的に送るための仕組みをGeneXusで構築しました。案件数によって業務完了までの時間が長いこともありましたが、現在では締め日から5営業日以内には、確実に月次決算を終えられるようになっています」(日本ハウズイング システム企画部 システム開発グループ 課長代理の森嘉兼氏)

難航した「ハウネット」開発プロジェクトを救ったGeneXus

 このようにアジャイルに成長を続けるハウネットだが、GeneXus導入前は、いわゆるウォーターフォール型で開発を進めようとしており、8年前の新規リリース時も多くの課題を抱えていたという。

 「全社規模でのシステム統合の中核として構想されたハウネットでしたが、当初、開発作業が難航しました。理由の一つは当社が展開する事業が持つ若干複雑な業務モデルでした」(佐野氏)

 マンションの管理業務では同社が各マンションの管理組合から多種多様な管理業務を受託して、システム上で処理する必要がある。

写真 日本ハウズイングの太田勝彦氏

 これに加えて以前のシステムを展開してきたいきさつも、統合の難易度が上がる一因になっていたようだ。日本ハウズイング システム企画部 システム開発グループ チーフマネージャーの太田勝彦氏は「過去に本社で作ったマンション管理システムを各支店に横展開する形で、全社的なシステム化を進めたことがありました。各支店で導入後に独自の要件に応じた機能追加を繰り返した結果、『配属先が変わると使い方が分からない』ほど個別化が進んでしまいました」と話す。

 当初、旧来と同じウォーターフォール型でハウネットの開発を進める計画だった。複雑な業務内容の整理と要件定義に約10カ月をかけ、内容を確認したところ、全ての機能を実現するためには時間もコストも当初の計画を大幅にオーバーすることが判明した。「この先、どう進めればいいのかと悩んでいたところ、ある開発パートナーからGeneXusを紹介されました」(佐野氏)

 日本ハウズイングはGeneXusの導入決定に合わせて、ハウネットの開発手法を、当初計画していたウォーターフォール型から、アジャイル型へと切り替えることを決断した。業務要件を基にGeneXusを使って動作するプロトタイプを作成し、短い期間でレビューと修正を繰り返していく手法で開発を進めていった。保守開発だけではなく、新規開発時もGeneXusが大きく貢献したのだ。

 「結果的に設計開始から約16カ月後の2012年3月末には無事、本番環境にハウネットをリリースすることができました」(佐野氏)

ハウネットのシステム概要

「今あるものの進化」だけではなく「新たな領域への適用」も視野に

 ハウネットは8年前のリリースから現在に至るまで、同社の事業に不可欠なシステムとして、継続的な改善や機能強化が続いてきた。今後もその役割と重要性は増していく。

 開発基盤であるGeneXusに対して同社は、ハウネットを進化させるだけではなく、今後進める業務改善や新しい働き方の実現においてITの側面から広く支援することも期待しているという。

 「業務システムのモバイルデバイス対応やAI(人工知能)のような新技術の導入を通じて、IT活用による業務の効率化、新しい働き方への対応を加速するミッションを当社は掲げています。われわれはハウネットの構築と運用を手掛けてきた中で、開発のスピードや改善の容易さといったGeneXusのメリットを実感してきました。今あるものの進化だけではなく、先に挙げたような新たな領域への取り組みについても、GeneXusならではのメリットを生かせる部分が多くあると思っています」(佐野氏)

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提供:ジェネクサス・ジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2021年4月21日

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