運用効率とコスト効率を上げ、拡張性にも優れるとして多くの企業に浸透したHCI。だが、従来の運用スタイルのまま使っていたり、導入検討すらしなかったりと真の効用を見過ごしている例は少なくない。今あらためてHCIで成果を出すポイントを聞く。
2021年も「Nutanix Technology Champion」(NTC)の発表があった。NTCはNutanix関連技術を習得し、コミュニティーや市場に貢献したエンジニアに贈られるもので、今年はグローバルで144人が受賞。日本国内では4人が受賞しており、うち3人がSB C&Sに在籍している。NTCから見たNutanixの特徴や注目ポイントなどを聞いた。
汎用(はんよう)的な仮想化基盤として、HCI(ハイパーコンバージドインフラ)が一般化してきた。周知の通り、ソフトウェアによってサーバとストレージを統合し、インフラを一体的に管理できるHCIは、運用管理をシンプルに実行できることが大きな特徴だ。
従来の3層(3Tier)のインフラと比較して、ハードウェアコストやランニングコストを圧縮できる他、コンピューティング/ストレージリソースを必要に応じて柔軟に追加することもできる。
こうしたシンプルさ、優れたコスト効率、拡張性というメリットを持つHCIを最初期に製品化し、注力してきたのがNutanixであるとご存じの方も多いのではないだろうか。2009年に設立された同社は、2011年に最初のHCI製品をリリースし、急速にシェアを伸ばしてきた。ディストリビューターとしてNutanixを取り扱うSB C&SでNTCを受賞した萩原隆博氏(ICT事業本部 販売推進・技術本部 技術統括部 第3技術部 1課)は、HCI市場についてこう説明する。
「Nutanix製品に対する企業の満足度は高いと感じています。3Tier構成からNutanixへ移行した企業の中で、何らかの不満を抱いて3Tier構成に戻したという例を耳にしないことからもそれはうかがえます。ただ、HCIが企業にもたらす本当の効果については、十分に享受できていないケースも目立ちます。特にNutanixについては、創業時から掲げてきた『インビジブルインフラストラクチャ』がもたらす効果に注目することが大切です」(萩原氏)
インビジブルインフラストラクチャとは、「ITインフラを意識せずに利用できること」を指す概念だ。萩原氏は「IT部門がインフラ管理の手間から解放され、本来担うべき業務に専念できるようにすることが狙いです」と話す。
「HCIの浸透に伴い、導入自体が目的化してしまっているケースも増えてきました。確かにNutanix製品に移行するだけでも一定の効果は得られます。しかし、IT部門が担うべき業務に専念できるレベルにまで持っていくためには、運用スタイルの見直しを含めた工夫が必要なのです」(萩原氏)
では、インビジブルインフラストラクチャの効用を享受するためには、何がポイントになるのか。「まずはHCI一般に対する先入観を疑うことが大切です」と指摘するのは、NTCを受賞したSB C&Sの渡辺剛氏(ICT事業本部 販売推進・技術本部 技術統括部 第1技術部 1課)だ。
「現在、複数のベンダーがHCI製品を提供しており、シンプル、拡張性の高さといったHCIの基本メリットは共通です。しかし、そのメリットを吟味することなく、『ウチにはインフラの拡張予定はないから必要ない』『3Tier構成のスタイルに慣れているから、HCIの運用体制も同じでいい』といった具合に、最初から可能性を切り捨ててしまう声も聞こえてきます。まずは『自社には関係ない』『今のままでよい』と思考停止することなく、HCIの特徴を見直してみると、運用効率化の有効な手掛かりを発見できると思います」(渡辺氏)
渡辺氏はその一例として「新しいハードウェアへのリプレース」を挙げる。一般に、リプレースは保守期限を迎えるタイミングに合わせて、新しい機器を購入し、アプリケーションやデータを移行するアプローチを採る。だが、こうした作業はIT部門にとって大きな負担であり、人的ミスなど、移行に伴うトラブルが事業に影響をもたらすリスクもある。こうした課題にもHCIは有効なソリューションとなる。
「HCIの場合、新しいノードを追加すると自動的に仮想化インフラのコンピュートやストレージが拡張されるので、アプリケーションやデータをスムーズに移行できます。移行したら、古いノードを順番に削除していくだけです。システムを停めることなく、トラブルも回避しながら、安全かつ効率的にリプレースできるのです」(渡辺氏)
「シンプル、コスト効率、拡張性」といったキーワードだけにとらわれず、「自社ではどう生かせるのか」、現在の課題と活用シーンをリアルにイメージしてみると、“自社におけるHCIのメリット”がおのずと見えてくるというわけだ。
「HCIの導入時にはソフトウェアのバージョン確認、機器同士の互換性の確認、独自のネットワークやストレージ設定といった3Tier構成で必要だった作業のほとんどが不要になります。そうした作業時間とコストを、IT戦略立案やサービス品質向上など、本来的な業務に充てられるようになるのです」(萩原氏)
では、以上を踏まえた上で、Nutanixならではのメリットを生かすには何に着目すべきなのか。ここには大きく3つのポイントがあるという。1つ目は管理ツール「Prism」の操作性の高さだ。
「Webベースの管理画面で、インフラ全体を直感的に管理できます。従来はサーバハードウェア、ストレージハードウェア、ハイパーバイザー、仮想マシン、仮想マシン上のシステムやデータなどを、それぞれ個別のツールで管理することが求められました。Prismはこれらを統合管理できるだけではなく、ほとんどの操作を1クリックで実施できます。将来のリソース予測もできるので、効率的な運用と計画的な拡張が可能です」(萩原氏)
2つ目はデータの可用性、冗長性を担保する上で、「分散アーキテクチャ」を採用していることだ。
「Nutanixは複数ノードでクラスタを構成し、データを多重化して複数ノードに書き込む分散アーキテクチャを採用しています。従来のRAIDの場合、ディスク障害が起きたら別のディスクに全データをコピーする必要がありますが、Nutanixの場合、1つのディスクだけにコピーして修復するわけではありません。クラスタ内にある複数ディスクの空き容量を使って効率良くリビルドを進めることで、パフォーマンスに影響を与えることなく、即座にデータを自動復旧できるのです。『1ノードが壊れたらシステム全体が駄目になるのでは』と考える方もいらっしゃいますが、1ノードが壊れても他のノードが肩代わりし、システム全体にトラブルを波及させない仕組みがあるため、データは必ず保護されます」(渡辺氏)
3つ目は「ユーザーの意思に基づいて柔軟に導入、運用できること」だ。渡辺氏と同様にNTCを受賞したSB C&Sの真砂暁氏(ICT事業本部 販売推進・技術本部 技術統括部 第3技術部 1課)は、「これはNutanixが“ソフトウェア”である故の強みです」と語る。
「幅広いハードウェアや『Nutanix AHV』『VMware ESXi』といったマルチハイパーバイザーへの対応、マルチクラウドへの対応など、インフラに制限されずに導入、活用できます。例えば、HCIの代表的な用途の一つであるVDI(仮想デスクトップインフラ)も、自社の意向や状況に応じて柔軟に構築することが可能です。クラウドに同様の環境を構築してハイブリッドクラウド化することも容易です。ユーザーの事情に寄り添い、今の問題を解決するだけではなく、情報システム部門が自社のニーズに合わせたシステム拡張のロードマップを描きやすい点は大きな強みだと考えます」(真砂氏)
運用管理業務における予算や人材、スキルの不足に悩む企業は非常に多い。だが、以上の特長から、そうした課題をかなり解決できることが分かる。注目されるのは、こうした特長を基にしながら、「運用効率化」から「運用スタイルの変革」につながる2つの機能がリリースされていることだ。まず、無償版のPrismの上位エディションとして提供される有償の「Prism Pro」だ。
「Prism Proはプロアクティブな検知、修復や運用自動化に関する機能を提供します。例えば、AI(人工知能)でキャパシティーの傾向分析を進め、仮想マシンリソース、スペックの過不足提案を実行する『X-FIT』があります。これにより、キャパシティープランニングがより適切、迅速になります。さらに、挙動異常を認識してアラートを上げる機能や、定型業務を自動化する機能『X-Play』『X-Pilot』などがあります」(萩原氏)
これらを組み合わせると、例えば「仮想マシンに障害が発生した際、Prism Proがアラートを上げ、そのアラートをトリガーにしてX-Playで自動修復し、仮想マシンを再起動する」といった一連のタスクを全て自動化することもできる。自動化も非常にシンプルに設定できるという。
「この他、インフラ全体のパフォーマンスを監視し、分析レポートを自動で作成できます。例えば『現状の利用を続けると、180日後にリソースが枯渇するので、仮想マシンやデータの最適化を施したり、追加ノードを購入したりする必要がある』といったことがレポートとして整理されるのです。これをマネジメント層に提出すれば、稟議(りんぎ)承認や合理的な投資判断に役立つと思います」(萩原氏)
もう一つの機能はHCI内部でファイルサーバ環境を構築できる「Nutanix Files」だ。一般的なファイルサーバとして利用できる他、例えばVDIで必要になる仮想マシンとユーザープロファイルも同一基盤上で効率的に管理できる。
「HCI内部に構築するファイルサーバであるため、Nutanixならではの可用性の高さ、拡張性、優れた運用効率といったメリットをそのまま享受できます。外部にファイルサーバを構築することによる管理の複雑性も解消できますし、Nutanixの持つバックアップ機能も使用可能です。『どのファイルがどう閲覧されているか』を分析、把握できる『File Analytics』という監査機能も備えています」(真砂氏)
定型作業を極力減らし、ユーザーにインフラを意識させないことで、本来取り組むべき業務に集中できるようにする――各機能を俯瞰(ふかん)すると、インビジブルインフラの具体像と変革への道筋が見えてくるのではないだろうか。3氏とも「つらい作業を削減し、運用負荷を減らせることが最大の特徴。特に人材不足に悩む中小企業にこそメリットがあります」と強調する。
「運用効率化はもちろん、DX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた取り組みの第一歩としても活用できます。SB C&SはNTCを受賞したエンジニアを中心に、検証から稼働まで一貫した体制で支援しています。自社の課題に照らし合わせながらNutanixのメリットを見直してみてはいかがでしょうか」(真砂氏)
「Nutanix AOS」を購入すると、1年間無料で今回紹介したPrism ProやNutanix Filesを使用できるキャンペーンが実施中だ。この機会にSB C&Sへ問い合わせてみてはどうだろうか。
SB C&Sの技術メンバーが執筆したHCIの解説書 HCI(Hyper Converged Infrastructure)の代表的な製品であるNutanix製品を取り上げ、基礎から解説する。
本記事で紹介した機能についても、Nutanix Files(第6章)とPrism Pro(第7章)に解説がある。
萩原氏、渡辺氏、真砂氏を始め、SB C&Sの技術メンバーがブログでNutanixの技術情報を発信している。
Nutanix Filesの概要を解説します。機能や特徴について触れながら、Nutanix Filesのメリットを紹介します。
〜現在実施のテクニカルセミナー〜
Nutanix HCIの概要を解説します。CVMやPrism、分散ストレージやその可用性などについて触れながら、Nutanix のメリットを紹介します。また、Prism Webコンソール画面の概要をお見せするデモを実施します。
NutanixネイティブハイパーバイザーであるAHVを紹介します。主に、AHVのエンタープライズ機能や仮想スイッチについて解説します。また、Prismでの仮想マシン作成/ゲストOSインストール方法についても、資料およびデモにて解説します。
Nutanix環境での運用機能を紹介します。主に、ワンクリックアップグレードやノードの追加といったNutanix の運用に関わる機能を解説します。また、デモでは幾つかの運用機能をピックアップして、お見せします。
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2021年3月28日