現在、教育機関や研究施設において、AMD Ryzenを搭載するようなハイエンドPCの需要が高まっている。しかし、供給不足や納期の長期化、公費購入による事務手続きの煩雑さが購入者の課題となっている。解決策とは?
大学などの教育機関や研究施設などでは、科学技術計算はもちろん、人工知能(AI)や機械学習(ML)、ディープラーニング(DL)のような先進技術を利用したモデル学習など、マルチスレッドで24時間計算し続けることが必要な計算処理を行うことも多い。マルチスレッドによる計算処理を安定して行うためには、高性能なCPUやグラフィックボード、大容量のメモリやストレージが搭載されたハイエンドPCが必要になる。
特に重要になるのがCPU性能で、コア数、スレッド数の多いCPUを搭載したハイエンドPCを選択することが適切だ。また、AIやML、DLを利用する場合には、グラフィックボードを2枚使用した、SLI(Scalable Link Interface)構成のハイエンドPCを利用することが有効になる。これにより、計算処理のための時間を短縮できるだけでなく、作業工数の削減や計算コストの低減など、さまざまなメリットが期待できる。CPUの具体例としては、インテルの「Core i」シリーズ、AMDの「Ryzen」シリーズなどが挙げられる。例えば、Core iシリーズは、世界最高レベルのパフォーマンスを発揮できるCore i9から、日常的な動作に十分なスペックを持った安価なCore i3まで、求める機能によってさまざまなラインアップが用意されている。
しかし、希望通りのハイエンドPCを市場の既製品から選択するのは容易ではない。例えば、希望通りのCPUが搭載されていてもメモリやストレージが足りない、あるいはグラフィックボードの性能が足りないなど、全ての条件を満たさないことがある。また、PCのスペックや性能を満たしていても、価格が予算を超えてしまうためワンランク下のPCを選択しなければならないこともある。
インバースネット 常務取締役 営業本部長の吉岡浩之氏は、「現在、多くの教育機関や研究施設では、AMD Ryzenプロセッサを搭載したハイエンドPCが人気ですが、AMD Ryzenプロセッサは、発売当時は供給数が少なく、NVIDIAのグラフィックボードも含めて、部品の調達が非常に困難でした。また、予算も限られていることも多く、限られた予算の中でいかに最適なスペックを提供できるかも課題でした」と話す。
同じ部品でも、メーカーにより値段が違うこともあるため、顧客が求めるスペックを実現する、最適な組み合わせのハイエンドPCを適正価格で提供することは簡単なことではない。吉岡氏は、「部材の手配においては先を見て調達することが必要です。これにより、原価を抑え、最適な価格でハイエンドPCを提供することができます」と話す。
また予算面では、教育機関や研究施設では公費購入による事務的な対応が必要なことも課題の1つである。
「教育機関や研究施設では、『公費購入はできるのか?』という問い合わせが多く、月末締め、20日締めなど、さまざまな条件があることから支払いに関しても柔軟に対応することが必要です。また、『いつまでに欲しい』という急な注文に関してもできる限り納期対応することが必要です」(吉岡氏)
こうした課題を解決できるのが、インバースネットのBTO(Build To Order)PC「FRONTIER」である。吉岡氏は「教育機関からシステム構成が指定される場合は、希望通りのシステム構成で提供しますが、特にスペックの指定がない場合には、用途や要望などを聞きながら最適なシステム構成を提案することもできます。これまでに培った経験やノウハウを生かし、迅速かつ柔軟に対応できるのがインバースネットの強みです」と話す。
インバースネットは、1947年に通信機器などの引き取り、解体業務を事業とする光電気工業として創業し、1951年に同社を設立。2000年3月に社名を現在のインバースネットに変更している。現在、自社ブランドのPC製品であるFRONTIERおよびサーバ製品であるSTARBILASの開発、販売から不要な情報通信機器の買い取り、処分、リサイクルまで一貫したサービスを事業として展開している。
FRONTIERは、BTOPCの草分け的なブランドで用途に合わせた仕様の提案が可能。全てのマシンは、山口県内にある生産拠点で、製造、テスト、出荷される。アフターフォローに関しては、自社でコールセンターを完備して運営するほか、標準3年間保証を含むサポート体制を確立している。すでに数百以上の教育機関や研究施設、企業に導入した実績があり、品質と安定性が評価されている。
吉岡氏は、「大学では研究室での利用が多く、高等学校ではPC教室での利用が多くなっています。大学では高い性能が求められ、高校や専門学校では台数が求められる傾向にあるため価格性能比が重要になります。予算や用途に応じて、希望のPCへとカスタマイズできるのが、FRONTIERの最大の特長です。例えば、“CADに最適なPCを見積もってほしい”といったソフトウェアの動作スペックに関する問い合わせにも対応できます」と話す。
教育機関や研究施設では、PC情報サイトや価格比較サイトなどで必要なスペックのPCを検索し、FRONTIERの存在を知ることが多いという。FRONTIERが強みとしている価格性能比や耐久性を評価され、1度購入するとかなりの確率でリピートにいたるそうだ。
「条件を満たすCPUが搭載された他のメーカーのハイエンドPCが売り切れていた場合でも、FRONTIERでは部材が確保できることが多く、条件にあったハイエンドPCを提供できるので、その点も高く評価されています。新しいプロセッサの発売日が発表されたときに、ベンダーとの交渉でどれだけ部品を確保できるかがポイントです。1社だと厳しい場合には、複数社と交渉することもあります。これまでの実績も部品の調達をしやすくしています」(吉岡氏)
CPUに関しては、AMD製品の存在感が強まっているという。吉岡氏は、「AMD Ryzenプロセッサが発売されてから、AMDの人気はかなり高くなっています。新製品の評価はネットなどで分かりますし、グラフィックボードなどは世代で性能がまったく違ってくるので、やはり最新版を使いたいという要望は多くなります。ただ、AMDが選択肢に入ったことで、お客さまの選択の幅も広がり、FRONTIERをさらに選んでもらいやすくなっています」と話している。
教育機関や研究施設で使われるハイエンドPCでは、注意すべき点もある。以前、教育機関に水冷ファンが付いたFRONTIERを導入した際、水冷ファンは1日8時間使用で3年保証だったため、24時間稼働させると1年で障害が多発してしまうという事象が起きたという。そこで現在は、24時間稼働させるシステムに関しては、空冷ファンを利用するなどの工夫をしているそうだ。
法人向けのFRONTIERは、全て標準で3年保証を提供していること、生産から販売、保守・サポートまで、全て自社内で完結できることが他のPCメーカーとの最大の差別化ポイントである。また、PCの買い取りや中古PCの販売、不要なPCの処分まで、トータルな提案ができるサービス体制を確立していることも特筆すべき点だ。現状では、見積もり、販売が法人向けサービスの中心だが、今後は販売後の買い替えの提案や旧機器の買い取り、導入サービス、保証なども強化していく計画である。
「大手PCメーカーに比べ知名度では劣るので、安心して使ってもらうために標準で3年保証を提供しています。トラブルや使い方に関する問い合わせに関しても、外注するのではなく、自社でコールセンターを運営しています。これにより、迅速な情報のフィードバックが可能で、製品やサポート業務の改善などに役立てています。今後は、販売だけでなく、買い取りの認知度も上げていきたいと思っています」(吉岡氏)
FRONTIER製品群では、コストパフォーマンスだけでなく、各部材のアピールポイントを生かした商材の開発にも注力していく。PC単体はもちろん、サービスの一部に組み込まれる機器として、FRONTIERを提案していくことも検討している。
吉岡氏は、「FRONTIERは、外部に委託することなく、全て内製で国内生産している、安心して利用できるハイエンドPCです。現在は、コンシューマー向けのPC販売の方が伸び率が高いので、今後は法人向けも同様に成長させ、コンシューマー向けと法人向けの割合を半々くらいにしたいと思っています」と話している。
インバースネットの“価値をつなぐ”という企業理念には、生産者と消費者、それぞれの価値をつなぎ、リデュース、リユース、リサイクルにつなげていくという2つの意味が込められている。FRONTIERブランドを中核に新しいものづくりの在り方に挑戦し続けるインバースネットの取り組みから今後も目が離せない。
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2021年3月21日