ビジネスのデジタル化では、データを有効活用できる仕組み作りが要だ。だが、データがオンプレミスとパブリッククラウドに散在しているため、必要なデータを検索できず、データ自体にアクセスできない場合がある。その現実的な解決策とは。
コロナ禍を受けて、ビジネスのデジタル化が加速している。こうした中、デジタルトランスフォーメーション(DX)の概念があらためて見直されている。経営環境の変化にスピーディーに応えられる「デジタルを前提としたビジネスプロセス/ビジネスモデルへの変革」が必要だ。
この変革の柱となるのが「データ」だ。事業部門にとっては業務を迅速に遂行したり、ニーズの変化を発見したりする上でデータが不可欠となる。システム運用も同様だ。安定的かつ効率的にシステムを運用するには、日々の運用データを把握することが欠かせない。特にセキュリティ面では高度化し続ける脅威に対抗する上で、インシデントの迅速な検知と対処が不可欠となる。
こうしたデータアクセスやシステム運用、セキュリティ対策、それぞれでデータ活用が要となっていながら、データとシステムがサイロ化し、「必要なデータの所在が分からない」例がある。これが現実だ。SaaS(Software as a Service)利用が盛んな今、データはパブリッククラウド上にも散在している。では事業部門とIT部門の双方が全社のデータを活用し、DX推進に生かすためにはどうすればよいのだろうか。必要な仕組みを聞いた。
「DXを推進する上で企業が直面している課題は、情報検索とセキュリティ、ITインフラ運用の大きく3つに整理できます。重要なのは3つともデータ活用がカギであることです。よって、個別に取り組むのではなく、“1つのデータプラットフォーム”で3つの課題を解決するアプローチが、有効かつ現実的だと考えます」
こう語るのはデル・テクノロジーズの堀田鋭二郎氏(DCWソリューション本部 データ分析 主幹)だ。3つの課題を解決するには、“1つのデータプラットフォーム”が、「ハイブリッド/マルチクラウドに対応できること」「脅威にリアルタイムで対応できること」「アプリケーションからインフラまで統合管理できること」がポイントになるという。
まず「ハイブリッド/マルチクラウド対応」とは、オンプレミスに加え、パブリッククラウドにもデータが散在している中、「データがどこにあっても容易かつ安全に情報を検索でき、アクセスできること」を指す。こうすれば事業部門がビジネスデータを生かせるのはもちろん、IT部門にとっても運用データを安定運用や問題特定などに利用できる。
「脅威へのリアルタイムでの対応」とは文字通り、ログデータなどからスピーディーに脅威を検知、対応できることを指す。「アプリケーションからインフラまでの統合管理」とは、オンプレミスとクラウド内の各システムを個別に監視したり、システムによって管理項目がバラバラだったりするのではなく、全IT資産の稼働状態やパフォーマンス、コストなどを統合的にモニタリングできることを指す。
「こうした仕組みがあれば、ビジネスニーズを素早く把握し、迅速、安全なアクションを支えることができます。具体的には『Elasticsearch』と『Dell EMC PowerFlex』を組み合わせることで、こうしたデータプラットフォームを実現できるのです」(堀田氏)
ElasticsearchはOSS(オープンソースソフトウェア)として開発されている検索エンジンだ。2010年に公開後、分散設計やシンプルなREST API、高度なパフォーマンス、スケーラビリティなどが評価され、Webサイト検索やWebアプリケーション検索、エンタープライズサーチ(企業内文書検索)で活用されるようになった。
その後、機能拡張とともに適用範囲が広がり、現在はログ分析やアプリケーションパフォーマンス監視(APM)、インフラメトリック(インフラ監視)とコンテナ監視、地理空間データ分析と可視化、セキュリティ分析、ビジネス分析なども可能になっている。Elasticsearchの鈴木章太郎氏(テクニカルプロダクトマーケティングマネージャー)はこう説明する。
「非常に高速な全文検索であり、データ量が増大しても検索スピードが落ちないことが特徴です。JSON形式のドキュメントストアを備え、さまざまな種類のデータを取り込み、リアルタイムに検索、分析できます。フィルタリングやスコアリング、集計、分析などが可能な高度なクエリ言語も提供します。分散アーキテクチャによる高い耐障害性、高可用性も特徴です」(鈴木氏)
Elasticsearchはデータ収集エージェントツール「Beats」と、データ加工(ETL)ツール「Logstash」、可視化ツール「Kibana」を組み合わせて1つのスタックを構成する。このスタックはAWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azure、GCP(Google Cloud Platform)などのパブリッククラウドの他、プライベートクラウド、クラウドやオンプレミスのKubernetes環境などにデプロイできる点も特徴だ。これにより、3つの課題のうち、情報検索とセキュリティの課題を解決できる。
「特に情報検索については、オンプレミスやクラウド、コンテナなどに散在したデータを収集、加工し、1つの画面で可視化できます。IT部門にとっては、クラウドネイティブ実践の軸となるKubernetesについて、ログやメトリクス、パフォーマンスを統合したオブザーバビリティ(可観測性)も実現できます。セキュリティについてはリアルタイムで防御や検知、対応するためのSIEM(セキュリティ情報イベント管理)として活用できます。ボリュームや種類、時期に関係なく、全てのデータを検索、分析できるのです。OSSであり、コミュニティーや各種セキュリティ団体とのエコシステムも充実していますから、自社の目的やインフラに最適な仕組みを柔軟に構築できる点も利点です」(鈴木氏)
Elasticsearchの高度な機能とパフォーマンスを引き出すハードウェアプラットフォームとなるのが、Dell EMC PowerFlex(以下、PowerFlex)だ。PowerFlexは2020年6月に「VxFlex OS(旧ScaleIO)」シリーズからリブランドされた製品で、「ハイエンドソフトウェア定義ブロックストレージ」に位置付けられる。
特徴は「高度な性能と拡張性」「モジュラー型で柔軟なアーキテクチャ」「さまざまなプラットフォームのサポート」の3つ。デル・テクノロジーズの市川基夫氏(ストレージプラットフォームソリューション事業本部 クラウド&ソリューション部 シニアマネージャー)はこう説明する。
「まず注目いただきたいのは、圧倒的な性能と拡張性です。幅広いデータ分散と帯域幅の集約によってパフォーマンスのボトルネックをなくし、サブミリ秒のレイテンシと数百万IOPS(Input/Output Per Second)、数百Gbpsのスループットを実現しています。ノードを追加することで性能がリニアに向上し、128ノードの検証では100%Read条件で3100万IOPS、70%/30%のRead/Write条件で2300万IOPSを記録しています。混在したワークロードでも劣化がほとんど見られないことも特徴です。Elasticsearchのインデクシングイベントでは、3時間で10億件を記録した実例もあります」(市川氏)
第2の特徴である「モジュラー型で柔軟なアーキテクチャ」とは、スケールアウトで性能が向上するだけではなく、構成が柔軟で管理も容易なことを指している。
「ノードを追加した際に自動でリバランスし、障害時も自動でリビルドします。さらにノードや仮想マシン(VM)クラスタ間でリソースのバランスを自動的にとることで、変化する性能、容量要件に柔軟に対応できます。SDS(Software-Defined Storage)であるため、3層(3Tier)型、ハイパーコンバージドシステム(HCI)型、3TierとHCIの混在型など、柔軟にシステムを構成できる点もメリットです。それぞれの構成でElasticsearchをデプロイできるのはもちろん、コンテナ環境でElasticsearchを利用する場合も、スケーラビリティを担保します」(市川氏)
「さまざまなプラットフォームのサポート」とは、仮想化やベアメタル、コンテナの各環境上で複数のOSやハイパーバイザー、アプリケーションをサポートしていることを指す。例えば、物理環境のElasticsearchとコンテナ環境のElasticsearchを単独のPowerFlex上で管理することも可能だ。
こうしたElasticsearchとPowerFlexの組み合わせは、ビジネスとシステムのモダナイズに大きく貢献するという。市川氏はある米国の金融機関の事例を挙げる。
この金融機関は当初、PowerFlexでストレージとコンピュートが同居したHCI型インフラを構成し、Elasticsearchでシステムとアプリケーションの監視を実現していた。その結果、コンピュートだけをスケールさせる場合が多いこと、メンテナンスもコンピュートとストレージが分かれている方が好都合なこと、データベースのライセンスコストの観点でも両者が分かれている方が有利なこと、といった傾向を確認できた。これを受けて段階的に3Tier構成に移行したという。
「Elasticsearchで把握したデータに基づいて合理的な判断を下し、実行時にPowerFlexの柔軟性を生かしたという事例です。すなわちビジネスとシステムの状況をデータで可視化し、目的に対してより合理的で運用コストも抑えられるインフラへとモダナイズしたのです。データに基づいてビジネスとシステムを継続的に改善することは、DXの柱となる取り組み。PowerFlexとElasticsearchの組み合わせは、その手段となるのです」(市川氏)
堀田氏も「既存システムのモダナイゼーションとDX推進は表裏一体です」と指摘する。
「管理の一元化や定型作業の自動化などを取り入れ、システムをモダナイズすることで、既存システムリソースや運用を大幅に効率化できます。重要なのは、その分の予算や時間をDXの取り組みに振り向けることです。それが次のモダナイズにつながっていきます。Dell TechnologiesがElasticsearchと共同でソリューションを展開する理由もそこにあります。単なる製品提供ではなく、お客さまの目的と状況に最適な構成を提案できる体制を整えています」(堀田氏)
具体的には両社のグローバル・パートナーシップに基づき、双方のプロダクト間で事前検証済みのシステム構成、導入ガイド、ベンチマークテスト結果といった資料を準備している。これは顧客がシステム検討から導入に至るまでの各プロセスで発生する負荷を軽減するために、準備されたものだという。また、投資効果を明確化する導入前コンサルティングや、導入後のトレーニングプログラムを用意。導入メニューは「Elasticエンタープライズサーチ」「Elasticオブザーバビリティ」「Elasticセキュリティ」の3つ。トレーニングにはElasticsearchの基本やロギング、メトリクス、APM、アドバンスドサーチ、セキュリティ分析、データサイエンスなどを用意しているという。
「この他、PowerFlexでインデックスをどう作成すれば性能が出るかなど、実践的な内容も学べます。Elasticsearchとしては、製品とノウハウの提供を通じて変革のために伴走したい考えです。ぜひこれらを活用して、ビジネスとシステムのモダナイズを推進し、DXを加速させてほしいと思います」(鈴木氏)
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2021年5月9日