データをビジネスに活用する機運が高まっているが、データ分析の実現にはさまざまな課題と向き合う必要がある。これらを解決し、データの活用を推進するためには何から始めればいいのだろうか。複数の観点から語り合った。
企業に蓄積されたデータを分析してビジネスや経営戦略に生かそうとするニーズは年々高まる一方だ。背景にあるのが、並列分散処理や機械学習(深層学習など)をはじめとする先端テクノロジーの急速な発展と、分析手法やプロセスの成熟だ。2018年に入るとコンテナによるデータ分析基盤構築が注目されるなど、データ分析の取り組みは新しい局面に入りつつある。
企業におけるデータ分析・活用の取り組みをさらに加速するためには、どのような課題と向き合っていけばいいのか。日本のデータ分析市場をソフトウェア、ミドルウェア、ハードウェア、サービスの観点から支え、従来のビッグデータプラットフォームの課題を解決する「CDP Private Cloud」を共同で展開する3社が熱く語り合った。
──デル・テクノロジーズ、レッドハット、Clouderaの3社は、データ分析・活用市場のリーダー企業です。現在の市場をどう捉えていますか。
デル・テクノロジーズ 堀田氏(以下、堀田) 「2025年の崖」問題の対処やデジタルトランスフォーメーションに向けた取り組みなど、データ分析の重要性がかつてないほど高まっています。デル・テクノロジーズは企業のデータ分析・活用を現場から支援してきましたが、この数年は欧米企業と比較して日本企業の取り組みがやや足踏み状態にあると感じています。
Cloudera 大澤氏(以下、大澤) そうですね。私はCloudera日本法人の社長に就任したばかりですが、お客さまとの会話やエンタープライズIT市場における自身の経験から、日本での取り組み状況はもっと加速できると感じています。Clouderaは「Apache Hadoop」関連製品を中心に10年以上ビジネスを展開してきました。その間、欧米企業の多くがデータ分析をビジネス成長の手段として現場レベルで活用し始めたのに対し、日本企業はまだそこまで到達していない印象です。データ分析自体が目的になってしまい、手段として使いこなすことができないでいる。ITインフラと現場部門の間にはまだ高い壁があります。
レッドハット 鈴木氏(以下、鈴木) データエンジニアやITエンジニアの人材不足の問題も忘れてはいけません。採用においては、データサイエンティストよりもデータエンジニアの確保が難しいとされています。データエンジニア不足という事実からうかがえるのは、企業が扱うデータ量が増えてきて、データエンジニアリングのニーズが増えてきていることです。一方、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)といった外因が企業に与える影響により、データ分析の成長にブレーキがかかるリスクも考えられます。
──ユーザーがどのような課題に直面しているのかあらためて整理していただけますか。
堀田 お客さまにお話を伺っていると、「データのサイロ化」と「組織間の壁」が大きな課題だと分かります。データのサイロ化は、部門やシステムごとにデータが分散配置され、バラバラに管理されていることです。データを分析、活用するにはデータの収集、蓄積、加工、処理のプロセスが必要で、バラバラに管理されたデータからデータを収集するだけでも大きな手間とコストにつながっています。
組織間の壁については、例として情報システム部門とデータ分析部門の意識のギャップが挙げられます。データ分析者が情報システム部門に依頼し、必要なデータを必要なデータフォーマットで提供される業務プロセスは多々あります。データを管理するのは情報システム部門であるため、依頼内容に合わせてデータを抽出・提供するのですが、依頼内容次第ではそのデータ抽出に多大な時間がかかる場合があります。もっと言えば、どこにデータがあるのか調査から始めなければならない場合もあります。しかし、データ分析者はできるだけ早く、必要なデータを基に分析業務を実施したいというニーズがあります。結果、高度なデータ分析業務が進展せず、定型的な分析に終始してしまう。お互いの役割は自覚しているのですが、互いの業務プロセスについて意識のギャップが生まれてしまうのです。この2つの課題は、日本企業で特に顕著に見られます。
大澤 加えて「人手不足」が大きな課題です。鈴木さんも指摘しているように、データ分析をしたり分析ツールを使いこなしたりできる人材が獲得しづらい状況です。データ分析に関する知識やノウハウだけでなく、業務の知識やノウハウも必要です。IT部門と現場部門の連携ができなければ、両者を隔てている壁を壊すことはますます難しくなるでしょう。
──データのサイロ化、組織の壁、人材不足、専任組織化の不足といった課題を解消するためには、どのようなアプローチが求められますか。
大澤 ビジネス的な見地からデータの価値を理解し、活用するための横断的な組織や役割が必要です。事業部門から「このような分析がしたい」と相談されたとき、俯瞰(ふかん)的に考えて必要なのかそうでないのかを判断して「それならこうするといい」と答えを出せるチームや担当者を作ることが重要です。
鈴木 同感です。横断的な専任組織を一つの窓口にすることで組織間の連携は簡潔化され、組織の壁の解消につながりますね。さらに、組織の仕組みの変更はデータのサイロ化からデータの集中管理につながっていくでしょう。人材不足については、育成・研修を通じてエンジニアの絶対数を増やす取り組みと同時に、テクノロジーを生かして作業効率や運用効率を高めて、データエンジニアの負担を少しでも軽減する取り組みも必要です。近年、リアルタイムデータやIoTデータなど、企業が持つデータ量は増えてきています。今後のデータエンジニアリングのニーズを踏まえると、先端テクノロジーを利用して業務を加速することがポイントになるかもしれません。
──今回お集まりいただいた3社は、共同で製品を展開するそうですね。概要を教えていただけますか。
堀田 Clouderaが最近提供を開始した革新的な製品の「Cloudera Data Platform(CDP)Private Cloud」を、レッドハットのコンテナ基盤「Red Hat OpenShift Container Platform」(OpenShift)で動作させ、それをデル・テクノロジーズのサーバ、ネットワーク、ストレージのハードウェアに組み込んで検証済み構成として提供します。これに加え、ビジネスコンサルティングサービス、システムインテグレーションサービス、システムトレーニングサービス、データサイエンティスト教育・育成サービスを提供し、企業におけるデータ活用の取り組みを包括的に支援します。
鈴木 データを活用する企業にとって、基盤のセキュリティや導入・運用負荷の軽減は重要です。20年以上「Red Hat Enterprise Linux」を提供してきた実績から、OpenShiftでは信頼性の高い、強固なコンテナ実行環境を提供できます。運用面ではメトリクスやログを収集・可視化する機能や運用業務を自動化する仕組みで、導入から維持管理までの作業を支援します。
そして重要なことは、アプリケーション開発の分野のみならず、データ分析の分野を含めたさまざまな独立系ソフトウェアベンダー(ISV)のミドルウェアが「Kubernetes」との連携を本格化している点です。OpenShiftは、今後も増えていくISVミドルウェアのコンテナ製品と連携できる環境を、セキュアに、そして運用管理を支援する仕組みで、オンプレミスを含むどの環境下にも提供できます。OpenShiftは国内外含め2200社以上の企業に選ばれたコンテナ基盤でもあり、コンテナ基盤のデファクトスタンダードと言えます。
大澤 CDPは最新テクノロジーを採用し、従来のビッグデータプラットフォームの課題を解決する革新的な製品です。これによって計算処理とストレージの分離、計算処理のコンテナ化、そしてメタデータ管理、アクセス制御、ガバナンスを組み込んだ真のデータレイクを実現します。
データの抽出からデータエンジニアリング、データウェアハウス、そして機械学習まで、データのライフサイクルに必要な全ての機能を包括しています。もちろんこれまで通り、データ分析ツール、BIツール、ETLツールと連携することでビッグデータプラットフォームのエコシステムを構築できます。
──データ分析の課題を解決するという観点で、それぞれどのような役割を担うのでしょうか。
大澤 Clouderaに蓄積されたグローバルレベルのナレッジを基に支援する体制があります。データ活用の取り組みは、企業にどのような付加価値を提供できるかが鍵です。企業の付加価値を突き詰めると、売り上げ増加、コスト削減、コンプライアンスの3つに集約されますが、今回の製品はこの3つ全てに貢献できると考えています。製品を提供する中でお客さまの声を聞き、データのサイロ化や組織間の壁を取り払います。使いやすく、自動化が可能なプラットフォームを提供することで、人や予算の不足も解消します。
鈴木 コンテナオーケストレーションのメリットが、ビッグデータや機械学習などのAI分野に広がりを見せています。コンテナ化されたデータ分析の新しいソリューションを容易に利用できる仕組み、そしてセキュリティや運用業務の自動化支援という企業のコンプライアンス・運用に耐えられる環境を提供できるコンテナ基盤をOpenShiftは実現できます。レッドハットはこれからもデータエンジニアやアプリケーション開発者がより効率的にデータ活用に集中できるコンテナ基盤を提供します。
堀田 デル・テクノロジーズの強みは3つあります。1つ目は、デル・テクノロジーズがワンストップでサービスを提供すること。これによりお客さまの手間、意思疎通のギャップを軽減できます。データ活用に関するさまざまなビジネス課題を解決に導くためのビジネスコンサルティング、既存システム環境のアセスメントから、システムプラットフォームの導入、データエンジニアやデータアナリスト人材の育成とトレーニング、機器・ソフトウェアの保守サポートまでを一括して提供します。2つ目は、プラットフォームの信頼性の高さ。3社がグローバルレベルで共同検証した「リファレンスアーキテクチャ」も提供しています。これにより、機器のPoC(概念実証)は必要なく、データ活用をスタートするための時間と労力の削減に貢献できます。3つ目はグローバルレベルでの提供実績。グローバルでの先進的な取り組みはもちろん、国内企業の豊富な事例を基に多くの知見を保有しています。こうした実績がさまざまな課題を抱えたお客さまをサポートする一助となります。
「データを活用して企業の競争力を高めたい。けれども何から手を付けたらいいか分からない……」というお客さまはたくさんいらっしゃると思います。われわれにご相談いただければ豊富な実績をベースに、お客さまにとって最適なアドバイスをさせていただきますのでまずはお問い合わせください。お客さまとわれわれのようなデータ活用のプロフェッショナルが対話することこそが、データ活用を実現するための第一歩だと考えています。
※本稿は、TechTargetジャパンからの転載記事です。
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2021年5月24日