クラウドやエッジアプリケーションなど、多様な技術を組み合わせて活用することが当たり前になりつつある今、企業はオンプレミスとクラウドに分散した環境をどのように管理すればいいのか。
多くの企業がビジネス環境の激しい変化に戸惑いを感じながら、ビジネスイノベーションによる新しい収益モデルを確立しようとデジタルトランスフォーメーション(DX)への対応を急ぎ進めている。
こうした「業務のデジタル化」を支えるアプリケーションの多くは、クラウドやAI(人工知能)、アナリティクス、エッジアプリケーションなど多様な技術を組み合わせた「マイクロサービスアーキテクチャ」で実装されている。マイクロサービスは可用性やスケーラビリティといった点が優れているが、IT環境がマイクロサービスごとに異なる場合、「IT環境が分散化する」という課題がある。
DX実現のためには、オンプレミスとクラウドが共存するハイブリッドクラウド環境、複数のパブリッククラウドを利用するマルチクラウドなど、分散するIT環境を最適化し、効率よく活用できるかどうかが重要な課題になる。
この課題を解決するヒントとなるのが、シスコシステムズが2021年6月9日に開催したオンラインセミナー「複雑化した課題を次世代イノベーションが解決 ハイブリッドクラウドの未来を切り拓くシスコのソリューション」だ。
本稿は、盛況で幕を閉じた本セミナーの講師に「分散化するIT環境の管理」について話を聞いた。
シスコシステムズの小久保依美氏(業務執行役員 クラウドインフラストラクチャ/ソフトウェア事業担当)は、デジタルアプリケーションが新たなビジネスのライフラインになっていることに言及し、「アプリケーションの稼働環境は“分散”が当たり前になっている」と強調する。
「最近のアプリケーションは、平均で20個のコンテナやマイクロサービスなどをつなげて提供されている。幾つもの分散した環境が組み合わされているため、管理は複雑化し、企業の課題となっていた」
シスコシステムズは、複雑なアプリケーション稼働環境をシンプルで効率的に管理するための製品やサービス群(ソリューション)を提案する。こうしたソリューションに共通するのは「オブザーバビリティ」(可観測性)というキーワードだ。
「人は、目に見えないものを管理できない。シスコシステムズが注目するオブザーバビリティは、クラウド時代のアプリケーションをエンド・ツー・エンドで“見える化”する」とシスコシステムズの赤坂知氏(システムズエンジニアリング部マネージャ)は述べる。
システムの視点で言えば、オブザーバビリティは「レコード」「トレース」「メトリクス」の3つの要素を連携させることで実現するという。
ログを分析して分散システム全体の挙動を記録し(レコード)、エンド・ツー・エンドの業務トランザクションのパフォーマンスと挙動を観察する(トレース)。日々蓄積される分散システムの稼働データの統計を取り、トレースの妥当性を検証する(メトリクス)といった具合だ。
「オブザーバビリティの一部の要素を実装している製品やサービスはあるが、クラウドの状況を把握できないものもあり、不十分だ。クラウドアプリケーションのパフォーマンスとコストのバランスを取り、最適化するには3つの要素の全てが高いレベルで連携していることが重要だ」と赤坂氏は語る。
シスコシステムズはオブザーバビリティを実現するためのさまざまなソリューションを提供している。
ハイブリッドクラウド環境の運用を支援するのは、運用管理製品の「Cisco Intersight」(以下、Intersight)だ。
「Intersightは複雑化したハイブリッドクラウド環境を統合的に管理し、アプリケーションのパフォーマンスを確保し、コストを最適化する」と赤坂氏は説明する。
シスコシステムズの徳勝エレナ氏(テクニカルソリューションズ スペシャリスト)は「Intersightはオンプレミスシステムのライフサイクル管理にも効果的だ」と強調する。
「Intersightは、オンプレミスのライフサイクル管理を包括し、一部の作業を自動化することで運用負荷を軽減できる。管理を統合できるため、サーバの台数や拠点数、新しいハードウェアが増えても同じ操作で管理できるメリットがある。『運用のサイロ化』の回避にも有効な製品だといえる」(徳勝氏)
IaC(Infrastructure as Code)をオンプレミスに延伸できる「Intersight Service for HashiCorp Terraform」も注目すべきだ、とシスコシステムズの加藤久慶氏(テクニカルソリューションズ アーキテクト)は語る。IaCはコードを使ってインフラの構成管理をする技術だ。パブリッククラウドでは標準的に利用されているが、オンプレミスでの対応は遅れていると加藤氏は言う。
「Intersightは、マルチクラウド管理領域で標準的に利用されているHashiCorpの『Terraform Cloud Business』を統合し、オンプレミスを含めたハイブリッドクラウド環境向けのIaCを実現した。運用の複雑さをさらに軽減し、アプリケーションを素早く自動的に展開できる」
ハイブリッド環境やエッジなどさまざまな環境で稼働するアプリケーションの開発において「コンテナ」は重要な要素だ。こう語るのはシスコシステムズの吉原大補氏(テクニカルソリューションズ アーキテクト)だ。
コンテナ管理といえば「Kubernetes」が有名だが、「オープンソースのため、セキュリティやコンプライアンスを重視する環境では使いにくいといった声もある」と吉原氏は指摘する。
シスコシステムズはこうした声に応え、「Cisco Intersight Kubernetes Service」(以下、IKS)を提供する。
「IKSは、エンタープライズ向けのセキュアなKubernetesクラスタを展開でき、クラウド経由でコンテナのライフサイクル管理ができる製品だ。将来的に、各クラウドサービスで稼働するKubernetesもサポートする。Kubernetesクラスタを搭載するハイパーバイザー『Intersight Workload Engine』も提供する予定で、さまざまなコンテナ環境を一元的に管理できるようになる」(吉原氏)
なお、シスコシステムズはIntersightのオンラインデモを提供しており、いつでも申し込みが可能だ。
赤坂氏は、ルーターやスイッチといったネットワーク製品とモニタリングツールの組み合わせを例に挙げた。ネットワーク製品群「Catalystシリーズ」「ISRシリーズ」「Nexusシリーズ」と、デジタルモニタリングツール「ThousandEyes」を統合することで「分散システムの見える化と実行可能な洞察力を提供する」と赤坂氏は言う。
「パブリッククラウドについては『Cisco Cloud ACI』がある。ネットワークポリシーの一貫性を確保し、マルチクラウドにおいて簡単にネットワークセグメントを設定できる。この製品はオンプレミスや『Microsoft Azure』『Amazon Web Services』に対応していたが、Google Cloud Platformとの接続も2021年内にサポートする予定だ」(赤坂氏)
「Cisco UCS Xシリーズ」は「オンプレミスの『サイロ化回避』に最適なサーバだ」とシスコシステムズの田中孝幸氏(シニアプロダクトセールススペシャリスト)は語る。ハイブリッドクラウドはクラウド側に目が行きがちだが、オンプレミスのサーバ管理も重要だと田中氏は言う。
オンプレミスで、コンバージドインフラ、HCI、ストレージサーバ、GPUサーバなど多様なサーバが混在している場合、アプリケーションごとにサイロ化が進んでいるという。
「サイロ化を回避するには、アプリケーションに合わせた柔軟なサーバ構成を実現する必要がある。UCS XシリーズはCPUとデバイス間の通信を高速化する『CXL』(Compute Express Link)という技術を採用しており、CPU、PCIデバイス、メモリを別々のモジュールに割り当てることができる。モジュールを組み合わせることで、さまざまなサーバ構成に柔軟に変更できる。アプリケーションの稼働環境をUCS Xシリーズに統一すればサイロ化が回避できるだけでなく、運用管理の簡略化も可能だ」と田中氏は語る。
分散した環境で稼働するアプリケーションにおいて、ネットワークは重要な要素だ。シスコシステムズの井上景介氏(シニアプロダクトセールススペシャリスト)は、データセンターネットワーク運用製品「Nexus Dashboard」を紹介する。
Nexus Dashboardは、オンプレミスとパブリッククラウドのネットワークにおいて、一貫したポリシー適用し、一元的な運用管理を実現する製品だ。
「AIアプリケーションと連携し、ハイブリッドクラウド環境のネットワークを俯瞰(ふかん)した高度な洞察を提供する。多くの作業を自動化できる、リアクティブ(受動的)な運用からプロアクティブ(能動的)な運用へと進化させる製品だといえる」
ハイブリッドクラウド環境は、企業にとって「当たり前のインフラ」になっていくだろう。シスコシステムズはハイブリッドクラウド環境の運用に必要なオブザーバビリティをワンストップで提供する。
「シスコシステムズのハイブリッドクラウドソリューションはオブザーバビリティを実現し、高度なインサイトを提供して運用を自動化する。企業のDXを支援し、企業競争力を高めるソリューションとして、進化を続ける」(小久保氏)
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提供:シスコシステムズ合同会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2021年7月25日