桁違いの量と段違いのスピードを支える、AmazonのOpsTech ITの業務とは圧倒的な配送スピードと抜群の成長スピード

Amazonの迅速な配送を確実に実現するために、エンジニアたちは日々奮闘している。ときにはほこりまみれになりながら!

» 2021年07月28日 10時00分 公開
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 新型コロナウイルス対策で重要となるのは、人との接触を減らし、外出を控えること。それを補う手段としてこれまで以上に活用されるようになったのが、オンラインショッピングだ。食料品をはじめ、日常生活に必要な買い物を補う手段として、ECサイトは文字通り生活を支える「インフラ」となりつつある。

 ECサイト最大手のAmazonも例外ではない。未曾有の事態で注文数が増加を続ける中、これまで通りユーザーのニーズに応えるため、ロジスティクスや倉庫業務と、それを支えるITシステムの改善に努めている。

5分の停止が最大1日以上の配達遅延に――AmazonのITシステムが常に受けるプレッシャー

 普段からAmazonを利用している人は多いだろう。しかし、その裏側はあまり知られていない。実は「購入する」ボタンを押す前から、在庫管理、入庫管理などさまざまなシステムが連携し、ボタンを押すと同時に「いつまでにこの商品をお届けします」と表示されるようになっている。

 そしていざ商品を購入すると、決済システムが走り、同時に裏側で在庫管理システムが連動し、物流拠点で棚から商品を取り出す「ピッキング」作業が始まり、それを梱包(パッキング)し、出荷ラベルを貼り付けて出荷(シッピング)する、という流れを経て、手元に商品が届けられる。1人のユーザーが複数の商品を注文した場合――実のところ大半の買い物で複数のアイテムが注文されるが――には、物流拠点内の異なる場所から複数の商品をピッキングして1つの梱包資材に詰める仕分けの処理も加わる。

Amazonの物流システム( Amazon Japan Official)

 一連の仕組みは文字にすると単純だが、Amazonには通常のECサイトとは異なるプレッシャーがある。1つは、物流拠点(フルフィルメントセンター:FC)には膨大な量と種類の商品があり、1日当たりの出荷量も膨大という「量」の問題で、桁違いのオーダーを処理しなければならない。もう1つは定められた配送期日を守らなければならないという「スピード」のプレッシャーだ。

 「システムが5分止まったらお客さまの手元に届くのが5分遅れるのかというと、そうではありません。お約束した時間に届けるためには、配送トラックに乗せなければいけない時間が決まっています。この締め切り時間の前後でトラブルが発生すると、次のトラックまで待たねばならず、お客さまの元に届くのが予定より遅れてしまいます」(オペレーションズテクノロジーIT APAC シニアマネジャー 岡本俊介さん)

 FCで働くスタッフはみな、こうした事態を避けるためにさまざまな工夫を凝らし、迅速で安定的な運用に努めてきた。ITシステムを支援するOpsTech ITチームも同様だ。商品のピッキングに用いるスキャナー、アマゾンロボティクス、出荷・仕分けシステムを支えるベンダーサーバ、それらをつなぐローカルネットワークなど、どこか1つに障害が生じても、顧客に約束した時間を破ってしまう恐れがある。

 「Amazonの物流拠点は非常にハイスピードで動いています。特に、『お客さまへのお約束時間に関わるトラック積み込み締め切り時間』という1日に複数設定されている重要な時間帯を意識しながら、すなわちお客さまを意識しながらシステムをサポートする、という点もAmazonならではの業務の特徴の1つです」(岡本さん)

ITのサポート範囲

端末から基幹のサーバ、電源の面倒まで見るOpsTech ITの仕事

 そんな仕事を担っているのが、市川FCで働くOpsTech ITサポートエンジニア3の上田善啓さんだ。

 上田さんはサポートエンジニアとして4〜5人でチームを組み、現場で使われるPCやプリンタ、スキャナーといったこまごまとした機器の調達から設定、設置、保守、廃棄まで、つまり「ゆりかごから墓場まで」の面倒を見ている。

 また、それらを束ねる基幹のサーバやネットワークスイッチ、ルーターなどの設置、運用保守も重要な業務となる。

 「ネットワークやサーバ類は数年おきに更新します。多くの機器があるので、このサーバを今月、あのサーバを来月、このネットワーク装置を再来月に更新する、という具合に、常に何らかのプロジェクトが走っている状態です」(上田さん)

笑顔でサーバを設置します

 さらに「サポートエンジニア」という言葉からはイメージしにくいが、OAタップや電気配線、LANケーブルといった物理的な配線工事の設計、発注、施工管理も業務に含まれている。

 「一般には電気配線は別の部署が担当し、IT部門はその上の部分だけを担当すると思いますが、われわれは電気工事も担当しています。実は、入社して一番驚いたのがここで、本当に幅広い業務を担っています」(上田さん)

 FCのレイアウト変更を行う際にはIT機器の配置も変更するため、LANと電源機器の大工事も発生する。そうしたプロジェクトのマネジメントもサポートエンジニアの仕事で、「仕事量は膨大です」とのことだが、上田さんはなぜか楽しそうだ。

 例えば市川FCでは、スキャナーやデスクトップ型端末など複数種類の数千にも及ぶ端末の面倒を見ている。「これだけの数があると、日に何個も『壊れた』という連絡をもらっては交換しにいく作業が発生します。ITがどれだけ進歩しても、物理的な機械の故障は自動化だけではどうにも対処できない部分です」(上田さん)。こうした物理的な故障に対応するのも重要なタスクの1つだ。

端末の設定や交換も大切なタスクです

 「こうした端末は、商品を入荷し、出荷する役割を担うFCにおける神経伝達回路のようなものだと思っています。スキャナーやデスクトップ端末一つ一つを見れば取るに足らない小さなものですが、商品をお約束した日時までにお届けするためにはこうした機器が必要不可欠で、Amazonのスピード配送を支える必須のインフラだと考えています」と上田さんは述べる。

 事実、上田さんがアマゾンジャパンで働いていることを知った友人から「おかげで助かっているよ、ありがとう」という言葉をもらうことも多いそうだ。

 「コロナ禍以降、インターネットショッピングは社会のインフラと認知されつつあります。そして、そのビジネスに必須なインフラに関わることができるのは自分の誇りでもあります」(上田さん)

 ただ、だからといって、長時間勤務が発生しているわけではない。マネジャーがしっかり労働時間を管理し、チーム内でうまくタスクをサポートし合いながら進めることで、過度な残業が発生しないようになっている――というより「している」という。

 「転職してきたエンジニアが口をそろえて『こんなに働きやすい環境だとは思わなかった』というのは、実はアマゾンあるあるです」(上田さん)

 保守、運用というと「夜勤」や「夜中の駆け付け」が連想されるが、そうしたものを極力なくす仕組みも整えている。

 「もしネットワークやサーバで障害が起きたら、FC全体の出荷が止まりかねません。ですので、基本的にはそうした事態を引き起こさないように、設計の段階で冗長化などを行います。それでも障害は起こりえますが、そうした場合には、米国にいるリモートチームの支援を受け、影響を最小限に抑えつつ、物理的にどうしても対応が必要なところだけを、出社時間内にわれわれが対応します」(上田さん)

ユーザーのフィードバックを得ながら、より早く成長できる環境を求めて転職

 アマゾンジャパン入社前に上田さんは、とあるシステムインテグレーターで基幹システム向けのシステムエンジニアとして働いていた。安定した環境で実際のコーディングから上流の設計まで一通り担当し、同期と切磋(せっさ)琢磨し合いながらスキルを身に付けられる恵まれた環境ではあったが、どうしても焦燥感に駆られる部分が2つあったという。

 「1つ目は、ユーザーから遠いところにいて、システムを使っている人からのフィードバックを得にくい環境にあったことです。もう1つは、会社に大事に育成してもらっていた反面、このままの成長スピードでは定年までに同期に追い付けないな、と感じていたことです」(上田さん)

アマゾンジャパン 市川FC OpsTech ITサポートエンジニア3 上田善啓さん

 実は上田さんは、高校を中退し、しばらくアルバイトや派遣社員を経験した後に大学に入り直した経歴の持ち主だ。しかも大学の専攻は情報処理ではなく教育学部だった。

 「先生になろうと思っていましたが、教育実習を経験してみて自分には合わないなと感じ、アルバイトなどで経験していたIT分野ならば向いているのではないかと考えて、システムインテグレーターに入社しました」と振り返る。充実した環境ではあったが、5〜6年出遅れていた分を取り戻すにはより早く成長できる環境が必要だと考え、転職活動を開始した。

 ユーザー企業の他、Webサービス企業も含め幾つかの企業に応募し、最後に応募したのがアマゾンジャパンだった。

 「外資系ということで自分からは遠い存在でしたが、せっかくだからと思って応募してみたところ、面接を経て内定が出るまでがほんの10日ほど、と一番早かったのがアマゾンジャパンでした。スピード感があるなと感じたことに加え、基幹からWeb系にジャンプするのもインフラ系にジャンプするのも、チャレンジという意味では変わらないのだから挑戦してみようと思い、5年前に入社しました」(上田さん)

 1つ気になっていたのは、外資系企業につきものの「ドライ」というイメージだ。成果が出なければ部署ごとバッサリ切られるのではないか――そんな不安を抱いていたが、杞憂に過ぎなかったという。「アマゾンジャパンは外資と内資のいいところ取りで、特にITチームはFC単位のワンチームで動くこともあり、何かあったらお互いカバーし合う文化が醸成されています。世間一般でいうドライな外資とは真逆のイメージです」という。

 思い切って転職してみて、「非常にスピード感があり、『2カ月後には完了させるよ』といったプロジェクトがいきなり降ってくることもありますが、それを調整し、周囲の助力を得ながら進められるのがやりがいの一つです。また、社内システムや機器もものすごいスピードで変わっていくため、常に新しい技術に触れられるのも、エンジニアとしての楽しさにつながっています」という。

 転職のきっかけとして抱いていた2つの焦燥感も解消されつつある。

 「エンドユーザーが近いというのは一番のポイントです。ITインフラは動いているのが当たり前、万が一止まったら理も非もなく問い詰められるというケースもあると思います。当社でももちろん原因は徹底的に追及されますが、トラブル対応や原因究明に当たったエンジニアのことを入出荷を担当している現場の社員もよく見てくれていて、きちんとフィードバックやねぎらいをくれます。そういうユーザーからのフィードバックを直接受けられる環境になり、転職して良かったなと感じています」(上田さん)

 自身の成長という意味でも得るものは多かった。ネットワークの業務経験がゼロのところからスタートしたが、「CCNA(Cisco Certified Network Associate)を取得し、社内のネットワークで分からないことはない状態です。エンジニアとして幅が広がったと考えています」という。

 さらに、それまで縁のなかった「第二種電気工事士」の資格まで取得した。

 「入社直後に割り振られたIPカメラ設置のプロジェクトでは、パートナー企業の質問に何も答えられませんでした。しかし、一念発起してこうした資格を取得したことによって指示出しが的確になったと思います。その積み重ねによってパートナー企業ともいい関係を築けるようになり、結果的にプロジェクト自体が進めやすくなったと感じています」(上田さん)

 アマゾンロボティクスを導入した川口FCの立ち上げに関わるなど、充実した日々を過ごしているという。

失敗を恐れず、ナレッジを共有して成長につなげる風土

 もちろん、これまでやってきたこと全てがうまくいったわけではなく、失敗もあった。

 しかし「失敗したこと自体は問わないから、次に同じ失敗を繰り返さないためにどうすべきかを考えよう、という文化がAmazonにはあります。仮に失敗したとしても次の改善につなげられることが、成長の大きな原動力になっていると思います」と上田さんは話す。岡本さんも「重要なことでも失敗を恐れずにやってみて、だめだったらまた戻ってやり直そう、という方針があると思います」とAmazonの風土を説明した。

 しかも「個人が失敗しそうになったら、必ずチームの誰かがそれを嗅ぎつけて『どうした』『これならこうやったらいいよ』という具合にヘルプに入ってくれます。『誰か』のプロジェクトではなく、『われわれのチーム』のプロジェクトなんだという意識を持っているため、孤立無援で失敗してしまったなんていうことはありませんという。

 上田さんは、「こうした文化は市川FCのものだけではなく、OpsTech IT全体の文化です。面識がない他のFCのメンバーでも、業務で分からないことをチャットソフトで質問をすると、忙しい中でも合間を縫って快く答えてくれます。」ともいう。

 ときには端末の交換や電気工事のために現場を歩き回り、手をほこりまみれにして働くこともあるという上田さん。だがそうした姿勢があるからこそ、「現場のITを上から下まで全てわれわれが担っているんだという誇りを持ちながら仕事ができていますし、現場からありがとうというポジティブなフィードバックをもらえています」とほほ笑む。

 今後は、FC間のナレッジシェアを加速し、組織の拡大、成熟に貢献していきたいという。さらに、ワールドワイドのプロジェクトメンバーに参加することも目標に、絶賛英語の勉強中だ。

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提供:アマゾンジャパン合同会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT自分戦略研究所 編集部/掲載内容有効期限:2021年8月12日

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