近い将来“コンテナと仮想化の混在”が標準に――複雑化する環境の「バックアップ」を効率化する一手とはコンテナ活用に新たな波

コンテナ環境は二極化が進み、これから「後追い組」がコンテナ活用を進めていく――企業におけるテクノロジー投資状況やデータ保護に対する取り組みはこれからどうなっていくのだろうか。有識者にコンテナ環境の現在、そして将来を伺った。

» 2021年11月29日 10時00分 公開
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先行者に続く後追い組――日本企業のコンテナ活用は二極化へ

ALT ヴイエムウェア
デジタルテクノロジーユニット
クラウドプラットフォーム 技術統括部
統括部長 古山早苗氏

 アプリケーションのリソース使用効率やポータビリティーの向上、開発俊敏性の強化などを目的に「コンテナ」活用の動きが加速している。仮想化製品に加え、コンテナ管理プラットフォーム「VMware Tanzu」を提供するヴイエムウェアの古山早苗氏は、「日本企業のコンテナ活用状況は二極化の状況にあります」と説明する。

 「以前からコンテナを活用してきたお客さまは、既に本番環境で利用する段階に達しています。その後を追い『自分たちもそろそろ始めないと』というグループが動きだして次の波が起きつつあり、さまざまな業界でPoC(概念実証)を進める動きが活発化してきました。コンテナの使いどころは各企業で異なるため、自社に最適な使い方を探りながらPoCを進めている状況ではないでしょうか」(古山氏)

コンテナ環境のバックアップは「これから検討」が大半

ALT デル・テクノロジーズ
DPS事業本部 事業推進担当部長
西頼大樹氏

 「後追い組」の状況は調査結果からもうかがえる、と話すのはデル・テクノロジーズの西頼大樹氏。同社は2021年9月、IT意思決定者1000人に実施した調査の結果をまとめた「2021 Global Data Protection Index」(グローバルデータ保護インデックス2021年)を発表した。

 「さまざまなテーマ、新たなテクノロジーへの投資状況と、それらのデータ保護状況を日本の企業を含め伺っています」(西頼氏)

 その結果が以下の図だ。青い数字は、その上の6つの最新テクノロジーへの投資状況となる。クラウドネイティブアプリケーションやSaaSに対して「投資した」と回答した国内企業が5割を超える一方、5GやIoT、コンテナ環境に投資したと回答した国内企業は3割前後となった。

ATL 新たなテクノロジーに対する企業の投資状況とデータ保護の状況(グローバルデータ保護インデックス2021年)(提供:デル・テクノロジーズ)《クリックで拡大》
ALT ネットワンシステムズ
ビジネス開発本部 第1応用技術部
デジタルオートメーションチーム
奈良昌紀氏

 「興味深いのは下段の数字で、6つの新たなテクノロジーに関して『最適なデータ保護ソリューションを見つけられていない』と回答した割合です。コンテナ環境以外は50〜90%ですが、コンテナ環境だけ、国内統計は25%です。75%はコンテナ環境の適切なデータ保護テクノロジーが見つかったと考えているのです」(西頼氏)

 さまざまな企業に対し、仮想化やコンテナ技術の活用を支援しているネットワンシステムズの奈良昌紀氏は、「今はまだバックアップのことまで真剣に考えている企業が少ないからでしょう」と推測する。

 「PoCでコンテナの使いどころを探る中、バックアップは今まで使ってきたストレージのバックアップ技術などで間に合わせ、PoC環境のデータを保護できればよいと割り切っているのではないでしょうか」(奈良氏)

今後は仮想化/コンテナの混在環境の管理が課題に

 今後、企業の仮想化/コンテナ環境では、混在環境ならではの課題が浮上し、特に本番利用においては、再検討が必要になる場合があると古山氏は指摘する。

 「これまでに開発されたアプリケーションを仮想環境上で稼働されている、というお客さまは、現在大変多くいらっしゃいます。このようなお客さまの場合、仮想化された従来型のアプリケーションと、コンテナ上で稼働するアプリケーションの両方を運用することになります。お客さまが2つの違った環境を持ち、それぞれ異なる運用をするのは大変負荷が高まります。VMware Tanzuのポートフォリオはこれらの問題を解決できるのが大きな強みなのですが、とはいえ、コンテナを本番環境で利用する場合には、改めて検討が必要な運用課題が存在するのも事実です」(古山氏)

ATL 仮想化とコンテナの混在環境で増大する管理負荷の問題を解決できることがVMware Tanzuのポートフォリオの強み(提供:ヴイエムウェア)《クリックで拡大》

 それでは、コンテナの本格活用を進めている企業は、運用面でどのような課題を感じているのだろうか。1つは、やはり「バックアップ」と古山氏は説明する。

 「本番環境のコンテナクラスタを壊してしまい、なかなか復旧できずサービスに影響を与えるようなトラブルが起きる可能性が指摘されています。また、障害が起きた際に操作を間違えたり、永続ボリュームのデータとコンテナで実装されているアプリケーションの依存関係ができてしまったりして、再起動できなくなる場合もあります。そうしたことを起こさないように気を付け始めているのが最近の状況だと思います」(古山氏)

 もう1つは、コンテナ環境の「移行」だ。PoCでクラウド上に構築したコンテナ環境をオンプレミスに移行したい、あるいは「Kubernetes」をアップデートするのでネームスペースごと移行したいといったケースは多いという。

 いずれにせよ、コンテナの普及が進めば、近い将来、企業システムは仮想マシンとコンテナが混在した環境が一般的になると予想される。

 「仮想マシンもそのような段階を経て、気が付けば爆発的に普及していました。今後、コンテナは仮想マシンと同様に普及が進んで両者の混在環境が標準となったり、コンテナに完全に移行したりするかもしれません」(西頼氏)

仮想化/コンテナ混在環境のバックアップに対応した「Dell EMC PowerProtect Data Manager」

ALT ネットワンシステムズ
ビジネス開発本部 第1応用技術部 
クラウドインフラチーム
篠崎智昭氏

 仮想化/コンテナの混在時代を見据え、デル・テクノロジーズがヴイエムウェアと共同開発した「VMware」専用のハイパーコンバージドインフラ(HCI)「Dell EMC VxRail」も、VMware Tanzuのサポートを強化。さらに、次世代データ保護・管理ソフトウェア「Dell EMC PowerProtect Data Manager」(以下、PPDM)は、2020年12月リリースの「19.6」で、KubernetesやVMware Tanzuのコンテナ環境のバックアップに対応した。

 「仮想化とコンテナの混在が進めば、運用管理はこれまで以上に複雑になります。VxRailでPPDMを使うことで、仮に仮想化/コンテナ環境が混在しても、基盤はVxRail、バックアップはPPDMで統合され、より効率的なインフラ運用を実現できます」(西頼氏)

 ネットワンシステムズの篠崎智昭氏は、仮想化とコンテナのバックアップ運用が統合されることは大きな利点と話す。

 「管理ポイントが集約されると『管理のしやすさ』で利点が生まれます。VxRailでPPDMを使えば、バックアップ運用を大幅に効率化できる可能性があります」(篠崎氏)

ネットワンシステムズがPPDMのバックアップ機能を検証

 VxRailとPPDMの組み合わせで、篠崎氏らの期待に応えるバックアップ環境は実現できるのか。ネットワンシステムズは、VxRail上のVMware Tanzuを対象に、PPDMによるバックアップ検証を実施した。

 「当社のラボ環境では、お客さまと検証作業を行うサービス『Lab as a Service』を提供しており、ここで検証を実施しました。VMware Tanzuの実行環境として『VxRail G560F』を利用し、それとは別の基盤上に構築した『VMware vSAN ReadyNode』上でPPDMを実行。バックアップデータの保存先は『Dell EMC Data Domain DD6300』としました」(篠崎氏)

 VMware Tanzuの環境は「Tanzu Kubernetes Cluster」(TKC)内にネームスペースを作り、その中にPodと永続ボリュームを構成してバックアップ対象とした。

 「『ネームスペースおよびクラスタ単位でバックアップを取得できるか』を永続ボリュームあり/なしのパターンで検証しました。ネームスペース単位でのバックアップは問題ありませんでしたが、クラスタ単位でのバックアップには未対応でした。こちらは今後に期待したいです」(篠崎氏)

 また、「同一クラスタに対するリストア」を永続ボリュームあり/なしのパターンで実施した他、「永続ボリュームのみを同一クラスタにリストア」「別のTKCに永続ボリュームあり/なしでリストア」のパターンも検証した結果、全てのパターンで問題なく実行できることを確認。さらに、バックアップのスケジュール機能は、世代管理までできることを確認できた。

ATL PPDMを用いたバックアップの検証結果(提供:ネットワンシステムズ)《クリックで拡大》

仮想化とコンテナのバックアップを同じインタフェースで操作

 検証を終えて、奈良氏は「Kubernetes上のリソースを意識してバックアップできますし、簡単にリストアできるので、とても使いやすい」とPPDMを評価。

 また、バックアップを他のクラスタにも戻せることから、「移行用途にも使えそう」と奈良氏は話すが、これはPPDMがKubernetesと密連携するためにも活用している「Velero」(※)の狙いでもあると古山氏は強調する。

【※】ヴイエムウェアがオープンソースソフトウェア(OSS)として開発しているVMware Tanzu用のバックアップツール。PPDMのコンテナバックアップ機能はVeleroをベースに開発されている。



 「VeleroやPPDMは、障害対策としてのバックアップ/リストアの他、オンプレミスからクラウド、あるいはその逆といったコンテナ移行での活用も想定しています」(古山氏)

 篠崎氏は、仮想化とコンテナを同じUIでバックアップできる利便性を高く評価した。

 「同じUIで仮想化とコンテナの環境をバックアップできる点はかなり便利です。それに、一度コンテナ環境を登録すると一覧にネームスペースが表示されるようになり、後は仮想マシンと同様レベルのポリシーを作ってバックアップやリストアできる簡単さも気に入りました」(篠崎氏)

PPDMの最新版では仮想化環境のバックアップがより高速に

 ネットワンシステムズは、2021年後半からPPDMの検証サービスをLab as a Serviceに加える予定だ。

 「PPDMの他、ロードバランサーやKubernetes向けストレージ環境も検証できます。コンテナに関しては検証サービスメニューを随時拡大していきます」(篠崎氏)

 また、ヴイエムウェアは今後、仮想化とともにKubernetesのサポートにも力を入れていくと古山氏は話す。

 「VMware Tanzuはモダンアプリケーションの開発、実行、管理の3領域をカバーするKubernetesを中心としたソリューションポートフォリオであり、これまでは実行を担う『VMware Tanzu Kubernetes Grid』に力を入れてきました。コンテナで実装されたアプリケーションが増え、Kubernetesの普及が進めばよりその管理も重要になりますので、拡充を進めていきます」(古山氏)

 PPDMの最新版「19.9」では、従来よりも高速にVMware仮想マシンのバックアップが可能になる「Transparent Snapshots」機能が追加された。これまでと比較して5倍高速、5分の1のレイテンシで仮想マシンのバックアップを取得できる。これにより、巨大な仮想マシンのバックアップでも、本番環境への負荷を大きく減らせるという。

 多くの企業がコンテナへの取り組みを加速している現在、仮想化とコンテナが混在する世界は意外と早く訪れるかもしれない。その環境を支えるプラットフォームには何が最適か、使いやすく効率的なバックアップ手法はどういったものか、今から検討を始めてほしい。

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提供:デル・テクノロジーズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2021年12月17日

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