基幹システムのクラウド移行が進む中、ジョブ管理の負担増に対応するにはオンプレミスとクラウド連携対応で業務自動化を実現

基幹システムをクラウドに移行することで柔軟性や拡張性が増す。しかし、基幹システムの安定稼働に必要なジョブの管理が難しくなり、運用担当者の負担が増すことがある。ジョブ管理の自動化や業務効率化を進めるにはどうすればよいだろうか。

» 2022年01月05日 10時00分 公開
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 基幹システムのクラウド移行が進んでいる。政府による「クラウド・バイ・デフォルト原則」の推進や、基幹システムと連携する顧客や取引先向けのフロントシステムがクラウドに移行するといった状況があり、基幹システムのクラウド移行は現実的な選択肢となってきた。

 従来、高い安定性と堅牢(けんろう)性が求められる基幹システムは、それを実現するための基盤構築から運用管理までを高い品質で安定的に稼働させることが要件となっていた。

 これに対してクラウドは柔軟性と拡張性を備え、変化に対応できることが大きな特徴だ。ただし、これまで培ってきた基盤構築や運用管理のノウハウが通用しないことも多く、クラウド移行に伴って、新しい基盤構築手法や運用管理ノウハウを習得する必要性も増えてきた。日立製作所の大野由理氏(サービス&プラットフォームビジネスユニット フロントエンゲージメント推進本部 ソリューション事業推進部 技師)はこう話す。

日立製作所の大野由理氏

 「基幹システムの業務と利用しているサービスの連携に作り込みの検討が必要なケースや、異なるプラットフォームを異なる管理ツールで管理しているというケースがあり、管理者の業務負担が増えているという相談をよく受けます。システムの安定稼働と業務の効率化のためには、業務の自動化を進めていく必要があります。しかし、管理負担が増えることで、そこに手を付けられないという声もあります。システムの運用管理が、デジタルトランスフォーメーション(DX)の阻害要因になることが増えているのです」(大野氏)

 近年重視されるようになってきたのが、基幹システムを含めたさまざまなシステムの統合運用管理だ。ハイブリッドクラウドやマルチクラウドの導入が進む中、既存システムを維持運用しながら、クラウドに移行した基幹システムやクラウドネイティブなシステムを統合的に管理していこうというものだ。

 統合運用管理では、SaaS(Software as a Service)型の統合管理ツールを利用することがある。こうしたツールを使えば、各クラウド環境でどんなサービスがどのように利用されているのかを確認できる。ただし、多くは「クラウド発」のツールであり、オンプレミスの既存システムはもちろん、クラウドに移行した基幹システムの管理にはうまく対応できていないことがある。

 例えば、ジョブ管理がそうだ。ジョブ管理はこれまでさまざまな基幹システムの安定運用を支えてきた重要な仕組みだが、クラウド発のツールでは、既存のオンプレミス上にある基幹システムとの連携が難しかったり、機能が不足して移行できなかったりする。そこで、日立製作所が取り組んだのがジョブ管理システムに対応した運用管理クラウドサービスの提供だ。

「JP1」のクラウド版「JP1 Cloud Service」でジョブ管理機能が利用可能に

 日立製作所は、統合システム運用管理「JP1」のクラウド版である「JP1 Cloud Service」を提供している。

 JP1 Cloud Serviceでは、JP1のさまざまな機能をSaaSとして順次提供していく方針だ。中核機能の一つとしてまず提供されたのが、ジョブ管理「JP1/Automatic Job Management System 3 - Manager(JP1/AJS3 - Manager)」の機能をクラウドで提供する「ジョブ管理プラットフォーム」だ。

 企業が抱えている運用管理の課題と、ジョブ管理プラットフォームが求められる背景について、大野氏はこう話す。

 「システムがサイロ化、クラウド化するにつれて、システム間のジョブ連携についての対応コストがかさみ、一元的なジョブ管理の負荷が大きくなっています。さらに複雑できめ細かな業務のフローを回していくため、人手を介する運用が必要となる場合があり、作業品質やスピードが人に依存してしまいます。ジョブ管理の熟練者がおらず、ジョブの運用状況を把握できないなどの問題を抱えているケースも見受けられます」(大野氏)

 例えば、スケジュール実行を担うシステムを管理しているときに、何か突発的なイベントが発生して予定を調整する必要があったとしよう。一般的な運用管理ツールでは柔軟に対応できないことが多いという。実行する時間の変更作業に手間がかかったり、他の日時へ振り替え実行したときに他の業務にどんな影響があるのかをすぐに確認できなかったりして、ジョブ管理の負担が増えてしまうのだ。

 加えて、ジョブの運用状況を把握できないため、現状の改善がしにくく、次のアクションにつなげにくいことも大きな課題になる。

 「クラウド上のシステムで業務自動化を実現するには、企業独自の営業日や、業務ごとの実行タイミングなど、企業活動に合わせて業務を適切に自動実行できる仕組みの構築が不可欠です。さらにジョブの運用状況を可視化、分析することで、運用を改善することも重要です」(大野氏)

他の管理ツールとは違う「ジョブ管理プラットフォーム」の3つの差別化ポイントとは

 JP1 Cloud Serviceが提供するジョブ管理プラットフォームは、これらの課題を解消するクラウドサービスだ。

 「業務を円滑に実行するためには、複数システムで実現する複雑な業務であっても、企業や業務ごとの独自ルールに基づいて実行される業務であっても、安定して自動化できることが必要です。そこで求められる要件は幾つかあります。まず複数の業務システムが1つのシステムであるかのようにスムーズに連携して業務が滞ることなく自動実行できることです。次に企業独自のカレンダーや業務ごとの実行条件に合わせて計画的に業務を自動実行できることです。最後に業務の実行状況をいつでも把握でき、必要に応じて適切な対処を迅速に行えることです。これらの機能をクラウドサービスで提供するのがジョブ管理プラットフォームなのです」(大野氏)

 ポイントは大きく3つある。

 1点目は「複数の業務間の実行制御」だ。ジョブ管理プラットフォームでは、複数の処理を実行順序通りに自動実行する。その際に異常発生時の処理や実行結果に応じた処理を指定しておくことで、柔軟な業務の自動実行ができる。

 例えば、先行する処理の実行時間にかかわらず、先の処理が終了するのを待って次の処理を開始したり、複数の処理が終了するのを待ち合わせて次の処理を開始したり、処理の実行結果によって、その後に行う処理を自動的に選択して実行したりできる。さらに、Amazon Web Services(AWS)の「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)や「AWS Step Functions」などを活用したクラウドネイティブな業務の実行を含め、一連の業務の自動実行を一元的に管理して制御できる。

 2点目は「企業カレンダーに合わせた実行制御」だ。企業の営業日や業務の締め日などに合わせて有無が決まる業務を効率良く実行するためには、企業や業務独自のカレンダーに合わせて、業務の自動実行を制御する必要がある。ジョブ管理プラットフォームでは、日時を指定した実行や、毎日、週ごと、月ごとの実行、月末だけの実行や休日振り替え実行など、さまざまなタイミングで業務を自動実行できる。企業カレンダーに合わせた実行制御により、実際の業務スケジュールに合わせた効率的な業務自動化を実現できるわけだ。

 3点目は、「業務の実行状況の可視化」だ。ジョブ管理プラットフォームでは、1つの画面上に、業務全体の概況や、業務を細分化した処理ごとの実行状況などを表示させ、業務の進捗(しんちょく)状況や状態(正常終了、実行中、異常終了など)をグラフや色、アイコンで直感的に把握できるようになる。業務が異常終了した場合も、その箇所がすぐに確認でき、問題解決後に業務が停止したところから再実行できる。

JP1 Cloud Service ジョブ管理プラットフォーム(提供:日立製作所)

 「こうした業務全体の実行状況を可視化することで、状況把握と対処の迅速化を容易にし、管理者の負担軽減と業務の安定稼働を実現していきます。さらに複数のクラウドサービスを連携させ、業務全体を実行制御できます。給与計算をする複数のシステムとAWSのシステムや帳票の作成、出力をするサービス、文書管理サービスを連携させることで『業務支払い処理』の業務を自動処理できるようになります。JP1 Cloud Serviceを活用することで、クラウド上の複数システムやサービスが連携する業務全体の効率化と安定稼働を実現できます」(大野氏)

 さらに、JP1 Cloud Serviceでは、ジョブ管理プラットフォームと連携できるクラウドサービスとして「ジョブ運用データ分析サービス」を提供している。ジョブ運用データ分析サービスを併用すると、ジョブ運用データの可視化や分析が容易になる。

「ジョブ運用データ分析サービス」を併用することで、運用の可視化、分析も可能

 JP1 Cloud Serviceが提供するジョブ運用データ分析サービスは、JP1のジョブ管理製品やジョブ管理プラットフォームを対象に、運用データを自動収集して蓄積し、ジョブの実行状況を可視化するさまざまなレポートを提供するクラウドサービスだ。

JP1 Cloud Serviceのジョブ運用データ分析サービス(提供:日立製作所)

 「システムを安定稼働させる上で、自動化した業務(ジョブ)の実行に問題が発生したり、滞ったりすることがないようにしていくことや、臨時の業務実行や業務時間の変更などに対応できることが重要です。これらを実現するために、ジョブ運用データ分析サービスでは、ジョブ運用に精通したエンジニアのナレッジを活用した分析を行って、ジョブ(業務)の状況を可視化し、状況把握を助けることで運用の健全性を支援します。ジョブ管理プラットフォームと連携させることで、業務遅延の可能性やジョブの集中時間、空き時間を把握でき、安定したジョブ実行の継続、業務要件に応じた柔軟なジョブ実行が可能になります」(大野氏)

 クラウドを活用してビジネスの変革を加速させる狙いだが、複雑化したシステム間の業務連携が非効率になったり、運用の安定性を欠いてしまったりしては、本末転倒だ。

 基幹システムを支えてきたジョブ管理のノウハウをクラウドサービスとして活用し、さらにクラウドネイティブな知見やノウハウを取り入れたサービスとして活用することで、真の意味でのクラウド活用が可能になる。JP1 Cloud Serviceはそれを可能にするサービスだ。

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提供:株式会社日立製作所
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2022年1月30日

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