DX推進の要となるデータ活用。だが「データはあるが生かせない」といった声に象徴されるように、収集、蓄積はしていても「活用」できていない例は非常に多い。その真因は何か。“データマネジメントの誤解”を払拭(ふっしょく)し、現実的な実践法を紹介する。
デジタルの力を前提にビジネスを変革していくDX(デジタルトランスフォーメーション)が企業の最優先課題となって久しい。だがDXに取り組む企業は増えていながら、成果を獲得できている企業は限定的だ。
特にDX推進の柱となるデータは、収集、蓄積していても活用できていない例が多い。「DXで何をすべきか分からない」という反応の大半はDXの源泉となるデータの管理、活用に問題があるといえるだろう。こうした状況に対し、「DX実現の肝はデータマネジメントにあります」と話すのは、デル・テクノロジーズの堀田 鋭二郎氏(DCWソリューション本部 データ分析 主幹)だ。
「企業はデータにまつわるさまざまな課題を抱えています。DXを推進するには、データをビジネスに生かせる状態を作り、維持し、進化させる仕組みを作ることが重要です。デル・テクノロジーズには、世界中の顧客企業におけるデータマネジメントの課題を解決し、DXを支援してきた知見があります。この知見をホワイトペーパー『データマネジメント改善に向けた9つの考慮事項』としてまとめており、DXにおけるデータマネジメントの重要性を整理して解説しています」(堀田氏)
デル・テクノロジーズがまとめた9つの考慮事項は以下の通りだ。
ではDX推進において、なぜ「データマネジメントが肝」なのか、どのような仕組みが求められるのか。DX時代のデータマネジメントの要点を整理してみよう。
デル・テクノロジーズの池田 司氏(サービスビジネス営業統括本部 シニア ソリューション プリンシパル)は、データマネジメントの重要性をこう説明する。
「データマネジメントは長い歴史のある取り組みです。しかし近年は、データ量の爆発的増大、IoT(Internet of Things)などエッジ環境でのデータ生成量の増大、リアルタイム分析へのニーズの拡大などから、重要性が一層増しています。われわれの調査でもデータマネジメントに対する投資優先度はサイバーセキュリティに次いで2位となりました。ただ、データを収集、蓄積はしていても、分析に必要なデータをエンドユーザーに提供できている例は少なく、われわれの調査では全体の66%が『提供力不足』だと回答しています」(池田氏)
そもそも既存の仕組みでは、増大し続けるデータを効率的に管理すること自体が困難になっている。ビジネスにデータを生かすには“それなりの仕組み”が不可欠になるというわけだ。では“それなりの仕組み”とは何か。池田氏はこう解説する。
「データマネジメントとは、単に目の前にあるデータを管理することではありません。データの発生元から多種多様な大量のデータを収集し、AI(人工知能)、機械学習、アプリケーション、データサイエンス、BI(Business Intelligence)など、さまざまな用途に適した形でデータを提供するデータパイプラインの仕組みを実現することが重要です。もちろんセキュリティを担保したり、利用者の作業を効率化したり、各社独自の活用プロセスに対応したりするための基盤も不可欠です。こうしたデータ収集からデータ活用までの仕組み全体を『データマネジメント』と捉えることが大切です」(池田氏)
こうした本来のデータマネジメント実践を支援するために、デル・テクノロジーズでは「データ活用コンサルティング」を提供することで、ノウハウからIT基盤構築、人材育成、プロセス定義、データ活用まで、包括的に提供、支援しているという。
「データ活用コンサルティングは、データサイエンス、データ管理/ガバナンス、データ分析/活用基盤という大きく分けて3つの領域があります。それぞれにおいて、調査/評価からノウハウや実践基盤の提供、取り組みの定着化まで、各社に即したコンサルティングを通じて、パートナーとともに“実践”まで伴走します」(池田氏)
データマネジメントのうち、実践の核となるデータパイプラインを構築、整備する上で大きく分けて2つのポイントがあるという。
1つは全社のデータ収集、連携を担う「データハブ」だ。収集したデータをデータマネジメント基盤に渡したり、必要なデータを基幹システムなど各種システムに渡したりするデータ収集、連携の要となる。デル・テクノロジーズはこのデータハブに、グループ企業でiPaaSのパイオニアとして知られるBoomiを採用している。Boomi Japanのパートナー&アライアンス ディレクター 大浦 譲太郎氏はこう話す。
「Boomiはシステム同士をつないだり、有効な知見を得るためにデータを整備したり、データを通じてユーザー同士を結び付けたりする各種データ収集、連携機能をクラウドサービスとして提供します。具体的には、インテグレーション機能をコアとして提供し、EDI(Electronic Data Interchange)連携機能、マスターデータハブ(MDH)、ワークフロー機能(FLOW)、APIマネジメント機能などをオプションとして用意しています」(大浦氏)
Boomiはローコード開発ツールのため、ビジュアルな開発画面で任意のシステム同士を迅速に連携できる。これにより、データ連携の開発期間、工数、コストを大幅に抑えながら、DXの肝となる「ビジネスプロセスの変革」を狙える。「事業部門で利用しているケースもある」(大浦氏)という。
従来のETLツールと異なり、BoomiはiPaaS(Integration Platform as a Service)としてクラウドサービスで提供されるため、新規に開発する部分からスモールスタートで導入しやすいという。大浦氏は「他社iPaaS製品と比較して連携にかかる構築期間を大きく短縮できるのも特徴です。ライセンス形態もシンプルですから大幅にROI(投資対効果)に貢献するでしょう」と話す。
Boomiを活用した成功事例の1つが、旧Dellと旧EMCの統合に代表されるデル・テクノロジーズ自身のシステム統合の取り組みだ。業務を止めずにシステムを統合し、さまざまなデータを柔軟に活用できるようにした。
「50以上のシステムを2年で統合し、統合コストを75%削減しました。システム統合による基盤の標準化と集中管理を進め、営業データの可視化を合併初日から実現し、売り上げ増加にもつながりました」(大浦氏)
データパイプラインを構築、整備する上で、もう1つのポイントとなるのが、非構造化データやストリーミングデータを扱うためのデータ統合基盤だ。デル・テクノロジーズの吉武 茂氏(UDS事業本部事業推進部 シニア市場開発担当マネジャー)はこう話す。
「今後のIT基盤にはデータ増大に対応できる拡張性の高い『データ統合基盤』であることが求められます。従来システムで生成されるデータに加えて、IoT(Internet of Things)やエッジから生成され、蓄積せずにそのまま分析されるストリーミングデータのような新しいタイプのデータを含め、あらゆる業態でいかにデータを統合し、活用するかが検討されています。特に現在国内で大きな潮流がみられるのは製造業です。工場では製造ラインに多くの検査用センサーが利用されています。センサー数の増加、高精度化により、センサーから出力されるデータの大幅な増加が見込まれることから、データ統合基盤のニーズが高まっています」(吉武氏)
そうしたデータ統合基盤の最適なプラットフォームとなるのが「Dell PowerScale」(以下、PowerScale)だ。
旧Isilonから受け継ぐ実績あるストレージOS「OneFS」を使って、高いスケーラビリティと、バックアップ/レプリケーションなどの各種データ保護機能、ウイルススキャン/ランサムウェア保護など各種セキュリティ機能を確保しながら、非構造化データをシンプル、安全に管理できる。特に、最近注目されているランサムウェア対策として、データの安全性を高める『Air Gap』ソリューションにも対応する。エッジとクラウドに対応した高いアクセス性を持つため、AIや機械学習、データサイエンスなどを生かしたアプリケーション開発などにも貢献するという。
PowerScaleのデータ統合基盤は、製造業のみならず、メディア、エンターテインメント、通信業界で利用されている。近年は病院を中心としたヘルスケア業界や研究機関でも活発だ。国立開発研究法人 国立国際医療研究センターは、PowerScaleの導入により大量データの保存、解析処理を効率化した。一人のゲノム解析に要する時間を最大約30時間から1時間半に短縮できたという。
「『9つの考慮事項』に当てはめると、PowerScaleは『データ統合』を中心に、『データの移動』『ポリシーとガバナンス』『本質的なセキュリティと信頼』の4つをカバーする製品です。少ない人数の管理者で50PBのデータも管理可能です。こうした容易なデータ連携、蓄積は、PowerScaleの特徴であるマルチプロトコル対応機能によるものです。6年連続でガートナーのファイルおよびオブジェクト、ストレージ分野のトップリーダーに選出されるなど市場で高く評価されているのは、価値を理解し活用いただいているためだと考えています」(吉武氏)
このように、デル・テクノロジーズはデータマネジメント実現のコンサルティングからIT基盤の構築、データ活用まで包括的に支援する体制を整えている。換言すれば、「9つの考慮事項」全てを複合ソリューションで解決している、というわけだ。
データマネジメントでビジネスを拡大させた日本企業の事例もある。三井住友カード(SMCC)はデータ分析支援サービス「Custella」(カステラ)を展開しているが、この実現には膨大なキャッシュレスデータを効率的に分析できる基盤が求められた。この基盤全体をデル・テクノロジーズの製品、サービスで構築しているという。
「この事例で注目いただきたいのは、『9つの考慮事項』をほぼ全て整備していることです。スマートデータレイクと呼ばれるデータマネジメント基盤を構築し、ビジネスで劇的な成果を上げています」(堀田氏)
このように「データはあるが生かせない」といった根本的な問題はデータマネジメントにあるわけだ。 “本来のデータマネジメント”がしっかりとできていれば、SMCCのように成果獲得への道がおのずと開けるともいえるだろう。
「デル・テクノロジーズはハードウェアの会社というイメージも強いかもしれませんが、多数のソフトウェア企業と連携して『ソリューションの開発』を先導しています。データガバナンス、データセキュリティ、データカタログに対応する複合ソリューションも以前から提供してきました。われわれ自身の社内システムにもこうしたソリューションを適用し、得られた知見やノウハウを提供していることも評価いただけているポイントかと思います。今後もお客さまのデータマネジメント改善に注力するとともに、国内パートナーエコシステムを拡大し、日本企業の包括的な支援を継続し、推進していきます」(堀田氏)
DXが進まない原因はデータマネジメントの不備? 収集から活用まで改善するには
変化の激しいビジネス環境で生き残るには、データマネジメントに基づくDXの推進が欠かせない。しかし実際は、データが部署内でしか利用されておらず、データ保護の体制も整備できていない企業が多い。これらを解決する方法とは?
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提供:デル・テクノロジーズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2022年4月26日
変化の激しいビジネス環境で生き残るには、データマネジメントに基づくDXの推進が欠かせない。しかし実際は、データが部署内でしか利用されておらず、データ保護の体制も整備できていない企業が多い。これらを解決する方法とは?