成長したいエンジニアが必要としているのは「師と仰ぐ人」ではないだろうか先輩から後輩に受け継がれていく無形の「価値」

見守ってくれる人がいる、安全な場所で冒険や失敗をさせてくれる人がいる。個人主義でもない、単なる上司部下でもない、師弟関係でこそ育まれるエンジニアのキャリアがここに。

» 2022年06月22日 10時00分 公開
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 新進気鋭のスタートアップ企業で働くエンジニアからは、年齢や入社年次に関係なくチャンスを得られる点に魅力を感じているという話をよく聞く。その一方、師と仰ぐ存在やロールモデルの不在、ナレッジやマインドの継承の部分で不安を感じることも多いという。

 彼らが渇望しているものを一言で表すなら「師弟関係」だ。

 経験豊富な先輩が、時に優しく、時に厳しく教育や指導をして後輩の成長を促していく――スタートアップや小人数での外部プロジェクト派遣が続くエンジニアたちが憧れるそんな風景は、IT業界にはもう残っていないのだろうか。

未経験からコーダーへ、3年目にはリーダーとして交渉のフロントへ

 木島倫子さんは、いわゆる文系エンジニアだ。

 文系の学部を卒業後、小規模なIT企業に就職し、1年後に富士ソフトに転職した。最初に担当したのは、携帯電話端末のIrDA(赤外線通信)やBluetooth通信関連のファームウェア開発だった。開発経験は皆無に近かったが、現場には先輩がたくさんいて、分からないことはすぐに教えてくれた。

 プロジェクトは2年ほど続き、最初の機種ではコーディングのみ、次の機種からは詳細設計や基本設計といった上流工程も手掛けるようになった。さらに、別キャリアの端末開発、PHS端末の開発なども担当し、3年目からはリーダー職も任されるようになった。

 同世代の中でも早い昇進と、東京 秋葉原のパーツ屋さんでよく見掛ける基板上の電子部品を扱って開発をしている自分のことを「友人からかっこいい! と言われ、自分でもそう思えました」と楽しそうに振り返る。

富士ソフト システムインテグレーション事業本部 インフォメーションビジネス事業部 第1技術部 第2BCグループ 課長 木島倫子さん

 経験や実績を評価された木島さんはその後、運輸系のプロジェクトに配属された。プロジェクト規模は全体で約100人、7チームから構成されており、木島さんは10人のメンバーがいるチームのリーダーを任されたという。

 メインの役割は、お客さまとの交渉や調整。これまでは自分で手を動かしてきたので、ひたすら調整に回るのは初めての経験だった。しかし、同プロジェクトをきっかけに、こうした調整役も「やれる」という自信が付いたという。

成功しか許されないプロジェクト

 その次に配属されたのは、教育サービスのDX(デジタルトランスフォーメーション)支援プロジェクトだった。

 紙での運用がメインであった学習サービスをデジタル化するというお客さまの社運をかけたプロジェクトであり、必達スケジュールもある。プロジェクトの運命を託された富士ソフトは、精鋭メンバー120人を全国から募り、秋葉原の本社に集結した。

 プロジェクトの期間は1年弱。学習教材ということもあり、新年度までにリリースすることが絶対条件で、実質的な開発期間は7〜8カ月と短かった。翌年の3月下旬には確実にリリースしなければならないのに、「取りあえず動くもの」が初めて出来上がったのが12月後半という状況で、メンバー全員が大きな不安を抱えながらプロジェクトに臨んだ。

 ハードなプロジェクトであったが、木島さんたちの頑張りもあり、無事納期内にリリース。クライアントから品質を評価され、それから10年、いまも続くプロジェクトとなった。

 木島さんはこのプロジェクトで、エンジニア人生に大きな影響を与える人物と出会った。その後10年にわたって師弟関係を紡ぐことになる、樋口聡彦さんだ。

富士ソフト システムインテグレーション事業本部 インフォメーションビジネス事業部 第1技術部 部長 樋口聡彦さん

 樋口さんは、当初同プロジェクトで上から2番目のポジションだった。木島さんと別のチームだったため直接指示を出すことはなかったが、木島さんの働きぶりをじっと観察していた。

先輩は見ていた

 樋口さんの直接指導は2期目からスタートする。

 樋口さんは、同プロジェクト全体をマネジメントするPM(プロジェクトマネジャー)に就任した。そして各プロダクトのチーム編成を組む際に、木島さんに重要な役割を与えたのだ。

 樋口さんは木島さんに、対お客さまの窓口としての活躍に期待した。

 「木島さんはコミュニケーション力があり、真面目で細かい粒度で調整するのが得意なので、お客さまとの窓口役に向いていると思いました。また、相手を否定する発言をしないことも評価しました。相手を否定してしまうと、互いに意見を出し切らないまま終わってしまいます。それでは決して良いプロダクトは生まれませんから」(樋口さん)

 自分のことをきちんと見てくれている先輩がいたことを木島さんはうれしく思ったという。実際に、木島さんは期待通りの活躍をした。

 「お客さまは教育のプロですが、ITの知識は十分ではありません。本来、実現性が困難な要望に対しても、その場でNoとは言わず、一度持ち帰るように心掛けました」(木島さん)

 「当時、木島さんが度々ムチャな相談を持ち帰ってくると内部で話題になったのですが、それは木島さんがしっかりと役割をこなしてくれていたという証しです」(樋口さん)

 木島さんが持ち帰ってきた課題はチーム内で技術的な検討が行われた。これによりお客さまの求めていることがチーム内に広く行きわたり、ときには新たなブレークスルーにつながることもあった。

自分で考え、自分で判断させる

 もちろん、木島さんの業務は常に順風満帆というわけではなかった。木島さんが英語学習のアプリ開発チームでPMを務めていたときに、ある問題が起きた。

 それは木島さんにとって初めてのPM経験であり、彼女は期待に応えようと張り切っていた。しかし樋口さんは、「本人が一生懸命になっているときほど危ない」と心配していた。

 PMになると、それまでより一段高い位置から全体を見なければならない。チームの運営に対してもそうだ。だが、「木島さんはメンバーに対して、細かい説明はするけれども、俯瞰(ふかん)的な話をあまりしませんでした。その結果、開発の方向性がバラバラになってスケジュールも遅れ始めました」と、樋口さんは振り返る。

 このままではプロジェクトが火を噴きかねないと感じた樋口さんは、木島さんに大胆な決断を迫った。

 「このまま進めるか、チームのメンバーを入れ替えて軌道修正を図るか、という2つの選択肢を提示しました」(樋口さん)

 実は既にメンバーを入れ替える方向で、人員は手配済みだった。だが、「メンバーを入れ替えろ」と命令するのではなく、あえて判断をさせた。それは、プロジェクトの軌道修正だけでなく、木島さんにPMとしての判断をたくさん経験させようという樋口さんの親心でもあった。

 木島さんは、悩みに悩み、考えに考え、メンバーの入れ替えを選択した。結果的に樋口さんがおぜん立てをしてくれた中で判断をしたことになるが、その過程で先輩の判断をトレースし、判断のためのロジックを身に付け、成長できた。

 「その一件以来、チームには最初に大まかなポイントを伝え、結論や方針を示した後に詳細を説明していくよう、心掛けるようになりました」(木島さん)

先輩から後輩に受け継がれていくエンジニア魂

 木島さんは2022年4月に課長に就任した。その抜てきに樋口さんの強力な推挙があったことは言うまでもない。

 「課長への昇進は、部下をどれだけ大切にし、レベルアップさせられるかが大きな判断基準になります。木島さんの昇進についても、現場のエンジニアたちから『木島さんから、こういう指導をされた。こういう話を聞かされた』という話を聞き集めて判断しました。もちろんPMとしての活躍も評価しています」(樋口さん)

 課長となり、木島さんには新たなミッションが増えた。

 「課長職は、事業計画の立案や事業部の予算を達成するための運営など、まだ見えていない将来を創り出していくことが必要です。また、メンバーの心が折れないように、いろいろな心構えを教えていかなければなりません。それらを一つ一つ経験して、判断するように導いています」(樋口さん)

 樋口さんは後輩の育成のために、さまざまなおぜん立てをして、常に本人に判断させるのを「面倒くさい」と感じていたりしないのだろうか。

 「後輩が育てば、結果として自分の仕事が楽になるので、面倒くさいという感覚はありません。そのためにも、より正しい答えを導き出せる判断ができるよう、その人に合わせた指導を行っています」(樋口さん)

 ときには小さな失敗もあえて経験させる。大きなケガをしないように、周囲に見守られた安全な場所で上手な転び方を教えるのも、先輩の役割だ。

 課長となった木島さんは、今後は先輩として後輩を導いていく役割も担うことになる。

 「木島さんには、今まで築いてきた実績や評価を貴重な『価値』だと捉え、次の世代に継承していってほしいと思います」(樋口さん)

 こうして樋口さんから木島さんへ、木島さんから新たな後輩たちへと、エンジニアの魂が連綿と受け継がれていく。信頼する先輩に見守られながら成長していく、自分が得たものを次世代に広めていく――エンジニアが理想とする師弟関係を、富士ソフトで見つけた。

編集部「木島さんから見て、樋口さんってどんな人ですか?」木島さん「言葉にすると恥ずかしいけれど、カッコいい人だなって(照)」樋口さん「それ、絶対記事に書いといてな!」

富士ソフトは、樋口さんや木島さんと一緒に働いてくれる仲間を募集しています。詳細はこちらをご覧ください

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提供:富士ソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2022年7月11日

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