日本企業のDXを阻むこれだけの理由――クラウドのメリットを生かし切り、「内製化」する現実解業種別アプローチが解決の鍵

多くの企業がDXに取り組むも変革には至っていない例が多い。内製化も注目を集めているがIT人材、DX人材の雇用が難しいという問題もある。どうすればデジタルの力でビジネスを変革できるのか。豊富な支援実績を持つ日立システムズとAWSジャパンに聞いた。

» 2022年09月05日 10時00分 公開
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クラウドのメリットを生かし切れない日本企業

 DX(デジタルトランスフォーメーション)が着実に浸透しつつある。組織、文化まで含めた変革に至ったケースは限定的だが、業務プロセスを改善したり、ツールを活用して生産性を高めたりする企業の例はこの数年で大幅に増えた。

 日立製作所グループとして、さまざまな業種、規模の企業を支援している日立システムズでも、自社のDXを加速させる一方、そのノウハウを顧客やパートナー企業に提供しながら取り組みを推進しているという。日立システムズの大野哲史氏(ビジネスクラウドサービス事業グループ アライアンス・サービス開発統括本部 アライアンス開発本部 本部長)は、日本におけるDXの現状をこう説明する。

日立システムズ ビジネスクラウドサービス事業グループ アライアンス・サービス開発統括本部 アライアンス開発本部 本部長 大野哲史氏 日立システムズ ビジネスクラウドサービス事業グループ アライアンス・サービス開発統括本部 アライアンス開発本部 本部長 大野哲史氏

 「オフィス業務領域のDXはかなり進んできた印象です。RPA(Robotic Process Automation)やチャットbotなどで人手による業務を自動化し、工数削減や生産性向上につなげた例は着実に増えています。対して、工場、プラント、店舗、医療といった中心となる事業領域のDXはまだこれからです。例えば製造現場ではIoTでデータを可視化したり、データをクラウドに移行したりする取り組みはある程度進んだものの、データの可視化にとどまり、そこからビジネスのインサイトを得るという利活用は十分にできていません。DXで期待通りの成果を得るまでには至っていないと言えます」(大野氏)

 この背景には、DXのビジョンはあっても実現手段を使いこなせていないことがあるようだ。アマゾン ウェブ サービス ジャパンの谷口英治氏(パートナー アライアンス統括本部 第二ストラテジック パートナー本部 部長)は「DXの一手段として不可欠なクラウドをより正しく理解していただくことが鍵になります」と指摘する。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン パートナー アライアンス統括本部 第二ストラテジック パートナー本部 部長 谷口英治氏 アマゾン ウェブ サービス ジャパン パートナー アライアンス統括本部 第二ストラテジック パートナー本部 部長 谷口英治氏

 「クラウドを活用すれば、時間とお金を抑えてスモールスタートして、投資コストを最適化しながら新しい取り組みを始め、そして拡張させることができます。仮に取り組みが失敗しても影響を最小限にとどめて方向性を柔軟に変えられる他、完全に撤退する経営判断をしてもすぐに投資を止められます。このような『クラウドは初期コストが不要で、迅速に拡張できる』という理解は広まっていますが、トライ&エラーがしやすく、撤退コストを含めた新しいビジネスチャレンジに取り組みやすいという側面は見過ごされがちです。これらを進んで生かすことで、DXの取り組みを推進できると考えます」(谷口氏)

DXの実現手段となるクラウド活用、内製化を阻むこれだけの課題

 正しいクラウドへの理解が進んだとしても、次にクラウドのメリットを生かせない背景には、日本企業特有の事情もある。よく課題になるのはセキュリティやコンプライアンスへの懸念だ。

 「収集したデータをクラウド上のDBサービスや機械学習サービスなどを使って分析したいというニーズは、業種を問わずどの企業にもあります。しかし、セキュリティに対する漠然とした不安やコンプライアンスの徹底という観点から、ポリシー上、クラウドにデータを置けないケースはまだまだ多いのが現状です。プラントなど社会インフラを支えるシステムは、1回の事故が社会に多大な影響を与えかねないため、データのセキュリティやコンプライアンスには最大限に配慮する必要があります」(大野氏)

 それだけではなく、ITエンジニアの所属先がベンダー側に多く、ユーザー企業側に少ないという日本特有の事情もある。

 「DX推進の一環として、システムの企画、設計、開発、保守の内製化を進める企業も増えています。ただ、日本国内ではIT人材の7割強がベンダーなどIT専門企業に所属しているといわれ、一般企業にとっては内製化に向けた人材確保が難しい状況とお客さま、パートナーさまからお聞きすることが多いと感じます。とはいえ、DXという自社を変革する取り組みを全て外部のIT人材に委託して行うのも現実的ではないため、ベンダーとの関係を見直しながら、新しいアプローチで内製化に取り組んでいくことが求められています」(谷口氏)

 一方、技術面ではクラウドの進化スピードに追随するために継続した努力も必要だ。ご存じのようにクラウドは提供機能を頻繁にアップデートし、新しいサービスや機能も続々と追加していく。アマゾン ウェブ サービス(AWS)の場合、200を超えるサービスを提供しているが、2021年の1年間で3084回のアップデートが実施された。ユーザー企業のIT部門がこれらのアップデートを把握し、自社で利用しているサービスや業務に影響がないか調査するのは大きな負担になる。クラウドを進んで活用しようとしても、知識やスキルの習得が間に合わないという問題もあるわけだ。

 クラウドネイティブに代表される新しいスタイルや方法論、文化を学んでいくことも同様だ。マイクロサービスやコンテナ、サーバレスといった技術を取り入れるだけではなく、アジャイル、DevOps、チーミング、人材育成など、組織全体での取り組みが不可欠となる。

「BCCoE」(Business Cloud Center of Excellence)で、クラウド活用を全社横断で管理

 こうしたセキュリティ、人材、スキル、組織文化の悩みごとは、DXに取り組む多くの企業が直面する典型的な課題とも言える。日立システムズ自身、これらの悩みごとに直面し、苦労しながら解決を図ってきた。その際、鍵になったのが「業種別のクラウド提供」と「クラウドCoE」(Cloud Center of Excellence)の取り組みだという。

 日立システムズは、AWSなどのクラウドを活用して自社内の課題解決を進め、2014年にAWSパートナーネットワーク(APN)に参加。以降、自社で蓄積した知見を基に、各業種の顧客企業に対してAWSを活用したDX支援サービスを提供してきた。製薬、医療機器業界向けではCSV(Computerized System Validation)対応のクラウドサービス、医療情報システムの高度な要件群にクラウドサービスで対応するための各種レファレンスを提供してきたという。

 「当初、SEチームごとのクラウド活用は十分な成果を出すに至らなかったり、課題解決が難しかったりするケースもありました。そこで2019年に立ち上げたのがクラウドの知識やノウハウを集約するクラウドCoE(Center of Excellence)です。製造、流通、金融、公共、医療といった業種ごとにSEチームがクラウドCoEを立ち上げ、さらにそれらを統合する形で、全社横断組織『BCCoE(Business Cloud Center of Excellence)』を立ち上げました」(大野氏)

各業種のクラウド活用の知見、ノウハウを統合した全社横断組織「BCCoE」を中核に、AWS、顧客企業とタッグを組んで価値を協創する 各業種のクラウド活用の知見、ノウハウを統合した全社横断組織「BCCoE」を中核に、AWS、顧客企業とタッグを組んで価値を協創する

 BCCoEでは、各クラウドCoEチームが持つ知見や情報を全社で共有し、よくあるニーズと解決策の検討、AWSの技術キャッチアップ、AWSエンジニアや現場SEを交えた議論などに取り組み、社内の知見、スキルをいっそう高度化させた。また、AWSへの技術改善要望のための社内窓口となり、連携強化を進めた。2022年4月からは、BCCoEで培ってきたノウハウを顧客に提供する「クラウドコンシェルジュ」の取り組みを開始したという。

 「クラウドコンシェルジュは、AWSを利用する顧客に寄り添い、お客さまと日立システムズがビジネス価値を協創することを目指した取り組みです。お客さまのIT部門に伴走して、目指すビジョンの実現に向けて、目的に最適なインフラ設計やツールの利用方法などを提案して一緒にシステムを開発していきます。単に依頼されたものを提供するのではなく、カスタマーサクセスの最大化という観点で伴走することがポイントです」(大野氏)

 クラウドコンシェルジュは、日立システムズ自身も直面してきたセキュリティ、人材、スキル、組織文化といった各種課題への対応経験、解決方法を提供しながら、顧客企業とともにDXを推進する。インフラ構築や運用支援だけにとどまらず、顧客企業におけるクラウドCoE創設、運営や人材育成、文化の醸成などまで、プロジェクト全体を“伴走する”ことが大きな特徴だ。

国内屈指のAWS認定取得企業として、顧客、AWSとタッグを組んで価値を協創

 谷口氏は、こうした日立システムズのBCCoEやクラウドコンシェルジュの取り組みに対して、「Amazon.com自体も同様に自社の課題を解消するためにクラウド環境を作り、その成功を基に、外部の顧客向けにAWSとして事業化し、成長してきました」と話す。

 「Amazon.comがAWSとしてサービスを開始した背景には、硬直化した社内のITインフラの仕組みを変革し、顧客により良いサービスを提供するためにビジネスの俊敏性、柔軟性、拡張性を向上させる目的がありました。そのためにクラウド環境を構築し、成功体験をお客さまに提供しようと、ニーズに合わせてサービスの拡大を図ってきました。以降、顧客の声を聞いてサービスを開発したり、コストダウンを継続的に実施したりと、ニーズに俊敏に応え続けていることはAWSの大きな特徴と言えます」(谷口氏)

 自社の成功体験を社外に還元し、ニーズに応え続けていく。顧客とともに協創し、成長を目指すスタンスは似ていると言えそうだ。無論、日立システムズとAWSも“協創”関係にある。

 両者の強力なタッグは既に複数の成功事例を生み出している。例えば、セゾン自動車火災保険における「おとなの自動車保険」支援事例だ。従来は車検証写しの取り付け業務を郵送で行っていたが、スマートフォンで撮影した画像データをAWSにアップロードし、AWS上で一連の取り付け処理を完結できるようにした。

 「日立システムズは、2022年9月1日時点で国内のAWSパートナーの中で唯一、ヘルスケア、ライフサイエンス領域の支援に必要な知識、スキルを持つ企業として『AWSライフサイエンスコンピテンシー』認定を取得しています。AWSの設計から構築、移行、運用、自動化、最適化までの次世代MSPサービスをハイレベルな技術で提供する『AWSマネージドサービスプロバイダー(MSP)プログラム』の認定も取得しています。2022年3月には国内12社目の『AWSプレミアティア サービスパートナー』認定も取得されました。日立システムズならではの強みを生かしたサービス提供に期待しています」(谷口氏)

 ある顧客の事例では、非常に高度な要件が求められる「調剤薬局 経営管理システム」などをAWS上に移行する際、厚生労働省、経済産業省、総務省らが発行する「3省2ガイドライン」に準拠する支援を行った。

 この他にもAWSのパートナー紹介ページには複数の支援事例が公開されているが、ニーズに応えるスピードや柔軟性が重視されるSoE(System of Engagement)領域、安定性、安全性が重視されるSoR(System of Record)領域、ともに複数の実績があることが分かる。

 「これらの取り組みもクラウドCoEであるわれわれの業種ごとのSEチームが、お客さまのチームとともにクラウドデザインを検討し、協創したことが大きな成功要因となっています」(大野氏)

 谷口氏と大野氏は「あくまで主体はお客さま」と強調する。日立システムズとAWSは2022年7月に3年間の戦略的協業契約を締結しており、両社によるタッグは今後ますます強力になりそうだ。前述した複数の課題がある中でも、両社によって日本企業のクラウド活用、内製化が進み、DXが加速していくことを期待したい。

谷口氏と大野氏

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提供:株式会社日立システムズ
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2022年9月11日

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