「Excelと手作業で運用」や「属人化」をどう改善するか――「運用DX」の現実解企業のDX実現にも運用DXが寄与する

システムがオンプレミスからクラウド中心になると、迅速なITリソースの確保ができるようになる。その一方でシステムは複雑化し、セキュリティやガバナンス対応などの運用業務も日々高度化していく。2022年8月に@ITが主催したセミナーに登壇したNTTデータ先端技術の大上貴充氏は「運用DX」の重要性と、実現のための具体的なアプローチを紹介した。

» 2022年09月29日 10時00分 公開
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 多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現に向けて取り組みを推進し、クラウドネイティブを志向して実践する企業も着実に増えている。だが、既存システムの運用管理に多くの工数を割かれている企業もある。「Excelと手作業で運用」したり、「属人化」したりしたまま、山積した運用業務をこなし、新たな取り組みを始めることは容易ではない。

 @ITが2022年8月25日に開催したセミナー「運用管理の不安と焦燥にさようなら クラウドネイティブ時代を生き抜く運用改革」で「DXの推進はシステム運用から!変革の時代に求められる『運用DX』」と題して講演したNTTデータ先端技術の大上貴充氏(ソフトウェアソリューション事業本部 デジタルソリューション事業部 サービスマネジメント担当 担当部長)の講演内容をお伝えする。

ITシステム運用をとりまく3大課題と「運用DX」を実現する3つのアプローチ

 クラウドの活用が進む一方、ITシステムの運用現場はこれまで以上に多くの課題に直面している。オンプレミスからクラウドへの移行が進んだ結果、管理すべきシステムは社内、社外に混在することが基本となり、管理対象も多岐にわたる。社内のシステムを管理するという従来のアプローチがほとんど通用しなくなるシーンも増えているのだ。こうした現状とITシステム運用を取り巻く課題について、大上氏はこう説明する。

NTTデータ先端技術の大上貴充氏

 「システムの運用現場は、人手に頼る労働集約型業務や複数ツールの組み合わせ運用、プロセス、ナレッジの属人化、人材育成などの課題を抱えています。一方、企業経営の観点で見ても、管理システムの複雑化やセキュリティ要件の増加、安定運用への要求、ニューノーマルへの対応が課題となっています。そこで重要になるのが、働き方改革を加速するための『運用DX』です」(大上氏)

 大上氏が語る運用DXとは、社内で受け継がれてきた運用の在り方を見直し、新しい運用スタイルに変革していくことを指している。運用DXを実現することで、非生産的な作業から、生産的な作業へと人的リソースをシフトさせることが可能になる。大上氏はこう続ける。

 「運用DXを実現するために解決すべき課題はさまざまです。大きく分けて3つのポイントがあると考えています。まず、解決すべき課題は『クラウド活用によるシステムの複雑化』『システム数の増加と個別最適による属人化』『人手作業に頼った運用と膨大な運用作業』の3つに整理できます。これらの課題を解決するためのアプローチはそれぞれ『ハイブリッドクラウド環境の一元管理』『運用業務のデジタルワークフロー化』『ツールやサービスを活用した運用自動化』です」(大上氏)

 ハイブリッドクラウド環境の一元管理で目指すのは、バラバラになった運用管理を一元化し、さまざまな環境を可視化することだ。運用業務のデジタルワークフロー化では、個別最適化と属人化されたプロセスを標準化し、集約化する。そして、ツールやサービスを活用した運用自動化によって、人手作業に頼った運用を効率化し、業務全体を最適化していく。これにより、非生産的な作業を機械に任せ、人的リソースをより生産性的な作業にシフトさせることで、企業としてのDX実現につなげていくわけだ。

ハイブリッドクラウド環境の一元管理と可視化を実現

 この3つの解決アプローチの実行を支援するために、NTTデータ先端技術は「INTELLILINK 統合運用ソリューション」を展開している。同ソリューションは、システム運用管理にとどまらず、設計、開発の支援、セキュリティ支援、アプリケーションパフォーマンス管理(APM)、ITサービス管理(ITSM)、AI(人工知能)、機械学習、業務自動化、構築自動化などをトータルで提供するソリューションだ。

 3つの課題を解決するという点では、2つが中核になる。1つは、NTTデータが開発する統合運用管理ソフトウェア「Hinemos」(ヒネモス)。もう1つはServiceNowが開発する「ServiceNow」であり、これはワークフローのデジタル化を実現するSaaS(Software as a Service)だ。

 「HinemosはあらゆるIT環境からあらゆる情報を取得し、それらを見える化、分析し、自動化につなげることをワンパッケージで実現するソフトウェアです。一方、ServiceNowはたくさんの機能を持つSaaSであり、非常に優れたITSMの機能を提供しています。例えば『Now Platform』というノーコードプラットフォーム上でさまざまな業務フローをワークフロー化できます」(大上氏)

統合運用管理ソフトウェアHinemosの概要(提供:NTTデータ先端技術)

 HinemosとServiceNowを連携させて活用することで、運用業務の「一元化・可視化」「標準化・集約化」「効率化・最適化」を実現可能だという。大上氏は、実際にこの2つをどのように現場に適用していくのかを詳しく解説していった。

 1つ目のハイブリッドクラウド環境の一元管理については、クラウドのメリットを享受できる運用管理の在り方を作ることがポイントになるとした。

 「クラウドのメリットは大きく4つあります。『迅速性、柔軟性、拡張性の獲得』『従量課金制によるコスト最適化』『PaaS(Platform as a Service)/SaaSの利用』『クラウドの組み合わせによるマルチクラウドの構築』です。これら4つの要件をクリアしながら、一元的な運用を実現していきます」(大上氏)

 Hinemosにはクラウド管理機能があり、リソースの自動検出と追随が可能だ。パブリッククラウドの管理アカウントの情報を登録しておくと、アカウントにひも付いたリソースを自動で検出して、管理できるようになる。さらに複数の監視対象ノードを運用しやすい単位で自由にグルーピングできる「スコープ」と呼ばれる機能がある。スコープには監視やジョブを定義でき、スケールアウトなどで新たに追加されたリソースを自動で所定のスコープに参加させることもできる。これらにより人手を介することなく、自動的にリソースを検出し、必要な監視ジョブの自動実行が可能になる。この他にも、リアルタイムなシステム運用状況の監視や視覚化と、将来予測や変化量による異常検知、構成情報の管理、適切なアラートとイベント登録などにも対応する。

運用業務をデジタルワークフロー化して「標準化・集約化」を実現

 2つ目の運用業務のデジタルワークフロー化では、ITIL(Information Technology Infrastructure Library)準拠のデジタルワークフローを実現することがポイントになる。

 「サービス、プロセス、ツールを標準化し、リソースを集約することで最適化を図っていきます。ポイントはドキュメントベースの実施作業をデジタル化することです。さらに、属人的な運用作業をITIL準拠の運用プロセスへ変更していきます。Hinemosでのシステム管理と、ServiceNowのITSM機能をシームレスに連携して実現します」(大上氏)

 HinemosとServiceNowのサービス連携は、3つのレイヤーで考えると導入しやすくなるという。サービスマネジャーがServiceNowで管理するレイヤー、オペレーターがHinemosで管理するレイヤー、インフラエンジニアが管理するレイヤーだ。それぞれで得意とする機能分野が違うので、得意分野を意識しながら導入することで運用効率を向上できるという。連携分野として、「CMDB(構成管理データベース)連携」、運用業務の「ワークフロー連携」「インシデント連携」という3つを取り上げて解説した。

HinemosとServiceNowの連携イメージ(提供:NTTデータ先端技術)

 「CMDB連携では、Hinemosで取得したシステム情報とServiceNowのCMDBと連携させ、それをベースにさまざまな自動化を実現していきます。ワークフロー連携では、例えば承認ワークフローにおいて人と人との連携やシステムに対する変更処理やコマンド実行などが生じます。これはHinemosとServiceNowを連携させることで、Hinemos側にシステム制御やジョブ管理を任せられます。インシデント連携では、監視ツールで検出した監視イベントをシームレスにServiceNowのイベント管理機能と連携することで、より柔軟なイベント管理、問題管理が可能になります」(大上氏)

 CMDB連携をすることで、各サーバのリソース情報の他、インストールされているパッケージ情報なども取得できる。パッケージ情報をベースにCMDBを使って脆弱(ぜいじゃく)性のチェックなども可能だ。また、ワークフロー連携では、障害復旧の際にコマンド操作が必要となるシーンで、Hinemosに処理を委譲し、効率良く実施できるようになる。インシデント連携では、監視ツールのイベントをインシデントとして管理し、フローを回すことができるようになる。

ツールやサービスを活用した運用自動化で「効率化・最適化」を実現

 運用DXを実現するために解決すべき課題の3つ目、ツールやサービスを活用した運用自動化は、運用作業のデジタルワークフロー化と運用管理ツールを活用した運用の自動化を実現するものだ。運用自動化のメリットは人手作業の削減や、作業ミスの低減、運用作業の高速化、障害復旧の迅速化などがある。本質的な効果は「サービス品質の向上」にある。これは、非生産的な作業から生産的な作業に人的リソースをシフトすることと関係する。

 「自動化の実現手段はさまざまです。ツールとしてはジョブ管理機能やRBA(RunBook Automation)、RPA(Robotic Process Automation)ツール、監視ツール、ログ取得ツールなどもあります。これらをうまく組み合わせることがポイントです。ツールをバラバラに導入するとツールの習熟や導入コストがかかるといった新たな課題が生まれてしまいます。Hinemosは、非常に幅広い機能によって、運用自動化をサポートします」(大上氏)

 例えば、ジョブ管理機能では、複数サーバにまたがったジョブフローを定義し、自動実行する。VM(仮想マシン)環境のリソース最適化では、仮想環境やクラウド環境のインスタンスを制御することで、リソースを最適に配置し、コスト低減を実現できる。この他、構成情報としてパッケージの情報を取得し、アップデート適用作業を自動化したり、PCの画面操作を含むような作業ではRPAツールと連携してRPA自体を管理したりして、効率的に運用をまわすこともできる。

 さらに一歩進んだ運用の自動化としてAIOps(Artificial intelligence for IT Operations)機能を提供する。AIOpsを活用するとイベントドリブン運用を実現できるという。

 「イベントドリブン運用で、あらゆる環境の運用ログを収集し、障害発生時のイベントの中から、真に意味のあるイベントを絞り込み、自動対応を実現します。『Hinemosメッセージフィルタ』を使うと、大量のメッセージから『本質的なイベント』を発見できるようになります。ルールエンジンを活用してインテリジェントなアラートと自動化を実現できるのです」(大上氏)

AIOpsによる運用自動化のイメージ(提供:NTTデータ先端技術)

 大上氏は「ハイブリッドクラウド環境の一元管理、運用業務のデジタルワークフロー化、ツールやサービスを活用した運用自動化という3つのアプローチによって、運用の一元化・可視化、標準化・集約化、効率化・最適化を実現できます。Hinemosの最新情報、各種機能の詳細は2022年11月14日に開催予定の『Hinemos World』でも詳しく紹介する予定です。こうした情報源も活用しながら、まず運用DXを始めてみてください」と訴え、講演を締めくくった。

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提供:エヌ・ティ・ティ・データ先端技術株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2022年10月5日

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