企業は望むマルチクラウドを手に入れられるのか――デルとヴイエムウェアの本音を探る“真のマルチクラウド”の実現に向けて

企業は望むマルチクラウドを手に入れられるのか。これをテーマにしたアイティメディアのオンラインセミナーが開催された。このセミナーでは「デルとヴイエムウェアはオンプレミスにユーザーを引き止めたいのではないか」という疑問にも触れられた。果たして、両社の本音は?

» 2022年10月28日 10時00分 公開
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 2022年10月26日、アイティメディア主催のオンラインセミナー「激論!一般企業は望むマルチクラウドを手に入れられるのか」が開催された。このセミナーでは、デル・テクノロジーズとヴイエムウェアのクラウド担当キーパーソンが登壇し、それぞれが考える“クラウドの在り方”と製品戦略を解説した。その後に行われたパネルディスカッションでは、@IT編集部の三木泉が両社に「本音」を聞きながら、企業のマルチクラウド戦略について議論を交わした。本稿では、その内容を紹介する。

クラウドスマートの実現がヴイエムウェアのマルチクラウド戦略

ALT ヴイエムウェア
クラウドプラットフォーム技術統括部 統括部長
古山早苗氏

 ヴイエムウェアのセッションでは、同社の古山早苗氏(クラウドプラットフォーム技術統括部 統括部長)が、「VMware Explore with you! - インフラストラクチャの新しいランドスケープを探る」と題して、同社のマルチクラウド戦略とそれを支えるテクノロジーを解説した。

 ヴイエムウェアは2022年8月末、年次イベント「VMware Explore 2022」を開催し、同社のビジョンや製品群を披露した。

 「VMware Explore 2022のキーメッセージに『クラウドスマート』と『VMware Cross-Cloud Services』があります。企業が『クラウドファースト』を掲げて積極的にクラウドを活用していくと、やがて複数のクラウドやアプリケーションを管理しなければならない『クラウドカオス』の状態に陥ります。クラウドスマートは、そうしたクラウドカオスを乗り越え、適切なアプリケーション/データを適切なクラウドで管理し、一貫したセキュリティと制御の下でクラウド変革を推進していく取り組みです。クラウドスマートを具体的に実現するためのコンセプトがVMware Cross-Cloud Servicesです」(古山氏)

 クラウドスマートはヴイエムウェアのマルチクラウド戦略であり、VMware Cross-Cloud Servicesは顧客がクラウドスマートを実現していくために提供される製品群だ。具体的には、アプリケーションプラットフォームの「VMware Tanzu」、クラウドを管理するための「VMware Aria」、クラウドとエッジサービスのための「VMware Cloud」と「VMware Edge」、セキュリティとネットワークを担う「VMware Carbon Black Cloud」と「VMware NSX Cloud」、デバイス管理の「VMware Workspace One」などで構成される。

インフラ、運用、アプリケーションの課題解消にはそれぞれのモダナイズが重要

 VMware Cross-Cloud Servicesが取り扱う領域が多岐にわたることからも分かるように、クラウドスマートを実現するにはさまざまな取り組みが必要になる。

 「クラウド変革を阻害し、ITシステムのリスクと複雑性を増大させる要因は大きく分けて3つあると考えています。『柔軟性に欠けるインフラ』『一貫性に欠ける運用』『スピードに欠けるアプリケーションのモダナイゼーション』です。これらインフラ、運用、アプリケーションの課題を解消していくことが重要です」(古山氏)

 具体的な施策としては、「一貫した運用を備えたコスト効率の高いインフラの構築」「インテリジェントなオペレーションの実現」「アプリケーション開発の高速化」という3つのアプローチで対処していくことになる。これらを実現するためにVMware Cloudでは、インフラ、運用、アプリケーションそれぞれの領域をモダナイズしていくためのソリューションを展開する。

 製品としては「VMware vSphere 8」「VMware vSAN 8」「VMware NSX 4」といった中核製品や、エッジソリューションの「VMware Edge Compute Stack 2.0」で一貫した運用を備えたコスト効率の高いインフラの構築を支援する。また、インテリジェントなオペレーションの実現に向けて、マルチクラウド環境を一元管理できるVMware Ariaを提供する。さらに、ネットワークでマルチクラウドにわたるポリシーの一元管理やセキュリティプランニング、脅威分析などを推進し、エンドツーエンドの可視化を実現する「Project Northstar」をテックプレビュー版として発表した。

 「クラウド変革の課題に的確に対応し、最適化されたクラウド環境の実現を支援していきます」(古山氏)

国内でもいよいよ提供開始、「Dell APEX」が顧客にもたらす価値とは

ALT デル・テクノロジーズ
DCWソリューション本部
アドバイザリーシステムズエンジニア
平原一雄氏

 続くデル・テクノロジーズ(以下、デル)のセッションでは、同社の平原一雄氏(DCWソリューション本部 アドバイザリーシステムズエンジニア)が「APEXがもたらす新しいIT利用体験と今後の展開 As-a-Service Where You Need It 必要なところに必要なサービスを」と題して、オンプレミスのハードウェアをクラウドのようなサブスクリプションベースで購入/調達できる仕組みとなる「Dell APEX」(以下、APEX)を解説した。

 「デルのマルチクラウドに対する考え方は『マルチクラウド・バイ・デザイン』です。これは、どのような場所にアプリケーションやデータを置いた場合でも、サイロに閉じ込めるのではなく、クラウドの使いやすさとスピード感を持って、あらゆる場所からデータの価値を引き出すことが重要であり、そのためには、あらかじめきちんと設計されたマルチクラウド環境が必要というものです」(平原氏)

 マルチクラウド・バイ・デザインを実現するために、デルが長期的なビジョンとして掲げるのが「Bi-Directional Ground to Cloud Strategy(双方向クラウド戦略)」だ。これは、グラウンド(オンプレミス)とクラウドを結び付けて、場所を問わずシンプルなクラウド体験を提供するものとなる。

 「オンプレミスで培った当社の先進的なイノベーションをクラウドに展開するために、当社のストレージ技術をクラウドに展開する『Project Alpine』を推進しています。一方、クラウドの利用体験をオンプレミスに展開する取り組みとして推進するものの一つがAPEXです。この双方向のアプローチで新たなマルチクラウドの実現を目指します」(平原氏)

ITの俊敏性とコントロールを向上させ、DXの取り組みを簡素化

 デルがAPEXに注力する背景には、オンプレミスITの課題がある。特に問題となっているのが、オンプレミスにおける調達柔軟性の欠如だ。

 「調達プロセスが複雑で過大な投資が必要になっています。また、導入した後もリソースの柔軟性確保が困難です。APEXはパブリッククラウドの利用体験を持ち込むことで、まずはこれらの課題を解消します」(平原氏)

 APEXは、デルのさまざまな技術やサービスをパブリッククラウドのように利用できるようにする仕組みだ。同社では「as-a-Service」ポートフォリオと呼ばれており、オンプレミスITの「俊敏性」と「コントロール」を向上させ、デジタルトランスフォーメーション(DX)の「簡素化」を目指す。

 具体的な構成要素としては、コンピュート領域では「APEX Cloud Services with VMware Cloud」「APEX Hybrid Cloud」「APEX Private Cloud」を、ストレージ&データ保護領域では「APEX Data Storage Services」「APEX Backup Services」「APEX Cyber Recovery Services」を提供する。さらに、カスタムとして「APEX Flex on Demand」「APEX Data Center Utility」を提供する。

 いずれも、「必要なもの」を「必要なとき」に「必要な分だけ」利用できる他、デルのマネージドサービスとしての利用や顧客主体でインフラを管理することが可能だ。サービスは日々アップデートされており、シンプルかつタイムリーにITリソースをセルフサービスで調達できる「APEX Console」も進化している。

 「難しいキャパシティー計画や先行投資が不要で、必要とする容量からスタートし、新たなビジネスを迅速に展開できます。APEXをきっかけに、未来への変革につなげてほしいと思います」(平原氏)

「オンプレミスに引き止めたい」が本音? ディスカッションで真相に迫る

 両社のセッション後に行われたパネルディスカッションでは「ヴイエムウェアとデル・テクノロジーズは、クラウド化の進展をどう考えている? 本音は引き止めたい? 遠慮なく突っ込んで真相に迫る!」と題し、ヴイエムウェアの古山氏、デルの平原氏、@IT編集部の三木の3者で忌憚(きたん)のない意見が交わされた。

 三木の最初の質問は「デル、ヴイエムウェアは、結局企業をオンプレミスに縛り付けたいというのが本音??」だ。

 古山氏は「大変刺激的な質問をいただきましたが(笑)、ヴイエムウェアとしては、さまざまな選択肢がある中で、オンプレミスが必要であるなら使ってほしいというスタンスです。オンプレミスでも旧態依然としたITではなく、進化したITを使うことがポイントだと考えます」と回答。

 平原氏は「確かに10年前、当時EMCだった私はオンプレミス引き止め派でした(笑)。ただ、クラウドでしかできないことがある以上、クラウドの流れは止められません。今、注目していただきたいのは、欧米を中心に、必要に応じてオンプレミスに戻す『リパトリエーション(回帰)』が進んでいることです。しかし、戻す際には非常に泥臭い作業が伴います。ですから、そうした面倒ごとになる前に、パブリッククラウドとオンプレミスの使い分けができる体制を整えることが重要です」とした。

 続いての三木の質問は「企業は新しいアプリケーションで、クラウド、マルチクラウドをどう使いたい(使うべき)?」だ。

 この質問に対し、平原氏は「お客さまのニーズとして近年高まっているのは、データ分析や機械学習/AIです。オンプレミスでこうしたリソースを持つことは難しい。そこで重要になるのはアウトカム(成果)です。クラウド、オンプレミスに限らず、アウトカムが得られるのならばコストをかけるべきです。ただし、アプリケーションの可搬性に加え、データの可搬性と活用方法までをしっかりと考えておくことが必要です」とアドバイスした。

 古山氏は「成果が大事というお話がありましたが、そのためにはアプリケーションを素早くリリースして継続的に改善することが大切です。そこでマルチクラウドの良さが生きてきます。当社もマルチクラウドを横断して使えるコンテナ基盤やアジャイル開発のツール/サービスを提供しています。ただし、マルチクラウドの課題に対応するため、適切なガバナンスを効かせて使うことがポイントです」とした。

コスト管理の上で、マルチクラウドを部品として使い倒す

 では、オンプレミスに残る既存のアプリケーションはどうだろうか。三木は「企業は既存アプリケーションで、クラウド、マルチクラウドをどう使いたい(使うべき)?」と質問した。

 平原氏は「クラウド移行して成功した企業もあれば、移行したもののニーズに合わなかったという企業もあります。クラウドの特性を理解して使えるかどうかが分かれ道だと感じます。特に既存アプリケーションはインフラと一体で信頼性を確保していることが多く、単純移行すると、クラウドネイティブなアーキテクチャとの間にギャップが生じます。その部分をいかにソフトランディングさせながら、クラウドに移行するかがカギだと思っています。その手段として運用をオフロードしながら、タイムリーに利用可能なオンプレミスのas-a-Serviceを提案しています」と、APEX提供の狙いを含めて解説した。

 古山氏は「DXやモダナイズのアプローチの中に、『取りあえずクラウドに移行』というものがあります。ですが、クラウドにリフトしただけではDXは実現しません。むしろ、クラウド移行でカオス化が進んでしまうケースも増えています。重要なのは、何が自社にとってのモダナイズ/DXなのかを明確にした上で、最適な手段を採用していくことです。高い信頼性が求められ、アップデートがそれほど必要でない既存アプリケーションならクラウド移行しない方がよいこともあります。その場合は、既存のデータセンターをクラウドライクに使えばいい。それぞれのカタチを見つけることが不可欠です」とした。

 続く質問は「エッジに対するニーズが高まる中、どのような対応をしているか」だ。

 古山氏は「デバイスを複数箇所に配置できればいいという話ではなく、いかにデータを収集するかがカギになります。アプリケーションとデータをセットで取り扱い、何か問題があったら素早く対応できるようにコントロールしなければなりません。そうした要件を満たすのがVMware Edge Compute Stack 2.0です」と説明。

 平原氏は「アプリケーション込みのエッジへの大量展開は、従来の買い切り型の調達スピードやプロセスでは追い付きません。標準化されたインフラをいかに早く配布できるかが求められます。デルは、そうした仕組みをAPEX Consoleで実現し、そこにコンテナベースのアプリケーション配布を組み合わせる事例も出てきています」とした。

 最後のテーマ「企業のマルチクラウド、何に気を付ければいいのか」について、平原氏は「コスト管理は非常に重要。しっかりガバナンスを効かせる必要があります」とし、古山氏は「マルチクラウドに使われないこと。マルチクラウドはゴールではなく、クラウドで提供されるサービスを部品として使い倒すことが大事です」と訴え、ディスカッションを締めくくった。

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提供:デル・テクノロジーズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2022年11月15日

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