KDDIが情報系システム基盤における「運用の負のスパイラル」を克服できた理由性能分析だけにとどまらないビジネス価値も実現へ

KDDIは、基幹系データを一元集約した情報系システム基盤を構築している。しかし、データ活用業務に関するニーズが高まる中、レスポンスの悪化が頻発し、安定運用のための業務負荷も増大する状況があったという。問題解決に向け、同社はどのような方策をとったのか。担当者に聞いた。

» 2023年04月03日 10時00分 公開
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KDDIのデータドリブンなビジネスを支える情報系システム基盤

 近年の急速な技術の進歩と社会環境の変化は、既存のあらゆるビジネスに変革を迫っている。中でも「通信」は、早くからその影響を受け続けてきた業界といえる。日本の大手電気通信事業者の一角であり、「au」ブランドの携帯電話事業で広く知られるKDDIは、業界を取り巻く環境変化へ敏感に反応しながら、持続的成長を目指している。

 同社は、2022年からの新中期経営戦略において、本格化を迎える5Gをセンターに置き、通信事業の進化と、通信を核とした注力領域を拡大していくことを掲げている。「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「金融」「エネルギー」「LX(ライフトランスフォーメーション)」「地域共創」という5つの注力領域を定義し、各分野と5Gをはじめとする通信サービスとのシナジーで事業成長を図る。

 この戦略を実現していく上で重要な役割を果たすのが、日々のビジネスで生みだされる多種多様かつ大量のデータを活用するためのシステムだ。KDDIではDWH(データウェアハウス)を中核とした情報系システムを構築し、データドリブンな意思決定、効果的なビジネスアクションにつなげている。

KDDI 技術統括本部 情報システム本部 DXアーキテクト部 國枝伸高氏

 「情報系基盤には、契約数の推移のような各基幹システムに蓄積された最新のデータが常に集約されています。経営層から事業部門まで、何らかの意思決定をする際に、まず当基盤からデータを抽出して業務活用することが多く、日々のビジネスを進める上で重要度の高いシステムとなっています」

 そう話すのは、KDDIの國枝伸高氏(技術統括本部 情報システム本部 DXアーキテクト部)だ。情報システム本部では、各事業部門が進める事業案件のIT面での企画/開発や、システム運用保守および更改など、同社の情報システムに関わる幅広い業務を手掛ける。情報系基盤の開発業務は、國枝氏の属するDXアーキテクト部が主に担当している。

データ活用のニーズが高まる中で性能悪化や運用負荷の増大が課題に

 情報系基盤のDWHは「Oracle Database」で構成されている。しかし、長年にわたる運用の中で、幾つかの課題が顕在化していたという。國枝氏によれば、それは主に「安定運用」と「問題発生時の対応にかかる手間の大きさ」に関わるものだったという。

 「情報系基盤では、ユーザーが自由にクエリを投げて、見たいデータを抽出できます。ただ、クエリの作り方が悪いとリソースを膨大に消費し、全体の安定性に悪影響を与えます。問題が発生した際には、その原因を見つけ出し、対応したり今後に向けて改善したりする必要があります。もし、ユーザーのクエリが原因だった場合、Oracle標準のレポート機能では『どのクエリに問題があったか』までは分かるのですが、そのクエリを実行した『実行ユーザー』のひも付けに時間がかかり、改善の方針が立てにくいといった課題がありました」(國枝氏)

 ビジネス部門におけるデータ活用のニーズは高まる一方であり、情報系基盤に発行されるクエリ数も増大していた。一部では、タイムアウトが多発するため、ユーザーが同じクエリを複数回発行して「数打てば当たる」方式でレスポンスを待つような、望ましくない運用も行われていたという。こうした使われ方が、システムリソースをさらに圧迫し、問題発生の頻度を上げる。その都度、開発/運用チームでも人数が限られるOracleのエキスパートが原因究明と対応をする必要があり、運用負荷が増していくという「負のスパイラル」が起こり始めていた。

 「この状況を改善するためには、データベースの状況を把握し、関係者での共有が最優先と考えました。そのためデータベースの状況を詳細に取得し、可視化できる運用管理ツールを検討しました」(國枝氏)

 そこで同社は情報系基盤の安定稼働、運用の効率化、稼働状況の可視化などを目的として、日本エクセムが提供するデータベース可視化ツール「MaxGauge for Oracle」を導入した。

ユーザーニーズの実現に向けた柔軟な対応が導入の決め手に

 國枝氏が問題解決に向けて検討を本格的に開始したのは、2017年のことだった。日本エクセムの「MaxGauge」は、当初より有力な選択肢の一つだったという。

 製品の比較検討において、特に重視した要件は「導入によるシステムへの影響が小さいこと」そして「収集できる情報の粒度ができるだけ細かいこと」だった。加えて、國枝氏には、もう1つ新しいビジョンがあった。それは「リソース状況とユーザーが実行したクエリ性能を可視化して、開発/運用チームとユーザーとの間で共有できるようにすること」だった。

 「情報系基盤は、オンプレミスで運用していることもあり、現状ではユーザーの要求に合わせて、即座にリソースを増減させるといったことはできません。そのため、リソースの状況をユーザーと共有して、どのクエリをいつ出せば、早くレスポンスが得られそうかという判断を、ユーザー側が自分でできる環境を作りたいと考えていました」(國枝氏)

 MaxGaugeは、情報収集に当たってデータベースへのクエリ発行が必要ない、エージェント型のツールだ。そのため、導入によるシステム本体への影響は最小限に抑えられる。また、取得できる情報の粒度も細かく、発行されたほぼ全てのクエリ内容が把握できるという点で、同社のニーズに合ったものだった。

 さらに「リソース状況の可視化と共有」についても、日本エクセムの柔軟な対応によって実現のめどが立ったという。

 「MaxGaugeのリポジトリ内にある情報を、独自に引き出して加工し、情報共有のために可視化したいと日本エクセムさまに依頼しました。こうした依頼にすぐ対応してもらえたことは、日本エクセムさまに対する好印象につながっており、MaxGaugeの導入を決定する大きな理由の一つになりました」(國枝氏)

 MaxGaugeの導入に当たっては、技術的な問題の解決よりも、むしろ社内の理解と承認を得る点に、より多くの時間をかけたと國枝氏は振り返る。

 「Oracleのエキスパートであれば、MaxGaugeの便利さを理解できるのですが、そうでない社内の開発/運用メンバーに対し、どのようにMaxGaugeの有用性を理解してもらうかに時間をかけました。MaxGaugeの導入を通じて、リソースやSQLの状況が、どのように可視化できるのか、これまでの情報系基盤に起こっていた問題をどのように解決できるのかを、具体的なオペレーションと合わせて社内で説明していきました。導入から2023年現在まで、大きなトラブルは起きていません。当初に見込んだ通り、安心して使える製品だと感じています」(國枝氏)

Oracleエキスパート以外のメンバーも自発的に活用――運用負荷の軽減に寄与

 MaxGaugeによる運用環境は、当初の期待通りのメリットを生んでいる。ユーザーのクエリが原因で発生したレスポンスの悪化に対しては、MaxGaugeで取得した情報から、どのクエリがリソースに悪影響を与えているかが即座に分かるようになった。「以前であれば、原因究明のための情報収集、可視化までに半日程度の時間がかかっていたが、現在では画面操作の数分でできている」(國枝氏)という。また、MaxGaugeのリポジトリには、全クエリの内容と合わせて、「実行ユーザー」の情報も合わせて記録するようにしたため、改善活動の方針も立てやすくなった。

Oracle稼働状況をリアルタイムで分析する「リアルタイムモニター」(提供:日本エクセム)
障害があった時間を集中的に分析する「1分間詳細分析」(提供:日本エクセム)

 加えて、情報系基盤の運用を最優先に考えた方策として、リソースが逼迫(ひっぱく)した際に、最も高負荷になっているクエリを探し出し、自動的に切断する仕組みを実装し運用の安定化と効率化を行っている。このような自動化も、MaxGaugeの詳細な情報を基に実装している。

 「従来であれば、ユーザー側でクエリをキャンセルしてもらうか、さまざまな状況を確認した上でシステム側で強制的に切断するしか方法がなく、いずれの場合も人手による対応が必要でした。MaxGaugeのリポジトリの情報を利用し、作業を自動化する仕組みを実装したことで、大幅な運用負荷の軽減に寄与しています」(國枝氏)

 さらに、リソース状況の可視化と共有が可能になったことで、ユーザー側で情報系基盤の現在の負荷状況やスケジュールを把握し、効率的なクエリの発行タイミングを考えられる環境を実現した。

利用状況可視化の仕組み(提供:KDDI)

 「MaxGaugeの導入から4年が経過していますが、この運用環境は、Oracleのエキスパートだけではなく、これまでOracleにあまり詳しくなかったメンバーも積極的に活用するようになっています。各メンバーが自発的に情報収集と原因分析を行える体制ができており、開発メンバーのスキル向上にもつながっていると感じます」(國枝氏)

 情報系基盤の運用での実績から、他のシステムへのMaxGaugeの導入も進んでいる。

MaxGaugeの「性能分析だけにとどまらないビジネス価値」とは

 國枝氏は、今回の導入を通じて「単なるデータベースの性能分析だけにとどまらない、MaxGaugeの価値を再認識している」と話す。

 「ユーザーが日々実行するクエリは、その時点でのビジネストレンドをリアルに反映していると捉えることもできます。クエリの傾向から、システム上に展開するテーブルの内容を検討し、ユーザーにとってより使いやすい業務環境を整えたり、さらには、そのトレンドをビジネス側にフィードバックしたりすることで、ビジネスプロセスの見直しや整理の起点として、DXに寄与する施策にも取り組んでいきたいですね」(國枝氏)

 日本エクセムはKDDIに対し、製品としてのMaxGaugeの提供にとどまらず、詳細な製品仕様への理解に基づく、システム運用改善に向けた活用支援も実施しているという。

 「われわれがMaxGaugeを活用していくに当たり、日本エクセムさまのサポートは非常に心強く感じています。導入を検討していた当初から、ユーザー目線での『こういうことがやりたい』という希望を、とても前向きにかなえてくれる企業だと感じており、その姿勢を高く評価しています。今後もいろいろと相談をしながら、KDDIにおけるデータドリブンなビジネスを支える、システム環境の改善を図っていきたいと考えています」(國枝氏)

日本エクセム CEO 後藤大介氏(左)と國枝氏(右)

日本エクセムより

KDDIさまは、弊社が推進するMaxGaugeの効果的な使い方をまさに実施いただいています。弊社ではMaxGaugeの収集する詳細なデータとGUIにて、DBA(データベース管理者)だけでなく開発チームや運用チームとも連携しスムースなDB運営を行う「開発と運用の共通言語」としての使い方を推進しています。人材不足への対応や、メンバーの教育が重要となる中、MaxGaugeのようなツールを活用し情報システムの安定的な運用に寄与していきたいと考えています。

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提供:日本エクセム株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2023年4月24日

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